2002.4.28放送

作家・C.W.ニコルさんを迎えて
10周年特別月間のトリを飾るのは我らがニコルさん。ニコルさんには何度も出演していただいているし、黒姫のアファンの森にも何度かお邪魔しているんですが、今回はちょうど1年ぶりの御出演。10周年記念アルバム「ザ・フリントストーン・ミュージック・アルバム」にも「SAIL DOWN THE RIVER」という曲で御参加いただいています。そして、この曲、実はニコルさんの作詞作曲によるもの。今回はその曲の話題から。
「あれはね、10数年前にテームズ川を一ヶ月かけて下りました。河が大きくなったところからハウス・ボートという長い船に乗って、僕が船長。テームズ川はゆっくりと流れてるんだけど、エンジンのトントントントンというリズムと船の動きを考えて詩と歌を一緒に作ったんです。」

ニコルさんに初めて出演していただいたのは1993年ですから、もう9年。
「あの時もエイドリアンとフレッドが一緒でしたでしょ?」

はい。イベントがあって、私が司会をさせていただいて、ナマで演奏を聴かせていただいた・・・。
「エイドリアンは今でもカナダ政府の環境庁の偉いエンジニアだけど、この「SAIL DOWN THE RIVER」のマンドリンは全部彼がやったんです。フレッドは今、下水のリサイクルの素晴らしい研究をやってるんですが、彼はベース。」

お二人ともバンクーバー在住で、その頃からの友人。
「僕もカナダ政府の仕事をしているときに、我々3人がパシフィック・リムというバンドを組んで、よく歌って楽しんでましたよ。」

あの時は確かステージでウィスキーを片手にしてらっしゃいましたよね。ニコルさんはウィスキーを離せない・・・。
「僕、酒やめたよ。焼酎とウィスキーにしてますから。」

ビールは飲んでないんですか?
「たまに。」

でも、ビールはお水。

「はい、そうですね。で、焼酎とウィスキーだけ。うそだけど・・・。」

う~~~ん。(笑)
ところでニコルさんのアファンの森。“アファンの森基金”というのを設立しましたが、どういう活動をしてるんですか?

「基金の方は全国の仕事をしてます。里山という言葉があります、WOODLAND。林の研究と復活。荒れてる森を健康的に戻して生物の多様性を豊かにして、そのマネージメント。森から色々なものをいただけるでしょ。そのやり方と研究をしてます。」

そのベースになっているのがニコルさんのアファンの森。
「そう。それはもうそろそろ財団になりますがそれは県の財団。我々が手入れしてから17年になりますが、鳥の種類はもう93です。松木さんは言うなというけど、THE FLINTSTONEのリスナーはみんないい人だと信じてますから言うけど、フクロウが巣を作ってくれたんです。全部伐採したあとの森ですから大きい木が無いでしょ?だから巣箱を置いたんです。そしたら卵三コ、ちゃんと入って。親は育ててますね。嬉しいですよ、ネズミで悩んでましたからね。ネズミが冬に苗木の根っこを食べちゃうんです。だからフクロウ大歓迎。」

去年お話をうかがったときはネズミの被害が凄くて、ネズミが増えた理由には蛇が減ったかなという話も。
「蛇は減ったんですけど、今年はネズミの害はよくなったみたい。僕はフクロウ様と思います。でも今は、ハリー・ポッターの影響でペットのフクロウが流行ってるんですよ。だから我々は見張ってて、その子供を盗もうと思ったら捕まえた人を全部細かく小さくしてフクロウのえさにしちゃうから。」

でも、心無い人がいてフクロウの子供たちもそうですけど、アファンの森ではエビネランも、すごくきれいに咲いてたのがあっという間に・・・

「そう。あれは10年ぐらい前に、手入れしたら何千とランの花が咲いて嬉しかったんですけど、一晩で全部盗まれた。当時の金にすると400万円以上。だから、日本人はほとんどいい人ですけど、たまにやな奴いるね。さっきのフクロウも飼ってる人はいいんですよ。でも野生のフクロウは盗まないでくれと。よくないですよ。
 去年サンコウチョウって、尻尾の長い美しい鳥が巣を作ってくれたし、クマはしょっちゅう来てますから、信州大学の先生と一緒にクマの調査の手伝いをしてますし、ヤマネの調査、水質の調査、または小さな森の中で、林の中で、一体何がいるか、どんな植物、どんな虫がいるか、鳥とか、動物とか、その調査を手伝ったり、これからずっとそういうことをするでしょう。
 それから、ウェールズ、私の生まれた国のアファンの森と姉妹森にします。あそこは国の森だから大きいけどね。3,280ヘクタール。去年の12月にウェールズに行って、ウェールズのアファンの森の人々70人ぐらいと、我々の森の映像、スライドを見ながら話をしたら、彼らがすごく感動したんです。何故かといえば、クマがいるでしょ。サンコウチョウもいる。我々の小さな森の生物の多様性、植物の多様性はヨーロッパ人がびっくりします。我々はたった15ヘクタールぐらい。相手は3,280。でも、同じぐらいのレベルだと言われたんです。何故かといえば、あなた方の方が生物の種類が多いから。」

何故、アファンの森ではそんなに生物の種類が多くなっているんでしょう?
「我々は生物のことを考えて木を植えたり、池を掘ったり、木の手入れをしてるから。向こうの都合をいつも考えてます。私の大好きな池田先生という方が、荒れた土地の上でハウス・テンボスというところを長崎に作ったんですよ。何十万本の木を植えたり、生ゴミをコンポストにしたり、色々とやってる。あれも10年になりますけど、そこにも60種類ぐらいの鳥が入ってます。だから日本の自然は非常にたくましい。種類が豊富。場所さえ用意すれば鳥が喜んでくる。そして種を落とす。植物が生える。その植物や花を好む虫が来る。また鳥が増える。こうしてあっという間に自然が豊かになるんです。人間がちょっと愛情を持てば生物はわかってるんです。去年、私がカナダの川で座ってたら、クマが僕の4メートル先に来たんです。右も左も両方。それと、カワガラス、可愛い鳥ですが、僕の靴の上まで乗っちゃったんです。僕は本当に自然の一部だと思ってるから動物は全然こわくないんです。彼らもわかる。来るんですよ。」

どうすればそうなるんですか?
「あのね、自分の近くに小さな自然があると思うんですよ。公園とか近くにあるよ。そこにじーっと座って周りをよく見ると、まずいちばん近い地面が忙しいです。いろんなアリさんが一生懸命何かやってる。いろんな虫がいる。そして近くの木にはおそらく、ハトさんとか、カラスとかスズメとか、よく見るといろんな鳥たちがいますよね。自分の窓からもしスズメを見れば、スズメは1羽1羽お洒落ですよ。スズメはみんな同じに見えると思ったら、あなたはまだ見てない。スズメは本当にそれぞれお洒落。そうすると楽しくなるでしょ?」

先程もちょっと話に出てましたが、ニコルさんは去年の11月に本家ウェールズのアファンの森を訪れていますが、一番の目的は日英グリーン同盟?
「今年は日英同盟の100年記念です。これは主に軍事同盟。特に海軍同士の同盟だったんですけど、今度は軍事じゃなくて環境とか教育とかの分野で同盟が結べたらいいねと英国大使が言ってました。それで僕が「そうだそうだ、こうしようああしよう」と。今は日本中に木を植えてます。ウィンザー城からオーク、ナラの子供を持ってきてあちこち植えてます。」

日本の何かを向こうにというのもあるんですか?

「うん。ウェールズのアファンで16年前に僕は、日本のナラとヤマザクラを何本か植えたんです。ナラとヤマザクラはもう4~5メートルになってます。ウェールズのアファンはボタの上、荒れた土地の上で森を作ったんです。まだ荒れた土地があるからその上に小さな日本の森を作ろうとしています。何が成功するか考えてやってみるけど、ブナとかナラ、栗、栃、ミズキ、ケヤキ、ナナカマド、それと鳥が喜ぶ実がなるブッシュも、色々と植えて研究しようと思ってるんです。」

じゃぁ、いずれウェールズに日本の森が。
「出来ます。荒れた土地の上でね。私が子供の時にね、ウェールズでは6%が森だったんです。6%ですよ。少ないでしょ?日本は67%。でも今は12%になったんです。数十年の間に倍になりました。それから木を植えただけじゃなくて、森の質も良くなってます。アファンの谷間には川があったんですが、炭坑の時代にはその川は死んでました。しかし、森が復活したら川がきれいになってマスを入れたんです。そうしたらマスが増えて、今はカワウソが戻ってきたんです。環境が復活する、川にカワウソやマスやシャケが戻ってくると、周りの健康が良くなるでしょ?そうすると経済もよくなるんです。健康と経済がつながってますから、環境、健康、経済。」

日本はどうなんでしょう。そういう意味ではまだウェールズよりも自然が残っているのかもしれませんが。

「だからこの20年、30年の間にバカなこともたくさんやったでしょ?諌早湾の環境壊しには2,300億かかってるんですよね。世界で一番貴重な干潟を破壊したでしょ?でもあの2,300億と同じお金は、例えばハウス・テンボスで荒れた土地の上で使ってます。リゾートですけど600億は環境のために使ってるんです。周りの水がきれいになって、今ハヤブサまで入っちゃったんですね。だから、日本人がやる気になると、この国はまた庭のような素晴らしい健康的な国になるよ。」

アファンの森というのは長野県にとっても大切な森ですが、日本中に向けて発信する中心的な森ですね。
「僕の友人のフレッドが言ったんですけど、確かに小さいけど、大きな包みの上にきれいな切手が張ってあると、目は切手の方に行きますよね。だからニックは長野県に切手を貼ってるから頑張ってよ、と。」

いい言葉ですね。

「いいでしょ?それでNPOもあるから日本中との交流があるし、財団とウェールズとの交流もあるから、お互いに色々な考えが出てくると思いますから、これからが大変だし、楽しみ。JUST BEGUN。」

財団法人アファンの森とNPOアファンの森。ニコルさん、どんどん忙しくなりますね。そして、本業の作家としては6月に新刊も予定されています。小学館から出るんですけど、『裸のダルシン』。
「そうです。アーサー王の伝説ありますよね。あれは昔のケルトの伝説を、何百年ぐらい前に新しく書いたんですよね。でも、元々の伝説は色々あるんです。若い王子が追放されるんですが、裸で自然の中に追放される。人間が自然の中で真っ裸でいると、ミミズやスズメよりも弱いんです。自分は自然の一部だと、自然と協力してないと生き残れないんです。これはそういう話です。日本語で書いたけど。絵もたくさん描きました。」

『裸のダルシン』面白そうですね。そして9月には長編時代小説『盟約』の続編も発表!!
「そう。これは第一次世界大戦の日本海軍の話です。翻訳の先生が非常に忙しかったから、もう4年待ちました。」

私たちも待ちました。楽しみですね。そしてこの夏には日英グリーン同盟のイベントも行われますが、これはアファンの森で?
「黒姫の信濃町の景色の素晴らしいところに童話館があるんですが、その前でイギリス大使と僕、それから多分ウェールズから公園長が来て、そこで木を一本植えて、小さな楽しい祭りをやります。是非来て下さい。」

はい、絶対行きます。アファンの森にも行きたいですし。
「アファンって、風が通るところだから人間も通っていいと思いますね。」

そんな風を見える少女になりたいです。

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