2002.12.08放送 遠藤昇さんの『スローライフの薦め』 今週は、雑誌ソトコトの副編集長で、エコ商品情報サイトECOT(イーコット)の編集長としても活躍されている「遠藤 昇」さんをゲストに、昨今話題になっているスローライフのことや、人気エコ商品のことなどうかがいました。「遠藤」さんはアラスカの最高峰マッキンレーに登頂するなど本格派アウトドアズ・マンの顔も持ち、最近ではカムチャッカ半島の奥地やバハ・カリフォルニアにも赴いています。そんな大自然の中での活動についてもうかがいました。 ●2000年を過ぎたころから“スロー”という言葉が注目され始めてきていますね。 「ソトコトは99年に創刊されて、特集をしたり、いろんなことをしたりしてきたんですが、もともとスローフードというのは、80年代にイタリアでオリーブオイルやチーズだとかの本当にベーシックな食べ物を食べている人達が、みんな柔らかい物やファーストフードに席巻されている、それはよくないことじゃないか、と始まった運動なんですね。もともと、ゆっくり丁寧に作られた物をちゃんと料理して、ちゃんと食べようというのがスローフードですよね。それと同じアイデアで延長線に何があるかというと、スロープロダクトだとか、スローライフだとかというキーワードをソトコトの中でどんどん使って、やって来たという感じですね」 ●最初スローフードという言葉を全く意味を知らずに聞いても、注文して食べ終わるまで10分かからないような、ファーストフードに対抗するようなもので、ゆったりと食事を楽しみながら会話を楽しみながらっていうのが最初のイメージだと思うんですが、さらにそのスローフードを作る過程でもスローで丁寧にということなんですね。 「そうですね。もともとスローフードになりえる食材、その象徴的だったものがオーガニック食品だったりします。オーガニックの食材なんかは素材自体を急に加熱するとやっぱりダメなんじゃないかなと思うんですね。やっぱり丁寧に作ってそれをゆっくり味わうという感じですよね。なので素材そのものの良さを引き出しながらというのが、スローフードだと思いますね。僕は料理研究家ではないのでよく分からないんですけど(笑)。あと、スローライフというのも、これも曖昧なんですよ。例えば今、テレビでスローライフ特集とかやっていますよね。でも、例えば昭和の暮らしに戻ってみようとか、そういうようなことではないような気がしていて、もちろん、そういう考え方もあるのかもしれないけど、スローライフってやっぱり、食べる、寝る、洋服を着る等の、生活というものを丁寧にやるにはどうしたらいいか、それはクオリティーライフなのかなと、僕の解釈では考えています。例えば、家を建てる時に、なぜ軽い素材が多いのか。それは土台をしっかり造っていない状態の上に家を建てるとなると、軽い鉄骨で造るしかないんですよね。そうすると、やっぱり20年しかもたないんですよね。一方で、今2×6なんかはすごいいいですね。太い木を使って家を建てたり、日本家屋みたいなのも造ったとしても、やっぱり地盤がしっかりしていないとどんどん沈んでいっちゃうんですよ。だからそういう土地の考え方、また家を造るんだったらしっかりしたもので永く使っていこうとか、そういうアイデアなのかなと思いますね。今、一生懸命ね、僕はもともと自然系、野歩き系ですから(笑)、キャンプをするでしょ、そうすると食べ物がすごく悪いのね、山なんかだと色々な添加物が入っているような乾燥食品があるじゃないですか。あれ、やめようよっていう。出来るだけ乾燥食品にしてもオーガニックな物を持っていったりだとか、ちょっとしか持っていけないわけだからお醤油なんかは良い物を持っていこうかとか、個人的にアウトドアの食べ物は考えようとやってます(笑)」 ●逆にそれらを最後に洗ったり、捨てたりすることを考えても、本当にいいものは自然に戻ってくれるものも多かったりしますよね。 「そうですね、でもあんまり捨てることはしません。分解に時間がかかるんですよ、特に寒いところに行くと。もうずっと痕跡が残っちゃう、化石のようになって何千年も残るんじゃないか、このミカンの皮はいつの時代まで残っちゃうんだろうとか(笑)。そうすると、やっぱり持って帰りますよね。髪の毛一本も気になりますから」 ●えっ、そこまで? 「ええ、雪山なんかはすごく綺麗なんですよ。だから余計に自分が歩いてきた道を汚しているんだなあと思いますしね」 ●スローフード、究極にはスローライフというところにスポットを置くと、本来の、例えば地球はスローライフ・ペースで進んでいるのに対し、人間だけがファストライフを一気に歩んできてしまって、今の現状になってきてしまった・・・。 「そうかもしれないですね、時間軸は違うと思いますけど。スローライフってやろうとすると、すごく忙しい(笑)。色んな手続きがたくさんあるわけ。ご飯を食べるにしても、ただ待っていれば出てくるわけじゃないわけ。コツコツと色んなことをしなくちゃいけない。だから、気持ちがいい暮らしをやろうなんてすると、ものすごく忙しいですね。田舎暮らしってそうでしょ。朝起きたらまず水道のコックを全部開けることから始まり、寝る前には温かいところに水を汲み置きしておいて凍らないようにしたり、お湯を湧かすだけでもどれだけ時間がかかるのか。だから、案外、忙しいですよね」 ●私達が通常で考える、時間に追われる忙しいというのとは全然違っていて、生きるための忙しさでもあるんですね。 「完全にそうですよね。生きるということそのものが大きな仕事であるということをリアルに感じるよね(笑)」 ●(笑)。原点に戻るというか・・・。 「仕事はお金を得るための一部であって、生きるという、自分が生まれてきて死ぬまでの間、仕事をしていくんだという。仕事というのは洗濯をすることもそうだし、トイレやお風呂に入ることもそう、っていう感じはしますよね」 ●逆に言うと都会でスローライフを実行しようとすると、田舎暮らしをしていてスローライフっぽいことをやるより、大変? 「いや、そんなこと無いですよ。例えば、マンションで暮らしていてスローライフって何だろうと考えた時に、変な使い捨て商品ではなくて、一つの食器を買うにしてもじっくりいいものを選んでみようとか、家具にしても、これから家族が増えるかもしれないんだったら、それに合わせた家具を買おうとか、とにかく買うためにすごく一生懸命考える時間というのは大切なことだと思うんですね。そういうのもスローライフの一つなんじゃないかなと思います。郊外に家を建てようと思ったら、まず、しっかりした土地を探そう、それから今3人家族ならそのサイズの家にして、そのかわり小さな家だけどしっかり造って、家族が増えたら増築をしていこうとか、そうやって10年・15年かけて家を造っていけばいいじやないですか。家を建てることも、今は買うものだったり、建ててもらうものだったりしているけど、自分で建てるといっても大工さんがいないと出来ない、でもちゃんと大工さん達と交流をしながら家を造っていけば、それこそ財産になりますよね。だから、建て売りの家を買うことは財産じゃないのかなという気もしますね。そういうことだと思うんですよ。身の回りの小さなことでも丁寧にやっていけばいいんじゃないのかなと思いますけどね」 ●なるほど。さて、そして、編集長を務めていらっしゃるECOT(http://ecot.goo.ne.jp/)ですが・・・。 「はい、これは“エコ”と“イイコト”を合わせた造語なんです(笑)」 ●これはどういうきっかけで? 「NTT-Xという会社がすごく力を入れている環境ポータブルサイトで、「環境GOO(http://eco.goo.ne.jp/)」というサイトがあるんですよ。そこの松崎さんという方と、代理店の井上さんという方がいて、その人が2年くらい前に商品情報サイトを考えているんですけどって言われて一緒にやりましょう、と。そこから僕は関わっていてやりだして、そのうちにただ商品を紹介するだけでいいのかとか、サイトですからやっぱりどこかで収益をあげなくちゃいけない、じゃあ、どういう仕組みを作ればいいのかとか、そこに参加することで暮らしの中で地球環境も含めて循環するようなことが出来ないのか。どうせ消費するんだったら、さっきのスローフードじゃないですけど、ちゃんといいものを丁寧に使っていったほうがいいんじゃないか。それは、決して今デフレで価格が安いとか、値段の問題ではないんですよ。じゃ、そういうものを評価出来るような情報をまず集めよう、それからそれを一般の人達のもオープンにして、見た人達からも意見をもらおう、その意見を元に企業もいい商品を街にあふれさせることによって、それで環境に対していくらか「ちょっとイイコトやってます」みたいなことを言えたらいいな(笑)という、そういう感じなんです。で、基準をいくつか設けて自然への配慮の仕方だとか、情報公開をしているかとか、リサイクルへの状況はどうだとか、見ていただければ分かるんですが、8つ位の基準を設けたんですよ。それに合わせて見事に合っているものをまず載せて、細かく取材しながら、それを商品情報のデータベースにして、そこには普通の人達が見て書き込めるようにしたんですね。書き込むと、それにポイントが付いていく、そのポイントは環境団体だったりそういうところにお金として換金することも出来るし、それからポイントが貯まったらエコ商品と交換することも出来るし、それはもう、企業の協賛とかの上でもちろんなっているんですけど。そんなような仕組み作りをして参加できるようにしました」 ●なんか、私は普通の主婦感覚でサイトを見ていて、このサイトに載っている商品はすごく信頼できるなと思ったんですが、それはさっきおっしゃっていた基準や、遠藤さんがやっているからというのもあったんですが(笑)、ECOTのご意見番、ECOT EYEというのも結構、多彩ですよね。 「そうですね、例えばLCA(ライフサイクルアソシメント)研究所の稲葉さんは、商品にどれだけのエネルギーコストがかかって、どのように消費されていくかという計算を出して、それがいいのか悪いのかを出す人。また、エコマネーのネットワークをずっとやっていらっしゃる加藤さんや、ユニバーサルデザインの赤池さん、そういう方達にまず、入ってもらったんです。それで本当にダメな物はダメ、と言える公正性がないと、よくないじゃないですか。政治みたいなことにはなりたくないから(笑)。出来るだけいい物しか出さないようにしているけど、それでも変な物が入ってしまったら、ちゃんとチェックをしてます。また彼等のネットワークの中で面白い商品とかもたくさん出ているんですね。彼等は、本当に地球のために生きているような人たちなんですよ。本当にそうなんですよ(笑)。ものすごいいい人達なの。だから、やっぱりそういう人達の情報はすごく信頼出来る物があるし、それで第三チェック機関を置いて、一律の評価をもらったりしているんです」 ●それが、しっかり載っていて、そういう人達もご意見番として目を光らせているんだなと思うと余計に安心出来ますよね。その中で、ECOTグッズ大賞っていうのは? 「400くらいのアイテムを振り分けてデータベースが出来たんですよ。その中で、本当にいい物は何なのか、ということで、まず編集部で粗選びをして、次に第三者機関の人達にも手伝ってもらって、ノミネートを出したんですね。それを読者の人達に投票していってもらおうという形なんです。今年の12月31日まで投票できるようになっていて、それで1月24日に発表すると。そういう評価というのは出したほうが企業の励みにもなるし、面白いんじゃないかなと思っています」 ●それはスローライフに繋がっていくんですね。 「繋がりますね。昔の日本のスロープロダクトでありたいんですが、昔の物っていうのは不親切な物が多いんですよ。例えば、ナタなんかも、不親切だけど、一方で自分で調節、修理が出来る。だからずっと使える、そういう考え方ですよね。昔の人達の知恵を今のプロダクトに生かしていくというのが面白いんじゃないかな」 ●お会いするたびに、遠藤さんって本当に忙しく動いているなーって思うんですが、それもスローライフの忙しさじゃなくって(笑)。ゆっくり息をつく暇があるのかって思うんですけど、その中でもマッキンリーに登山をされたりバハ・カリフォルニアに行かれたりとか、そういう自然にもあちこち行ってらっしゃるんですね。 「自然の中に行くことが多いですね。今年はカムチャッカにも行きました。1月はパタゴニアの社長と一緒に中南米のベリーズというところで釣りをやっていたり・・・」 ●心身ともに休まる新しいインスピレーションを受けて・・・ 「空気がいいから、頭の中に酸素が一杯になって、帰ってきてからすごく頭の回転が速くなるんですよ(笑)」 ●マッキンリーは酸素薄そうじゃないですか(笑) 「酸素は薄いけど、一生懸命に酸素を吸おうとしていたからいいのかもしれないね。今年7月にカムチャッカ半島に行った時には、ラフティングしながら釣りをしていたんですよ。過去に2回行ったことあるんだけど、今度は違うコースに行って、もっと深いところに行ったのね。そしたらずーっと雨なの。気温が7月なのに5度くらいなのかな、昼間でも12~13度くらいで、寒いのね。雨は降るし、熊はいるし、環境は悪かったんですよ。でも、いいなーって思ったの。何がいいかというと境界線がはっきりしているんですよ。自分の身体と、自然と、野性の境界線がはっきりしていて、それがすこぶる気持ちがいいわけ。自分の中がどんどん変わっていくんですよ。全然雨が気にならなくなるし、風邪気味だったのがすぐ治っちゃうし。それも、自然と同化するということではないわけ。同化なんかしていないわけ(笑)。もう自分の洋服だけがシェルターで、とにかく自然に適応しているんですよ」 ●それは体験してみないと分からないですよね。 「そう、そしてそれはやったほうがいいなって思ったの。人間は、もっと強い自然の中に入るべきなのかもしれないな。もともと持っているものだけど忘れているものが、フッと出てきますよね。それはいいんじゃないですか」 ●また、どこかに行って気持ちいい体験をしたら教えていただければと思います。ECOTグッズ大賞もこの番組から飛んでいけるようになりますので、そこからチェックをしていただきたいと思います。 「ソトコトもぜひ、よろしくおねがいします!」 ●このスローライフの記事、面白いです。ぜひ読んで欲しいですね。考えさせられますね、今の自分の生き方。2002年も終わりが近づいてきて、2003年の目標としてスローな生き方を出来ればと思っております。またお話聞かせて下さい。ありがとうございました。 「こちらこそ、ありがとうございました」 エコ・マガジン「ソトコト」2003年1月号 木楽舎/定価600円/発売中 遠藤さんが副編集長を務められているエコ・マガジン「ソトコト」、1月号の特集は「スローライフ大国 ポルトガル特集」です。 ちなみに2002年12月号は「スローライフのワンダーランドへ」特集。豊かな自然が残り伝統を大切にしている東北を“スローライフの理想郷”と位置づけ、そこに暮らす人たちのインタビューなどが掲載されています。 ホーム・ページではバックナンバー取扱店の案内もありますので、是非ご覧ください。 http://www.sotokoto.net エコ商品情報サイト「ECOT」 http://ecot.goo.ne.jp “地球にいいモノ、いいこと”をコンセプトとしたエコ商品情報サイト「ECOT」ではエコ商品の情報だけではなくインタビューやコラムもある他、現在「ECOTグッズ大賞」の投票を受け付け中なので皆さんもぜひ投票して下さいね。 投票の締め切り:12月31日(火) 発表:2003年1月24日(金) 最初に戻る ON AIR曲目へ ゲストトークのリストへ ザ・フリントストーンのホームへ photos Copyright (C) 1992-2002 Kenji Kurihara All Rights Reserved. |