2005年10月23日
探検家・高橋大輔さん、「ロビンソン・クルーソー」を旅する今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは高橋大輔さんです。世紀の大発見は情熱と執念、そして信じる強い気持ちがその原動力になるのかも知れません。今回のザ・フリントストーンは、ロビンソン・クルーソーの実在モデルとなったスコットランドの船乗りアレクサンダー・セルカークが、およそ300年前に残した痕跡を、南米チリ沖の無人島で見つけた探検家の「高橋大輔」さんをお迎えし、歴史的な発見までの経緯などうかがいます。実際に無人島生活を体験した人ならではの貴重なお話をうかがうことが出来ました。 ひとくちメモ『ロビンソン・クルーソーとは?』
無人島に到着!●この度はおめでとうございます。 「ありがとうございます」 ●私、ロビンソン・クルーソーって架空の人物だと思っていたんですけど、実在モデルがいたんですね。 「そうなんです。実際には今からちょうど300年前に南太平洋の孤島に漂流したアレクサンダー・セルカークというスコットランドの人がいて、そこで4年4カ月過ごした体験がロビンソン・クルーソーのモデルになったんですね。実際、私もその事実は知らないまま少年時代、青年時代を過ごしてきてですね、ある時、『世界探検史』という本を読んでロビンソン・クルーソーは実在していたという小さなコラムでビックリしまして、調べ始めたのが最初のキッカケです」 ●普通、ビックリしてそこで軽く調べるところで大体終わっちゃうものなんですけど、高橋さんの場合は会社を辞めてまで探検を突き詰めて、執念でアレクサンダー・セルカークの遺跡まで見つけてしまったわけですが、この場所っていうのは分かっていたんですか? 「今回の旅が5度目で13年で5回行って、ようやくその場所を掘って明らかにしたということなんです。こうやって振り返ってみると、非常に忍耐があるっていうか(笑)、『いつまでやっているんだろう、この人は』というような印象があるんですけど、やっている本人は13年を振り返ると意外とあっという間だったなという面もありますね。例えばひとつのことを好奇心で追跡していくと、そこでまた新しいことがパッと出てきて、それを追跡していくと、また新しい誰かに出会って、また新しい情報がってことで、その連続が積み重なって気が付いたらこんなに時間が経っていたということなので、本人としては忍耐強く辛抱強く10年やっていたということではないんですね」 ●今、その島は名前も「ロビンソン・クルーソー島」になっているので、「あぁ、この島なんだな」っていうのは分かるんですけど、そこに実際に初めて行かれたときってどんな気分でしたか? 「ここに行くにはいくつか方法があって、私は5度ともセスナ機に乗って行ったんですけど、最初に島が見えてきたときに、あまりに切り立った山と断崖絶壁が海から屹立している感じだったので、『ここがそうなのか。こんなところで人は生きられるものなのか』というのが最初の印象でしたね。ところが上陸してみると、実に色々な自然の顔があって、島の大きさでいうと大体、伊豆大島の半分くらいの大きさなんですけど、形がブーメランの形をしていて、東側がジャングルに覆われていて、西側は乾燥してカラカラに乾いているという感じでした」 ●小さなひとつの島の中でもそんなに違うんですね。 「そうですね。違ってましたね」 ●流れ着くでもしないと、「こんなところに島がある! ここに住もう!」なんていうふうには海からは見えない感じなんですね。 「そうですね。どちらかというとロビンソン・クルーソーの無人島をイメージすると、楽園のような風景が思い浮かぶかも知れませんが、そのイメージは一目見た瞬間に覆されてしまったというのが探検の第一歩でした」 ●そのギャップでさらなる興味がググッと湧いたのかも知れないですね。 「そうですね。実際、飛行場は島の西側にあるので、全く乾ききった場所に1本の滑走路があって、そこをグーっと降りていって、最初に上陸したときには月に降り立ったんじゃないかなっていうくらいの感慨がありましたね。それから、今はこの島は無人島ではなくて、500人ほど人が住んでいるんですけど、島の人達はみんないい方だったので、そこで友達を何人も作りながら、私がロビンソン・クルーソー島に来た理由は『ロビンソン・クルーソーが実在した証拠を探しにきたんだ』っていう話をするんですけど、『一体、この人は何をしに来たんだろう』という反応なんですね(笑)。島の人にとっては『ロビンソン・クルーソー島』という名前といい、アレクサンダー・セルカークという実在のモデルがここに住んでいたということを村の人も知っているんですけど、実際にその家がどこかっていうことになると、誰一人として知らないし、それを探しだすってことに特別な興味があるわけではないものですから、しかも、見知らぬ顔の東洋人がいきなりやってきて、『ロビンソンの家はどこだろう』って探しているっていうギャップが彼らにとって新鮮だったのではないかと思います(笑)。逆にその驚きがあったからこそ、彼らも私のことを受け入れやすかったというか、『一体、何者なんだ?』というところから入って・・・」 ●違った意味での興味をもって接してくれたんでしょうね。 「そうですね。そういう面はあったと思いますね」 無人島生活を体験!(食糧編)●高橋さんは実際に無人島で無人島生活を体験なさったこともあるんですよね? 「はい。実際、ハッキリした手掛かりがあったわけじゃなかったので、やはり自分自身がロビンソン・クルーソーになり切らないと、家は見つからないんじゃないかという思いもあって、自分がロビンソンだったらどこに家を造るのかっていう、ある種、体当たり的なところで最初の調査を始めていったんです」 ●実際に始めてみてどうでしたか?
「米を2キロと調味料関係を持って、それ以外は自給自足でなんとかやっていこうということでやってみて、最終的に自然の豊かさに助けられて、私自身、生き延びることが出来たんですけど、やはり食糧をどこかで調達するというのは、最初はなかなか並大抵のことではないんですね。最初は釣りをして魚を捕って食べようかってことで釣竿を持っていたんですが、用意していったのが渓流用の竿だったんですね。で、行ってみたら渓流はチョロチョロ川で川を調べれば調べるほど魚なんていやしなくてですね(笑)、上流に上っていったらおたまじゃくしがチョロチョロと泳いでいたんです。それでいよいよ、おたまじゃくしを食べる時が私にも来るのかと思って(笑)、でも、おたまじゃくしを食べてもなかなかお腹一杯になりそうにもないし、もっと育ってもらってカエルになってから食べるのかどうしようかってことを冗談のように考えつつ(笑)、せっかく釣竿もある事だし、川がダメなら海だろうということで海に出かけていったんです。で、餌がないまま擬似餌を付けて海に投じて、色々な泳がせ方をしてみて、いるかいないかは分かりませんが魚の気を引くようにやってみたんです。でも結局、何の反応もないまま何日か経って、段々自分が追い詰められていくんですけど、ぼんやりと海岸から海を眺めていたときに、島にはバッタがたくさんいるんですけど、偶然、ある風の強い日にバッタが風に流されて海に落ちていくのを見たんですね。もしかしたら魚がそれを食べている可能性はないのだろうかと思ったんですね。風は強い島ですし、バッタもいっぱいいます。そうすると、今日見た光景というのは今日1回限りのことではないだろうと思ったんです。それで、バッタを捕まえようとするとバッタもなかなか手強くて(笑)、仕方ないのでチョロチョロ川を利用して、川に追い込んでいって、バッタがポトッと落ちた瞬間にザッと捕りまして、『いざ勝負!』ということでバッタを付けて第1投を投げたら、その瞬間にビリビリッと竿が躍動しまして、格闘をしばらくして釣り上げたのが、キラキラ光る小刀のようなアジだったんですね。で、またバッタを付けて針を放れば放るほど入れ食いのようにしてかかってきたんです。でも、魚が釣れたときにどういうわけか、水平線とか空に向かって『ありがとー!』って言ってたんです。そういう行為をする自分っていうのは想像もつかなかったというか、そういう言葉がパッと出て来た自分を後で振り返って『あれは何だったんだろう』と思ったりしましたね。意外に無人島の領域にいて、それまで気が付かなかった自分を発見できたというのも事実です。
●中に詰め込みすぎちゃって、いっぱいになっちゃうってことなんでしょうね。 「そうでしょうね。で、結局気が付くと歌っていたり、石に向かってぶつぶつ喋っていたりとかしているんですね。それでバランスをとっているんでしょうけど、その延長線上に魚が釣れたときの自然に対する感謝の気持ちと同様にそういう部分もあって、それで語りかけていたんでしょうね。都会ではなかなか感じない自分の一面でしたね」 ●結局、どれくらいの期間、無人島生活されていたんですか? 「1カ月間ですね」 ●きっと、アレクサンダー・セルカークさんもそういう思いでバッタと戦いながら(笑)、魚を食べていたかどうかは分からないですけど、食糧確保に苦労しつつも、もしかしたら海に向かって「Thank You!」って叫んでいたかもしれませんよね。 「そうですよね。多分、ぶつぶつは言っていたと思います(笑)。ただ、『ロビンソン・クルーソー』という小説を読むと、意外にそういうところは書かれていないんですね。その辺が面白いなぁというか、自分でやってみないと見えてこない部分っていうのはありますよね。『ロビンソン・クルーソー』という小説を読みながら自分で体験をすることによって、さらによくロビンソン・クルーソーが読める部分があるような気がしますね」 無人島生活を検証!(住居編)●高橋さんは御自身でも無人島での生活を体験し、ロビンソン・クルーソーはどういうところでどういうふうに生活していたのかっていうのを探しながら、見つけたじゃないですか。これは、予想通りだったんですか?
「石積みの住居跡っていうのを見つけたのが2001年のことで、その石積みの住居を見つけたときに、場所が古い文献に書かれているセルカークのいた場所とピッタリ一致していたので、その場所はほぼ間違いがないだろうということと、石積みだったんですね。
彼はスコットランド出身で、スコットランドに行くとほとんどの家が石で出来ていて、その石積みの住居もスコットランドと関係がありそうだと。で、実際に掘ってみたらその石積みの住居というのは、実際にはスコットランドのセルカークのものではなくて、スペイン人が作った火薬庫だったんですけど、そこで自分も掘り始めて、そういう事実が明るみに出た段階でガッカリしましたね。送り出してくれた日本の人達や、アメリカのナショナル・ジオグラフィックの方々の顔が浮かんだりもしながら、でも、そのスペインの家というのが明らかになった段階で、セルカークがいたのはその時代よりもさらに前の時代だということになって、前の時代だということはさらに掘れば可能性はまだあると思ったんですね。そこの場所っていうものが関係性があるということをすでにつかんでいるのだから、さらに下へ掘り進めてみようじゃないかということになりまして、実際、地表から2メートル20センチも下へ掘り進めて、ついに見つかったんです。
●その時は青空に向かって「ありがとー!」とは叫ばなかったんですか?(笑) 「(笑)。その時は叫ぶも何も言葉が出なくて、どちらかというと、セルカークが踏んでいた地面、2メートルも下に降り進んで、そこに自分が足をそっと踏み入れたときには、足下が震えてしょうがなかったですね。ロビンソン・クルーソーと同じ地面に今、立っているんだという感動はなかなか言葉にならないですね。それから夜もなかなか寝つけずに、みんなでスコッチ・ウィスキーを買ってきて、スコットランドの船乗りに敬意を表して乾杯をしたりしました。でも、想像以上のものが出てきたので、最初はなかなか信じられなかったですね。考えてみると色々な繋がりが色々な線で動いていたものが、なぜかこの瞬間1点に結びついて、それで掘り始めたら信じられない様なものも出てしまってという、自分でもここまでのシナリオは書けないなと思いました」 ●そんな発掘の模様はナショナル・ジオグラフィックの10月号に写真とともに掲載されているので、是非読んでいただきたいと思います。 今度は桃太郎に挑戦します!●13年かけてついに見つけたロビンソン・クルーソーの家の跡ですが、目標が達成されちゃいましたね。 「探検家というのは探しだすことで、探検という言葉は探すという字と検証するという字から出来ているので探検家といいます。ものを探して終わったあと、確かにひとつの探検が終わるんですけど、ものを発見してしまった人間として、それを今後はどう保護していくのか、もしくはそれをどう次の世代にその場所をバトンタッチしていくのかという仕事がまた新たに始まっています。それは実際に、今までは自分のお金も情熱も時間もそこに注いでいったんですけど、これからはチリという国の国立公園の中の場所ともなりますし、逆にその場所が明らかにできたことと、発掘したものもいくつかあるので、今後はその場所を日本の皆様にも行ってもらって、その場所に立ってみてもらうと、1人で人間が大自然の中でどうやって生きていけたのかとか、スーッと色々な素朴な疑問が解けていく部分があって、それはやはり小説を読むだけでは見えてこない部分ですよね」 ●高橋さんはロビンソン・クルーソーのほかにも浦島太郎やアトランティスなど色々なものを探して検証されているんですよね?
「はい。これは、自分の探検のひとつのテーマで、物語を旅するというというテーマがあります。ロビンソンも浦島もそうなんですが、誰にもお馴染みのお話で、それを私を含めたみんながフィクションだと思っているのを、実際に実在していたもの、もしくは現実の世界への関わりを探しだしながら、物語を旅をしていくというところで、今まで見えていなかったものが見えてくるんじゃないかというふうに思っていまして、ロビンソン・クルーソーなんかは家を探しましたし、浦島太郎なんかも真面目な部分でやっていくと、竜宮の在り処も見つかってくるんですよ。そうすると日本の昔話も面白いし、世界の名作も面白いということで、自分の検証したい物語っていうのも無限大に広がっていって、物語の沃野(よくや)を見つけたというか、すごいものを発見してしまったという感じがあります。差し当たりは浦島太郎のあとですから、次は桃太郎にも挑戦してみたいなぁと思っています。海外のお話だと『宝島』なんかも探してみたいですね。
●桃太郎も楽しみにしています。これからも色々なお話をきかせてくださいね。今日はどうもありがとうございました。 |
■探検家「高橋大輔」さん情報ジャーナリストとして知られていたイギリス人のダニエル・デフォーが18世紀に出した名作『ロビンソン漂流記』の主人公、ロビンソン・クルーソーの実在モデルといわれるスコットランドの船乗り、アレクサンダー・セルカークが暮らした島でその痕跡を発見し、大注目されている「高橋」さん。 そんな世紀の大発見の詳細は雑誌『ナショナル・ジオグラフィック』の10月号に、写真とともに掲載されているほか、「高橋」さんのホームページでも更に詳しく載っているのでぜひご覧ください。 ・「高橋大輔」さんのHP:http://pws.prserv.net/jpinet.daitaka/
『ロビンソン・クルーソーを探して』
新刊『浦島太郎はどこへ行ったのか』 |
オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」
M1. LOOKING FOR A GOOD SIGN / DARYL HALL & JOHN OATES
M2. STRANGER IN THIS TOWN / RICHIE SAMBORA
M3. LONELY BOY / ANDREW GOLD
ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」
油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」
M4. DECK THE HALLS / BRIAN WILSON
M5. SOME DREAMS COME TRUE / BANGLES
M6. ONCE UPON A TIME / DAN FOGELBERG
エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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