2004.10.10放送 アファン“心の森プロジェクト”2 ツリー・クライミング 今週はアファン“心の森”プロジェクト取材の第2弾。同財団の理事長、作家の「C.W.ニコル」さんと、今回ツリー・クライミングのプログラムを担当するツリー・クライミング・ジャパンの代表「ジョン・ギャスライト」さんの対談をメインに、ツリー・クライミングの模様をお送りします。 ◎子供達の心にあるタネを育てたい! ●今、私の前にはC.W.ニコルさんと、ツリー・クライミング・ジャパンの代表でツリー・クライマーのジョン・ギャスライトさんがいらっしゃいます。ニコルさんには先週も出演していただきました。ジョンさん、ご無沙汰しております。 ジョンさん「ひさしぶりですね」 ●今回は、アファン“心の森”プロジェクトで、参加している子供達にツリー・クライミングを体験してもらおうということでジョンさんがここにいるんですけど、ニコルさんはもともとジョンさんとは仲良しなんですか? (笑うジョンさん) ニコルさん「弟のような感じですね。付き合いは長くないんですけど、ジョンさんの仕事を見て僕は深く感動しました。最初のツリー・クライミングをここでやったときに、階段も上れないくらいに自信のない8歳の女の子が1時間で8mくらい登っちゃたんですよ。その親の感動と子供の感動を見て『この人はすごいパワーがあるな』と思ったんです。で、優しいんですよね。考えてみたら、人間の子供はサルに近いから何かあったら本当は上に逃げたがるんですよ。だから、木に登るDNAは人間にあるんですよ。でも、落ちる恐怖も同時ですよね。でも、絶対落ちないシステムをジョンは教えているから、木の上の世界は子供だけではなくて、人間にとっては失ったエデンの園の大きい部分だと思うんです」 ●ニコルさんが言っていたみたいに「高いところは怖い」「落ちるんじゃないか」という子供達の不安をどうやって慣れさせたり、大丈夫にしたんですか? ジョンさん「まず、『怖いことはいいことだよ』と言って誉めるね。安全なことを理解できるようにとか、子供達のペースを大事にする。私達は『行きなさい! 行きなさい!』とか『あそこまで行きなさい』とは言いません。ゆっくりと木と友達になって、木を触りながら。そして、だんだん木と友達になると安心感が湧いて、少しずつ『あっちまで行けるかなー!』『こっちまで行けるかなー?』という気持ちになるので、僕達も子供達と手を繋ぎながらとか触りながらとか、安心させていきながら高く登らせることが出来るでしょ。そして、子供達にだんだん自信がつくと、今度は大人から離れたい(笑)。自分で行きたい。そうするとだんだん自分で登っていきますね。そういうことを考えると、私達は登りやすい環境と、心にもともとあるタネ、勇気があるとか頑張れるタネに栄養をあげたりして育てていきたいですね」 ●この先の木にはもう(ツリー・クライミングの)準備がしてあって、私の後ろにはスパイダー・マンの網の目のようなものがあります。最初、私は安全ネットの変わりにロープを張っているのだと思ったら違うんですね。 ジョンさん「違うんです。実は、昨日の夜に子供達がすごく喜んでいて、ここでカエルを見つけたとかクモを見つけたとか、クモの巣はすごかったとか、やっぱりニックさんのところだからクモでも大きいとか話をしていて(笑)、子供達がすごく興奮していたので嬉しかった。じゃあ、クモの巣を作ろうかなと思った。で、ここでロープを張って下にクモの巣を作って、子供達がその上を歩くようにロープを張ったりしていて、ハーネスをはかせて落ちないようにする。で、僕がクモになって子供達がハエになって、クモの巣の中にクモしか歩けない場所を作ったの」 ●それで、ロープの色が違うんですね。 ジョンさん「そう。クモが巣を作るときに特別な糸を出すんですね」 ニコルさん「そうそう。ベトベトした糸が獲物をとる糸ですよね。それとクモが歩ける糸は違うのよ」 ●じゃあ、他の生き物はクモが歩ける糸ならくっつかないけども、ベトベトした糸にくっついてしまうと、動けなくなってしまうんですね。 ジョンさん「逆にクモが間違えてベトベトのところに行ってしまうと、クモが動けなくなってしまうんです(笑)。子供達にそういう世界を味わって欲しいと思って、この『ツリー・スパイダー・ゲーム』を考えました(笑)」 ニコルさん「最高にいいと思うね」 ニコルさん「やりたいけどね・・・」 ●ちょっとこれだと小さいもんね(笑)。 ニコルさん「でも、ジョンくらいのクモがいたら怖いよなぁ(笑)」 ●(笑)。でも、地上から少し高いところなので、これをやることによって高さにも慣れるでしょうしね。 ジョンさん「うん」 というわけで、地上150センチぐらいのところに張り巡らされた「ロープのクモの巣」。子供達は、ヘルメットとハーネスがついた器具を身に付け、何人かずつクモの巣の上に登りました。ハーネスがついた器具は、クモの巣の上に張られたガイド・ロープに通してあり、命綱のようになっているのですが、最初はクモの巣の上に立つことをちょっと怖がっていた子供達も、地面に落ちる心配がないと分かった途端、わざと足場を外して、まるでブランコに乗っているように、宙吊り状態を楽しんでいました。実はこの「ツリー・スパイダー・ゲーム」は、子供達に高さに慣れ、落ちないという安心感を持ってもらうための遊びだったんです。 ◎念願のビッグ・ブラザー!? ●アファン“心の森”プロジェクトで、ジョンさんは何度もやっていらっしゃると思うんですけど、子供達の終わったあとの表情ってどうですか? ジョンさん「私達が一緒にツリー・クライミングが出来てすごく嬉しい事というのは、他のプロジェクトと調和があることなんですね。例えば、子供達がゆっくりとした音楽を聴くとか、歩くとか、ニックさんと一緒に(何かを)発見するとか、他のプロジェクトで学んだこと味わったことを、ツリー・クライミングの中に入れ込むことが出来るんですね。 すごく嬉しいのが、最初、子供達は怖いとかお互いになかなか声をかけないとか、友達になれなかったりで、たまにキツい言葉がでてくるんですね。でも、ツリー・クライミングをしていくと助け合ったり、自信がつくと優しくなって他の人を助けたりする。最初からずっと登っていく子もいるけど、みんなペースが違う。怖くてなかなか登れない子やすぐ行っちゃう子。その色々なペースがあって、下りてくる頃にはみんないい顔になっています。嬉しいですね」 ニコルさん「子供は自分に自信を持つ。それから、大人に裏切られた子供が結構いるんですよ。でも、信用できる大人と見分けが出来るようになるんですよ。だから我々、ジョンかジョンのスタッフか僕が来るとパッと子供が集まるでしょ。呼んだわけじゃないんですよ」 ●みんなワーッと集まってきますよね。 ジョンさん「ツリー・クライミングはただ木を登るだけではなくて、スタッフのプログラムとか心のケアとかをみんなに教えたり、子供達と同じ目線に合わせて話をするとか、言葉を気をつけているとか。ここアファンで味わったことは、今後の自分の人生で活かす道具とも言えるし、プラスになる。ここ(木の上)に登って高いところから森を見て、違う視点で周りを見ると、学校に行ったりとか社会に出たときに違った視点で見ることが出来るようになる。もう一つ、子供達は過去に色々なことがあったんですね。で、そういうことがあったから自分の自信とかプライド、自分はすごいなぁという部分が難しくなってくるから、このツリー・クライミングで『僕、すごい! こういうことも出来るから、ああいうことも出来る』という自信や、もう一つ、森って全ての木が友達だ。この木は逃げない。いつでも待っているという心の余裕も味わってくれたら嬉しいなぁと思う」 ニコルさん「僕は小さいときに重い病気になって、心臓も足もダメだったんですよ。で、僕のおばあちゃんが僕が5~6歳の時に『森に行きなさい』と。それで『大きな木と兄弟になって』と木にお願いして、それからゆっくり木に登りなさい、木の息を吸いなさいと言ったんです。木の上の空気が精油という物質をいっぱい出しているんですよ。だから、木の上にいるだけでも肺を通してすごく健康のためにいいのよ。木と付き合うようになって、ギブスをはめていた子供が6週間目に、森に走っていって走って帰っていったんですよ。だから、本当は2、3日ではなくて1カ月のプログラムがあればいいなと思っています。それで、世界中に小さな学校で森の中、自然の中で色々なことを教える学校があれば理想的だなと思っています」 ジョンさん「僕も、ニックの隣に座って言うのは恥ずかしいから、ニックあっちを見てね(笑)」 (笑いながら遠くを見るニコルさん) ジョンさん「ウソウソ(笑)。アファンの森に来ると子供達も元気になるけど、私達大人も元気になるんだよね。僕ね、42歳の大きな男になって他の人をハグすることはなかなか出来ないね。自分より小さい子供をハグしたり、自分より痩せている奥さんをハグする。でもニックさんとハグをするとものすごく元気をもらえるね(笑)」 (笑うニコルさん) ●大木にハグをされているみたいですね(笑)。 ジョンさん「毎回来ると『がんばってー』とハグされる。ビッグ・ブラザーからそのパワーをもらって僕はまた頑張れるから、ここに来ると子供達を元気にさせる素晴らしい森だと思うけど、僕達も元気になるね」 ●面白い組み合わせですね。アファンの森にいる“ビッグ・ブラザー”ニック・ザ・べアーと、“リトル・ブラザー”スパイダー・ジョン(笑)。 ジョンさん「いいじゃない(笑)」 ニコルさん「あんまりリトルじゃないけどね(笑)」 ジョンさん「だんだん大きくなってきた(笑)」 ジョンさん「僕も小さいときに両親の離婚など色々あって施設に入れられたこともあったから、子供達を見るとすごく親近感が湧くのね。僕もお父さんがいないときが長かったしね。いつもその時に、僕も理解をしてくれるビッグ・ブラザーがいたら嬉しいなって思っていたの。長い間、僕にとってお父さんはそういう存在ではなかったから、僕は本当にビッグ・ブラザーが欲しかった」 ●じゃあ、念願のビッグ・ブラザーがニコルさんなんですね。 ジョンさん「そう! やっとビッグ・ブラザーが出来たね」 ◎木は物を感じている・・・ 野口さん「はい。りさぴーです(笑)。よろしくお願いします」 ●子供達は木の結構高いところまで登っていますね。 野口さん「初めてなんですけど、誰でも登れるっていうのがこのツリー・クライミングの良さで、どんどん上に上がっていますね」 ●先程も、(子供達は)説明を聞くよりも先に登りたそうにしていましたもんね。このツリー・クライミングを“心の森”プロジェクトに取り入れてどれくらいになるんですか? 野口さん「今年から“心の森”プロジェクトがスタートしたんです。施設の子供達を招いたのは4回あるんですが、4回やって4回ともツリー・クライミングをやってもらっているんです」 ●子供達の反応はどうですか? 野口さん「このツリー・クライミングの良さは、子供達に達成感を味わってもらうっていうのが一番大きな狙いで、このシステムは自分の力ひとつだけで上がっていくんですね。自分の力で頂上まで行くっていう達成感というのは、他のプログラムではなかなかないもので、下から私達が『がんばってー!』とか『すごく高いね!』とかって声をかけると、子供達もすごく嬉しくなって。自信を持ってもらうっていうことがすごく大事なことなんですね。どちらかというと普段はみんな消極的で、自発的に何かをするというのがとても難しかったりするんですね。そこが、木と一緒になって森の中で自分の力で上がっていくっていうことに一生懸命になると、それで自分が何かひとつをやり遂げたという満足感を持ってもらえるにはすごくいいプログラムです」 ●子供達はどんどんと高いところへ進んでいます。 野口さん「ちょっとずつ進んでいくんですけど、そのちょっとずつの積み重ねで、気がつくとすごく高いところまで行くっていうところが、本当に適応能力がすごいですよね」 ●このツリー・クライミングの良さって、自分のペースで登れるっていうところにあると思うんですよ。 野口さん「疲れたら途中で休んでブランコ状態になっていてもそれはそれで楽しいし、上の方のツリー・ボートまで行ってゴロンと横になることも出来るしっていう感じでいいですね」 ●今の「いいですね」はうらやましいの「いいですね」ですよね?(笑) 野口さん「そうそうそう(笑)」 ●私達は指をくわえて見守りたいと思います(笑)。
ニコルさん「僕は日本国籍をいただいているでしょ。日本との付き合いは僕の人生で一番長い部分です。僕は日本にお返しをしたかった。だから、この土地はいつもいつも(少しずつ)買ったんですよ。それで2年前に全部寄付したの。僕が持っているお金は全部あげた。だから何もないの。でも、何でもある。それで、目に見えないものをたくさんいただいています。だから僕、年金はもらえないけど(笑)、全然心配ないよ、森があるから。僕はもう64歳ですからね。でもこの森は財団になっているから残る。その安心があるんですよ。自分が愛している自然が、自分がいなくても残るというのはものすごく大きいですよ。ジョンさんは僕より若いから、僕があの世に行っても、上か下か分からないけども・・・(笑)」 ●木登りみたい(笑)。 ジョンさん「ツリー・クライミングやろうよ!(笑)」 ニコルさん「ジョンさんは絶対に来てくれるんですよ。我々が見ている木が育つんですよ。大きくなるんですよね。で、ジョンの息子たちが大人になったら、ジョンの思い出も木の年輪に入っているんです。これ非科学的だけど、木は物を感じていると思っているんですよね。だから、木の年輪に目に見えない感謝とか恐怖とか嬉しさが全部入る。森全体が生きていますね。生き物の中に抱かれているんですよ」 ◎木と人は同じ! ジョンさん「ツリー・クライミング、楽しかった人、手を挙げてー?」 子供達「はーい!」 ジョンさん「もう1回木に登りたい人はー?」 子供達「はーい!」 ジョンさん「上はどうだった?」 子供「怖かったけど、楽しかった」 ジョンさん「上から見ると違う風に森が見えるね。下から見るのと上から見るのとでは木が全然違うね。考えてみると僕達は森を歩くときに木のお尻ばかり見ているね。今日は木の上から見たから木の頭が見えた。みんな笑顔でニコニコしてたけど、木もニコニコしていたと僕は思うね。これから、大変なこともたまにはあるね。学校でも色々なところでも、友達が出来ないとかなかなか大変なときは思い出して。あんなに高い木を登って、それはすごいことだよ。そういうことを出来る人は何でもできると僕は思うね。最後にみんなで手を繋いで。 この森の木は1本1本の木に見えるけど、実は見えないところでみんな繋がっているんだよ。この土の下で根っこが全部噛み合ってる。僕達みたい。実は森は僕達と同じ状態だよ。繋いでいるから、1人が動くとみんなが動くね。木は1本だけだったら風ですぐ倒れちゃう。1本ずつだったらすぐ森がダメになっちゃう。全部木が手を繋いで友達になって生活しているから森はこんなに元気になっている。実は、僕達の学校もそうだし、全て同じだよ。私達も独りぼっちになったらすごく寂しい。でも、みんなで手を繋いで頑張ると楽しくて強くなれるね。じゃあ、大きい声でこの森にありがとうを言おうか。今日は木のお陰で出来たから」 全員「ありがとーう!」 ジョンさん「では、アファンのみなさんにもありがとうね」 全員「ありがとーう!」 ジョンさん「じゃあ、僕達大人は子供達が来なかったから何も出来なかったから、大人たちだけで子供達にありがとうね」 大人全員「ありがとーう!」 ジョンさん「みんなありがとうね」
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