2003年3月9日
坂本昇久さんのオーロラとアフリカ今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは坂本昇久さんです。今週はカナダのイエローナイフを拠点にオーロラの写真を撮り続ける写真家・坂本昇久さんをお迎えし、最新の写真集『オーロラ夜想曲』に沿ったお話をメインにうかがいました。同写真集の表紙には、坂本さんが10年追い続けた珍しい深紅のオーロラの写真が使われていて、とても目を引きます。坂本さんが語る神秘的なオーロラの話やイヌイットとの交流エピソードなど興味は尽きません。また、去年初めて訪れたアフリカでの撮影話もたまりません。極北の厳寒の中での撮影とは違う感動があったそうです。お話を通じてじっくり地球・自然の壮大さを感じてみて下さい。 ●御無沙汰しております。早いものでもう2年経っちゃったんですね。前回お話を伺った時は『天の衣・夜の破片』というオーロラの写真集をお出しになった時だったんですが、アッと言う間ではありましたけど、やっと、という感じでその続編とも言える『オーロラ夜想曲』という新しい写真集が出ました。 「ようやく出ました(笑)」 ●ねー、でもこの表紙を見ただけでも、オーロラって、黒にブルー系のオーロラ、大爆発、いん石が落ちて燃え上がっているのかって一瞬思えてしまうようなイメージなんですが(笑)、赤いオーロラ。 「そうなんですよ」 ●すごいキレイ! 「これは10年間待ってようやく現れて、その後もこれを越えるオーロラを観てみたいっていうことで撮りに通っているんですけど、やっぱりこれがピークだったみたいですね、今のところ」 ●今回初めて坂本さんのこのお話を聴いて下さっている方達も何人かいらっしゃると思うので、ちょっとおさらいにもなるんですが、91年からカナダのイエローナイフを拠点にオーロラの写真を撮り始めたんですよね? 「91年は初めてオーロラを観た年で、実際にオーロラを撮りに行ったのは、翌92年ですね」 ●92年からということは、10年になりましたね。 「10年目になっちゃいました」 ●そもそもオーロラなんですけど不思議な現象ですよね。 「そうですね、オーロラを頭ではわかって理解していて、太陽があって地球があって、太陽が吹かす電気を帯びた粒子が磁場に絡めとられて、それが地球の上層大気に入ってきて光る、というのは分かっているんですけど、ただ実際に動きや色の姿、形を観ていると本当に不可能な光景が目の前に繰り広げられている、みたいなね」 ●でも、そんなオーロラも不思議ですけど、写真集や坂本さんのホームページのギャラリーにも載っているコロナという現象ありますよね、そのコロナとオーロラとの違いって? 「同じオーロラなんです。ただコロナっていうのは自分の真上に見えるオーロラなんですが、その真上に見えるオーロラの中でも一点から放射状に降り注いでくるようなオーロラのことをいうんですね。で、オーロラが出ていると、どこかで必ず真下で観ている人がいるかもしれない、その真下に自分がいられるかっていうことですよね。その広い範囲でオーロラを見ているんですが、その真下にいられる人というのは、そうそう多くないんです」 ●それ、坂本さんも観たんですよね? 「ええ、何回か観ましたね。コロナに覆われるというのを求めていたというのもありますが、コロナを見た後の感覚っていうのが、なんか酔っぱらったようなね、陶酔感があって思い出せない感じなんです。手を伸ばしたら届きそうなくらいの錯覚を覚えるくらいですから、気持ちいいですよ」 ●気持ちいい? 「はい、ぜひ光のシャワーを浴びに行って下さい」 ●オーロラもぜひ観たいけど、それ以上にコロナの下で・・・。 「僕は赤いオーロラなんかは希少性で追い求めていたりもしましたけど、本当にオーロラを観ることやオーロラを観る醍醐味というのは、コロナの真下に立つこと、これに尽きるかなって思います」 ●また、坂本さんはイヌイットの方達とも行動を共にされることもあるって書かれていましたけど? 「そうですね、前の写真集でイグルーを作っていた時に手伝ってくれたイヌイットのハンターの方達がいるんですけど、その方と偶然イエローナイフで会って、僕はその時キャンプをしていたんです。「どこに住んでいる?」って言うから「テントの中」って言ったら「この寒い中でか? うち、部屋余っているから来いよ」って、それから彼の家に居候、間借りするようになったんですよ。それ以来、97年くらいからだと思いますけど、毎年イエローナイフに行くと彼のところに世話になって、狩りに連れていってもらったり、うる覚えのイヌイットの星の話、神話や言葉とか、本に書いてあるような知識を確かめるような感じでしたね」 ●そのイヌイットとの言葉の中で、雪を表す言葉が70もあるっていう・・・。 「実際の数はその当人も知らないと思うんですけど、イヌイットを研究している人の話によれば70くらいあるって言うんですね。実際にハンティングに行ったときに、何でそれだけ多くの雪の表現が生まれてきたのか?って思ったんですけど、雪の状態でスノーモービルを使っているときでさえ、進行速度がすごく変わるんですよ。例えば雪の状態を相手に伝えるっていうのは彼らの世界では必要なことで、今はこういう雪だからこれくらい時間がかかるんじゃないかとか、午後には太陽が出て雪がこうなるから、もうちょっと近い所で止まった方がいいんじゃないか、というやり取りがあったと思うんです、自分の仮説ですけど。狩猟民族なので雪の中でハンティングをしながら移動していかなければいけないという背景で、それを共通認識として雪を表す言葉を持っているっていうのは、きっと生活に直結することだったと思うんですよ。そういう意味で、1番身近にある雪を表現する言葉が増えたのかなと」 ●なるほどねー。 「話によると、サーメっているじゃないですか、スカンジナビア半島に。あの人達は200くらい持っているっていう話もしていました。ノルウェーの人達とキャンプをしたことがあるんですけど、そんな話をしていましたね。調べてはないですけどね(笑)」 ●そんな坂本さん、イヌイットとの狩りにも同行されたんですよね? 「ええ、行きました」 ●その狩りの方法みたいなのは、やっぱりトラディショナルな方達の方法ですよね? 「もう素晴らしいです。なんて言うんでしょう、つけ入る隙がないというか洗練された技術ですね。カリブーの群れを見つけた瞬間にスノーモービルを止めて、近寄ってくるのを待つわけです。そしてタイミングを見計らって一発打つわけです。そうすると逃げ始めるんですけど、その瞬間にスノーモービルでバーって追いかけて、走れないように、動けないようにして、とても放送では言えないような凄惨さで、乱暴だなって思うような光景なんですけど、彼にとってはあくまでも食料なんで、実に悪びれもせず整然とした流れるような動きで淡々と作業をこなしていくんですね。僕も解体も手伝ったんですけど、すごい簡単そうにやっているんで、自分もいつもは野菜ばっかり切っているナイフがあるんですけど、これで肉が切れるみたいな感じでやらせてもらったんですけど、もう足一個、関節一個外すのに大変な騒ぎでしたよ」 ●そうやって自分で仕留めて、自分で解体して、自分でいただくっていうね、ちょっと前まで生きていたものじゃないですか、その命をいただいている感っていうのはすごく強く感じるんじゃないですか? 「そうですね」 ●東京なんかにいると、スーパーとかで切り身を買ってきちゃうじゃないですか。そうすると、これが本当に生き物だったのが分からなかったり、ヘタしたら実際の形も分かっていない子供もいるって聞いて。 「なんだろうなー、死がとても近い感覚なのかなって。同じ群れのカリブーにしたって、その嵐が過ぎ去ってしまえば何事もなかったようにまた歩き始めてますからね。もしかしたら星野(道夫)さんの本にも書かれていたかしれないけど、運命を悟っているというか、そういう潔さがあるし、そういう潔さを見せつけられた僕たちとしては、ちゃんと丁寧にいただくというような意識が高まってくるような気がしますね」 ●そんな坂本さん、この番組では特にオーロラの写真という形で毎回お話を伺っているんですけど、実は去年アフリカのケニアの方にも行かれたんですよね? 「いやー、よかったですねー」 ●これまた寒いところから、いきなり暖かいところに行かれましたね(笑)。 「もともと北の男を目指していたんですが、北の男の辛さというか、息詰まりを感じまして(笑)、もう一回南の男を目指そうかな、と赤道に向かったわけです」 ●(笑)。そしてマサイマラ国立公園の方に。 「ええ、そこにはね、チーターを見に行こうということで(笑)」 ●アフリカは初めてだったんですか? 「アフリカは初めてですね、ネコ科の動物が結構好きで」 ●どうでしたか? アフリカの印象は? 「いやー、アフリカは素晴らしいですね」 ●(笑)。その一言に尽きる? 「はい、何が良いって、サバンナの風がとても気持ちいいです。カラッとしてね。あの風にだったらずっと吹かれていたいなって思いましたね」 ●アラスカのマイナスの風とは違いますよね。 「そうですね。とにかく北極の方で写真を撮っている時は、夏でさえも蚊が多かったりしてTシャツでいられる時間というのがないし、オーロラを撮っているときは夜なんで素手でカメラを触れるなんてことは滅多にないわけですよ。ですけど、アフリカに行くと素手でカメラを触っているし、Tシャツでいられるし、良いことづくめでしたね。また動物にしても、北極の方ではグリズリーとかの力強い肉食動物、写真に撮って絵になるような動物や、魅かれる動物に会うのがなかなか大変なんですよ。ですけど、アフリカに行くと当然のように象はいるし、キリンはいるし、ちょっと目を凝らせばチーターもライオンもいる、そういう世界なんで写真を撮るうえでは全然ストレスを感じなくて・・・」 ●撮り放題みたいな感じ? 「そう、カメラマン天国ですね(笑)。どこ向けても画になるだろうっていう」 ●初めてのアフリカの旅の中で、1番印象に残っていることってなんですか? 「そうですねー。マサイ族の人達、あの人達が動物と同じ風景の中にポツポツ混ざっているんですよ。マサイ・マラという言葉が、現地の言葉でドット・プレイス、点在する場所という意味らしいんですよね。キリンも、象も、アカシヤの木も点在して、点々としているという意味らしいんですけど、その道中から見る風景というのが、点在している、マサイの人も動物もそこにいて点在している、そういう感覚がとても良かったですね」 ●北米の方ではいつも空を見上げて写真を撮ることが多い坂本さんですが、アフリカの空はどうでしたか? 「あの広さは極北と通じるものがありましたね。極北の場合は一時期大量の動物がいたりするんですけど、それを過ぎてしまうと動物すら見れない、花の季節もパッと一時期咲き乱れるんですけどそれを過ぎてしまうとまた何もない、そういう極端な世界なんですけど、アフリカではいつでも動物がいて画になる風景だったりだとかで、そういう意味ではすごい楽でしたね」 ●じゃあ、これからもアフリカには? 「そうですね、余裕があればねー、両方ね。オーロラの見れないシーズンはアフリカにとかね(笑)。とにかくチーターの疾走する姿と、豹が木でのほほんと休憩している姿とかね、動と静を撮りたいなと思っています」 ●そんな坂本さんと行くオーロラ観賞ツアーもやってらっしゃるんですよね? 「はい、ぜひいらして下さい」 ●これは6日間、向こうに坂本さんと一緒に行くんですよね? 「はい、すごい良い場所ですよ、自分で言うのも何ですけど。ドアを開ければオーロラの世界、オーロラが観れる間、日が沈んでから昇るまでずっとその宿にいて空をチェックすることが出来る、自分のペースで観れるんですね。ほかのツアーなんかでは、はい、時間でーす、行きまーすって、オーロラが出ても帰らなきゃいけないこともあるんですけど、このツアーはその宿がすごく遠隔地にあるのでオーロラを観るには絶好の場所です」 ●ゆったりとオーロラを観賞できると。 「はい、そして宿のキャパシティーが14人なんで、とてもリラックスしてね、自分のペースで観られる、そういう場所です。オーロラのイエローナイフとか、頻繁に出る場所をオーロラ・ベルトと呼んでいるんですけど、そのオーロラ・ベルトではこれからが本番ですね。今まではオーロラの当たり年ってマスコミを騒がせたこともあると思うんですけど、あれは普段オーロラが観れない所での当たり年なんですよ。これからは強力な太陽風を吹かすコロナホールというのがあるんですね、さっきのコロナとはまた違うんですけど、そのコロナというのが勢力を伸ばしてくるので、そうするとそのコロナホールが地球に向いている間は絶えず強い風が吹いてくるわけですよ、一週間とかそれくらいのスパンで。本当に毎晩のようにすごいオーロラが出て、毎晩コロナに覆われるような状態が続くんです」 ●もう戻ってこれなくなっちゃう感じかもしれないですね(笑)。 「もう、オーロラいいよって」 ●本当にツアーに参加して、みなさんにも、ぜひ。 「ぜひ、知っていただきたいと思います」 ●今日は本当にありがとうございました。 ■このほかの坂本昇久さんのインタビューもご覧ください。
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■オーロラ写真家・坂本昇久さん情報
写真集『オーロラ夜想曲』
「カナダ・イエローナイフ近郊のオーロラ観賞6日間」
坂本さんのホームページ:http://web.me.com/auroraphoto/Aurora_Photo_Gallery/Home.html |
オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」
M1. NORTHERN LIGHTS / 松任谷由実
M2. MAGIC EVERY MOMENT / DAN FOGELBERG
M3. HEARTLAND / CSN&Y
M4. THE RIGHT TIME / THE CORRS
油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」
M5. WOULDON'T IT BE NICE / THE BEACH BOYS
M6. UNDER AFRICAN SKIES / PAUL SIMON
M7. NORTHERN LIGHT'S WHISPER / 神山純一
エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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