2006年9月17日<電話インタビュー>
WWFジャパン・小西雅子さんに聞く、ホッキョクグマのプロジェクト
現在、人類が直面している大きな環境問題、「地球温暖化」。この番組でも、度々取り上げてきましたが、世界最大の民間の自然保護団体、「世界自然保護基金/WWF」が、温暖化の影響で絶滅の危機が高まっている「ホッキョクグマ」のプロジェクトを進めています。
●ホッキョクグマのプロジェクトというのは一体どんなプロジェクトなんですか? 「WWFというのは国際的な自然保護団体なんですが、インターナショナルの方がノルウェーの北極圏であるスバールバル諸島っていうところで行なっているプロジェクトなんですね。メスグマに衛星発信機付きの首輪をつけて、その動きを衛星で刻々と追いかけるというものなんです」 ●なぜ、ホッキョクグマ調査をしているんですか? 「なぜかといいますと、温暖化の影響っていうのが、緯度が高い北の地方ほど多く出るんですね。過去100年間で地球全体では温度が平均して0.6℃上がりました。寒い地方ほど影響が強くて、北極圏では5℃位も上昇しているんです。その結果、北極の自然が激変していまして、例えば、海の氷の面積が急激に減っていたりするんです。そうすると、ホッキョクグマっていうのは、氷の上で餌をとったりして生活していますので、非常に影響を受けてしまうんですね。なので、ホッキョクグマの生態を調べて、動きを追いかけることによって、北極の自然の色々な変化っていうのが見えてくるんです」 ●なぜ、メスグマを調べるんですか? 「実は単純な理由なんですけど、ホッキョクグマの姿ってオスの場合は頭よりも首のほうが太いんですね。で、メスグマは頭の方が首よりも太いので、首輪をはめられるのがメスグマしかいないんです(笑)」 ●オスグマに発信機をつけてもすぐに落ちてしまうんですね(笑)。 「スルッと抜けてしまうんです(笑)」 ●そっか!(笑) メスグマでなきゃいけない理由が特別にあるのかと思いきや・・・。 「実は首輪がメスグマしかつけられないからなんですね。ちょうど北極の春にメスグマを探しに行きますので、子供を産んで出てきたところっていうのが多いんですね。それで、大体お母さんグマになるんです」 ●これだけ環境に変化があるということは、お母さんグマにとっては子育て面でも大変な影響があるんじゃないですか? 「そうなんですよ。結局、氷の面積が減っているということは、夏の期間がそれだけ長いんですね。で、ホッキョクグマって氷の上で餌をとりますから、氷がない時期は絶食になってしまうんです。その絶食になっている期間が長ければ長いほど、当然栄養状態が悪くなるんですけど、母グマっていうのは特に冬になると巣穴にこもって出産して、そのあと子グマにお乳をあげて、100日間以上にも渡って、全く飲まず食わずで育てるんですね。ですので、栄養状態が悪くなると、お乳の出も悪くなりますし、子グマたちの生まれる状態にも影響しますので、私たちWWFの調査では、子グマの生存率が44パーセントくらいまで減ってしまった地域もあるんです」 ●そうなんですか。そういう意味でも大切なホッキョクグマの調査なんですけど、WWFジャパンだけで行なっているキャンペーンもあるそうですね。 「はい、そうなんです。今、インターナショナルのウェブサイトの方に、2182番、2183番というお母さんグマが新しくこの春に登場しているんですけど、そのお母さんグマに日本から名前をつけようというキャンペーンを行なっております」 ●数字ではなくてもっと親しみやすい名前にしようということなんですね。 「そうなんです。そこで、日本のみなさんにホッキョクグマを通じて、もっと温暖化に興味を持ってもらおうということで、今、名前を募集しておりまして、たくさんの応募をいただいております」 ●どんな名前がつくのか皆さんも楽しみにしていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。
お話にあった、ホッキョクグマに名前をつけるキャンペーン、名前は、ローマ字表記になるそうなので、世界中の人が読みやすく、覚えやすい名前を皆さんも考えて、ぜひご応募下さい。
・キャンペーンの詳細:WWFジャパン
※ホッキョクグマ追跡サイトマップのページ(WWF's The Polar Bear Tracker)英語のみ ■このほかのWWFジャパンのインタビューもご覧ください。
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