2001年9月16日
ケイビングのスペシャリスト
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは近藤純夫さんです。 |
ケイビング(洞窟探検)のスペシャリストでエッセイスト&翻訳家として活躍する近藤純夫(こんどう・すみお)さんにあまり知られていないハワイの魅力について語っていただきました。近藤さんは2001年8月に平凡社から「ハワイ・ブック~知られざる火の島を歩く」という本を出してらっしゃいます。ハワイ諸島の誕生、火山、植物、生き物、神話、歴史などをまとめた「ハワイ・ブック」はこれまでのガイド・ブックとは一線を画す“ハワイ辞典”のような素晴らしい本です。
この10年で20回位、ハワイに行っている近藤さんは何度も行くうちに専門の洞窟や火山以外にも目がいくようになり、真のハワイ通になったようです。そして「ハワイ・ブック」を出そうと思ったのも、もっとハワイを知って欲しいという気持ちの表われだったといえます。
「僕もビーチに行くのは好きなんですけど、ワイキキって、砂止め作って、防波堤作って、ほんと狭い空間にいっぱいの人が入っているわけですよ。それしかなかったらしょうがないんだけど、車で10分とかからない所にきれいなビーチがいっぱいあるのに、そういうところが全然使われていないのはもったいないなと思う。魚を見るサンゴ礁の海岸もあれば、白砂の海岸もある。でもワイキキから出ないと何も分からないですよね。日本人ってそういうパターン、多いんです。ハワイに限らず。海でも山でもいいんだけど、ちょっと一ヶ所だけでも覗いてみようかな、そこにあるものをひとつだけ調べてみようかなっていう気持ちがあると、そこから物凄く早くその先の好奇心は広がっていくと思いますよ。僕のような無精な人間でもそうでしたから(笑)。僕の書いていることはほんと表面的ことですから、関心のあることをもっともっと掘り下げて欲しいですね。これはキッカケの本ですから」
“洞窟の専門家”近藤さんにハワイの洞窟のことなど聞いてみました。
「世界一長い洞窟があるとか、世界一深い洞窟があるとか、記録的なものもあるんですけど、普通の人たちに特に見て欲しいのは、溶岩の色がきれいなこと。金色、銀色、コバルトブルー、玉虫色、ガラスだけとか、そのガラスも繊維のように編んだやつとか、いろんな形のものがあって、本当にきれいなのね。そういうものが洞窟のそばでも溶岩の平原でも見られるので、石を見るだけの旅も僕は面白いと思いますね。
例えばこの本にお遊びで書いたんだけど、通称でつけてる色のついたビーチがあるんですよ。レッド・サンド・ビーチとかブラック・サンド・ビーチとかホワイト、グリーンとか。その砂を(カメラで)接写して、色の違いを比較したのをこの本に載せてあるんですけど。砂を見るだけでもこれだけ違いがあるのは何故だろう、なんで色が変わるんだろうって、そこにも“なんで”が出てくるんだけど。(中略)あえていいませんけど、あるビーチには水晶もあります。そんなに大きなものじゃないですけど」
一般の観光客がハワイの洞窟を楽しむためにはどうすればいいんでしょう?
「いちばん簡単なのは観光洞窟に行く。例えば(ハワイ島の)キラウエアの中に観光洞窟があります。公園に入ると必ずパンフレットをくれますから、そこに書いてあるので行ってみる。もうひとつの方法はツアーに参加する。洞窟ツアーって結構あるんですよ。ハワイ島とマウイ島にあります。その情報は僕の本を読んでもらうといいですが、あとは日本語では厳しいですが、“COMMERCIAL”“CAVE”“HAWAII”というキーワードでインターネットの環境がある人は調べてみてください。
インターネットも英語も大変だという人はキラウエアに行くと、ビジター・センターがありますから、そこでレンジャーに聞いてみましょう。英語の問題も出てきますが、日本を出るときに紙に書いてもらって、それを(レンジャーに)見せて、書いてもらうのもいいですね。意外に止まっているホテルでは(洞窟の情報は)分からないんです。
あと(ハワイ島の)ヒロの街のすぐ上、サドルロードという所に行く途中に、カウマナ・ケイヴというのがあって、懐中電灯がいりますが、自由に入れますから。大雨のあとに閉鎖されることもありますが、ちょっと覗いてみるのも手ですね。(洞窟観光に)持っていくのは懐中電灯だけ。ハイヒールはまずいけど、スニーカーで十分です。半ズボン、半ソデ、それだけ。本当に大変な所は許可がいるし、技術がいるのでちょっとお勧めできないけど、僕が今いった所は全部大丈夫です」
ハワイ諸島は島の一生が見られる凄い場所だと聞きましたが?
「いちばん新しいのは今噴火しているハワイ島。海上に現われてから50万年位といわれているんですね。だんだんにマウイ島、オアフ島、カウアイ島と遠ざかっていきますよね。カウアイ島まで来ると500万年くらい経っているんですよ。ミッドウェイ位まで来ると、3000万年も経っているんですよ。地質年代的には全然違う。万を取っちゃうと3000歳と50歳ですよね。気が遠くなるほど違う。でもミッドウェイとかがある北西ハワイ諸島は島の一生でいうと、もう老年で海に沈んでなくなる直前の姿。だからそういう意味では島っていうのは地球の内側でエネルギーが蓄えられたものが出てきて、盛り上がってできて、それが侵食されて削られて、また海に沈んで地球の奥に取り込まれて、また再生するという、仏教的にいうと輪廻みたいなものかも知れないし、そういう再生っていうのは永遠に繰り返される、その一瞬を切り取ってハワイ諸島があるということがとってもよく分かりますね。
もの凄く地球規模のことを人間のスケールで味わえることがたったひとつハワイにあるんです。僕は今から30年位前にハワイに初めて行ったんですね。30年前にハワイに行ったときの、例えばホノルルの空港のある場所に立ったとしますね。で、今同じ場所に立つと、僕はすでにそこで2メートル近く移動しているんですよ。つまりハワイ諸島は北西に向かって(1年に)6~9センチ位移動しているんです。そうすると2メートルも変わってるんですよ! 凄いでしょ! 僕が生きている人生の中でそんなに移動してるんですよ、地球が。そういうスケールが味わえるなんて面白いと思う」
ハワイに残る神話について聞いてみました。
「やはりハワイの人たちにとってペレは特別ですよね。僕も神話の中でペレを最初にしたし、ペレの名前の付いたものが火山の言葉としていっぱいあるんです。“ペレの髪の毛”“ペレの涙”“ペレの顔”もありますし、とってもいっぱいあって、英語のガイドブックを見ると必ず載ってるんですよ。ペレって何だろうから入っていって。僕は火山が好きだし、火の女神となっていたし、だからまずペレを知ることが分かりやすい導入だと思いますね。でもそういうものがハワイの人たちにとって、必要というか、なぜあったのかというほうが大事かも知れませんね。
ペレは実は神様じゃない、女神さまじゃないんです。ペレは半神なんです。半神ということは人との関わりがあったということなんですね。なぜペレがハワイの人と関わらなくてはいけなかったのかという話をひも解いていくと、実はハワイのお話だけでは収まらないんですね。つまりこの神話はハワイで生まれたものじゃないんです。アレンジはどんどんされてますが、もともと彼らが遠い地としてきた“カヒキ”、ハワイ語には“T”の音がないので“タヒチ”のことなんですけども、今はカヒキはタヒチを含む異国の地として使われているんです。タヒチの神話も実はタヒチで作られたものではないんですね。さらにずっといくと、いろんな島を経由するんですけど、最後は“サモア”だと。サモアのいちばん大きな島の名前は“サバイイ”っていうんですよ。“SAWAII”と書くんですが、そのサバイイの“S ”の音はハワイ語にはないんです。で、SをHに変えたら“HAWAII”。つまり母なる島とか母なる土地という意味を持っていたというのがすごく強い。そうすると神話のもとはそこにあるんじゃないかといえるじゃないですか(後略)」とさらに興味深く壮大な話が展開されました。
古代ハワイ人が作り上げた「アフプアア」という自然循環型のエコ・システムのことや、タブーという意味の「カプ」の話もありましたが、詳しくは「ハワイ・ブック」に載っていますので、ぜひ読んでみてください。この本はハワイに興味がある人なら目から鱗の興味深い話が満載です。“センス・オブ・ワンダー”があなたの世界を広げます。
『ハワイ・ブック~知られざる火の島を歩く』
平凡社/定価1,890円
M1. KONA COAST / THE BEACH BOYS
M2. HEAVENLY ISLAND / TERRESA BRIGHT
M3. PARADISE / KALAPANA
M4. NORTH SHORE SERENADE / NALEO
M5. NOW AND FOREVER~SWEET MEMORY / KEALI'I REICHEL
M6. HEALING WATERS / MICHELLE TUMES
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