2005年1月23日

写真家、丹葉暁弥さんのシロクマに首ったけ!

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは丹葉暁弥さんです。
丹葉暁弥さん

 シロクマに魅せられた写真家「丹葉暁弥(たんば・あきや)」さんをお迎えします。「丹葉」さんは毎年、シロクマが集まるカナダ北部の街「チャーチル」に通い、一昨年、写真集「Promised LAND~シロクマの約束」を出してらっしゃいます。そんな「丹葉」さんに、シロクマの生態やシロクマの生存を危うくする、ある問題についてうかがいます。

シロクマの毛はストロー!?

●シロクマの写真集「Promised LAND~シロクマの約束」を拝見しました。

「ありがとうございます」

●そもそも丹葉さんがシロクマに魅せられたキッカケというのは何だったんですか?

「もともと動物が好きで、特に寒い地方にいる動物というのがとても好きなんですね。動物園に行っても、昔からシロクマが好きだったんですが、実際に自然の野生のシロクマというのはどういう生活をしているんだろう、どういう行動をしているんだろうという疑問がまず最初にありまして、『じゃあ、シロクマに会いに行こう』と、そういうキッカケですね」

●初めて、シロクマと対面したときはどうでした?

「目の前に檻がなくて不思議でしたね(笑)。実際にどういう形で会えるのかというのが不安だったんですが、本当に小さい街なんですけど、町外れの道路を走っていると、道路の脇をまるで野犬のように歩いているというのが最初の対面だったんです」

●丹葉さんはよくカナダの北部のハドソン湾に面しているマニトバ州のチャーチルで、シロクマの写真を撮っていらっしゃるわけですけど、そこではシロクマが道路脇を歩いているというのは珍しくないんですか?

「ええ。シロクマが集まる街と言われているくらいに、シロクマの密度がとても高いところなので、道路沿いを歩いているっていうのを頻繁に見かけることはありますね(笑)」

●(笑)。年に1回くらい行ってらっしゃるんですか?

「はい、そうです。シロクマがその地域に集まるのが、1年に1度しかないんですね。10月の半ばから11月の半ばにかけてくらいの大体1カ月間に集中します。なぜ、この期間にシロクマが集まるかといいますと、ハドソン湾が結氷する時期なんですね。ハドソン湾が結氷しますと、シロクマはアザラシが主食なんですけど、アザラシ猟に出るためにそこに集まってくるんですね。で、そのチャーチルという街がハドソン湾の中で一番最初に結氷する土地なんです」

●猟のスタート地点なんですね?

「そうです」

●シロクマって夏場はどうしているんですか?

「チャーチルという街は北極圏よりもちょっとだけ南にあるんですけど、ツンドラ地帯に属しているんですね。夏の間、シロクマ達はツンドラ地帯の比較的涼しい場所を選びまして、地面を掘って、なるべく体温を上昇させないようにして、ジーッとなるべく動かないようにして、という夏場の半年間が絶食の時期になるんですね」

●普通、クマっていうと雪が降ると食いだめをして冬眠をするじゃないですか。シロクマは冬眠はしないんですか?

「シロクマは冬眠しません。といいますか、クマは冬眠するといわれているんですが、実際、冬ごもりという言葉のほうが正しいんですね」

●そっか! 実際には寝ていないんですね。逆にシロクマさんは暑さをしのぐために?

「そうです。ただ、寝るわけではなくて、普通に過ごすわけなんですが、冬の間、1年の半分のアザラシ猟の時にお腹をいっぱいにしまして、残りの半年を絶食という形ですから大変ですよね」

●胃に悪そうな生活していますよね(笑)。私、丹葉さんの写真集を読んでいて、『あ、そっか!』と思ったことがあって、シロクマって白いクマでシロクマっていいますけど、シロクマの毛って真っ白ではないんですね?

「そうなんです。実をいうと、透明に近いです。構造的にも人間の髪の毛のように1本ではなくて、ストローのように中が空洞になっているんです。これは光ファイバーとかの理論と同じだと思うんですけど、太陽光線を効率良く地肌に取り入れるために、そういう進化になったんだと思います」

●透明だといわれて納得するのが、写真を見ると、太陽の当たり具合によって色が全然違って見えちゃうんですよね。

「そうですね。その時間帯の光によってシロクマの体がオレンジ色に染まったり、ブリザードのような雪嵐の時には青白く染まったり、真っ白ではなくて色々な色に変化しますね」

鼻を曲げたシロクマは危険!

●写真集を拝見すると、かわいい親子連れの子グマがカメラのほうを見ていて、親グマはその隣で警戒しているという写真がありますが、親子連れっていうのはそばに寄ると危ないんですか?

「そうですね。日本にいるクマもそうですけど、子供を連れたクマというのが一番危険だと思います。もともとシロクマ自体は好奇心旺盛な動物なんですけど、子供を連れているときには本当に警戒心が強くて、人間の姿を見つけると近づいてきません」

●オスのシロクマはどうなんですか?

「オスは危険は危険なんですけど、ある程度行動さえ読めてしまえば、比較的動物園にいるようなかわいいシロクマって感じですね(笑)」

●「ちゃんと行動さえ読めていれば」っていうのが肝ですね。

「そうです。『分かっていれば』ですね」

●丹葉さんが知っている限りで、こういう仕草、行動をしているときは危ないぞっていうのはありますか?

「シロクマっていうのは、とても表情が豊かな動物でして、その中でも怒っている顔っていうのは結構分かるものでして、目つきがまず悪くなります(笑)。首をしたに下げて斜に睨みつけながら、鼻をちょっと曲げるんですね。足は乱暴に放り出すように歩くといいますか・・・(笑)」

●人間と変わらないですね(笑)。

「そうですね。ある意味、本当に人と変わらないといってもいいくらいに表情が豊かです」

●じゃあ、そういう表情で歩いているクマを見つけたら、なるべく近寄らないほうがいいですね。

「そうですね。逆にそういうクマの場合は向こうから近づいてきますので・・・」

●「なんだよ、オメエ!」って感じですね(笑)。

「そうです(笑)。そういう時には逃げるが勝ちですね」

●なるほどね。丹葉さんはシロクマと接していて、「もっと近づきたい」と思うくらいに、愛らしさを感じたときってどんなときですか?

「寝ている表情というのが一番和むといいますか、優しい顔で寝ていますので、そういう時には近づいてしまいますね」

●写真集にも眠っているシロクマの写真が載っているんですが、見ていたら「近づいていって腕まくらで寝たいな」って思っちゃうくらいかわいいですもんね。しかも、大の字になったりして大胆な寝方をしますよね。

「ええ。写真集にはないんですけど、それこそ、仰向けに寝るという姿もよくやります。非常に面白いですね」

●動物の寝顔、特に赤ちゃん動物の寝顔って誰もが見て和めるものだと思うんですけど、シロクマだけはどんなに大きくなっても、可愛らしい寝顔ですね。

「そうですね。寝ている姿で憎たらしいと思うことはないですね」

人間がシロクマに与える影響とは?

●シロクマは10月から11月中旬にかけて、カナダ北部のマニトバ州チャーチルのハドソン湾に集まってアザラシ猟に出ていくっていうことなんですけど、ここ最近、温暖化が進んで色々な問題が起きていますよね。シロクマにとって温暖化問題っていうのは、大きな問題になっているんですか?

「そうです。かなり深刻な問題でして、今世紀末には北極圏の温度が7℃ほど上昇して、そうすると北極圏の氷の約半分、50%が溶けてしまうという報告が出ました。これは、何を意味するのかというと、シロクマがアザラシ猟に出る時期がすごく短くなってしまうんです。氷がなくなると、アザラシが氷の上で子育てができなくなってしまうので、シロクマは主食であるアザラシが捕れなくなる。すると、シロクマは食料がなくなる。それで、今世紀末には絶滅してしまうかもしれないという悲しいニュースがありました」

●丹葉さんは毎年のようにチャーチルを訪れていて、シロクマが氷が張るのを待って、アザラシ猟の準備に入るのを見ているわけじゃないですか。やはり、氷が張る時期っていうのは変化が見えるものなんですか?

「はい。ハッキリと分かります。毎年毎年、氷が張る時期が遅くなっています。去年も私、撮影に行ったんですが、そのときは12月ギリギリまで凍らなかったようですね」

●ということは、例年より丸2カ月分くらい、食料を捕れる時期が減っているということですよね?

「はい。今世紀末に絶滅してしまうといっていますけど、年々個体数が減っているというのが、撮影に通っていてもハッキリと分かりますね」

●そうなると、シロクマが食料を求めて人里にやってくる可能性も増えるということですか?

「そうですね。チャーチルという街は人口1200人くらいの小さな街なんですが、ゴミ処理場というものがなくて、ほとんどが野焼きをしているんです。その野焼きをしているところは、食料や空き缶といった様々なゴミが野焼きされるんですが、シロクマ達が何年も前から人間の食べ残したゴミを漁りに、ゴミ捨て場に集まってくるという悪い傾向があるんです。シロクマというのは非常に頭のいい動物でして、一度、『ゴミ捨て場に行けば食料がある』というのを覚えてしまうと、毎年のようにほぼ同じクマが子供に教えたりとか、子連れのクマも来てしまいまして、それが繰り返しになってしまうんですね。で、その結果、環境汚染の問題もありますけど、有害物質がシロクマの体内に入って、それで遺伝子的に壊れてしまうという問題も非常に大きいんです。
 チャーチルという街は、日本ではまだまだ知られていないんですが、海外ではシロクマが見られる場所として有名な観光地でして、普通の方ですとバギーみたいなものに乗りまして、安全にシロクマに会うことができます。ただ、その反面、汚れたところ、目を覆いたくなるような現実を見ないで帰ってしまう場合が多いので、本当でしたら実際のところというのも見ていただけたらと思うんですが、これだけはなかなか難しいですからね」

●でも、実際の目でシロクマ達を見ることによって、「この子達がいなくなってしまうかもしれない」と思いを馳せることができれば、普段の生活にも変化がでてくると思います。丹葉さんは、これからもシロクマの写真を撮り続けるんですよね?

「そうですね。実を申しますと、毎年『そろそろ違う動物に・・・』という思いもあるんですけど(笑)、シロクマの撮影に行ってしまうと、『来年もまた会わなくちゃ』となってしまうんです(笑)。その繰り返しですね」

●それだけシロクマは魅力的な生き物だということなんですね?(笑)

「自分の中にとってはすごく魅力的です。というのも、動物園で我々が見るシロクマと比べても、明らかに表情は柔らかいですし、活き活きしていますし、こんなに自然体でのびのびとしたシロクマっていうのはここ(チャーチル)でしか見られないというのがありますし、自分も幸せになりますしね(笑)」

●(笑)。丹葉さんはこのあと、モンベルのショップで5月から写真展を開くので、ぜひ見ていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。


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■写真家/丹葉暁弥さん情報

『Promised LAND~シロクマの約束』

『Promised LAND~シロクマの約束』
 エクスナレッジ/定価1680円
 ぬいぐるみのようなシロクマの写真が満載。本当に美しい生き物だと思える。見方によっては人間のようにも見えてくるから不思議。

『Northern Story~シロクマの旅立ち』
 エクスナレッジ/本体価格952円+税
 写真集から抜粋した写真が24枚つづりになったポスト・カードです。

○また、丹葉さんは『自然と人間』という雑誌に「シロクマの旅立ち」と題したエッセイを連載中です。

○丹葉さんの写真展が5月からモンベルのお店で行なわれます。
スケジュール:
・5月14日(土)~6月5日(日):南町田グランベリーモール店
・6月11日(土)~7月3日(日):渋谷店
・7月9日(土)~7月31日(日):諏訪店
・8月6日(土)~8月28日(日):奈良店
街の中やごみ捨て場に現われたシロクマの写真も展示する予定です。

○シロクマの写真が満載の、写真家/丹葉暁弥さんのホームページです。
http://www.asahi-net.or.jp/~kw6a-tnb/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. POLAR BEAR / RIDE

M2. 君は天然色 / 大滝詠一

M3. YOU ARE SO BEAUTIFUL / BABYFACE

油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M4. SOMETHING NEW / SUSANNA HOFFS

M5. NORTHERN LIGHTS / SIXPENCE NONE THE RICHER

M6. A WINTER'S TALE / QUEEN

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M7. LOVE NO MERCY / BRIAN WILSON

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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