2006年3月19日
熱帯森林保護団体の代表、南研子さんの「アマゾンとインディオ」今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは南研子さんです。1989年にロック・アーティスト「スティング」の、アマゾンの危機を訴えるワールド・ツアーで、お手伝いしたことがきっかけで、アマゾンの熱帯林とそこに暮らす先住民、インディオの人々の保護を目的に「熱帯森林保護団体」を設立した同団体の代表、「南研子」さんをゲストにお迎えします。アマゾンの森の現状や、そこに生きる先住民インディオの支援活動についてうかがいます。 アマゾンは神の領域●この番組でアマゾンのお話をうかがったこともありますし、テレビの特番などで見ることはよくあるんですけど、アマゾンといっても広いじゃないですか。南さんがメインにしてらっしゃる活動の拠点はどの辺なんですか?
「アマゾンの中にもいくつか州があって、ちょうどブラジルの真ん中にあるマトグロッソ州とパラ州にまたがってあるシングー・インディオ国立公園という、ブラジル政府が先住民居住区として法的に承認した場所が拠点です。全部合わせると18万平方kmあって、大体、日本の国土が37万平方kmあるので、それの半分くらい、本州くらいの大きさが支援対象地域なんです。
●それでも保護する必要があるんですね。 「結局、そこの地域は塀で守られているわけじゃないでしょ。だから、一応は『ここに入ると不法侵入で罰せられますよ』という看板だけは立っているんですよ。だけど、その地域にはたまたま良質なマホガニーがあったりするんですよ」 ●守られている分、いいものもいっぱいあるんですね。
「そうなんですよ。だから、動物にしても植物にしても密猟者がすごいんですよ。例えば、この地域に良質なマホガニーがあるとすると、10円ハゲのように密猟されてなくなっていくんですよ。熱帯林って緑がいっぱいあるから、すごく強くて緑が濃いって思いがちですけど、実は、ジャングルの中でカリカリって土を削るとすぐ岩盤に突き当たるんですよ。というのは、ジャングルが脆弱で決して肥沃な土地ではないからなんですね。3センチの表土を作るのに100年かかるんです。だから、バクテリアがいたり、シダがあったり、多種多様な動植物がジャングルの中にあって、それが雨が降って土に届くまでの間に全て循環しているんですよ。だから外から見ると、非常に肥沃に見えるけど、決して表土は肥沃じゃないんです。だから、1回砂漠化しちゃうと、もう戻らないんです。
インディオには幸せの概念がない!?●シングー・インディオ国立公園に初めて行かれたときのことって覚えていらっしゃいますか? 「1992年にリオでエコ・サミットがあった後ですね。まるで宇宙旅行のようでしたね(笑)」 ●(笑)。やはり、見るのと聞くのとでは大違いなんですね。 「全然違ってね、全部衝撃ですよ。だってまず、そこに行くまでの時間的に『こんなに遠いんだ』って思いましたよ。元々インディオの人達は500年前まで大西洋側にいたんですけど、どんどん追いやられて奥地に入っていったわけでしょ。で、自然がインディオの人達をある意味では援護射撃してくれて、外からの侵入者から守ってくれたっていうくらい過酷なわけですよ。過酷な自然があるっていうことは、なかなか普通の人は入れない。入れないっていうことは、私たちの価値観とは全く違うということですよね。だから、何が衝撃的だったかと聞かれても『全部』としか答えようがないですよ。それから私は、去年で20回アマゾンに入ったことになるんですよ。で、だんだん変わってきたんですけど、最初の時は人々の暮らしぶりは石器時代に限りなく近いと想像していただくのが分かりやすいですね。なので、宇宙旅行というよりはむしろ・・・」 ●石器時代にバック・トゥ・ザ・フューチャーしちゃった感じなんですね。 「まさにそういう感じ。ある種、そこから始まって、私たちは発展してきたわけでしょ。すると、逆に私たちが彼らの生活を見ながら選択したものが正しかったのかとか、むしろジャングルの中に入ってジャングルのことを考えるより、私たち文明人の生き方のほうが『えっ!?』みたいなことがいくつかありますよね。電気、ガス、水道、お金、文字もない。と同時に、差別もない、いじめもない、自殺もいない、犯罪もない、寝たきりもいない、白髪もハゲもいないんですよ。それで、大した食べ物でもないのに、みんな平均にいい体をしているし、『この星で生きていくための理想の体だな』って体つきをしているんですよ。私たちはそういう体になるためにジムに通ったりして、『バカじゃないか』って思えてきますよね(笑)。反対に自然の中で当たり前に家を造ったり、狩りをしたり、魚を捕ったり、芋を掘ったりしていたら本来、この星で生きていく体になるのに、私たちって無駄なことしてるなぁって思いますよね」 ●虚しくなりますね(笑)。
「虚無的になりますよ(笑)。確かに、文明の利器があるからブラジルまで飛行機で行けるんだし、その恩恵はありがたいと思いつつも、その文明の発展進歩に人間の心が付いていけたのかといわれると疑問ですよね。
●概念にないんですね。 「ないんですよ。私、そこで考えたんだけど、例えば、幸せとか悲しみっていうのは時間的感情の流れじゃないかと思ったんですよ。ここからここまでに至る、その間のことを表現するには幸せとか悲しみとかってあるけれど、彼らは今しかないんですよ。だから泣いたりはしますよ。人間的な喜怒哀楽の怒ったり、わめいたり、泣いたりっていうことはあるけれど、それを引きずらないんですね。だから、部族によっては現在形しか言葉がないところもあるんですよ。過去形も未来もないわけ。彼らと話していても、それが1万5千年前の話なのか、3時間前の話なのか分からなくてすごく困るわけ。だって、1万5千年も脈々と同じ暮らしをしているんだから、昨日も1万5千年前も基本的には同じなんですよね」 ●「どうのこうのと彼が言った」というのは彼のおじいちゃんなのか、誰かから聞いた話なのか分からないんですね。
「そうなの。『そんなの分からないから、ま、いっか』みたいな(笑)。『人間これでいいんだ』って気分になりますね。だって、みんな幸せなんだもん。1番大事なのは、みんなすごくいい笑顔をしているし、悩まないし、いつも自分の感情を表に出していることなんです。つまり、こっちも言ったままを受け止めればいいんですよ。私たちの社会っていうのは、言ったままを受け止めると酷い目に遭ったりもするわけでしょ。だから、彼らは素直に生きられるんですよ。最初に入ったときは特にそうだったけど、それが20年近く、インディオのパラダイスといっても、ブラジルという法治国家の中にあるから、どんどん侵食されて色々な問題が出ていますよね。心傷むことが多いけど、最初に入ったときの印象はすごかったです。ひっくり返るようなことばっかりで(笑)。
アマゾンは3.7次元!?●南さんが初めて行かれてから今まで見てきて、インディオの生活は変わりましたか? 「あんまり変わってないわよね(笑)。多分、1万5千年前から変わっていないんじゃない? もちろん、少しずつ土器を使っていたのがアルミの鍋に変わったり、裸足だったのがゴム草履に変わったりとか、多少の変化はありますよ。最初に行った時には、男の人も女の人も子供もみんな真っ裸だったんです。むしろ、あんなところで服を着ると、石鹸もないから皮膚病になっちゃうんですよ。だから、裸でいて、しょっちゅう水浴びをしていた方が衛生的にはいいわけでしょ。でも、何回か入っていくうちにだんだんブラジル社会の影響で、服を着るようになって、ある時、ブラジル政府から支給されたTシャツを男の人全員が着ているんですよ。いいんだけど、上はTシャツだけど、下は何も履いていないの(笑)。そっちの方が不自然だなぁっていうね(笑)」 ●赤ちゃんじゃないんだから(笑)。 「だから、彼らにとってみれば上を隠そうが下を隠そうが、着ればいいみたいな感覚なのよね。女の人は裸だったのがワンピースを着るようになったりとか、20回入っていくうちにそういう変化はありましたね。ただ、長老とかお年寄りの人達が今すごく悩んでいるのが、若者がサッカーやブラジル音楽などの文化をカッコイイと思っちゃっていることなんです。仕方がないことなんですけどね。自分達の伝統文化を守りたいという人と、外の世界に興味を示す人と二分化してきているんですね。今、そういう時期に来ています」 ●すると、教育の仕方も変わってきますね。 「そうですね。極端な話、リーダーの人からコンピューターも今年辺りから導入するという話がありました。要するに、500年前にインディオの人達は銃によって、1000万人から32万まで減ったと。その時は銃というもので滅ぼされた。でも今は武器がコンピューターだと。お前達が持っているものを自分達も使いこなせれば、自分達も生き残っていけるということで、若い子達に今年くらいからコンピューターを教えるそうです。でも、真っ裸でコンピューターに向かっている様は不思議よね(笑)。『それも、ま、いっか』って感じですよ(笑)」 ●インディオの人達から私たちがすぐ学べるものっていったら何ですか?
「無理をしないということね。私たち文明人ってどこかで騙し賺し無理をしていると思うのね。なぜこの星に生まれてきたのかっていうのを、もう一度根本的に考え直したほうがいいと思うんです。私は、天は『楽しんでらっしゃい』っていってこの星に命をくれたと思うんですよ。人から見れば『アマゾンのことをやって大変ですね』って言われるけど、嫌だったらやらないもの。そうやって自分が素直に言うことによって、そこで色々とディベイトができるわけでしょ。そういうことを私たちはあまりにもしなさすぎてると思うんです。自分の心を奥の方にしまって、和することばかりを気にしてしまっていますよね。調和とか和していくっていうのは徹底的に自分を出す。それぞれが自分を全部出しきって、1度カオスになって、それからスーッとしていくんじゃないかなって思いますね。インディオ達の話し合いを見てすごくそう感じました。
片手は自分のために、片手は誰かのために●保護活動という面で私たちにできることといったら何でしょうか?
「こういう時にいつも言うのは、片手は自分の幸せを追求していいということなんです。ギスギスしながら目くじらを立てて『環境問題!』っていいながら、インスタント・ラーメンを食べていたって、イメージは広がらないわけでしょ。たまには面白い芝居や映画を見て、自分の生きているっていう実感を感じることで、心の中が温かくなりますよね。そうすると、温かさを人には伝えられるわけでしょ。だから、片手は自分の幸せを追求していいと思うんですよ。もう片方の手に、どこかで誰かが困っていてS.O.Sだとか、助けを求めているんだとしたら、小さなことでもいいからその人達のためにまず最初は心を砕く。で、具体的な行動に出る。
●また機会がありましたら、是非、「不思議編」のお話も聞かせて下さいね。今日はどうもありがとうございました。 |
■熱帯森林保護団体の代表「南 研子」さん情報
『アマゾン、インディオからの伝言』
「熱帯森林保護団体」会員募集中 |
オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」
M1. FRAGILE / STING
M2. NOW AND FOREVER / RICHARD MARX
M3. THE INNOCENT AGE / DAN FOGELBERG
ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」
油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」
M4. THANK U / ALANIS MORISSETTE
M5. THE THINGS WE DO FOR LOVE / 10cc
M6. SHOWER THE PEOPLE / JAMES TAYLOR
エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
|