2003.2.2放送 亀工房のハンマー・ダルシマー ●この亀工房というバンドは、ギターとハンマー・ダルシマーという楽器でのデュオなわけですけど、ハンマー・ダルシマーって名前を初めて聞いたんですが、これはどういう楽器なんですか? 前澤朱美さん(以下・朱)「形は木製の台形の箱に弦が張ってありまして、それを木のバチで叩いて音を出すという日本では珍しい楽器で、打弦楽器になります」 ●これって、もともとどこの楽器なんですか? 朱「私のはアメリカ製の物で、起源はペルシアに溯りまして、そこから各地に派生していきまして、ドイツなんかではハック・ブレッド、中国ではヤンチンという名前でいろいろなところで弾かれている楽器です」 ●多分、リスナーの方もピンと来ないなっていう方が多いと思いますので(笑)、何よりもどんな音色なのか、曲で聴いていただきたいなと思います。 ★亀工房スペシャル・ライヴ 曲:ジャーニー 突然、この曲の途中で、シャン!!という効果音のような音が入りました。その効果音は、曲の後半を盛り上げるのに一役買っていたのですが、それが一体何なのかは、一瞬なのではっきりとは分かりませんでした。ハンマー・ダルシマーから何かテープのようなものをめくっていたような様子は見えたのですが・・・。その秘密は、トークの続きで明らかになります。
朱「そうですね、音の広がりがポンっと叩くとホワーンって包まれるような音がするので、なかなか珍しいかなと思うんですが、ラテン語でダルシマっていう意味がダルシメロス(甘い響き)っていう意味を持つらしいのですが、そういった楽器にぴったりの名前だなと思うんです」 前澤勝紀さん(以下・勝)「倍音が多いんですよね、だからポンって叩くと、他に共鳴する音がたくさん出るのでホワーンって広がるような感じで、自然なリバーブ効果、エコー効果があって、独特な音色を醸し出すんです」 ●今の曲の中でちょっと気になったんですが、途中でシャン!ってやったじゃないですか、実はあれ、テープをはがしていらっしゃいましたよね、その後にいきなり音が変わった感じがするんですけど・・・。 朱「そうなんです。ペダルを踏んで音色を変える器械があって、その器械を来年アメリカへ行くときに付けようという話なんですが、とりあえず今は、自製でセロハンテープを貼って、シャン!っとテープを取るときに音が鳴るんですけども、そういった感じで変化を付けているんですけど・・・(笑)」 ●要するにあれは、前半と後半の音を変えるために、テープをドラスティックにはがすということですね(笑)。なんかウインドチャイムをチャラン!って鳴らしたかのように聴こえるという・・・。 朱「そうですね、そういう効果を得るために・・・」 ●ハンマー・ダルシマーって、日本ではあまり聞き馴染みもないし珍しい楽器ですよね。どうやって朱美さんはこの楽器と出会って、弾き始めたんですか? 朱「結婚をしましたら、押し入れの中に入っておりまして・・・(笑)。元々は主人のものだったんですけど、しまわれて日の目を見ることがなかったのを私が発見しまして、これは何だろう?って出してみたらなかなか楽しそうな物だなあと思い、そこからはじまったんです」 ●じゃ、独学で? 朱「そうです、レコードがたくさんあったので、そこから音を拾いつつ、こんな風かな?あんな風かな?って始めて、今になりました」 ●CDも出されていらっしゃるんですが、『マイ・タートル・イマジネーション』。この中にはアメリカンなトラッド、アイリッシュトラッドなんかもありますけど、もともとそういうトラディショナルな音楽というのを好きでいらっしゃったんですか? 勝「そうですね、僕がギターを弾く上で、やっぱりアメリカの音楽家のレコードとかをたくさん聴いてきましたので、そういうのをたくさん採り上げていたんですね。そして若いころに、もう10数年前なんですけど、アメリカを1人で旅をしていることがあって、それもいろんな音楽家に会いたいなということで出掛けたんですが、その中でもたくさん有名無名のミュージュシャンに会って、そういう方々が奏でてたのがアメリカやアイルランドの民謡曲、トラディショナル・ソングだったんですけど、そういったこともあって、傾倒するようになったんですけど」 ●トラディショナル・ナンバーって、本当に歌い継がれていたり、弾かれ継がれているから、みんなが聴いていて、知っている曲ってすごく多いじゃないですか。それを、自分達風にアレンジしてトラッドソングに仕上げていくのはすごく難しいような気もするんですけど。 勝「そうですね、当時は音源なんてないですよね。だから、楽譜はあったのかもしれないけど、ほとんど民謡曲というと口伝えじゃないですけど弾き伝えなんですよね。もうリレーをするように世代から世代へって、おじいさんから習った曲をお孫さんが弾いてって300年間も弾かれ続けているわけで、それはヨーロッパのクラシック音楽とは違う意味で継承されてきている音楽なんで、そういう普遍的な良さというのはすごく感じられますね」 ●奏でていても、その昔の人達の想いみたいなのが・・・。 勝「そうですね、僕たちが日本人の感覚で演奏するとやっぱりオリジナルのものとは違ってきていると思うんですよ。その300年前の演奏を聴くことは出来ないですけれど、当時どんな感じで演奏してたのかなっていうのは非常に興味ありますけどね」 ●ではここで、そんな亀工房のお二人によるスペシャル・ライヴ、もう一曲なんですが、オリジナルではなくアイリッシュ・トラッドの曲を演奏していただけるということです。それではおねがいします。 ★亀工房スペシャル・ライヴ 曲:プラクスティ・マギー・ブラウン 勝「まるで密輸した鼈甲(べっこう)とかで細工を作っている、アヤシい地下組織のような(笑)。バンド名は大した理由じゃないんですけど、僕が生き物がすごく好きで、その中でも亀が特に好きで、また工房というのは何かを作り出す場所として、主に物作りの場、僕たちが心地よい音楽を作りだしていく場所、という意味を込めて亀工房という名前でやってきているんですね」 ●でも、すごくオリジナリティー溢れてますよね。亀工房のアルバムも『マイ・タートル・イマジネーション』ですからね。 朱「インパクト強いかなって思って(笑)」 ●そうなると当然、気になるのが亀を飼っていらっしゃるのかどうかなんですが・・・。 勝「亀はいます。普通の日本の亀なんですが、クサガメとか二ホンイシガメという種類なんですけど、それを庭で、50匹ぐらいいるかな(笑)」 朱「亀さんに、一番日当たりの良い庭の一等地を取られてしまって・・・。そこに洗濯物を干したら乾きそうっていうところに、いつも池を作るんです(笑)」 ●(笑)。実は、そんなお二人は長野の方に住んでいらっしゃるんですよね。そのお家の一等地に、亀さんのお池があるんですね。もともと長野は、ずっと住んでいらっしゃる場所なんですか? 勝「僕はもともと東京の出身なんですが、やはり自然豊かなところに住みたいなっていう思いがずっとあって、あと物理的に楽器を練習しますから、家が密集しているところだと夜中にも練習することが多いので・・・、まあ、そういった理由もあって長野に住んでいるんですけど」 朱「楽器の演奏なんかに息詰まっている時とかも、ちょっと外に出ればもうすぐに林があったり、ムササビが棲む木があったり、そんなので心を開放して、また新たな気持ちでリフレッシュして帰ってくることが出来るんですよ」 勝「ちょっと外に出るだけで、いろんな四季の移り変わりを目の当たりに出来るし、そういうところが好きなんですよね。有機的じゃないですか、そういったものから触発されているものはすごくあると思うんです」 ●その亀さんって、50匹程いるってことですけど、亀から何か学ぶことっていいますか、生き物を見ていて何か感じるものとかってあるんですか? 勝「そうですねー。まあ、家で飼っているだけじゃなくて生態研究もしているんですけど、野生の、いわゆる淡水の亀が住んでいるようなところに行くと、すごく水環境をはじめとした自然環境が良好に保たれているところが多いんですね。そういったものを見続けていきたいなっていう思いがあって研究を続けているんですが、亀から学ぶことっていうのはねー(笑)。でも、いろんな野生の生き物を見ていると、みんなやりたいように自分の生活を営んでいるわけじゃないですか、それが結果として地球の生態系の役に立っているという、素晴らしいことだと思うんですね。人間はなかなかそういう風にはいかないんですけど、僕たちも少しでもそのようになれたらいいなという気持ちはありますけど」 ●お二人でデュオバンドを組んで演奏していると、あちこち2人で旅をすることというのもたくさんあると思うんですけど、去年、自然写真家の今森光彦さんとイベントなんかも一緒にされたとか? 勝「はい、今森さんが撮られた琵琶湖の周辺の里山の風景、四季が移り変わっていくような里山の風景に、僕たちが音楽を付けるということをやったんです」 ●実際、どうでしたか? 「すごく、今森さんも気に入って下さってですね、あっ、こういう曲は、田んぼの青田になっているところの空撮の様子に流したらいいねーとか、結構、ピッタリ合うんですね。面白いのは、日本の里山の風景なのにヨーロッパの曲にもピッタリ合うということで、やはり自分の原風景みたいなものに対する郷愁が方込められているから、合うのかなーなんて思いましたね。あと、去年の春頃に、高原のペンションのテラスで外で演奏したんですね。大きな山桜があって、ちょうど散る頃だったんですよ。さっき演奏したプラクスティ・マギー・ブラウンという曲の時に風が吹くと、桜吹雪が散ってですね、それはすごく合ってましたね。その風景、散っているのは僕らが一番良く見えたんですけどね、お客さんはこっちを見ていますから(笑)」 ●(笑)。亀工房さん、近々コンサートの予定もあるということで、これからもオリジナル・ソングをどんどん増やしていくということで・・・。 「そうですね、僕たちの中を通ったトラディショナル・ミュージックのもう一つの進化した形、日本人の感性で消化したものを少しづつレパートリーの中に増やしていきたいな、と。そういった曲が、これから100年、200年後に未来の人達に引継がれていったら、この上ない幸せなんじゃないかなと思っております」 ●今度は、私達が長野にお邪魔をして、工房の方で・・・(笑)。 勝「工房の方で・・・(笑)」 ●その亀さんにご挨拶もさせて頂きながら、お二人の音楽も聴かせていただければと思います。今日はありがとうございました。 前澤夫妻「ありがとうございました」
■2月9日(日)19時~ 「ビレッジ・グリーン」(世田谷区・下北沢) 料金は1500円+オーダー。 ■2月22日(土)19時半~ 「日暮里サニー・ホール」コンサート・サロン 東京都荒川区(JR日暮里駅下車・徒歩3分) 料金は2000円。 (ゆったり聴きたい、見たい方はこちらがお勧め) ■亀工房のCD『マイ・タートル・イマジネーション』には、アイルランドやアメリカのトラディショナル・ミュージックを収録。「おじいさんの古時計」も入って全12曲。ハート・ウォーミングな1枚です。 代金は2500円+送料。通信販売で購入できます。 今春にはニュー・アルバムも発売予定です。 ■「亀工房」ではホールやライヴ・ハウス以外でも、例えばレストランや公民館、学校、個人のお宅などでも演奏を行ないます。 ぜひ、ライヴもやって欲しいという方は連絡してみてください。 ■コンサート情報、CD、そして演奏活動についてのお問い合わせは、 亀工房 0265-94-3934 または亀工房のホーム・ページをご覧ください。 http://www7.ocn.ne.jp/~kamekobo/ 最初に戻る ON AIR曲目へ ゲストトークのリストへ ザ・フリントストーンのホームへ photos Copyright (C) 1992-2003 Kenji Kurihara All Rights Reserved. |