2004.09.26放送 シンガー・ソングライター・白鳥英美子さんを迎えて 今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは白鳥英美子さんです。 ベテラン・シンガー/白鳥英美子さんが、先月ベスト・アルバム『ザ・クラシックス~ビューティ&グレイス~白鳥英美子ベスト』を発表されました。今回はベスト盤の収録曲に関するエピソードや、白鳥さんらしいライフ・スタイルのことなどうかがいます。 ◎すごく不思議な作詞方法!? ●みなさんご存知だとは思うんですけど、白鳥さんはトワ・エ・モワでデビューされて35年になるんですね。 「そうです。トワ・エ・モワでデビューしてから35年目になります」 ●私はずーっと聴いてました。 「生まれてました?(笑)」 ●もちろん生まれてましたよ(笑)。そして、ソロになられてから31年。 「そうですね。そのくらいになります」 ●先月の8月4日に、これまでの音楽キャリアの集大成といえるベスト・アルバム『ザ・クラシックス~ビューティ&グレイス~白鳥英美子ベスト』を発売されたんですよね。 「はい。トワ・エ・モワの頃は除きまして、ソロになって、しかも『アメージング・グレイス』というアルバム以降の私が出してきたアルバムからのピックアップ曲のベストなんです。今までクラシックの曲を歌ったり、トラディショナル・ソングやポピュラー・ソングを歌ったりして、自分の好きな曲ばかりを幸いにもアルバムに収めさせていただいていたので、それを総まとめして35年を記念したアルバムになればいいなということで作ってみたんです」 ●ちなみに、このアルバムにも収録されている様々なクラシック・ナンバーがありますが、これに歌詞を付けられて歌われている中で、白鳥さんが曲を書かれるときにインスピレーションを得るのは、自分が見聞きしたり読んだものだったり、どちらかというと感じるものが多かったりしますよね? 「瞬間的にピュッと感じるときがあるんですよ。例えば、詞を書くときに大好きな詩人がいるんですけど、その人の本をパラパラ見ているだけでいいんですよ。エミリー・ディッキンソンという詩人が好きなんですけど、パラパラと何十年も同じ人の詩集をめくるんですよ。そうすると、めくっていて『あぁ、やっぱり彼女の想いってこうなのかぁ』とか色々感じるんです。読んでいるっていうわけじゃなくて、字を追っているだけなんですけど、『稲妻がナイフのように』というポンと出て来た一言だけで、『稲妻かぁ』とかって空を見つめる時間があって(笑)、稲妻と全然関係のないところで詞がボーッと出てくるんですよ。だから、詞のでき方がすごく不思議ですよね。瞬間に何かがヒュッと入ったときに、そこから広がって詞が書けるとか、曲ができるとかしますね」 ●白鳥さんの曲にしても詞にしても穏やかですよね。 「あぁ、そうですか。大らかですか?」 ●うん。イライラしているときに聴いても『ハァーッ』ってため息から、だんだん自分の呼吸がゆっくりになっていくのを感じるような。今回のベスト・アルバムの中にも『空は優しい母のように』というタイトルがあるんですけど、白鳥さんの歌が優しい母のようって感じたんですよ(笑)。 「そうですか(笑)。これは私が日本語の詞としてヘンデルの曲に詞をつけちゃったんですが、良かったのかなぁとは思いながらも自分でも好きな曲なんです。ヘンデルの曲はこの詞とは全く違う曲のはずなんですよ。ただ、メロディーが物凄く気に入っていて『このメロディーにいい詞ができたら歌いたいなぁ』と思っていて、何度も何度も聴いているうちに『弦のカルテットのような演奏で歌ったらいいんじゃないかなぁ』って自分で想定していくんですけど(笑)、想定していってフッと空を見上げたときに『あっ、空ってどんな人にも同じように平等にあって、何か包んでくれるようなところがあるなぁ』って思った瞬間に、ヘンデルの曲のイントロのような雰囲気が分かってきて、『これはもう、絶対弦カルでいこう!』とかって思いながらだんだん詞が出来てきたんです(笑)」 ◎ハーブとお米のとぎ汁・・・!? ●今回のベスト・アルバムに収められているクラシック・ナンバーなどを聴いていると、私はマンションのベランダでちょっとしたガーデニングを楽しんでいるんですが、その時に白鳥さんの曲を聴くとすごく気持ちがいいんですよ。スズメ達のチュンチュンという鳴き声が周りからステレオのように聴こえてくると、植物に対してもとても優しい気持ちで土を替えてあげたりとか、お水をあげられたりするんですけど、実は白鳥さんもガーデニングがお好きなんですよね? 「ええ、そうなんです。ウチは通路の横に土が少しあるかなぁっていうくらいの本当に小さい庭なんですけど、そこにひしめき合うように四季折々の色々な植物や花やハーブが植わっていまして、私も愛で楽しんでいます。時には雑草と化しているときもありますが(笑)」 ●ハーブって育てるの難しいですよね? 「ハーブはほとんど雑草みたいになりますよね。だから、今年の6月辺りから雑草がバーッと生え始めて、ちょっとおさぼりしてたら『あれっ!? ペパーミントとこの草どっちだっけ!?』って感じになってしまって、引っこ抜いていたら大事なペパーミントまで抜いちゃって(笑)、『あっ! なくなっちゃったぁ』ってことがよくあるんです(笑)。でも、楽しいです」 ●落ち着きますよね。 「落ち着きますね。ロ-ズマリーなんかは、木になってしまえば大分立派になるんですけど、ウチのは枝がまだフニャフニャしている状態なんです。それでも、お水を上げるときにちょっと触れたりするとプーンと香るでしょ。その瞬間に『あっ、やっぱり気持ちがいい』なんて思って、少し摘んでカットしたものを束ねてぶら下げておいたりすると、ポワーッといい匂いがして香りに癒されますよね」 ●アロマテラピーとか色々ありますけど、自然に生えて土に植わっているものが風に吹かれて自然と香ってくるのにはかなわないなって思いますよね。 「ええ、本当にそうですね。人工の香り付けをしたものとは違う、深いところがありますよね。お風呂にポンって投げ入れたりしてもいいですしね」 ●白鳥さんはそんな植物たちにあげる水って、お米のとぎ汁を使ってらっしゃるって聞いたんですよ。 「うん。とぎ汁って生活排水の中で一番始末が悪いってよくいわれますよね。何度も何度も浄化してもとぎ汁の色を薄めるのはなかなか大変だという話を聞いたことがあるので、なるべく流さないですむならって思って、栄養にもなるので『じゃあ、お花にあげようかなぁ』って思って、といだのを桶に溜めて庭にパーッと撒いています」 ●そういう環境問題っていうのは? 「環境問題という大袈裟なことは、私よく分からないですけど、自分が出来る範囲のことはしておかなきゃと思って最低限の、とぎ汁のこととか油を流さないように油もののお皿が出たら紙で拭いて洗うようにしています。そのくらいはみなさんもきっと心掛けていらっしゃると思うので、あと分別するとかそのくらいです。それが最低限、生活していくうえで守っていけば、かなり違うんじゃないかなと思って、意識として持っていたいなっていうくらいです」 ●それが環境のために少し役立ち、植物たちにとっては栄養になるので一石二鳥ですね。 「ええ、素晴らしいと思います」 ●そのおかげで素敵な香りを私達はもらえるということですね。 ◎白鳥さんと『ガイアシンフォニー』 ●今回のベスト・アルバムの中には、私も大好きだったアメリカン・ポップス、キャット・スティーヴンスとかPPM(ピーター、ポール&マリー)の曲のカヴァーも入っています。特にPPMの「ゼア・イズ・ア・シップ」は、この番組では龍村仁監督のドキュメンタリー映画『地球交響曲/ガイアシンフォニー第3番』の「ナイノア・トンプソンってカッコイイ!」っていうシーンで流れるという、あのシーンにはあの曲以外ないだろうっていうくらいピッタリの曲なんですけど、白鳥さんは『ガイアシンフォニー』という映画はもともとご存知だったんですか? 「実は、この『ガイアシンフォニー』という映画で私の曲を使って下さるという連絡を受けて、試写会の時に見させていただいて、その時に初めて知ったような感じなんですよ。それで知ったときにこんなに素晴らしい映画があったんだって、知らなかったのが申し訳ないくらいで、その時に星野道夫さんのことも知ったんです。写真家の方だっていうのは、写真に興味のある方には非常に有名だと思うんですけど、私あまりよく知らなくて、『ガイアシンフォニー』を見て知ったんですけど、なんて素晴らしいんだろうと思って、後になってしまったんですが、本や写真集を買わせていただいて、すごく感動しましたね。特に本を読んでいて『なんて文才のある方なんだろう』って思うくらいキレイな文章を書かれる方なんですよね」 ●白鳥さんの曲が使われている『地球交響曲/ガイアシンフォニー第3番』は星野さんが亡くなったときに作られている作品で、本当は星野さんと一緒に作るはずだった作品なので捧げられているんですよね。 「その星野さんが出演されているっていうのが涙を誘いますよね」 「ええ、そうなんですよ。星野さんの『森と氷河とクジラ』という本を買って、写真も随分載っていたので、写真を見ながらその本を読んでいて、カナダのインディアンの方達の残してきた歌の中に本当に素晴らしい歌がたくさんありまして、その詞を読んでいたらジーンとくるものがすごく多かったんですよ。その本に影響、触発されて、読んでいるうちにメロディーが色々出来てきたんですね。ちょうど私がアルバムを作っているときだったので、『浮かんできたメロディーにいい詞が付けられないかなぁ』って思いながらパラパラめくっていたら、フッと目に飛び込んできた詩の中にすごく曲とマッチしそうなものがあって『あっ、この感じでいきたいな』って思ったんです。星野さんの生き様とかを思い浮かべながら詞にして出来た歌が、今回のベスト・アルバムには選んでいないんですけど、『月』というタイトルで私のアルバムの中に収めてあります」 ●『アイム・ヒア』というアルバムに収録されているので、そちらでチェックしていただきたいと思います。 ◎すべては考え方ひとつ ●白鳥さんはとても穏やかで、ストレスなんかないように見えますけど、せかせかした時代を生き抜く秘訣みたいなものがあるんですか? 「周りの時間の流れに合わせなければいいんじゃないかなって思うんです。例えば、何時から何があって、何時に自分がこうしなくちゃいけないっていうと、“そうしなきゃいけない”って思った瞬間に窮屈になりますよね。だけど、“いけない”って思わなきゃいいんじゃないかなと。解釈の仕方かなっていつも思うんですけどね。 話が変わるかもしれませんが、昔私の娘が小さかったときに保育園に預けてたりしていたんですよ。それで、保育園に預けるときに、預けて『いってきまーす』って手を振ると、子供がお母さんと離れたくないから『行かないでー』って感じで、嫌で泣いちゃいますよね。そうすると、瞬間親って『あっ、かわいそうかな』って、預けるっていうのを後ろめたく思って『かわいそう』って思ってしまうんですよ。そうすると、自分のしていることをマイナスに考えてしまうんですよ。 その時にひとりのお母さんが『預けて“かわいそう”って思った瞬間に、その子はかわいそうな子になってしまう。親がかわいそうと思わなければその子は絶対にかわいそうな子じゃない。だから、そういうのって気の持ちようで、“あなたはここで楽しく過ごしなさい。お母さんはお母さんで仕事に行ってくるから。じゃあねー! お互い頑張ろうねー”っていう気持ちでいればその子はかわいそうな子には決してならないし、誰もかわいそうな子とは思わない』って言った時に『わーっ、この人賢い』って思ったんです。 そこから私は考え方が全然変わって、『全て考え方1つでどうにでもなるんだなぁ』ってその時に思ったんですよ。子育てのこともそうだし。だから、時間がなくて子育てもちゃんと出来なくて、私はどうしたらいいか分からないって人がいたとしたら、全て考え方1つで変わるんじゃないかなって思いますね。時間の使い方がグシャグシャになってストレスがいっぱい溜まりますっていう人も、考え方次第で溜まらないんじゃないかなって思えるようになると思うんですよ」 ●私も結構チャカチャカしちゃうので、白鳥さんのアルバムを聴きながら考え方を変えるようにしたいと思います。これからも旅をなさったときなども是非、この番組でお話を聞かせて下さいね。今日はどうもありがとうございました。 「そうですね。また呼んで下さい」
トワ・エ・モアでデビューして35年、ソロになって31年の大ベテラン・シンガー「白鳥英美子」さんのベスト・アルバム。テレビドラマ『女と愛のミステリー』のエンディング・テーマとして書かれた新曲に加え、シンガー・ソングライター「キャット・スティーヴンス」で知られる「モーニング・ハズ・ブロークン」の歌詞を替えた曲や、映画『地球交響曲/ガイアシンフォニー・第3番』の挿入歌、エルトン・ジョンやサラ・ブライントマンのカヴァー曲、ゴスペルの代表曲「アメージング・グレイス」の他、ヨハン・シュトラウスやシューベルトなどのクラシック・ナンバーに歌詞を加えた全16曲を収録。まさに時間帯も季節も時代も問わず楽しめる作品。 白鳥英美子さんのウェブサイト:http://www.infortech.co.jp/es/ 最初に戻る ゲストトークのリストへ ザ・フリントストーンのホームへ photos Copyright (C) 1992-2004 Kenji Kurihara All Rights Reserved. |