2006年5月21日

屋久島の星川淳さん、グリーンピース・ジャパンの事務局長に就任

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは星川淳さんです。
星川淳さん

 国際的な環境保護団体「グリーンピース」は世界41カ国に支部を持ち、森林や海洋、エネルギーなどの分野で独自の活動を展開しています。今週のザ・フリントストーンは、そんな団体の日本支部、グリーンピース・ジャパンの事務局長「星川 淳」さんをお迎えし、事務局長になった理由や、現在、グリーンピースが最も力を入れている“パラダイス・フォレスト”を守る活動のことなどうかがいます。

グリーンピースの実態と一般イメージのギャップ

●御無沙汰しております。

「御無沙汰しております。前に来た時とは肩書きが変わりました」

●そうですよね。前回までは「屋久島在住の作家であり翻訳家」という肩書きだったのが、いきなり「グリーンピース・ジャパンの事務局長」に変わりましたからね。じっくり理由も伺っていきたいと思いますが、まずは、グリーンピースという団体について教えていただけますか?

「名前ぐらいは聞いたことがあると思うんですけど、国際的な環境保護団体で、出来たのが70年代の初めです。団体が出来た一番最初のキッカケは、当時アメリカがアリューシャン列島でやっていた地下核実験にカナダの市民が反対して、思いきってそこへ船を出して、なんとか核実験を止めたいということがキッカケで出来た団体なんですね。それ以後、割合、直情径行的な思い立ったらやってしまうという行動を非暴力で続けてきました。グリーンピースですから、グリーンというのは緑豊かな地球を守っていくという意味ですね。ピースというのは文字通り平和な世界を作るという、両方にかかる活動をしていますからすごく幅広くて、森林とか海の生態系とか、陸上でも遺伝子組み換えの問題とか核の問題、例えばエネルギーをいかに効率的に使うかというような問題、それから今、環境問題っていうと、みなさん地球温暖化に結びつくと思うんですけど、そういう地球温暖化の様々な側面から解決法を探る運動とか、調査とか研究っていうのも独自に政府と同じくらいのレベルでやっていて、定評がある分野です」

●私なんかもグリーンピースっていう団体のイメージっていうと、すごくアグレッシブでひとつ間違えると、非暴力なんだけど、過激に思えるくらい体を張って守っている感じがあるんですけど、その過激さ加減のほうが強調されちゃっている部分はありますよね。

「そうですね。特に日本の社会では、暴力を使わなくても体を張って現場に行って何かに反対したり、問題を指摘するっていうこと自体が過激に見えますから、そういうイメージがあるのは確かだと思います。でも、そうではないことも色々とやって来ていて、過激さと反対の面では企業に問題があると指摘するだけじゃなくて、問題を解決するにはどうしたらいいかというのを提案して、場合によって企業とパートナーシップを組んで、新しい製品を開発するお手伝いをしたりとか、政府もそうなんですけど、そういう対案提示とパートナーシップ、今、CSRといって企業の社会的責任ということで、そこをうまく企業を含めて持続可能な未来へ向けていくっていうこともかなりやっていて・・・」

●ごめんなさい。私、グリーンピースのことをすごく誤解をしていました。

「そういう側面があることは確かなので、非暴力は絶対なんですけど、それが今でも場合によっては現場に行って、『それは違うからやめて』という意思表示をすることはありますけど、それ以外にもたくさんの活動をしているということですね」

●そんなグリーンピースの日本支部、グリーンピース・ジャパンの事務局長に星川さんがなられたいきさつを教えていただけますか?

「結構、僕は古いんですよ。ほぼ創設した頃から知っていて、70年代の中頃にカナダから若いカップルが来て、日本で活動できないかと探りに来て、小さな活動を始めた時期がありまして、それ以来、付かず離れずで関係はありました。日本の支部が出来たのが1989年だったと思うんですが、扱っている環境の問題、平和の問題とか、しっかりと意思表示をする時はして、さらに問題解決へ向かって思いきった提言をしていくというようなスタイルっていうのは自分と重なるものがありましたので、国際的な環境団体では親近感のある団体でしたね。そんな中で直接、環境のことではないんですけど、世界全体が9.11事件以来、変な意味で変質してきて、今まで人間の社会や文化が近代になって築いてきたルールみたいなものが、対テロっていったら全部チャラになってしまうような乱暴な時代になってきて、今までは屋久島という遠くから書くことで社会に働きかけるっていうスタイルが僕にとっては合っていたんですけど、もう少し、社会の第一線に近いところに身を置いてやってみるのもいいんじゃないかなと思って、もっと年取ると多分出来ないし、今、そういうポストを与えられるなら、やってみようかなと思ったんですね」

日本のグリーンピースの会員数はドイツの100分の1!?

●最初に星川さんがグリーンピース・ジャパンの事務局長を務められるとうかがったときに「えっ!?」って思ったんですけど、お話をうかがっているとピッタリだなと思いました。世界的なグリーンピースとしては色々な活動をされていると思うんですけど、グリーンピース・ジャパンとして取り組んでいることを教えていただけますか?

「時期によってもメニューが変わるんですけど、今、現在は主に森林保護の問題、海洋生態系保護の問題、それから大きくエネルギーと括っていますけど、どちらかというと再生可能エネルギーに向かうという意味で気候変動、つまり地球温暖化の問題と原子力発電の問題、発電だけじゃなくて日本だと、青森県の六ケ所村で原子力発電の使用済燃料からプルトニウムを取り出して再処理したり、プルトニウム単体で新しい形の発電をやろうというような計画があるんですけど、それがうまくいっていなくて非常に危険な計画なので、そういうことにも反対するという意味のエネルギーという3つの分野でやっています。
 で、日本の支部であるグリーンピース・ジャパンというのは、グリーンピース全体の中では小さいんですね。今、グリーンピース全体でいいますと、世界の41カ国に広がっていて、会員数が全世界で290万人いるんですけど、日本は会員数が5700人前後で、正規のスタッフの人数が15人いないんですね。日本って、人口が1億2000万人くらいいますよね。そのくらいの人口で、なおかつ世界第2位、第3位くらいの経済規模ですと、少なくとも何万人、何十万人の単位のサポーターがいるんですね。例えば、ドイツなんかは東西が統一されたあとの人口が8000万人くらいで、会員数が55万人なんです。だから、100倍近い違いがあるんですね。日本はすごく小さい事務所なのでやれることに限りがあるんですけど、それでも先ほどの3つの分野でよりよい社会に近づけていくという活動を続けています」

●世界と比べると非常に人数が少ないグリーンピース・ジャパンなんですが、日本って世界と比べて色々な問題が多いほうなんですか?

「多いと思います。というのは、経済規模が大きいですから、人口はともかくとして、世界の色々な環境とか他の国々の人々に与える影響というのがアメリカに次いで、最近は中国が成長株で色々な問題が大きくなってきてますけど、今の段階でも日本は世界で1、2という影響を与える国なので、日本で解決すればかなり色々なことがよくなるという問題が様々ありますね。そういう意味では日本でやることが非常に大事になってくると思います」

●いくつか上げていただいた取り組みの中でこのあと、グリーンピース・ジャパンが今、1番力を入れている問題を教えていただきたいと思います。

原生林を守る「森へリボンをプロジェクト」

●先ほど、グリーンピース・ジャパンとしての色々な取り組みをうかがったんですが、中でも今、1番力を入れているものってあるんですか?

「はい。小さい事務所なので、数ヶ月を区切って強化キャンペーンみたいなものを作って、1年のうちに山を何回かというふうに組み立てをしているんですが、たった今やっているのは森林破壊の問題の中でパプアニューギニア島というのが南太平洋のオーストラリアのちょっと北にありまして、そこと西のインドネシア、東のソロモン諸島にかけての島々にある手つかずに近い森が、熱帯雨林を中心として世界でも1、2という原生林が広がっているんですね。で、そこで森林伐採というのが相当大規模に行なわれていて、グリーンピースではそこを本当の森の名前ではないんですが、パラダイス・フォレスト(楽園の森)と呼んでいるんです。そこを伐採から守ろうと活動をしています。特に、違法伐採というのが横行していまして、日本企業は直接関わっていないんですが、外国企業がそこに入り込んで伐採権がないにも関わらず、勝手に森を切って、そのことによって森林生態系が壊れ、それに依存して暮らしている先住民の方々の暮らしが壊れていくという非常に深刻な問題が進んでいます。それをなんとか止められないかというのを、長年グリーンピースとして関わってきて、日本も今だけではなくてずっと関わってきているんです。特にその問題について、日本人からするとちょっと遠いんですが、そうではなくて、そこから出てくる原木とか加工したベニヤ、合板とかを世界で中国に次いで2番目に輸入しているんです。それを吟味する体制が全然出来ていなくて、今、野放しで入ってきているという状態なので、なんとか日本人がそういう違法伐採のものを買わないとか、日本に入れないとかして制度を作って防ぎたいんですね」

●それは見分けられるんですか?

「それは難しいです。製品として日本に届いてしまうと、食品のDNAのようには見つけられないですね」

●もしかしたら、番組を聞いて下さっているリスナーの方のお家の床材も、知らず知らずにパラダイス・フォレストから違法で切られた木を使っているかも知れないということですか?

「そうですね。合板製品って物凄く身近に溢れていますから、見えないけど直接関わっているということで、なんとか日本人からも伐採と森林破壊、そして先住民の暮らしの破壊を止めるお手伝いが出来ないかということで、仕掛けを作って進めています」

●現在、強化月間だということで・・・。

「5月いっぱいが強化期間です」

●あとわずかしかないんですけど、今でも間に合う私たちに出来ることって何かありますか?

「グリーンピース・ジャパンのサイトを検索して見てもらうと、出来ることが色々と出ているんですが、その中で力を入れているのが『森へリボンをプロジェクト』というものでして、先住民の方々の森の所有権というものが本当は法律であるんですが、どこからどこまでがそうなのかというのが、あまりハッキリ地籍調査が出来ていないんですね。で、そこの境目をしっかり決めるという作業から入らないと、守れないというような状態なんですね。そこで、グリーンピースも協力して現地の方々と一緒に森の境界線の確定作業というのをやっているんですよ。そのときに『ここからここまでが我々の森である』というマーキングをするためのリボンとして使われるようになっていて、クリックしてもらうと必ず現地で作業に使われるようになっています」

●今日、実際にそのリボンを持ってきていただいているんですけど、「SAVE THE PARADISE FOREST」っていう黄緑色のリボンで、日本語で「救おう原生林の未来を」と書いてあります。

「現地でもどんどん使われています。クリックしていただければ自動的にその信号が現地に伝わって、すでに現地にリボンが送ってありますので、それを人数が増えればどんどん使ってもらうという仕組みを作ってあります」

家具や木材はFSC認証製品を!

●グリーンピース・ジャパンでは「森へリボンをプロジェクト」の他にも、色々な形でパラダイス・フォレストを守るための働きかけをしているそうですね。

「はい。まず、関係する省庁、環境省、林野庁、外務省に違法に伐採された木材であるとか、加工された家具が日本に入ることをきちんとチェックして欲しいと伝えました。チェックすることによって、現地の違法伐採をなるべくパプアニューギニアやインドネシアの政府がしっかり取り締まるということをやってほしいと。それともう1つ、先ほど言いました代案提示という意味では、違法伐採ではなくて同時にエコ・フォレストリーといいまして、森林環境に配慮した林業というのをリボンと同時並行で進めています。現地で可動式の小さな製材機を持ち込んで、それをグリーンピースが提供して、それによって森をバッサリとクリア・カットしてしまうのではなくて、現地の人がこの木ならいいというのを選択的に切って現場で製材して、しかも、外国企業が入って全部切られてしまうと利益が外へいっちゃうんですけど、そうではなくて現地の人達にちゃんと販売利益が残るという持続可能な林業、しかも現地の人達が行なう林業を進めるというプロジェクトも同時にやっています。ですから、エコ・フォレストリーで出来た木材を使うことが出来ますよと。
 そして、世界的にはFSCといって、世界の色々な林業の場所をチェックして審査して、『ここは持続可能な林業です』と認定を出しているんですね。そこから出た木とか製品はFSC認証マークというのが貼られて、それなら大体安心して使って大丈夫というすでに確立された制度があるんですね。ですから、わけのわからない違法伐採されたようなものではなくて、FSC認証がついた木材や木製品を使いましょうと。日本ではグリーン購入法というのが4月から施行されて、なるべく環境に配慮した製品を政府や民間で調達しましょうという法律がもう出来ているんですけど、その法律がまだまだ不備なんですね。きちんと『違法伐採された木材は使わない』というふうになっていないので、そこにもう少し厳しく、使わないで代わりにFSC認証のものを使いましょうという内容を追加して盛り込むようにということを求めています。なので、キャンペーンとしては結構、色々要素があるんですよ」

●しかも、今は強化キャンペーン中で5月いっぱいではありますけど、長い目で守らなきゃいけない事でもありますし、私たちが出来ること、普段、身近なところで気を付けたりとか出来ることっていうのがたくさんあると思うので、色々な形でグリーンピース・ジャパンを支援しながら、ホームページを色々チェックしていただきたいですね。

「はい。まだ何年もこのパラダイス・フォレストのキャンペーンは続きますし、他にも先ほどいったような色々なこと、それに加えて新しいキャンペーンも計画していますので、是非、チェックしてみて下さい」

●また、色々なキャンペーンが始まって成果が見え始めましたら、お話を聞かせて下さいね。今日はどうもありがとうございました。

■このほかの星川淳さんのインタビューもご覧ください。

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■「特定非営利活動法人 グリーンピース・ジャパン」情報

 屋久島に暮らし、作家/翻訳家として活躍していた「星川 淳」さんが2005年12月1日から事務局長を務めているグリーンピース・ジャパンでは、現在、パプアニューギニアの“地上最後の楽園”とも言われる原生林を“パラダイス・フォレスト”と名付け、この森に住む人々の土地所有権の境界線を明確にすることによって、違法で破壊的な森林伐採を防ぎ、彼らの生活の場を守るための活動を行なっています。そして5月いっぱいは「森へリボンをプロジェクト むすんで守ろう原生林」を実施。境界線確定に使われるリボンを皆さんから募り、現地に届けています。皆さんもぜひご協力下さい。
 また、同団体では、スタッフやサポーター会員の募集、および、寄付によるご協力もお願いしています。

グリーンピース・ジャパン
 TEL:03-5338-9800
 HP:http://www.greenpeace.or.jp/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. DEAR EARTH / HENRY LEE SUMMER

M2. THAT'S WHY I'M HERE / JAMES TAYLOR

M3. THE RIGHT THING TO DO / CARLY SIMON

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. THIS MAGIC MOMENT / JAY & THE AMERICANS

油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M5. CATCH THE WIND / DANNY TATE

M6. PARADISE / SADE

M7. GONNA BE SOME CHANGES MADE / BRUCE HORNSBY

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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