2002年9月22日

写真家・倉沢栄一さんのジュゴンの海

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは倉沢栄一さんです。
倉沢栄一さん

 ザ・フリントストーンとしては約7年ぶりの出演となる、自然写真家の倉沢栄一さん。ゼニガタアザラシなど海の生き物に魅せられ、襟裳岬に住んでいらっしゃる倉沢さんは、最近はアザラシをはじめ、ジュゴンやサンゴなどにも目を向けて幅広く活躍していらっしゃいます。そんな倉沢さんに多様性に富んだ日本の海のこと、絶滅の危機に瀕しているジュゴンのことや、最近の活動などについて伺いました。

●倉沢さんが襟裳岬に住むきっかけにもなった、ゼニガタアザラシは元気ですか?

「元気ですよ。僕が襟裳に行って14年目なんですが、当時に比べて1.5倍になっているんです。当時250頭位だったのが400頭位になっていまして、数は徐々に増えています。嬉しいことなんですが、漁業被害や食害の問題も出てきて複雑ですね」

『日本の海大百科』

●以前お話を伺ったときに、北は北海道から南は沖縄まで多様性に富んだ海に生きる生き物たちを、時間をかけて本にまとめたいとおっしゃっていたんですが、ついに去年、TBSブリタニカから『日本の海大百科』という本を出版されました。でも、自然写真家という仕事をする人は損だというくらい、日々自然環境というのは悪化しているっておっしゃっていた方がいらしたんですが、長い時間をかけて一冊の本にまとめる過程の中で、次に来た時はこれ狙いたいなと思ったらもう無くなっていたり、実際に写真にしたものが無くなっていたりということはよくあるように思うんですが。

「まさしく諌早湾とかそうですね。あれは計画が立っていたのでその期限の前に自分の目で見ておきたいなと思って、大百科を作るうえで2年前に行ってみたんですけど、もう全然違っていて、最初にムツゴロウを諌早湾で見たときに自分の娘に見せたいなと思ったけどそれもかなわず、日本最大の干潟をお金かけてよくつぶしたな、と思いますね。もったいないですね、日本の財産だったし。いま、それを再生させようと活動している方々がいて僕は表立っては活動していないですけど、僕なりのやりかたでアピールしていきたいですね」

『海辺の生きものガイドブック』

●また、今年6月に同じくTBSブリタニカから『海辺の生きものガイドブック』が出版されたんですけど、これは「目で見て楽しく、読んで面白い」がコンセプトなんですね。

「海辺の生きものっていうタイトルの本ってたくさんあるんですが、親子が楽しめるものって無かったなと思って。海の生き物って色や形がとにかく面白いんですよ。それも伝えたくて、印刷コストはかかるんですが、生き物の写真を切り抜いて色や形を楽しんでもらおうと思ったんですよ。また、自然に興味を持つきっかけって、そういう形や生態の面白さだったりすると思うんですよ。確かに名前とかも大事なんですが、直感的に“この生きもの面白そうだ、もっと見てみたい”というところに訴えたいなと思いまして」

●さらに、今度は9月26日に発売される新刊が『ジュゴンデータブック』(TBSブリタニカ)というタイトルということなんですが、今度はジュゴンにいっちゃいましたか(笑)。倉沢さんというとマナティというイメージなんですが、マナティとジュゴンの違いって何ですか? またタイトルに“データブック”と付くからには普通の写真集ではない印象を受けるんですが。

『ジュゴンデータブック』

「基本的にマナティは大西洋中心、ジュゴンはインド洋や太平洋中心なんですね。もともと海牛(かいぎゅう)類という種類で、ジュゴンの体形はイルカに近くマナティよりもスマートです。とにかくジュゴンという生き物を僕も知りたかったし、多くの日本の方にも、いま日本では絶滅の危機に直面しているジュゴンというものを知ってもらいたいなと思い、全てではないですが、大体、ジュゴンというものが分かるように作りました」

●また、実は野生のジュゴンの写真は載っていないという・・・。

「ええ、野生のジュゴンの写真がない写真集なんですよ。沖縄に2回くらい取材に行っているんですが本当に数が少なくて、空撮とかすれば見れるんですが追いかけ回したくないという思いもありまして、たまたま鳥羽水族館でジュゴンの撮影をさせてもらった時に、こんなにかわいいのが水槽でも撮れるんだったらあえて野生のジュゴンは追いかけないで水族館で撮らせてもらって、逆に野生のジュゴンが載っていないということを売りにしてしまおうと思いまして。野生の写真は簡単に撮れるものではないですし、多くの人に、それだけ数が少ないジュゴンのことをいま知ってもらいたいというのがあり、緊急出版ということになりました」

●でも、ジュゴンって本当に愛嬌があるし、表情がありますよね。

「そうなんです。また目が違うんですよね。これもマナティと違うところなんですが、ジュゴンの目というのは人間の目みたいに澄んでいるんです。マナティは逆にどこ見ているかわからないようなボーとした目をしているんですが、ジュゴンの目は本当に人間みたいで、人魚伝説のモデルになった理由も、そういうところにあるんじゃないかなと思います」

●ジュゴンって、日本にいないって思っている方がすごく多いと思うんですが、実際に沖縄にはいるんですよね。

「はい、沖縄の東海岸を中心にいます。かつては奄美諸島から八重山諸島まで広範囲にわたっていたんですが、いまは主食である海草がはえている沖縄本島が中心ですね」

●じゃあ、そこに滑走路を作っちゃうなんていうことは、絶滅の危機をさらに絶滅に追いやる行為になってしまいますね。

「そうだと思いますね。確かに、それだけじゃなくて赤土の問題とか漁業の網を撤廃しなければいけないとか様々な問題も言われていますが、でも、あんな滑走路を作られたら全部終わりなんですよ」

●今後調査をしてジュゴンというのはどういう生き物なのかということを調べる上でも、今より数が減っちゃ困るわけですし、どういう環境を好むのか分からないということからも、今いるところを守るしかないですよね。

「そうなんです。例えば、人工的に環境を作ったってダメなんです。そんな簡単なことではないんです」

●本当に、この『ジュゴンデータブック』がジュゴンのことをもっともっと知ってもらうきっかけになればいいですね。倉沢さんもチャンスがあれば野生のジュゴンを見てみたいですか?

「ええ、見てみたいですね(笑)。ジュゴン自体を見たいのなら、オーストラリアとかパプアニューギニアにいけば見れますけど。今は、沖縄のジュゴンを追いかけるようにまではしたくないですが、やはり日本のジュゴンを見たいですね」

倉沢栄一さん

●倉沢さんの次の目標や、現在進行形のものは・・・。

「いま、サンゴの本を作ろうと思っていて、それもガイドブックみたいな本になると思います。実際、あまり知られていないんですが、サンゴって地球にすごい働きをしていて、地球に住む生きもの達に貢献しているんですよ。それもジュゴンの本と一緒で、身近に感じられるような、手掛かりになるような本が出来ればいいなと思っています。実は東京湾にもサンゴがありまして、20種類くらいあるんですね。その東京湾と、串本と、沖縄のサンゴで、どこまで撮れるかわからないですけどそれで1冊にまとめたいと思います」

●ぜひまた番組に、途中経過やこんな本になりそうだということを教えていただければと思います。本当にあちこち飛び回って活躍していらっしゃる倉沢さん。今度はサンゴの素敵な写真集を楽しみにしています。今日はありがとうございました。

■このほかの倉沢栄一さんのインタビューもご覧ください。

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■自然写真家・倉沢栄一さん情報

『ジュゴンデータブック』
TBSブリタニカ/本体価格1,800円/9月26日発売
 緊急出版される倉沢栄一さんの最新刊『ジュゴンデータブック』には、ジュゴンのことが分かりやすく解説してある他、マナティとの違いや、沖縄の人々とジュゴンの関わりなど興味深い記事も載っている上、本の売り上げの一部は、ジュゴン保護のために寄付されるそうなので、皆さんもぜひご協力下さい。

『海辺の生きものガイドブック』
TBSブリタニカ/本体価格2,400円
 倉沢さんの新刊『海辺の生きものガイドブック』は、本当に見ているだけで楽しくて、読むと更に面白い、今までの図鑑にはないスタイルとなっているので、ぜひこの本を持ってお子さんと一緒に海辺に出掛けて、更に面白楽しい一時を過ごしていただければと思います。

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. SEASIDE M / KALAPANA

M2. OCEAN BLUE / ABC

M3. 人魚 / NOKKO

M4. MERMAID / PAUL WELLER

油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M5. WHEN I'M 64 / THE BEATLES

M6. GOOD TO SEE YOU / NEIL YOUNG

M7. WALK ON THE OCEAN / TOAD THE WET SPROCKET

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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