2003.12.21放送 ~C.W.ニコルさんの絵本『クリスマスベア』~ ●前回番組に出ていただいてからもう1年半くらいになるんですね。最後にお会いしたのが去年の8月にアファンの森で開催された姉妹森の締結式の取材の時だったんですが、これはウェールズのアファン・アルゴード森林公園と長野県黒姫のアファンの森が姉妹森になった時でしたね? 「そうです。世界で初めてです。その後、今年の5月にウェールズで大きな儀式がありました」 ●アファン・アルゴード森林公園のレンジャーのリチャード・ワグスタッフさんは元気でしたか? 「元気でしたよ。お客さんもみんな20台の馬車で公園の森の道をチャッチャッと走ったんです」 ●うわぁ、なんかいいねー! 「格好良かったよ」 ●長野でやったときはみんな車で乗りつけましたからね。ウェールズでは馬車だったんですね。地元の人達の中でこの姉妹森というアイディアに対しての反応はどうでしたか? 「最初はイマイチ理解できていなかったみたいです。でも実際、ウェールズと黒姫の交流は物凄くあるんです。ウェールズのアファンの森の近くに日本人が家族でたくさん住んでいるんですよ。だから日本人もウェールズの森に来れるようにしました。そこで日本の木々を色々と植えています。山菜採りもやりました。ウェールズにもツクシとか、タラはないけどワラビが物凄くあるんですよね。向こうの人はワラビのアク抜きとか知らないんですよね。そういう交流はすでに始まりました」 ●日本では普通に行なわれている山菜取りが、向こうの人達はワラビはあるけれども、それはただの植物としてしか見ていないんですね? 「雑草だと思ってますね(笑)」 ●(笑)。見ても知らん顔をして歩いていたものを今は採って食べたりしているわけですね? 「そうですね。ブラックベリーとかウェールズの人が大好きなものもあるんですよね。黒いイチゴなんですけどそれを日本人に『採っていいよ』って言ったらビックリしていたんですよね。採っちゃいけないものもあるんですけど、ワラビとブラックベリーはいくら採っても採っても減らないんですよね。そういう交流、それから我々はシイタケ、ナメコ、ヒラタケの作り方を来年教えます」 ●ウェールズに行って教えてくるんですね? 「はい。ウェールズのマーケットへ行くとシイタケは日本の倍以上の値段で売られています。グチャッとしたばあちゃんシイタケがすごい値段で売られています(笑)」 ●しわくちゃなのに(笑)。 「そう(笑)。ばあちゃんだけじゃなくてじいちゃんも(笑)」 ●じいちゃんばあちゃんシイタケが(笑)。 「そう(笑)。森を人の健康のために使っているんですよね。その色々な方法は我々も取り入れています。向こうはマウンテン・バイクのためのトレイルとか、車椅子のためのトレイルや細い道がたくさんあってウェールズはそういう点ではベテランですよね。(姉妹森は)2つの森で始まりましたが、もうすでにいくつもの森が一緒にやりたいと手を挙げてくれているんですよ。そのうち森の国連みたいなものができればいいなと思っています」 ●これからはお姉さん森であるアファン・アルゴード森林公園とどんどん色々な交流が広がっていくんですね。 「僕の夢はそのうち若いウェールズ人が我々のところで仕事をして、若い日本人がウェールズで1、2年仕事ができるといいですね」 ●来年もアファンの森で色々な教育事業を行なって、アファン・アルゴード森林公園とも情報交換を行なっていくそうですが? 「色々なエキスパートを呼んで我々独特のものもやりますけどね。例えば目の不自由な子供達の森の経験とか、大きな悩みを持っている子供達に少しずつ教えていきたいなと思っています」 ●今年、黒姫のアファンの森では10年ぶりに窯を作り直して炭焼きが行なわれたそうですが、これはどうして今年だったんですか? 「また土地が増えたからなんですよ。それもどうしようもない薮ですから間引かなければならない。10年の間に木々が成長して木と木の間が近くなってしまうから、場所によってその木々も間引いていくと、残っている木がすごく成長するんです。松木さん(アファンの森の番人)も68歳でしょ。僕も63歳だから次の20年を我々の考えで森を活かそうと思っているんですね。我々、松木さんと僕は大木のある森を望んでいるんです。でも大木になるのはこれから約100年後ですから我々はその大木を見ることが出来ません。どの木が大木になる可能性があるかは今の段階で分かっています」 ●その木が100年後に大木になるように状況を整えている段階なんですね。そのために間引いた木々があるから炭を焼くんですね? 「そうです。炭と木酢液とキノコですね」 ●ニコルさんの書いた曲がカナダでビッグ・ヒットしていると聞いたんですが? 「ビッグ・ヒットというか、この曲は私が数年前にシャケが上がる河の支流にいたんですよね。河の岸がブッシュで歩けないし、クマが出てくる可能性もあるから膝まで水に浸かって河の中を歩いていたんですよ。そしたら河でシャケがチャパチャパしていたので、それをヒントに詞とメロディーを頭の中で考えて船に戻ってから書いたんです」 ●じゃあ、そのシャケがチャパチャパしているリズム、ビートで考えたんですね。 「少数民族、チムシャン族やハイダ族のリズムとケルトのリズムを混ぜて歌を作ったんですよ。僕の友人のエイドリアン・ダンカンは、役人ですけど週に1、2回ケルティック・バーで歌っているんですよ。そのバーにハイダ族の歌手がいたんです。彼が歌を村へ持って帰ったらブワーッと少数民族の中でヒットしたんですよね。歌は僕が先月カナダに行って録音したんですよ」 ●それが今カナダの方で話題になっているんですね? 「はい。エイドリアンがカナダで自分のCDにも入れたんですよね。でもそれは彼の声で、私は私で歌いました」 ●でもニコルさんのこのバージョンはCDリリースはしていないんですよね? 「日本側が乗らないなら我々はカナダでリリースしようと思っているんですよ。歌はいっぱいありますから。エイドリアンが自分のレコード会社を作っちゃったんですよ」 ●じゃあ、日本では本邦初公開になるんですか? 「そうですよ」 ●ニコルさんはシャケの音で思い付いたという“サーモン・ソング”こと「スウィム・アウェイ」の他にもう1曲「クリスマス・ベア」という曲もレコーディングされているんですよね。この曲はアートデイズという出版社から先月出された「クリスマスベア」という絵本にまつわる曲なんですよね? 「そうですね。私が詞を書いて翻訳してくれた詩人の堤さんが朗読したんです。そしたら彼女は『うわあ、良い詞だね。ちょっと貸して』って言って次の日には翻訳が出来ていたんですよ。それをまた船の上で発表したら今度は画家の古山さんが絵を書きたいって言って、あっという間に出来た本なんですよ」 ●じゃあ、これは豪華客船でクルーズしていた時に3人で盛り上がって出来ちゃったものなんですね。 「そうなんですよ。それでその詞をエイドリアンに送ったらエイドリアンが『あっ、これ良い歌になるよ』って色々なトラックを作って、ギターが2つとバンジョーにウクレレ、ベースとボーラン(アイルランドの太鼓)とディジュリドゥ(オーストラリアのアボリジニの民族楽器)と子供と一緒に僕が歌って録音したんですよ。楽しかったです」 ●この絵本は日本語と英語の両方が書いてあるんですけど、クリスという名前のクマさんが主人公なんです。このクマさんのお顔の表情が凄くて(笑)、ガーッと口を開けて寝ているんですが、今私の目の前に座っているニコルさんに「あれっ、鏡?」「モデル?」と思うくらいに似ていて、凄くヒューマンな顔をしたクマさんですよね。 「古山さんが僕を茶化して描いているんですよ(笑)。この僕の印税はクマの研究に使われるんです。まわし読みはダメよ(笑)。ちゃんと買ってね」 ●この本はとても素敵ですし、英語の勉強にもなりますもんね。 「クリスマスのプレゼントにもなりますしね」 ●そうですねー! 是非買って読んでいただきたいので内容はここでは言いませんが、とてもハート・ウォーミングなストーリーで最後には本当に心が温まりますね。でも子供向けのストーリーとしてはちょっと珍しい展開ですよね?(笑) 「(笑)。生態学的にはちょっとずれていますね」 ●この本は大人が読んでも楽しめますよね。 「そうですね。カナダへ送ったらみんなで笑って読んでいますよ。CDを録音したとき、子供達はこの英語で7回くらい途中で笑ってしまって、なかなか録音できなかったんですよ」 ●えーと、「What better christmas treat to find than a hairy chest and a warm behind.」(笑)。この文の翻訳だけ紹介したいと思います。実際の翻訳と違って今の英語の2行で言うと「毛むくじゃらの胸と暖かいお尻。なんて素敵なクリスマスの贈り物でしょう」になるんですね(笑)。 「そう(笑)」 ●クマって日本では非常に危機に瀕しているんですよね。 「えさ場が破壊されているから昔よりもクマが見えています。ドングリのある古い森がどんどん切られているので、畑に出てくるんですよ。それにツーリストの中で理解していない人が結構いて、クマに餌を投げるんですよ。それはクマにとって良くないことなんです。人間の臭いがついてしまうと人間のあとをついてきて射殺されてしまうんです」 ●以前アファンの森でニコルさんにお話をうかがったときに「クマのいる森は健康な森なんだ」っておっしゃっていましたよね? 「そうなんです。クマがいる自然の森は針葉樹の木の畑のようなところと比べると水を溜める力が2倍半もあるんです。日本にとっては物凄く大事なことです。緑のダムとはそういう事なんです」 ●今私の手にはほとんど電源の入っていない携帯電話があるんですけど(笑)、そこにかわいらしいストラップが付けられています。これはアファンの森財団のクマさんの携帯用ストラップなんですよね? 「そうそう。ツキノワグマです。胴が長くて足が短いんですよ」 ●これは完全にツキノワグマ体型ですか? 「そうです。私が書いてデザイナーに色々な絵を渡して出来たものです」 ●頭の上に緑の葉っぱが・・・(笑)。 「(笑)。あれはデザイナーのアイディアです。かわいいなぁ」 ●これは携帯ストラップとしてだけでなくキーホルダーとしても使えますね。フェルト製で手のひらサイズのかわいらしいストラップ。 「この売り上げもクマの研究に使われます。日本政府はクマの調査にお金を出さないんですね。有害駆除でかなりお金はかかっているんですけど、クマを研究しようという意識がほとんどないんですね。日本では物凄く努力をして調査をしている個人はいるんですよ。何人か立派な人達。僕はそういう方々をサポートしたい。我々の森にもクマが出て来ています。色々な形で彼らをバックアップしたいですね。僕は『皆さんクマの調査にお金を出して下さい』とは言っていないんです。この面白い本をクリスマス・プレゼントにしたら調査に寄付をしているのと同じですからね」 ●そうなんですよね。私はもう1年半アファンの森にはうかがっていないんですが、森は元気ですか? 「物凄く元気です。是非来年の春に来て欲しいですね。また1万5000坪足しました。それを大胆に手入れします」 ●じゃあフリントストーンもお手伝いに行きます。 「手伝わなくても良いので見に来て下さい(笑)」 ●じゃあ見に行きます。 「見に来て録音して下さい。森の中の大きな耳のような面白い建物、サウンド・シアターを造ったんですよ。そこにじーっと座っていると森の音がウワッと入ってくるんですよ。是非来て下さい」 ●ニコルさんの今後のご予定はどうなっていますか? 「ウェールズに行きます。アファンのアルゴード森林公園と近くの大きな森も見ます。それから多分ロシアのシベリアにも行きます。トラがいる森に行きたいんですよね」 ●来年もかなり旅の多い1年になりそうですね。来年の春にはコンサートも行なわれるそうですが? 「という噂が出ていますね(笑)」 ●本人もコンサートをやるという噂でしか知らないんですね(笑)。 「いや僕、講演よりもコンサートの方がずっと好きですよ」 ●でも春にやるということはこの「クリスマス・ベア」は聴けないのかな? 「良いじゃない。やりますよ(笑)」 ●じゃあ、来年の春に実際にニコルさんが歌う「サーモン・ソング」や「クリスマス・ベア」を楽しみにしたいと思います。それまでは「May your snore roll on 'till spring is near !! 」ということで、今日はどうもありがとうございました。 「ありがとう。フリントストーンと仕事をするのはいつも楽しいよね」
・『クリスマスベア』 アートデイズ/本体価格1,333円 ニコルさんが原作、詩人の堤江美さんが翻訳、そして画家の古山浩一さんが絵を担当した絵本。クマのクリスが主人公の心温まる物語。クリスマス・プレゼントにぴったりの1冊です。 ちなみに印税はクマの調査/研究/保護のために使われるとのこと。 ・「C.W.ニコル・アファンの森財団」からのお知らせ ニコルさんが理事長を務めるC.W.ニコル・アファンの森財団では活動をサポートしてくださる会員を募集中です。 アファン会員は一口5,000円、賛助会員は一口5万円。 そのほかアファンの森の中にある放置状態の森を買い取るトラスト募金は一口3,000円。 また松木さんが焼いた炭を先着200名にプレゼントする間伐募金も募集中。こちらも一口3,000円となっています。 問い合わせ/申し込み:C.W.ニコル・アファンの森財団 TEL:026-254-8081 HP :http://www.afannomori.com/ 最初に戻る ON AIR曲目へ ゲストトークのリストへ ザ・フリントストーンのホームへ photos Copyright (C) 1992-2003 Kenji Kurihara All Rights Reserved. |