2004.02.15放送 新シリーズ「エコシップ応援団」第1弾・ NPO法人「環境リレーションズ研究所」理事長 鈴木敦子さん 自然・環境系のNPO/NGOの活動を紹介し、応援する新シリーズ「エコシップ応援団」の第1弾。本格的な活動をスタートさせたばかりのNPO法人「環境リレーションズ研究所」の理事長・鈴木敦子さんをお迎えし、環境系のNPOを立ち上げたきっかけや同研究所の活動内容などをうかがいました。また、環境系の会社も経営する鈴木さんに環境ビジネスの可能性についてもお聞きします。 ◎環境系と就職 ●鈴木さんが環境リレーションズ研究所という団体を立ち上げたきっかけを教えていただけますか? ◆「いきなりきましたね(笑)。要は環境ビジネスをサポートする個人事業主集団みたいな形で、平成11年からスタートしておりまして、その中で一つは企業の環境コミュニケーション、流行りの言葉で言いますとリスク・コミュニケーションとか、環境コミュニケーション周りのサポートをする事業を主体にしている部隊と、環境を事業に展開している企業のサポートをするサービス、ビジネスを展開しておりまして、個人事業主ではなかなか不利な面も多いので『じゃあ、法人格をとらないと大きな契約をとれないね』とか『直で契約を結んでいただけないね』という所がスタートなんです。NPOで熱い想いがあってというよりは、割とすんなり企業の環境マネジメント・セクションのコミュニケーション周りのお手伝いって、ビジネスビジネスでやるよりはNPO法人として世の中にどんな形で企業の、結構環境ワードって難しいのでワードをインタープリテーション(翻訳)してあげる、多分そこの部分ってNPOの方が似付かわしいんじゃないかなと思うんですね。法人化するというところで選んだのが、たまたまNPOだったということなんです。片や企業サイドのビジネスの展開を、たまたま環境というキーワードでビジネス展開されている企業の売り上げの増進のお手伝いをするっていうのはNPOじゃおかしいよ、こっちはしっかりした株式会社で進めましょうということでやってきました。」 ●今、鈴木さんがおっしゃった株式会社というのがエコロジカル・スタンドという会社なんですね。それとNPOの環境リレーションズ研究所。こういう方面のNPOや会社をやるということは鈴木さんはもともと環境に興味があったんですか? ◆「それはありました。環境というかかつての公害問題ですよね。公害問題からスタートして環境問題に興味を持って、色々な所でそういうテーマの本や雑誌を読んだりというのをずっと続けてきて、大学に入ってから現代社会とエネルギー、環境問題とエネルギー問題をテーマにした授業がありまして、それが大きなきっかけですね。現代社会とエネルギーというゼミ的な活動のインフラを、大学生の時に我々の代が立ち上げたわけですよ。何となく環境系のお仕事に就きたいと思っていたんです。その顧問の先生をされていた方に相談したんですよ。そしたら彼の『じゃあ、環境対策が進んでいる企業イコール、これまで環境を思いっきり汚してきているような企業は、環境対策も進んでいるわけですよ。そういう所に行って見てみるのも面白いかもしれないね』というアドバイスのもとに、就職の時に決めたというだけで、実際に新卒採用されたときに環境に携われたかなんていうのは全然嘘で、全く違うことをやっていましたよね」 ●それから徐々に環境の方へという感じですか? ◆「やっぱりやりたくて転職をしました」 ●自分でそういう志をもって、環境に力を入れている企業に入ったとしても、納得いくまで仕事が出来るっていうのは既存の企業では難しいんですか? ◆「今、学生さんでも、我々の時代は環境を専攻する学部や学科ってなかったんですよね。でも今は色々な大学が環境学部とか環境情報学部とかゴロゴロと作り上げて、そういうところに進まれて就職活動中の方々っていうのは、やっぱり『環境でお仕事したい!』っていう人達が多いですよね。ただ毎年1回、あるNGOが主催している環境就職相談会というのがあるんです。そこに今現役の環境学部に所属していらっしゃる環境系の仕事に就きたい学生さん達が相談に来るのですが、持たなければならない情報っていうのが膨大なわけですよ。それが深くて広いものが必要かといえばそうではないかもしれませんが、それなりに法律のことを分かっていなければならない、条例のことを分かっていなければならない、それから技術のことも分かっていなければならないというあたりを、新卒の学生さん達がどこまで分かっているのかといってもまず無理じゃないですか。企業としても即戦力じゃなければそんな人を環境対策セクションには採らないですよね。だから学生さんには『“最初は無理よ”っていうのは覚悟して就職活動しなさい』とアドバイスしているんです。ただ、やりたい人が多いというのは頼もしいことですし、焦らずに選んでくださいなんて話はするんですけどね」 ◎環境への配慮が進んでいる企業とは? ●90年代から2000年代にかけて色々な環境に対する意識等っていうのはかなり変わってきていると思うのですが? ◆「興味は明らかに高まっていますよね。特に92年の地球サミット以降は世界的に見て国政サイドも地球温暖化に対する関心を高めようとしていますし、そこに対して働き掛けようという活動も増えています。地球環境問題でCO2だけをターゲットにしていればいいという話ではなくて、環境全般に対する興味はそういうところがキッカケで出てきていますし、その辺の市場や生活者、市民レベルの関心がようやく環境にもちらほら出て来たのかなっていうのを早めにキャッチ、察知している企業の方々っていうのはやっぱりブランド・イメージ戦略的に使われていますし、ブランディングされているところもあります。私もあれは正解だと思います。環境でブランド・イメージを上げるために環境を使う。それに興味のある人達や市場がさらに環境に関心を持つ。そうすれば多少販売価格が高くなっても買う人達が増えてくるというのは好循環だと思いますね」 ●そういうブランドで私がふっと思い浮かぶのは、例えばトヨタのエコとか・・・。 ◆「もうあそこはお上手ですよ。環境で本業を上手く売り込んでいますよね」 ●あとシャ-プさんとかナショナルさんなんかも見ていると「ここの商品を買うといいかもな」って思っちゃいますよね。 ◆「松下さんもここ1、2年ですよね。 多分一般の方々は御存じないのかもしれませんが、企業の環境担当セクションの方々なんかは意識していて、環境系に詳しい方々は好きなんですが、媒体としては日経エコロジーというのがあるんですよね。この雑誌の特集で年に1回環境ブランド・イメージ調査というのをやっていて、ベストの何位まで入っているとかワーストの何位に入っているというのをものすごく気にされているんですよね」 ●ちなみにそういうところのTOP 3やTOP 5に入る企業っていうのはどういう企業なんですか? ◆「今、社名が出て来たトヨタさんとか松下さんもそうですし、自動車系はほとんど上位に入っていますよね。10位までいくとニッサンさんやホンダさんも入っていましたし、あとはソニーさんも入っていたんじゃないかな」 ●アサヒビールとか・・・。 ◆「二大ビールメーカーのアサヒさん、キリンさん両方入っていました」 ●やっぱり私達がコマーシャルとかポスターで見て「おおっ!」と気が付くところは、環境対策が進んでいるんですね。 ◆「専門家のデータをとっているわけではなくて、一般の方のデータをとっていますからね」 ●それは専門家から見るとどうなんですか? ◆「嘘じゃないですからね。ちゃんとやっていることをしっかり上手にアピールしているということですから、良いことだと思いますよ。 今、全く環境に興味のない人達に企業が自社のものを売るために何かを伝える、メッセージを流すということに関して申し上げると、あまり環境の専門分野にこだわらないで流していらっしゃる所が多分そういうところで訴えているんだなと思いますね。それがトヨタさんしかりだし、松下さんしかりお上手ですよね。要は普通の生活から見た環境問題という視点で、色々な情報を発信されてコマーシャルなんかでも工夫をするのかしないのかという話になると、普通のコマーシャルと一緒ですよ。そういうところでは、普通の人が興味のあるようなことを環境に関しても流せばいいんじゃないかなと思いますね。ちょっと無責任な言い方ですけどね(笑)」 ◎企業と生活者と環境 ●環境リレーションズ研究所とはどういうことをしている団体なんでしょうか? ◆「ヴィジョンという言葉で我々が表現しているのは、一般生活者、今全く環境に興味のない層がいますよね。これだけ環境に興味を持つ人達が増えてはきていますが、まだまだそこが一番大きなボリュームを占めているんですよ。これ以上温暖化対策、環境対策、環境保全を進めていこうとするのであれば、今全く環境に興味をもっていない一般生活者の、大きな層をなしている一群を引っ張り込まなきゃいけないと思うんです。 それからこの御時世お金がなかったり、本業のほうだって危ないっていう中小企業、零細企業の方々の中で環境対策、環境保全は出来ない、したくないという人達をも引っ張り込まないとこれ以上の効果っていうのは望めないと思います。大体一部上場の先程名前が出たような大手の企業さん達はかなり頑張って環境対策とか環境保全とかされてますので、そういう人達がこれ以上頑張ったってもうあまり効果は望めないんじゃないかと思うんです。だったら今まったくそのうねりの中に入っていない人達を引っ張り込むためのインフラ作りをしましょうというのが我々のヴィジョンであり、ミッションであると思っております」 ●私も主婦として買い物に行くときにこういう番組をやっているので「おっ、よし。再生紙ものを買おう」と気持ちはいくんですけど、ふっとお財布を開けて現金少ないなと思ったときには、どうしても環境配慮ものって値段が若干高いじゃないですか。だから安いほうにいってしまうんですよ。 ◆「安いものと高いものがあったら安いほうを買うっていうのは普通の心理だと思うんですね。それは環境配慮型ではない一般の同じ商品と並べたときに、同じ値段にするように企業サイドも努力しないといけないなと思います。もしくは高いんだったら環境だけでは買わないというのは分かっているのだとしたら、別の仕掛けみたいな工夫は必要なんじゃないのかなと思いますね。『買いません』という方に私達は『買って!』とは言わないんです。『もうお好きになされて結構ですよ』という感じで、5%なのか50%なのかコストの部分で買わない人達が多いというのが分かれば、企業に対して『じゃあ、その人達に買わせるためには企業としてどうしたらいいの?』と言う方ですね。 事例として今治の『風で折ったタオル』というのがあります。あれは多分タオル・メーカーの社長さんがそういうセンスがすごくあったんだと思うんです。ウチは何かコミットしたりとかは全然関係ないんですけど、あそこは本当に上手いなと思いましたね。もちろん品質もしっかりしている日本製のタオルで、実際に触ってみるとかなり手触りもよかったりするんですが、普通のタオルなわけですよね。ただ“風で折ったタオル”というメッセージとタオルについているロゴマークに魅かれる人達が多いんですよね。ああいうやり方で高コスト分を何かで吸収してあげるような仕組みを作って差し上げないと、普通の人は買いませんよね。まだまだ一般の方であの商品を知らない人達っていうのは多いわけですよ。一度、ウチがある調査をしたときに、主婦の視点で言うとものすごい絶賛されていましたよね。“風力発電で生まれた電力を使っていますよ”というのと“素材や染色工程でも余計な科学物質を使っていません”っていうのもキーワードになっているんですよね。そういうところを気にしている主婦って多いんだなって分かったのと、あのコピーとタグで随分上手にやってらっしゃるというのは感動しました」 ●これから環境リレーションズ研究所としては、企業に対してバックアップ体制を整えて応援していくという感じですか? ◆「エコロジカル・スタンドという株式会社と、環境リレーションズ研究所というNPOをやっていると、みなさんから『どっちが何をやっているか分からない』と言われるんですが(笑)、NPOの環境リレーションズ研究所の方で目指しているのは生活者の目で企業の環境対策、環境商品や環境サービスを見て、我々メンバーは環境がわかるメンバーなので一般生活者さんに分かるように伝えてあげて、かつこちらがある程度選んで差し上げる。だからウチはのべつ幕無しに法人会を取らないんです。『本当に環境にいいのよ、この商品』『本当にこの企業は頑張っているのよ』というところをしっかり選んで、ある一定の審査をして『ここだったら我々に近づいてきてくださる一般生活者の方々に、胸を張って御紹介できますね』っていう企業達と一般生活者との橋渡しをしてあげたいということなんです」 ●一番いいのは私達がホームページを見てチェックをしたり、何かあったらメールをすることですね。 ◆「そうですね。でも今リニューアル中なのでほとんど動いていないんですよ(笑)」 ●では動きがあるまでこまめにチェックしていただきたいと思います(笑)。今後私達が出会う商品の陰に鈴木さん以下スタッフの方達のアドバイスや努力を感じながら商品を厳選して選んでいきたいと思います。 ◆「あと逆にみなさんも『こんな商品だったら買うのに』っていうような声をあげていただければ、なるべくそれに見合うものをこちらで探すのもよし、作っていただくのもよし、そういうのも大事ですよね」 ●また是非お話を聞かせてください。今日はどうもありがとうございました。
鈴木敦子さんが立ち上げ、去年9月に特定非営利活動法人、つまりNPO法人の認証を得た「環境リレーションズ研究所」の設立の目的は、環境に関わる生活者、事業者、自治体、学校、市民団体などをつなぐことで環境保全のためのインフラを創造し、環境保全に長く貢献していこうというもの。特に環境保全のためには、一般生活者と中小企業の事業者が取り組まなくてはその成果は期待できないと分析し、ホームページ上でも両者に向けた展開に重点を置いています。 現在、法人や団体、及び個人の会員を募集中(登録する種類によって利用できるサービスが異なります)。詳しくはホームページをご覧ください。 webサイト:http://www.env-r.com 最初に戻る ON AIR曲目へ ゲストトークのリストへ ザ・フリントストーンのホームへ photos Copyright (C) 1992-2004 Kenji Kurihara All Rights Reserved. |