2004.05.09放送

日本の家は国産材で。
日本山林育成協会・会長、中島篤さんを迎えて

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは中島篤さんです。
中島敦さん

 今週のゲストの中島篤さんは千葉市若葉区に本社を置く住宅メーカー/株式会社金沢ハウジングの社長として、国産材を使った家造りにこだわり、質は高く価格は安い家造りに挑戦しています。そんな中島さんが中心となって、去年12月に日本山林育成協会を設立、国産材の使用を推進すると同時に、山に木を植える事業に力をいれています。中島さんに日本山林育成協会のことや日本の森林事情、国産材のことなどうかがいました。

◎日本の家の82%が外材
●日本山林育成協会とはどういう組織で、どういう理由で作られたんですか?
「日本の山林を育成しようという目的で作りました。というのも、日本の山林というのは非常に危機的、壊滅的な状態にあるんです。そういう状態の中で、誰かが立ち上がって日本の山林を改善していこう、また将来、子供や孫の時代に育成された山林を残していこうという趣旨で作ったんです。
 国産材は非常に盛り上がってはいるんですが、まだ消費の内の18%くらいしか使われていないんですね」

●それって、これだけある日本の住宅の中で18%くらいしか日本の木を使っていないということなんですね?
「そうです。残りの82%は外国産の木材をわざわざ輸入して使っている状況なんです。だからその状況をなんとか、逆転までとはいいませんが、半分(50%)以上は国産材を使った家造りをしていこうという面もあって、日本山林育成協会というのを作り上げたわけなんです。なにかその受け皿がないと情報発信もできないので、これからどんどんと情報発信をしていきたいと思います」

●非営利の団体が自然環境問題を扱うっていうのは当たり前のような感じがするんですが、営利が絡んでくるとそこまで踏み込めずにネックになってしまっていると思うんです。そんな中で立ち上げられた日本山林育成協会なんですが、森林の再生には資金が必要だということで、その資金を参加団体が負担する¢緑の再生資金(グリーンタックス)」というのも作られたんですよね?
「はい。木を伐採したらそこに苗木を植えていこうということで、苗木資金を各企業体の中から多少の資金を出していただいて、それを日本山林育成協会が山主さんや山に還元するという仕組みになっています。それは植林だけではなくて、ある程度の木として成長するまでの5年間6年間を含めて、その間は日本山林育成協会で支援していこうと考えております。
 今、日本の山林で一番困っていることは、木を切らないといけないのに、切っていないことなんです。今、100人の人に『日本の木を切ることは良いことですか? 悪いことですか?』と訊いたときに、99%の人から『悪いことです』という答えが返ってくると思うんです。今、日本の山林が置かれた状況というのは、間伐材という形で木を切って、森の奥に光を当てていくという作業が必要なんです。でも今、森の中ではその作業が行われていないんですね。
 先程、エイミーさんがおっしゃったように木を切ることによって費用がかかる。また間伐材の処理の仕方もなかなかうまくいっていない。そういう中でその辺が手付かずになっているんですね。ですから、逆に木を間伐して切って光を当ててあげて、健全な森にしてあげなくちゃいけないと思うんです。その辺で誤解が生じているところがありますね」

●「木を切る=森林破壊」「これだけ今騒がれているんだから、切らない方がいいに決まっている」というのが正論のような気もするんですが、実際にはそうじゃないんですね。せっかく森多き日本なのに健康ではない、病気の森だらけになってしまっては、意味が無いですもんね。
「そうですね。各地でそういった現象が起きる恐れがあるということですね。ですから我々はもっと木を切ってそれを使ってあげて、またそれを苗木として植えていって、我々の代では使えませんが、お子さんやお孫さんの代に再度使っていくという循環ペースに乗せてあげて、日本の山林が年々環境が良くなる方向に持っていきたいですね」

◎金沢ハウジングは価格破壊に挑戦!
●金沢ハウジングでは国産材にこだわった家造りをしているんですよね?
「そうです。金沢ハウジングの始まりというのが、国産材を使った家造りというコンセプトで始まっているんですね。日本に生まれて日本の木を使って、それの中で住宅を造っていくというのが理想的な家造りではないかと考えております。
 国産材を使うという意味は、日本の自然なものを大事にする。今、キレイな水にするとか色々環境問題も叫ばれてはいますけど、環境の面でも使っていかなければいけないという事の方が大きいかもしれないですね。我々は日本の国土を素晴らしくてキレイな、また活性された国土にしていきたいという願いがあるわけですから、そのためには国産材を使った家造りに邁進していこうということですね。ですからその思いというのは日本を愛する、日本の山林を愛する、日本人を愛するという気持ちの中から、日本の木材を使った家造りをやっていこうという思いがありますね」

●これだけ山や森や木がある日本で、もともと木材の家がほとんどだったわけじゃないですか。なのに、あるときから何故こんなに輸入材が増えてしまって国産材が使われなくなってしまったんですか?
「これは集成材といいまして、ホワイトウッドとかレッドウッドとか北欧、スウェーデンやノルウェーやフィンランドの方から安くて、今まで国産材の弱点といわれていた反りとか割れとかねじれとか収縮といったことがない、集成材というものが出て来たんですね。それが価格帯的にも安くコストも安いということで、大量に海外から輸入されるようになってきたんですね。ですから、そういったものも確かに日本の木材が使われなくなった原因ではあるんですが、当然その頃は、日本の木材の乾燥が甘いということもあって、最近まで対抗できないという時期があったんですね。我々は、木材を見る場合に乾燥というのが一番のキー・ポイントと考えているんです。生半可な木のままで使っていると、木材というのは収縮してきたり、割れやねじれが出て来たりとかするんですよ。ですから、そういったものは住宅には使えませんので、使う場合には完全に乾燥をして含水率を15パーセント以下のヒノキか、その他の樹脂であれば、20%前後まで落としてそれを住宅に使っていくということになります。
 当社では完全乾燥機というものをあるメーカーと提携いたしまして、収縮や割れ、ねじれが少ない理想的な木材を出せるような設備を全国に作りまして、それをお客様に価値ある木材として提供できるような形になったわけです。それを使っていただければ後からの収縮やねじれ、割れが出づらい木になって仕上がります。そこが今までの木材との一番の違いだと思います」

●今までネックになっていた木材の技術はクリアになりました。そうすると「輸入材の方がまだ安いのかしら」「国産材は値段が高い」という方もいらっしゃると思うんですが、金沢ハウジングでは価格破壊にチャレンジされているそうですね?
「はい。当社では流通経路というものを全部まっさらにしまして、一番最短で消費者の皆様方に届けるにはどうしたらいいのかというところから考えました。一番早いのは山主さんから消費者の方々へ届くのがいいわけですね。今現在のルートというのがその中にいくつもの市場を通したり、仲介する業者さんを通して、非常に複雑なルートで消費者の皆様方に届くというところが、価格的にも高くなる要因でもあったわけですね。ですから、その辺のところをできるだけ簡素化して、山林からそれを伐採、製材してプレカットしてお客様に流すというルートを確立したのが大きいですね」

◎日本では木を切らないことが自然破壊
●先程、中島さんが「国産材は国内で18%くらいしか使われていない」とおっしゃっていましたが、日本山林育成協会や金沢ハウジングが価格破壊をしたり、品質のいい木材を使っていくことによって、輸入材と国産材の割合が逆転するということも考えられますよね?
「はい。十分に考えられます。お客さんから当社に対して非常にいいイメージを持っておられる方々が多いですね。今までの国産材の弱点もあったんですけど、それを今改善して価値ある材に変えていっているわけなんですけど、外材に関してはいい面と悪い面があるわけなんですね。悪い面というのは、日本の風土、気候に合った木ではないんですね。というのも、北欧にシロアリはいないんですよ。日本にはシロアリがたくさんいるんです。いない地域というのもありますけどね。そういった面では国産材の木というのは強いですしね。集成材というのはどうしても接着剤で貼り合わせていきますので、それが20年後30年後にどういう状況にあるかというものも、考えるべき問題ではありますね」

●日本の森はどんどん間引きした方がいい現状にある、そして海外の森はどんどん伐採され、その多くが日本に木材として持ち込まれていて、それが環境破壊や自然破壊に繋がっているとなると、日本の国産の木材を使えば一石二鳥、三鳥になって、いいことづくめなわけですよね?
「そうです。どんどん使っていいわけですね。日本の木というのは非常に余っているんですね。どんどん成長して増えているわけですよね。日本の山林の面積は2800万ヘクタールといわれているんですが、材積は30億立米(りゅうべい)といわれています。消費は8000万立米ということで、まだまだ自然発生するほんのごく一部しか使われていないという状況なんです。日本には切ってもらいたい木がたくさんあるんですね。そういったものを消費者の皆様にご理解していただき、国産の木材を使っていただければ、日本の林業の活性化にもなりますし、自然破壊にも繋がらないということですね。日本では逆に切らないのが自然破壊になっているわけですね」

●その辺が一般的に認識されていない一番の点ですね。
「そうですね。ですから、その辺のところが皆様方には伝わっていないところですね。今、林野庁でも日本の木を使おう、切っていこうという運動もやっていますし、住宅雑誌や色々なテレビの中でも“国産材を使っていこう”というタイトルを付けたものが多いですね。それだけ消費者の方々は家を造るんだったら、国産材を使おうという動きを肌で感じますね」

●「植林運動」というのをよく耳にするんですが、「木を切っていこう運動」というのはあまりないですよね。とはいえ、使うばかりで植林をしないというのもよくないですよね?
「そうですね。やはり木を切ったらそこに植林をしていくというのが、将来にわたって我々の山林を守っていくというところに繋がっていくと思います。切れば切りっぱなしという傾向もありますので、そういった面も含めて日本山林育成協会を立ち上げたということは、我々がそういう基準を作って、提案していきながら『山林を守るということは、こういうことなんだ』ということを紹介していきたいと考えております」

●日本山林育成協会が立ち上がってまだ半年も経っていないんですが、すでに植林をされていたり活動をされていたりするんですか?
「植林はまだ進めておりません。当社では九州の霧島山系に8.4ヘクタールの『金沢の森』というものを購入しまして、そこを日本山林育成協会の根本たるものとしてみなさまにご紹介していこうと思っております。『金沢の森』と命名したというのは、『そこがスタートになりますよ』ということもあるんですけど、我々が単なる商品を動かす業者というだけではなく、自分達も山林を手掛けていく。また製材もしていきながらそれを販売もしていくという一連の流れを、当社でもやっていきたいという気持ちがありまして、山林の、植林から伐採も一連の形のもので動かしていこうと考えております」

●日本は「切らないことが森林破壊」ということで、これからどんどん日本でも木を切って、それを使っていくということを大切にしていきたいなと思います。今日はどうもありがとうございました。

■ I N F O R M A T I O N ■
 工務店や住宅設備関係、木材乾燥機製造業など全国約40社が加盟する「日本山林育成協会」は国産材を住宅に使うことで荒れた森林を再生していこうとする活動や、森林を再生するためにかかるお金を参加団体が負担する「緑の再生資金(グリーンタックス)」のアイディアなど、民間レベルで日本の山林育成に取り組んでいます。
 そんな「日本山林育成協会」の会長「中島篤」さんが社長を務める千葉市若葉区にある工務店「株式会社 金沢ハウジングは、国産材による家造りにこだわり、住宅メーカーとして初めて林業にも参画。また品質の確保や流通の面にも取り組み、価格が高くなりがちな国産材による住宅を通常の半値程度で供給するなど、精力的な取り組みを行なっています。どんな住宅をどれくらいの価格で供給しているのかなど詳しくはお問い合わせ下さい。
 尚、「金沢ハウジング」のホームページには「日本山林育成協会」の発足会の模様なども載っているのでぜひ覗いてみてください。
問い合わせ:株式会社 金沢ハウジング
TEL :043-226-3888
WEB:http://www.koto-k.co.jp/

最初に戻る ON AIR曲目へ
ゲストトークのリストへ
ザ・フリントストーンのホームへ

photos Copyright (C) 1992-2004 Kenji Kurihara All Rights Reserved.