2006年11月5日
フォト・エッセイスト、白川由紀さんの「それでも地球は素晴らしい」今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは白川由紀さんです。“それでも地球は素晴らしい”をモットーに活動するフォト・エッセイスト、大陸横断家の白川由紀さんをゲストにお迎えし、自分で企画したユーラシア、アフリカ、南米の大陸横断バスの旅や、奇想天外な旅の出来事などについてうかがいます。 生と死が実感できた旅●大陸横断家という肩書きで白川さんが何をされた方かというのがすぐにお分かりかと思うんですが、白川さんは国際路線バスでユーラシア、アフリカ、南米の大陸を移動するということを実現されました。そもそも国際路線バスというのはどういうものなんですか? 「日本では聞いたことがないんですけど、欧米では普通にやっていることで、私が大学生のときにネパールに留学していたんですね。そのときに、イギリスからネパールとか、中国までとか陸路で14カ国ぐらいを1台の車で繋ぐっていうのを、家族連れとかで組織的にやっていて、『彼らができるんだったら私もできるかなぁ』と軽い気持ちでやってしまったのが始まりです。でも、私1人ではできないので、ヨーロッパ人の友達に手伝ってもらって、ヨーロッパで車を買って、中身を改造して、日本で人を募って、6人くらいの仲間を集めて、それで企画が成立したものなんです」 ●全員が最初から最後まで乗っていたんですか? 「途中下車もありなんですよ。一応、バス停っていうか、渋谷からどこを経由して新宿行きみたいなものの大きなバージョンなので、その時はドイツのフランクフルト発ネパール行きで、途中、トルコのイスタンブールと、イランのテヘランと、インドのデリーとかにバス停がありますので、そこでの乗り降りは自由です。そこから乗る人もピックアップしますっていう、サイズが大きくなったっていう感じですね」 ●ドイツからネパールですから、かなり大きいですけどね(笑)。本当に路線バスなんですね。 「そうですね。で、1回やりまして、それによって改善点が見えてきたので、さらに3回やってという感じで旅をしました」 ●それってポプラ社から出されている本の『もっと世界を、あたしは見たい』に色々なエピソードが綴られているんですけど、最初の国際路線バスはユーラシア大陸の横断バスということで、実際にユーラシア大陸は何度か横断されているんですか? 「私は3回横断しました。車自体は6回走っているんです」 ●なるほど。白川さんが中心になって企画したけども、常に白川さんが乗っているというわけではないんですね。 「そうですね。私が常に乗っていたら、人生を踏み外す感じもありますので(笑)、それはちょっとできないんですけど、友達にも手伝ってもらい、半分は付き添ってもらってという形でやっていました」 ●白川さんはご本の中で「ユーラシア大陸は人と文化の道」というふうに書かれているんですけど、この言葉についてご説明いただけますか? 「色々なことがありますよ。素晴らしい風景にも出会うし、その反面、パキスタンの国境とかで180ドルくらいで売られそうになったこともありましたし、本当に色々なことがありました。新聞とかテレビでは分からない情報が得られますし、現地に行くといろいろなことが起こるじゃないですか。それは、危険な目も多かったけれども、すごく楽しかったですね。危険なことで言ったら、軟禁されたりとか、殺されそうになったりとかありますけど、それと同じくらい素晴らしい人たちと素晴らしい風景と素敵な空と出会ったんですね。死ぬ前にいろいろなものが見たいという好奇心があって、そのためには多少の冒険をしてもいいかなと思ってやってきました」 ●死にそうになっている体験と同じくらい素晴らしいっていう、生と死をかけた両極端が実感できる旅だったんですね。 「そうですね。生きているっていう実感ができていますね」 ●それは怖い状況から脱出して本当の意味で命が助かっているっていう意味から始まり、大自然とかいろいろなものに触れてもそれを感じているんですね。 「そうですね。ずっと守られた生活をしていると、本能が鈍くなっちゃう気がするんですよ。人間も本能とかもともとあって、危険予知能力とか、アフリカとかに行くとつくんですよ。例えば、危険な動物が背後にいたとすると、後ろを見なくても背中に目の感覚ができるんですよ」 アフリカの猛々しさに惚れた!●ユーラシア大陸に続いてアフリカ大陸も縦断された白川さんなんですが、アフリカはどうでしたか?
「アフリカはアフリカでいいですよ(笑)。例えば、ユーラシア大陸ってヨーロッパからアジアまで、自然と人とが共存しているか、もしくは自然を征服してしまったり、コントロールして、そういうものの価値観で動いているとしたら、アフリカ人とかって自然に抵抗するのをあきらめている人たちなんですよ。例えば、ザンベジ川っていうところがあるんですけど、そこでゾウの大群が朝、家族で朝シャンに来るんですよ。で、アフリカゾウってアジアゾウよりも1.5倍くらい大きいんですね。そんなアフリカゾウがみんなで朝シャンに来てパーッと水しぶきを上げているんですよ。そんなアフリカゾウに小さな人間が勝てるわけないじゃないですか。で、そういうところで自分も謙虚になれるっていうか、発展しちゃった都市文化とかは自然をどうやって封じ込めようかって考えるけども、それが真逆っていうのは私にとって心地よかったですね。
●2002年には赤道直下から南極までをつなぐ南米大陸縦断バスも実現されていますよね。 「そうなんです」 ●これは実際に南極まで行かれたんですか? 「南極までは行けないので、南米大陸の最南端のウシュアイアというところまで行ったんですけど、南米は南米で面白いんですよ! っていうか、世界は見尽くせないなー!(笑)」 ●(笑)。やっぱり、全然違うんですね。
「違いますね。南米大陸を特徴づけすると、五大大陸の中で標高差が一番大きいんですね。だから、3000メートルから標高0のところまでを、例えば1日車を走らせるだけで、そこを道が数往復することもありましたね。面白い知恵だなぁと思ったのが、芋を保存するのにその標高差を利用するんですよ。上に持っていくとフリーズドライになるし、下では作物ができるから大自然を冷蔵庫みたいな感じで考えて活用して、一番上に持っていってフリーズドライにして、それを保存しておくんですね。で、作るのは低地で作ってとか、そういう人間の知恵に感心させられましたね。
生きるパワーが得られるカフェ、TOUMAI(トゥーマイ)●先頃、ポプラ社から『もっと世界を、あたしは見たい』という本を出されて、そこには色々なエピソードが綴られているんですけど、ユーラシア、アフリカ、南米と旅をされて、旅から学んだこともたくさんあるでしょうけど、世界を廻っているからこそ、日本の良さも見えてきたそうですね。そのキッカケを与えてくれたのはおばあちゃんだったとうかがったんですが、その辺のお話を聞かせていただけますか? 「そうなんですよ。旅に行って分かったことだからいいんですけど、旅に行けば行くほど、どこの人も今日と明日を生きるのに一生懸命で、どこでも人は変わらないんだなぁと思ったんですね。それで、今度は色々な世界から持ち運んできたものを、いろいろな人に見てもらいたいなと思ったんですね。パプアニューギニアのプリプリマンっていう呪術師の人がいるんですけど、その人が使っていた武器とか・・・(笑)」 ●「プリプリマン」ってかわいいですね(笑)。
「最初、冗談だと思ったんですよ(笑)。頭にハイビスカスをいっぱい挿して、身長が私と同じくらいの145センチくらいしかない方で、『あなたはなんですか?』ってきいたら、『アイ・アム・プリプリマン』とか言って、『冗談じゃない! 冗談にしても出来すぎだ!』と思ったんですけど(笑)、実際にそういう方だったんですよ。で、その方と同じ部族の方たちがエミューっていう小さいダチョウみたいな生き物の大腿骨で作った、他部族に対する武器とかを持っていたんですね。それをもらってきたりしたんです。
●いわゆるD.I.Y.ですね。 「そうですね。趣味でやってみようかなと思って、ドライバー1つ持ったことがない私が、土をこねて、壁を塗って、床板張ってっていうことをやったんですね。六畳一間作るのも3週間とかかかるわけですよ。しかも、仕事と並行してやっていたから、限られた時間の中でやっていたんですけど、生きているっていう実感がとてもあったんですよ。毎日ちょっとずつ完成していくから、無駄なことをしている感じはないし、それが自分の足場とかになるんですね。最初、その六畳一間のところをやって、できたら二部屋目、三部屋目にいこうっていって、おばあちゃんが残してくれた棟全部が完成したのが半年後なんです。それで調子に乗って『よし! この勢いで実家もやってみようかな』って思って(笑)、実家もやり始めて、できたのが2年後。で、それからジャングルのようになっていた庭も開墾しようと根っこを一生懸命とって、その全部が出来たのが3年後。その時に初めて、『ここまでやったんだから、周りの人にも楽しんでもらえるようにお店化しようかな』と思って、今そこの段階なんです。オープンしたのが2ヶ月くらい前になります」 ●いわゆるプチ・ユートピアということで、TOUMAI(トゥーマイ)というコミュニティ・スペースが出来たわけですね。 「はい。雑貨屋さんと、ライヴ・スペースがあって、手作りの楽しさを伝えられる空間になったらいいなぁと思っているんですけど、今はまだそういう教室とかはやっていないんですね」 ●TOUMAIはどういう意味なんですか? 「TOUMAIっていうのは、チャドの部族語で『生命の希望』っていう意味らしいんですけど、サルから人間に進化する狭間のガイ骨のニックネームなんですよ。私が今までやってきたような原始的な生きるパワーみたいなものをウチで感じ取ってくれて、それで元気に『あー、スッキリした!』って言って、ウチから元気に帰ってくださったらいいなぁと思っています」 色々な生き物が見られるのは地球に生まれたから●白川さんのモットーが「それでも地球は素晴らしい」だそうですね。 「ネガティブなニュースが多い国って実はすごく平和なんですよね。平和で恵まれていて、贅沢を満喫できているところは、ニュースがネガティブなんですよ。私の経験上なんですけど、傾向として。だけど、めちゃめちゃ痛めつけられたところとか、この前行っていたカンボジアとかも、ポルポト派にお父さんが殺されちゃった人とかがたくさんいるんですよ。7人でお茶を飲んでいたら5人くらいがそうなんですよ。それが当たり前で、そんな思い出、思い出したくないじゃないですか。そういうところの人達っていうのは、絶対に夢しか語らないんですよ。だから、日本は逆に言うと、ニュースだけ聞いていると暗いじゃないですか。それって、恵まれた環境にいるからじゃないのかなって私は思うんです。でも、そんな暗いニュースばかりじゃつまらないから、私はアマゾンの小さい木の1本として、ささやかながら『こんなに世界は広くて楽しかった』っていうことをお伝えできたらいいなと思って、そういうモットーを掲げているんです」 ●白川さんの真似はできないと思うんですけど、TOUMAIに行けば、そういう気持ちを感じることは誰もができることだと思います。白川さんは2003年には環境フォトコンテストの優秀賞を受賞して、今年はコミュニティー・スペースをオープンさせて、本の『もっと世界を、あたしは見たい』を発売させてと盛りだくさんでしたね。 「そうなんですよ。今年は写真集をあと3冊出して、1冊は自分で言うのもなんなんですけど、『地球は素晴らしい』っていう感じの本なんですよ(笑)」 ●自分で言っちゃうんですね(笑)。 「はい。自分で言っちゃってすいませんなんですけど(笑)」 ●そんな白川さんの今後の目標を教えていただけますか? 「やりたいことだらけで、あと50回くらい人生しないと追いつかないかもしれない(笑)」 ●(笑)。でも、ユーラシア大陸、アフリカ大陸、南米大陸ときたら、まずは、残りのオーストラリア大陸とアメリカ大陸になるんじゃないですか? 「それはやりたいですね。でも、オーストラリアとアメリカはいつでも出来ますからね」 ●白川さんにとって、素晴らしい地球というのをみんなに改めてPRするとすると、地球って何が素晴らしいですか? 「だって、なぜ花びらがあんな形をして生まれてくるのかが分からないし、ナメクジがどうしてあんな形なのかが分からないし、どうしてあんなものがあるのかが分からないし、どうしてカマキリがバッタとか半分くらい食べちゃうのか分からないし、そんなものが色々見られるのは地球に生まれたからかなって思いますよね。だって、火星に生まれていたらウサギとかシカとかいないですもんね」 ●そういう意味でいったら、私達は「地球って素晴らしい」って実感できていないってことは、ぬるま湯に浸かっちゃっているっていうことなんですね。 「でも、道を歩いていてもいろいろなことありません? 例えば、海に泳ぎに行っても、『イカがこんな格好で泳いでいる!』とか。私、イカを見たとき、ビックリしましたよ。イカってスーパーで縦で売っているじゃないですか。それが、足が90°になってぶら下がっているのを見たときにビックリして息が上がっちゃって、それで私、ライセンスを取れなかったんですよ(笑)。自分だけ空気が肺にたまっちゃって、パーッて浮いちゃって・・・(笑)」 ●でも、白川さんはライセンス系はとらないほうがいい!(笑) 「危ないですよね(笑)」 ●「あっ!」って言っている間に車を運転していたらぶつかっちゃうし、多分、危険だと思う(笑)。助手席がいいと思う(笑)。これからも、色々な体験をして素晴らしいお話を届けてくれると思うので、また是非、来ていただいて地球の素晴らしさを伝えていただければと思います。今日はどうもありがとうございました。 |
■大陸横断家/フォト・エッセイスト「白川由紀」さん情報
『もっと世界を、あたしは見たい』
※受付は終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。
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写真集『出逢いの瞬間』
写真集『大地の詩』
ショップ&カフェ「TOUMAI(トゥーマイ)」
・白川由紀さん&TOUMAIのHP:http://www.toumai.jp/ |
オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」
M1. LIFE IN THE FAST LANE / EAGLES
M2. AFRICA / TOTO
M3. LIFE'S A MIRACLE / PREFAB SPROUT
ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」
M4. VOICES / TIMOTHY B. SCHMIT
油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」
M5. COLORS / AMOS LEE featuring. NORAH JONES
M6. HAVE A GOOD TIME / PAUL SIMON
M7. (WHAT A) WONDERFUL WORLD / ART GARFUNKEL
エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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