2003.10.05放送 エコビジネス・ルポ第11弾“音楽産業とエコ” 今週は、企業のエコロジー的な取り組みにスポットをあてるエコビジネス・ルポ・シリーズの第11弾。「音楽とエコ」というテーマのもと、音楽産業の各分野で取り組んでいるエコロジー活動をご紹介しました。大型野外フェスティバルのゴミ問題に取り組んでいる「スマッシュ」「A SEED JAPAN(ア・シード・ジャパン)」や、風力発電によるグリーン電力を導入したライヴ・ハウス「ZEPP(ゼップ)」の取り組みをはじめ、環境問題に積極的に取り組んでいる企業の話題をクローズアップ。またアーティスト側から「ジャック・ジョンソン」さんや「夏川りみ」さんにご登場いただいて、様々な角度から掘り下げてみました。
まずご紹介したのは、フジ・ロック・フェスティバルなどの大型イベントで、積極的にゴミゼロ運動を展開しているA SEED JAPANという環境NGOです。サマーソニックや朝霧ジャム等のイベントでは、A SEED JAPANが主導するゴミゼロ運動が多く展開されていて、日本の音楽フェスティバルには無くてはならない存在なんですが、そもそもどうしてこのような運動がスタートしたのか、ゴミゼロプロジェクトのリーダー、羽仁カンタさんにお話をうかがいました。 「A SEED JAPANのメンバーでもある星野智子さんと僕は、音楽好き友達だったんです。たまたま野外での『レゲエ・ジャパン・スプラッシュ』というコンサートを見に行ったときに、あまりにもマナーが悪くて、ゴミは多いし、痴漢はたくさん、物を置いとくと盗まれちゃう、喧嘩はしてる、もう『あれー?』みたいなイベントだったんです。日本人の若者は勘違いをしていて、レゲエというのは本来ONE LOVE、ONE WORLDなイベントのはずなのに、そういうイベントではなかったんです。そこで、なんかしようと僕と星野で話し合って、現在はなくなってしまいましたが『タキオン』という会社に話を持っていって、たまたま話した部長の方も諌早湾とか有明海の出身でゴミ問題とかに関心があったので『ちょうどいい。うちらも何とかしようと思ってたんだ』という話から始まったんです」 また、フジ・ロック・フェスティバルを主催するスマッシュの社長、日高正博さんは当時を振り返って、このようにおっしゃっていました。 「お客さんのことを信頼していたというか、比較的楽観してたのかな。でもこっちの読みが甘かったみたいです。一回目で、悪天候もあったんですがゴミ箱がつぶれてダメになってしまった。あの天候の中で24時間近くいるということで快適ではないし、お客さんの気もだいぶ荒れていて、とてもじゃないけどゴミどころではないんです。あと、現代の都会のゴミ状況というのは相当酷いもんだなと思いました。それはフェスティバルだからゴミが出るとか、悪天候だからゴミが出るというのもあるかもしれませんが、それ以前に都会生活の中で、ゴミに対して非常に鈍感なんだと思います。前提として我々はそういう現状に対して認識が甘かったんですね。 それで2年目の1998年のフジ・ロック・フェスティバルを開催するときに、A SEED JAPANの羽仁君とも話しあって、どこまで行けるか分からないけれども、最初は我々がお客さんをナビゲートして、そのうちお客さんが我々をヘルプしてくれるようにしていこうという目的で活動を始めたんです。そうして色々なアトラクションも用意したんですが、結果として、それが非常に重要なポイントになってキレイに終ったんです。また、お客さんの参加意識もものすごく素晴らしくて、中にはゴミを出したり問題を作っていたら、このフェスティバル自体が続かないだろうという危機意識があったと思うんです。そこからスタッフとA SEEDとお客さんとの連携ができたというか、自分たちのフェスティバルを作り上げていこうということで、現在に至っている感じです」 今ではすっかり根づいたこの運動ですが、根づくまでには色々苦労もあったようです。再び、羽仁さんにうかがいました。 「フジ・ロックを始める前にも、年に一回ではあるんですが、すでに5年間、レゲエ・ジャパン・スプラッシュで活動をしていたんですが、その時にも非常に苦労がありました。また、96年にレインボウ2000という活動を始めたんですが、それから回数が増えていって、今では年間20本くらいやっています。数が増えていくにあたって、ある程度浸透していったというのがあると思うんですけど、最初は本当に何の成果も出ないくらい、いくらやっても何にも変わらないくらいだったんですよ。もう『やめようか』、『意味ないよね』みたいな感じで(笑)。 でも実は、僕等側にも問題があったんです。当時は、世間一般で考えられる『ゴミが落ちてる。じゃあ拾おう』という活動をしていたんですが、それが何で問題だったかというと、落とした人に訴えかけないで、落ちてるゴミをただ拾うという活動、つまり対処療法的だったんです。だから、あるとき取材に入って来場者にインタビューを録ったら『いやあ、もうボランティアさんがゴミ拾いしてくれるから、僕達何にもしなくてよくて』というようなコメントがすごくあったんです。それを放映されているのを見て、『それは違う』、『この活動はこのままではマズイ』と思い、98年のフジ・ロックとレゲエ・ジャパン・スプラッシュから、ゴミ袋を配ってお客さんに自分のことは自分でやってもらおうとしました。 それからは、対処療法的にボランティアで他人のゴミを拾って回るという行為は屈辱と思って『今ではやっていません』とハッキリ明言しているんです。あくまでもお客さん達が参加者に変わっていけるような、『俺がこのイベント、フジ・ロックを作ってんだ』くらいの気持ちになれるように、ゴミをテーマにいかにみんなに参加してもらうかという活動に切り替えていった。そうしたらすごく効果が出てきたんです。 あと、言葉遣いも非常に気にしていて、上から物を言わないように気をつけているんです。逆に言うと媚びるのもやめているんですよ。『皆さん自分のゴミを拾ってください』というのも嫌で、まあ『自分のゴミは自分でやろうぜ』という対等な言葉遣いで、『やって当たり前だよね』『自分のことも自分で出来ないような奴は、ロッカーっていえないよ』『ロックって自立してるって言う意味もあるじゃん』みたいな、共感してもらえる言葉遣いを選んでるんです。絶対媚びないし、絶対上から言わないというのを僕は非常に気にしてますね。メッセージも、言葉遣いも、ステージから話しかけるときも、いわゆる普通にごみ捨て場で接するときも、すごく気にしてますね」
そんなスマッシュとA SEED JAPANの活動は先日行なわれた朝霧ジャムでも展開されました。その朝霧ジャムに参加した元プロ・サーファーという経歴を持つアーティスト、ジャック・ジョンソンに、このような取り組みについて語ってもらいました。ジャックは現在、奥さんや友人たちとともに「カクア・ファウンデーション」という団体を設立しようとしているそうです。
そして、スマッシュやA SEED JAPANだけではなく、CDショップの大手、タワーレコード(株)も、野外フェスティバル会場でゴミ袋の配布活動を行なっています。今年で7年目となるこの活動、この夏はフジ・ロック・フェスティバルやサマーソニックなど、全国9ヶ所でゴミ袋の配布活動を実施したんですが、今年からは、そのゴミ袋も、去年回収したペットボトルを原料にした再生フィルム素材で、焼却炉に与える影響が少なく、有毒ガスも一切出ないポリペットを使っています。また、活動の一環として特設の携帯サイトを開設し、野外フェス会場だけでなく、日々の生活の中での環境保全活動への参加などを呼びかけました。
このように様々な企業が新しい試みや技術開発は続けているわけなんですが、日本の音楽業界でも、アーティスト・サイドにも、エコな取り組みが増えているようで、様々なチャリティ活動やイベントが積極的に行なわれています。例えば、夏川りみさんは、この夏、空き缶拾いの活動をされたそうです。 「沖縄本島に美浜という海岸がありまして、そこの空き缶拾いに参加しました。私は今でも沖縄の海はキレイだと思っているんですが、サンゴ礁に囲まれた石垣島も、沖縄も、年々汚れてるという話をよく耳にします。十何年ぶりに行った沖縄の海は、確かに昔の方がキレイだったかなという気はします」
さて、次にご紹介するのは、大型ライヴハウスZEPP(ゼップ)です。以前にもちょっとお伝えしたんですが、札幌、仙台、東京、大阪、福岡の、全国5都市にあるZEPPでは、今年1月からグリーン電力を使い始めました。
さて、音楽業界のエコロジーの取り組みを色々と見てきましたが、先ほど登場していただいたスマッシュの日高社長は、次の目標を「森の再生」に定めて、すでに活動を始めていらっしゃるとのことでした。
今週は、エコビジネス・ルポ第11弾として「音楽とエコ」をテーマにお送りしました。取材にご協力いただいたみなさん、ありがとうございました。様々な角度から掘り下げてみましたが、音楽産業と環境保全や自然保護は逆行するイメージが強い中、各分野においてゴミや電力に対する取り組みが行なわれており、もっともっとこの動きが広がって欲しいですね。また環境問題に対する対応は、社会のサステナビリティ(持続可能性)を考える上での必須事項であり、音楽産業でも同じこと。こういった時代に敏感なアーティストがどんどん先頭に立って、音楽産業だけでなく、様々な分野にまでメーセージを届けて欲しいですね。この「音楽とエコ」は新たな展開があれば、また特集をしたいと思います。お楽しみに!
・スマッシュHP:http://www.smash-jpn.com/ ・JACK JOHNSON HP:http://www.universal-music.co.jp/u-pop/artist/jack/ ・夏川りみ HP:http://www.rimi-net.com/index.php3 最初に戻る ON AIR曲目へ ゲストトークのリストへ ザ・フリントストーンのホームへ photos Copyright (C) 1992-2003 Kenji Kurihara All Rights Reserved. |