2004.05.30放送 青空市場をプロデュースする永島敏行さん登場 今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは永島敏行さんです。 5月22日に東京のど真ん中、銀座で美味しく安心な農産物や海産物を販売する「青空市場」が開催されました。その実行委員長、俳優の「永島敏行」さんをお迎えして、東京で「青空市場」を開催した目的、お米作りの活動、そしてふるさと千葉への思いなどうかがいました。 ◎市場は家庭の味を思いだす場 ●先程まで銀座で青空市場が開催されていましたね。 「(室内で行なわれたので)本当の青空市場ではないんですけど、これをもとに青空に出て東京のど真ん中で、パリのマルシェ(市場)のように作ってみたいなと思っているんです」 ●今回が第1回目なんですよね? 「そうです。僕は千葉だと成田で田植えとか稲刈りをしているんです。今月の初めに成田でやったときは60家族くらい来て、一緒に田植えをやりました。そこで農家の人達と付き合っているうちに、色々なことを教わるわけですね。農薬のことや食の安全であるとか、季節の旬のものや作り方を教わってすごく楽しかったんですね。これをどうにか伝えることが出来ないのかなと考えたときに、生産者と消費者の交流の場があったらなと思ったんです。パリやロンドンのマルシェ、花市場はすごく楽しいので、ただ売るだけではなく生産者と消費者の交流や対話が出来て、そこから何かが生まれてくるんじゃないかなと思って、第1回目の青空市場を行なったんです。それをこれから先に繋げていきたいなと思っています」 ●会場自体はそんなに広い会場ではないですからね。 「もともとレストランの場所ですからね」 ●まず第1に銀座で青空市場というのが、最初は「エッ!?」って思ったんですけど、歩行者天国が行なわれていることを考えると、全然違和感がないなと思ったんです。 「例えば東京のど真ん中の有楽町に家電量販店がありますよね。その隣で農作物や水産物を売って漬物を売っていたり、おばちゃん達が餅を焼いて売ってくれたり、お酒を売ったりすれば大人のテーマパークになるんじゃないかと思うんですよ。ハイテク産業のものを買って、今日の夜は何を食べようかと思ったときに食材がいっぱいあって、そこで買っていって、そこの人が作ったものを食べることが出来たりしたらいいなと思うんです。そういう意味では歩行者天国のように、日曜日はあくせくしないでぼんやりいい時間を過ごすことが出来るんじゃないかと思うんです。特に銀座には人が集まりますから、そういうものを提供できたら、そこから何かを変えていくっていう事が出来るんじゃないかなと思って、市場ということを3年くらい前からやり始めたんです」 ●第1回目を終えて実行委員長の永島さん、感想はどうですか? 「まずひとつに、嬉しい事にお客さんが1000人も来てくれたんですよ。ビルの9階でエレベーターで上がってこないと来れないような悪条件のところでも、1000人を超えたというのが嬉しかったです。終わった時に生産者のみなさんが笑顔で『楽しかった』と言ってくれたのがとても嬉しかったです。反省しないといけないのが、あまりに人が入りすぎて対話というコミュニケーションが出来なかった部分なんです。その反省を踏まえて、次にどうしたらいいのかを考えていこうと思っています。ただどうしても、ものを売るだけになってしまったところもあるのかなと思いますね」 ●私も会場にお邪魔をして見ていると気軽に話も出来るし、すごくイキイキしているなと思ったんです。 「僕はベイエフエムの地元の千葉の出身なんですけど、昔は千葉に行商のおばちゃんがいたんですよ。お米や味噌や海産物、お花とか干物を100kgくらい積んで担いで、行商でグルグル廻ったりして、そのおばちゃん達と縁側などでものを買うときに話をしながらというのが、自分の中で原点になっている部分はありますね。そういう形で話をしながら教えてもらう。例えば東京でも僕はそうなんだけど、家庭の味って何かなって思うんです。今、日本全国食材があるし、色々な料理が家庭でも作れるようにもなりましたよね。でも、種類が多い分『家庭の味ってなんだったかな?』って疑問に思ってしまうことがあるんですね。そうなると例えば、毎日食べていた漬物や味噌汁や煮物であったりする。そういうものは家庭でもなかなか作られなくなっているのかもしれませんね。我が家でも作らなくなりました。でも、冬は漬物を漬けてみようと思って一昨年くらいから白菜漬けを作ったりしているんですよ。最初は子供も嫌がったけど、最近はバリバリ食べるようになったりして、それが舌に残っていって家庭の味になったりすると思うんですよ。我が家がそうだからと言ってみんながそうとは限らないけど、家庭の味が薄くなっている中で、野菜の味などを知ってもらうという意味でも市場は楽しいところなのかなと思うんですね」 ◎永島さんは“広報担当” ●農業を始めたきっかけはなんだったんですか? 「僕は専修大学の準硬式野球部というところにいたんですけど、今日の銀座の青空市場でも野球の仲間が『学生時代は勉強しなかったなぁ』って言って、でも今それぞれに地方に行って色々なことで活躍をしていて、秋田の十文字町というところで映画館がなくなって、僕の映画の上映会をやってくれるって言ったんですね。でも、僕の映画を何本も見てもお客さんは飽きると思って、『だったら小さな映画祭を始めないか』って話をしたんです。色々なところで映画祭がちょっとずつ出てきてたところですから、僕の映画関係の仲間にスタッフとして手伝ってもらって、小さな映画祭を始めたんですよ。で、秋田の十文字というところに冬の雪の中をずーっと通っていたんです。雪の中の映画祭なんですけど、相互交流をしようと思ってもどうしても映画というものは、作った側が東京から持っていって地元の人達と討論をしても、映画を作る側が高飛車というか上から見ている感じがどうしてもあったんですよね。 で、子供も小さいということがあって、もっと交流出来るものがないかなと思ったときに『そうだ! 僕が子供のころに体験したような泥遊びを子供達にも体験させたいな』って思ったんですね。もう1つは日本全国おにぎりがどこにでもあって、例えばコンビニの棚からおにぎりがなくならないじゃないですか。常にものがあるっていうのが怖いと思いますね。『あるのが当然、ないのはどうして?』と思われたら困ると思って、例えばお米はどのように出来るのかということを、遊びの中から子供が泥遊びをしながらそのうち田植えをして稲刈りをしてということを覚えてくれたらなと思ったんです。で、11年前に田植えを十文字町で始めまして、農家の人達と色々な話をしているうちに農薬の問題であるとか有機栽培であるとか、この1億人をどのように食べさせていくかっていうことを熱く語るわけですよ。だったら僕はこれを伝える手はないかなと思って、農家の人達に聞くと『俺達は米を作ったら米に向かっちゃう』『スイカを作ったらスイカに向かっちゃう』『それに愛情を注ぐから自分達がどう見られているか分からない』って言うんです。でも、自分達のことも知ってもらいたい。そこをずーっと考えていてふと3年前に市場を思い付いたんです。外国にも市場があるし、青空市場をやったから全てが伝わるわけではないけど、少しずつ“点”で増えていくんじゃないかなと思って、市場を始めようと思ったんですね。 僕は広報担当だと思っているんですよ。こうやって農家の人がいくらいいお米いいスイカを作ったとしても、なかなかラジオや新聞には取りあげてもらえないけども、僕の仕事柄、役者をやっていたりなんかすると、こうやって取りあげてもらえるわけですよね。でも、主役は僕じゃなくてやっぱり生産者や消費者の方ですから、そこの会話、交流から何が生まれてくるかっていうと、悪いものは生まれないと思うんですよね」 ●永島さんは「おにぎり」という映画にも出演されていますけども、この映画への出演は永島さんの方から手をあげたという風にうかがったんですが。 「千葉の実家に帰って週刊誌を読んでいたら、【『おにぎり』出演者募集】っていう、米作りを題材にした映画を作るっていう記事があったんですよ。実は僕、米作りを題材にした映画を作りたかったんですよ。『畜生!やられたな』と思って(笑)、だったら出るしかないなと思って斉藤耕一さんのところに電話をして『出させて下さい』って言ったんですよね。 映画って、例えば僕らがイランやイラクを扱った映画を見てちょっとでも知ることが出来るじゃないですか。でも、日本ってちょっと下手だなぁと思うんですよね。足元にある色々な問題って映画になると思うんですよ。それを海外の人に見てもらったときに『あ、日本の人ってこういう人間だ』『日本人ってこういうことを考えているんだ』そういう意味ではお米はとってもいい題材だと思うんですよ。『米作り』そして『米と日本人』ということを描いていったときに、政治家がいくら言っても分からないことが、その映画をポンと見ることによって分かりえることってあると思うんですよね。そういう意味では僕らのような映画に携わる人間はもっと作らなくちゃいけないのかなって思いますね」 ●永島さんが「農業に関わるようになって、俳優、役者としてのあり方が変わって来ている」と答えているのをインタビューで読んだんですよ。 「役者を含めて、どの仕事でも不安感ってあると思うんですよね。で、役者っていうのは安定感がないから楽しいのかもしれないし。ただ役者の世界だけでも狭いんですよね。狭い世界の中で物事の見方が役者だけの見方になってしまうことがある。農業っていうのは政治と国ととても結びついている、そして政治に限らず生きていくために食べ物を作るわけですから、なくてはならないものですよね。 例えばこういうラジオでも意味があるなと思うんですよ。先程も言ったようにいくらいいお米や作物を作っても農家の人達にはその思いを伝える手段がない。でも僕らは伝えることが出来る。そういう思いを持って、別に農家をやらなくても、芝居のように全然違うものをやったりすると、自分の中に『あ、こういう信念を持てる』という意味では農業に関わってこうやって生きていこう。人間だから迷ったりもするけれど、生きる意味がどんな仕事でもそれぞれあるなって僕は感じられましたね」 ◎市場からも芝居や文化が生まれる ●未来を担う子供達にとって必要なものって何だと思いますか? 「今の子供達に不便さを体験させてやるということが、例えば昔の遊びをして、東京湾だったら潮干狩りをしたことを知っていたり、高い山もなくてカブトムシを簡単に取りに行ける千葉の豊かな自然を知っている僕らが、子供達にどうにかして伝えてあげなきゃいけないと思うんです。やはり子供って泥遊びが好きですよ。最初は泥に入るのを嫌がるけども、一度入ってしまったら出て来たがらないもんね(笑)。前に成田で田植えを始めたときには割と僕に近い世代の人達だったんだけど、そのお父さん達は僕らと同じようにある程度遊びを知っているから、別にそんなことをしなくていいやと思って泥遊びとかはやらなかったんだけど、今の僕らより1世代若くなった人達はお父さんお母さんがすごく楽しんでくれるのよ、子供達につられて。自分達も泥遊びのしたことのない時代なんだと思うんですよね。その中で子供と一緒に楽しんでくれているから親父的な目線で(笑)、10歳くらい下の人達と一緒にその子供達と一緒に泥遊びをするというのは楽しいですね」 ●そういう意味で言うと、空き地のようなちょっとした自然の場って昔はたくさんあったじゃないですか。それが今どんどんなくなっているから都会の子供達にとって泥遊びを公然とできるのが田植え作業だったり、農作業なのかもしれませんね。 「そうですね。都会では大人がこのようにセッティングをしなければ、なかなか遊べなくなってしまっていますね。逆に今度はドイツみたいに護岸工事していたところを昔の小川に戻すとか、川崎製鉄が今は公園になって、もしかしたら一部の海を戻そうかという話もあるとチラッと聞いたんだけど、稲毛の浜じゃないけれど、ああいう形で浜辺が戻ってきたりすると人も集まると思うんです。どんどん土地って変わっていくじゃないですか。例えば西新宿に高層ビルが出来て『わーっ、すごいなぁ』って人が集まっていたんだけど、いつの間にかいなくなって六本木や汐留に移っていたりしますよね。でも自然があるところには人がずーっと来るんじゃないかなと思うんです。だから僕正直言って、近代化になったけども千葉に住んでいてなかなか誇りを持てないんですよね。『ここがあるから楽しいよ』っていうのを海があるときは言えたのね。今は、九十九里とか小湊とかは言えるんだよね。千葉の楽しいところはあそこだって誇りをもてるけども、千葉市内辺りだとなかなか『あそこは楽しいんだよなぁ』って胸を張って言えるようなところがないんですよね。そういう意味では自然とともに遊べる、僕は特に海が好きなので、そういう海がもし取り戻せるのなら協力したいと思いますね」 ●これからも永島さんは役者をやりながら、どんどん自然にも目を向けスポークスマンという形で邁進していかれるんですね。 「役者は基本ですね。役者である程度輝いていかないと、いくら言っても話題にならないような冷たい世界ですからね(笑)。そういう意味では、僕は役者が好きなので本業も頑張って、そして同じような路線で代弁したり、でも市場からでも芝居や文化って生まれてくると思うんですよ。例えば市場で音楽会をやっていたりとか、『この市場でこういう題材があるから、芝居をやってくれないか?』という会話にもなっていくと思うんですよね。人が交流すれば何かは生まれてくると思うので、役者もやって農業や漁業の方にも力を入れたいなと思います」 ●すでに7月17日には第2回目の青空市場の開催が決定していますけど、最後にそれに関する意気込みを聞かせて下さい。 「今日もこれから帰って反省会をして色々なアンケートを見て、色々なところに参加していただいて、その農家の人達の思いを束ねてこれから2回3回と続けて是非良いものに作り上げて、買いに来る人が楽しく1日過ごせる場になれたらなと思います」 ●7月にまた、我々フリントストーンも遊びに行きます。 「もう是非、遊びに来て下さい。今度はもっと僕1日中いられると思うので(笑)、もっと頑張ります」 ●その時を楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました。
尚「永島」さんのプロフィールなどの情報は所属事務所のホームページ。また「永島」さんが出演されている映画『おにぎり』の上映予定については映画のホームページをご覧下さい。 「永島敏行」さん情報:http://www.skycorporation.co.jp/talent.htm 映画のHP:http://arcadia2002.ld.infoseek.co.jp/ 最初に戻る ON AIR曲目へ ゲストトークのリストへ ザ・フリントストーンのホームへ photos Copyright (C) 1992-2004 Kenji Kurihara All Rights Reserved. |