2003.12.14放送 ~プロの放浪家・堀田貴之さんのブルージーな近況~ ●堀田さんは出演の度に肩書きが増えているような気がするんですけど(笑)、そんな堀田さんが発信しているメール・マガジン「サボテン通信」っていうのがあるんですが、この「サボテン通信」っていうのはどういう人に向けて発信しているどういうメール・マガジンなんですか? 「これはもう全然意味が無いんです(笑)。世界の65億人から適当に選ばせてもらって物凄く退屈な夜にちょっとだけ適当なことを書いて、年に1回か多くて2回出しているだけです」 ●そういうものだったんですねー! 忘れた頃にやってくる「サボテン通信」。何故“サボテン”通信にしたんですか? 「それも何となく『サボテンが良いなあ』と思って(笑)。サボテンを見ているとホッとするんですよね」 ●それはまた、なぜですか? 「『なにサボってんねん! 』って感じかな(笑)」 ●(笑)。今回お話をうかがうメインが「海風(うみかじ)」という雑誌。これは10月に創刊されたばかりで、手軽なA5サイズなんですけど「海風(うみかじ)」というタイトル、それからこの本を創ろうと思ったきっかけってなんだったんですか? 「何年も前から自分達の方法で表現できる何かをやろうという話が出てはいたんですが。その度に出ては断ち消えていたんですけど、今年の春位に『やろうか ! 』っていう感じで話が持ち上がって創ったんです」 ●メインの編集者は堀田さんを含めて3人なんですよね。他の2人とは遊び仲間っていう感じですか? 「そうですね。遊び仲間です」 ●みなさん素浪人(すろうにん)と名乗ってらっしゃるんですよね?(笑) 「僕は『スロー』っていう言葉が凄く気持ち悪いなって思っていて、スローな旅だとかスロー・フードだとかスロー・トラベラーだとかいうのが凄い気持ち悪くて、何か茶化す方法はないかなと考えて出た結果が素浪人(すろうにん)だったんです(笑)」 ●この「海風」の編集長というのは堀田さんになるんですか? 「基本的には常識に捕われるのはやめようってことで編集長はいないんです。“長”って付くと威張ってしまうでしょ。すぐ威張る人達ばかりだから(笑)」 ●じゃあ“長”をとって全員が編集者という形なんですね。表紙をじっくり見ると面白いところがいっぱいあるんですよ。「海風 NO,1 Autumn 2003 創刊号」ってまず表紙に書いてありますよね。一番上に「平成15年10月号“Full Moon”号」、そして私もまんまと騙されたんですけど、かっこして「季刊・年4回発行希望」(笑)。これ、希望っていうことは気持ち的には季刊誌だけれども・・・。 「4回位は出したいなと(笑)。でも気力とか体力とかお金とかが続くかどうかは分からないので、出したいなあっていう(笑)」 ●あと、最初のページをめくります。色々と目次がガーッとあります。一番最後に発行・海風本舗とあって★(ほし)があって、「この本の売り上げの3パーセントは、自然環境の保護と回復を願いつつ、われわれが遊ぶことに使います」(笑)。これはどういうことか説明して下さい!(笑) 「もうその通りです(笑)。遊びたいなあと思って(笑)」 ●そしてもう一つが「再生紙、およびエコインクの使用を希望しています」(笑)。値段が高いんですよね? 「高いんです(笑)」 ●これはすぐに分かりました(笑)。そういう事なんだろうなっていう・・・(笑)。 「使うと定価が100円高くなるんですよね」 ●読者の方達に少しでも安く提供するという意味でも、使いたいという「気持ち」はあるんですよね? 「そうですね。みんなが買ってくれると使えるんですけどね(笑)」 ●そういうことですね(笑)。そんなじっくりと読んでいただきたい「海風」なんですけど、今は粗探し的に細かいところばかりを見てしまいましたが、内容的には・・・。 「細かいところしか面白くないんですよ(笑)」 ●編集者がそんなこと言ってどうするんですか(笑)。 「我々が面白がるために作った本ですから(笑)」 ●今回の創刊号の特集が堀田貴之さんが書かれた「南風(カーチべー)に吹かれて島から島へ/沖縄~奄美、アイランド・ホッピング旅」で、その他にもタープの話とか色々と載っているんですけど、この「アイランド・ホッピング旅」について教えていただけますか? 「これは沖縄の本島から北に奄美大島まで20キロ~40キロといった距離で島がいくつかあって、カヤックで行くには丁度いい距離なんですよね。それをシーカヤックで渡りながら島に到着したらそこでキャンプをして、次の日にまた北の島に向かって漕いでいくっていう、島から島へっていうのをアイランド・ホッピングって呼んでいるんですけど、シーカヤックの一つの面白さだと思いますね」 ●各島の間が20キロ~40キロ位あるんですよね? 「ええ、大体そうですね」 ●それってどれ位で行けちゃうんですか? 「風にもよるんですが、時速6キロとしたら7~8時間位ですよね」 ●それ位で行けちゃうんですね。じゃあ丁度、朝食を食べてのんびりとして繰り出して日が暮れる前には次の島に着いて、気に入ったらそこで一泊してのんびりしちゃってという本当にいい感じですね。 「そうですね。10年前に行った時には沖永良部島の一つのビーチに全然出発せずに、結局一週間位いたんですよね。それは天気が悪くて出ない日もあったんだけれども、ほとんどは島の人達と毎晩遅くまで飲んでいたり(笑)、島の人と『明日はこれやろうな!』って言って別れるので次の日に出れなくて(笑)っていうのがあって1週間から10日位いましたね」 ●今回はどうでした? 「今回は沖縄カヤック・センターっていう、カヤックのツアー・ガイドをやっているところのコマーシャル・ツアーだったんですよね。だからお客さんを連れていくっていうツアーだったのでそこまでの付き合いはなかったのですが、1日ゆっくりしたりっていうのは途中に入れながら、地元の人が『何だあいつら?!』って感じで遊びに来るので差し入れを貰ったり交流をしたりというのはありましたね」 ●南の島でのそういう旅って、あまり時間を気にせずにキツキツのスケジュールを組まないで、風の吹くまま気の向くままゆったりとした日程を組んで旅をする方が楽しいですよね。 「そうですね。シーカヤックの場合って天気次第なので決められないですよね。どうしても時間的にはゆっくり余裕を持って計画段階からそうしてしまうので、別にどこでやめたっていいし、今回は沖縄から奄美まで漕いだんですけど、極端なことをいえば目的地が途中の島でもどこでもいいんですよね」 ●この本を読んでいると海の上でのほとんどの時間を堀田さんは歌を歌うか、歌を作るかくだらないことを言っている(笑)。しかし、くだらない男を演じているだけなんだという風に書かれていたんですがそうなんですか?(笑) 「(笑)」(笑うだけの堀田さん) ●ストレートに訊いちゃいましたけど(笑)。 「どう言えばいいんだろう(笑)」 ●でも歌を作るっていうのはやっぱりブルース・ナンバーなんですか? 「いや全然。もう適当な詞を適当なメロディーで、カヤックを漕ぎながらなのでぶつぶつと。本当に適当ですよ」 ●すごく聴いてみたいなあ(笑)。途中でウクレレが壊れてしまったらしいんですけど、今回の旅で2曲は完成しているんですよね? 「もう忘れましたけどね(笑)」 ●(笑)。ということは旅の途中で作られた曲や歌はその都度のものなんですか? 「一応キャンプに着いて覚えているものは書き留めておいたりはするんですけど、次の日に見たら『何だこれ?! 』とか思ったりしますよね。楽譜にすればいいんだろうけどメロディーは書き留められないし、丁度ウクレレも壊れて音にかえる方法がないので浜に着いてからは何も出来なかったんですよ。全部忘れましたね。いい曲だったんですけどねー(笑)」 ●「海風」の特集の2に「旅する食卓」というのがあったんですけど、旅の楽しみは食にありってよくいわれるんですが、現地のもの、現地の人達が食しているものって普通だと想像がつかない料理法があったり、ちょっと変わったものとかあるじゃないですか。今回の旅でそういうものはありましたか? 「特に珍しかったわけではないですが、沖縄の方って揚げドーナツを家庭で作るんですよね。それを持ってきてくれた老夫婦がいて、確か朝だったと思うんですけど物凄く暑い中、油コテコテの(笑)ドーナツを日陰もない海岸に持ってきてくれて『食べろ、食べろ』って言われて食べたんですが、『あ、これはこういう気候だからここまで脂っこいものを食べるのかなあ』って逆に思ったりしてですね。『きっとこれは気候のせいだな』とか思ったり、脂っこいし甘いし水を飲んだりするので結局それが暑さ対策になっているのかなと思ったり、なんか偉そうだけど食(しょく)って絶対気候と関わっていると思うんですよね。沖縄の泡盛とか焼酎を飲むとすごくおいしいんですが、同じものを東京に持って帰ってきて飲んでも『ちょっと違うなあ』って思ったりするんですよね。そういうのも個人的には湿度が大きいと思うんですけど、湿度と気温の違いだと思うんですよね。そこに生まれてきたものは必然的に生まれてきたんだなあっていう気がして、旅の上ではそういうものを食べたいですよね」 ●堀田さんの旅先でのお勧めのレシピってありますか? 「一番のオススメはパンとチーズとワインです。1人の時はすごくシンプルですよ。面倒くさいから。僕はすごい面倒くさがりだし料理とかあまり得意じゃないんですよね。パンとかチーズって不味くても人のせいに出来るじゃないですか(笑)。自分で作ると人のせいに出来ないから(笑)」 ●確かに(笑)。 「不味くて悔しくて、自分を責めて悔しくてって2倍悔しいでしょ(笑)」 ●本の一番最後に「火と暮らす」というエッセイが載っていて、イラストも「ご自由に色をお塗りください」となっていて「おっ、楽しい」と思ったんですけど、堀田さん的には感慨深いエッセイがあって、次もページをめくると次回予告「たき火!」っていうのがあるんですが、感慨深いまま続きを早く読みたいなあ(笑)。 「本当ですか?(笑)」 ●本当ですよ。フリントストーンの意味も火打ち石ですし、「たき火」って早く読みたいなあって、しかも「『海風』次号はもっとおもしろい!」って書いてあるのでどうなるんだろうって楽しみにしています。 「多分もっと面白いですよ」 ●早く読みたいなあ(笑)。このままメンバーが仲良くいけば来年の春には次号が出せそうですか? 「一応3月を目標にしています」 ●その次の第3号のアイディアとかってありますか? 「実は僕の頭の中には第5号分位まであるんですけど、それがどう変わるかも分からないし、さっきもエイミーさんが『細かいところまで面白い』と言ってくれていたように僕は細かい所にこだわるのが好きなんですよね。実はたき火特集のオチはもう考えてあるんですよ。内容は全然決まってないんですけどね(笑)」 ●1月には堀田さんの新しい本も出るんですよね? 「出る予定です(笑)」 ●(笑)。1月予定だとマズイんじゃないですか。もう12月ですよ。 「今年の春からずっと『もうすぐ出る』って言い続けているんですよね(笑)。僕も4月か5月位には出ると思っていたんですよ。それが今になってしまっているので1月には出ると思うんですけどね(笑)」 ●タイトルはもう決まっているんですか? 「原稿はついこの間書き上げたんですよ(笑)。タイトルは『タルサタイムで歩きたい』っていうタイトルなんですけど、今まで行った旅の“コウカイ”日誌ですよね(笑)。『あ~、やってしまったわ~い』っていう(笑)」 ●(笑)。これは何かに連載したものをまとめたものなんですか? 「雑誌に連載したものもあるし、三分の一は新たに書いたものです。1年前にブラジルに行った時の話がその本の三分の一位を占めて、残りの三分の二は今までどこかに書いたものを大きく手直しをして新たに収録したっていう感じです」 ●いずれにしても手直しがされているし加筆もされているので、雑誌で読まれた方にも読んでいただきたいですね。 「そうですね。古い話って覚えていないからいくらでも書けるじゃないですか(笑)。無かったことや聞かなかった話まで(笑)」 ●そういうものなんですか(笑)。「タルサ」って堀田さん好きですよね? 「好きですね。タルサタイムっていう言葉がすごくいいなあって思っていて、実は僕この意味知らないんですよ(笑)」 ●はい?(笑) 「元々はカントリーの人が作った歌で当時は全然有名ではなかったんですが、最近ではエリック・クラプトンも歌っていたから結構有名になったんですけど、オクラホマ州のタルサっていう町があって、地方地方のルーズな時間のことを沖縄時間と呼んだりしますよね。そういう意味じゃないのかなと思いますけどね。クラプトンも英語で歌っているのであんまりよく分からないんですよね(笑)」 ●(笑)。でも好きな言葉なんですよね? 「ちょっとユルめでいい感じだと思うんですよね」 ●雰囲気としてタルサタイムで歩きたいということですね。でも堀田流のタルサタイムってあるんですよね? 「すごく言い訳に使いやすいですよね。『いつ出るの?』って訊かれても『いや、タルサタイムで作っているから』って言えるじゃないですか(笑)」 ●じゃあ「タルサタイム」って?(笑) 「『よく分かってないんだあ』って(笑)。言い訳には最高の言葉ですよね」 ●本自体もタルサタイムで発売されるようなので(笑)、一応来年の1月末には出ますよね? 「印刷の人がタルサタイムで働かなければ大丈夫だと思います(笑)」 ●堀田さんの全てがタルサタイムで動いているような感じがして、話をしていても私が堀田さんの周りを1人でグルグル回っているような感じもしてきましたけれども、いずれ「海風」の特集か何かでフリントストーンもご一緒させていただきたいなと思います。 「是非、一緒に行きましょう」 ●私達もタルサタイムで予定を立てて・・・(笑)。 「放送時間がガーッとずれたりするのもいいじゃないですか(笑)」 ●いいですね(笑)。またいつ放送するかも分からないっていうのも含みつつ、いずれ一緒にお仕事が出来るように素敵な企画を考えて下さいね。楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました。
雑誌『海風(うみかじ)』 海風本舗/本体価格600円 シーカヤッカー、バックパッカーそしてプロの放浪家、でも本当はブルースマンになりたい堀田貴之さんが仲間と創った年4回発行“希望”の季刊誌。 10月発売された創刊号のメイン特集は沖縄から奄美までのシーカヤックの旅。その他「旅する食卓」という第2の特集もあり、カヤックのことから砂浜でのキャンプのノウハウ、ストーブや食器類のうんちくなど、堀田さんたちの経験に基づいた知恵や知識が満載。また細かいところにこだわっているので、本当の意味で、隅から隅までじっくりと読んでいただきたい雑誌です。 購入場所:都内のA&F姉妹店、またはホームページ 問い合わせ:海風本舗 website:http://www.umikaji.net/ 堀田さんの新刊『タルサタイムで歩きたい』は来年2004年1月末に東京書籍から発売される予定です。 最初に戻る ゲストトークのリストへ ザ・フリントストーンのホームへ photos Copyright (C) 1992-2003 Kenji Kurihara All Rights Reserved. |