2006年12月10日
園芸家・柳生真吾さんの家族の里山園芸今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは柳生真吾さんです。園芸番組、NHK『趣味の園芸』のキャスターとしてお馴染み、園芸家の柳生真吾さんをゲストに、家族をつなぐ里山園芸の楽しみ方や醍醐味、また八ヶ岳倶楽部の近況についてもうかがいます。 庭で楽しむ里山園芸●大変ご無沙汰しております。 「こんばんは。お久しぶりですね!」 ●ちょっとお会いしないうちに、『柳生真吾の、家族の里山園芸』という本まで出されたんですよね。 「そうなんです。これは渾身の力を込めて出しました。こういう本を作りたくてずっと企んでいたんですよ。『家族の里山園芸』でしょ。『家族の』って入れたのは、園芸って花を咲かせるだけじゃなくて、そこで色々な生き物と関わってくるじゃないですか。例えば、お母さんが庭にサンショウの木を植えたとします。で、それを料理に使う。サンショウって日本のハーブですよね。そこにアゲハチョウの幼虫がいたとしたら、お母さんは害虫だから取り除かなくちゃいけないわけ。だけど、子供やお父さんは、もしかしたらアゲハチョウの方が楽しいかもしれないって思わない?」 ●有り得ますね。 「ね? そしたら、アゲハチョウの子供もありにしないと、庭とか園芸って成り立たないんじゃないかなって思ったんですね。僕も子供が4人いますから、家族で庭は過ごしたいですよね。お母さんのためだけ、自分のためだけっていうのは嫌だったので、家族で楽しむ庭を考えたらどうしても里山園芸っていうところに行き着いたんですね。イコール里山ってなぜかというと、そういうアゲハチョウの幼虫、サンショウ、それをついばみに来る鳥とか、色んなものを全部楽しめるのって、いわば昔の里山じゃないですか」 ●しかも、人の手が入っているっていうね。 「それが里山ですもんね。でも今、遊ぶような裏山がないじゃないですか。楽しい里山ってないじゃない? だったら、庭で里山を楽しんじゃおうっていうのが、ひとつの提案なんですよ。しかも、家族全員でっていう」 ●それが『家族の里山園芸』。 「そうなの。虫のエサ台っていうのも考えたのよ。鳥のエサ台があるんだから虫のエサ台があってもいいじゃないかって思ったのね。家の前に蜜をギューッと染み込ませた流木をカッコよく置いたんですよ。そしたら、カブトムシが来るわ来るわ。エサ台って偶然来たんじゃなくて、『来てよ!』っていう能動的な願いみたいなところがあるじゃないですか。そこに飛んできたら子供は寝ない!」 ●ですよねー!(笑) 「でも、よかったのかなぁ、『子供が寝やしない!』って妻に怒られましてね(笑)。庭にたくさん幼虫とかアリジゴクとかカブトムシとかが、気がついたらいるっていう庭を造りたくて、あるいは、『そんな庭を造りましょうよ!』っていう本なんですね」 ●この、『柳生真吾の、家族の里山園芸』は「知る」、「見る」、「育てる」、「作る」、「遊ぶ」っていう5章に分かれて作られている本なんですけど、いくつか私が「えっ!?」って思ったものがあるので、ピックアップして質問していきたいと思います。まず、第1章の「知る」のところで、真吾さんも不思議に思っているそうなんですが、新芽が枯葉を突いて伸びていくそうですね。普通、枯葉が上にあったらよけるなり、芽が伸びる力で枯葉が動いて伸びていくはずなのに、わざわざ葉っぱに穴を開けて伸びていくんですよね。 「不思議でしょ?」 ●変ですよね。つまようじを下からグイッと突き刺すようにして出てくる。そのためには上から重力がかからないと、枯葉なんだから浮いちゃうじゃないですか。 「枯葉を突き破るって、例えば、僕らがやっても片手でつまようじを持って、片手で枯葉を持って突き抜けます?」 ●突き抜けないですよね。 「突き抜けないと思うんですよ。しかも、つまようじならいいですよ。この写真見て。これはチューリップの新芽なの」 ●ちょっと丸いですもんね。 「チューリップの芽ってニョキってしているでしょ。そんなに尖っていない。これが春になると葉っぱを突き破って出てくるんですよ。これは八ヶ岳の早春で何年もずっと不思議に思っていたことで、答えに行き着かないの。だから、この本を使って『誰か教えてください!』ってお願いをしているの(笑)。だって、本当に偶然、芽が出てくるでしょ。芽が出てきたら、ほんの1~2ミリ出てきたやつに落ち葉をポンと置くんですよ。それでも突き破るんですよ。こういう目に見える七不思議があって、みんなでワイワイできるのはとっても楽しいなって思いますよね」 ●これは来年の春の初めにみんなで地面を見て、探して、見ていただくと面白いですよね。 「そう。チューリップを植えた人はその上に落ち葉をフワッとかけてみると、いいかもしれない。春、落ち葉を突き破って出てきます。不思議ですよ」 柳生家の恒例行事はセミの羽化観察●続きまして、「見る」の章で面白かったのが、真吾さんのお家では家の中でセミを羽化させたそうですね。 「そう。7年間地中で過ごした幼虫が地上に上がってくる。ちょっとじめじめした初夏です。で、木に登ってくる。中には結構な確率で木から落ちちゃうやつがいるんですよ。成虫が出てきたら、羽を乾かさなきゃいけないから、木から落ちたまま羽化させると、羽が伸びきらないで、飛ぶことができないセミになっちゃうの。だから、それをそーっと手の上に載せて持って帰って、家のカーテンとか網戸とかに爪をポンッと引っ掛けて置くんですよ」 ●セミにとって害はないんですか? 「ほったらかしにするよりずっといいんです。網戸とかカーテンにピュッとつけるといいの。そうすると、背中が割れる音がします。よく聞くと『ピシッ』っと背中が一直線に割れるんです。そこから、猫背の背中が出てくるようにグーっと背中から出て、頭がウワッと出るのね。で、そこで幼虫は30分くらい休憩するんですよ」 ●そこまでいくと(笑)。 「そこまでいくと(笑)。僕もちょっと息切れましたけど(笑)。その間に僕の子供たちはお風呂に入るの。で、お風呂から出てくると、セミの幼虫はお腹を出し始める。で、お腹を出すと、また1時間休むんですよ。その間に歯磨きとか、テレビ見たりするの(笑)。長い4時間なんだけど、家の中で間近に置いておくと、外では耐えられないものが、家の中だからこそじっくり観察できるんですね。最後、セミが全部出たときに子供たちは毎年なのに、全員泣くんですよ。毎年見て、毎年泣くの。カミさんも泣くの。生みの苦しみですよ。本当に赤ちゃんが生まれてくるような感動があるんですよね。これ、ウチの恒例行事なんです」 ●私も来年は落ちている子を探してみたいと思います。 「もう涙が出ますよ。ジーンとしちゃうんだよねぇ」 ●あと「育てる」の中で、私はマンションに住んでいるのでベランダでドングリからミズナラに育てたりしているんですけど・・・。 「本当に?」 ●そうなんですよ。 「ドングリから?」 ●ええ。紅葉したりしてかわいいんですよ、これが。 「へぇー」(深く感心する真吾さん) ●今、元気がなくなっていて心配なんですけど(笑)、大分盆栽化してきて、いい感じになってきています。真吾さんの本に載っていたんですけど、私も前から興味があって、ウチのガーデニングに加えたいなと思ったのが、クリスマスローズ。 「うん! これは今、僕もハマっているんです。クリスマスローズを種から育てたとしますよね。すると全部、違う花が生まれるんです。斑点があるもの、花びらが丸いものや、尖っているもの、よじれているもの、八重が生まれたり、色々なものが生まれるの。だから、困るんですよ。これからの時季、花屋さんに行くと、咲いて売っているんです。いいのが咲いていると、もう二度とその花には出会えないんですよ」 ●あ、オンリー・ワンだから! 「オンリー・ワンだから、買っちゃうんですよ(笑)」 ●すると、家中クリスマスローズだらけ(笑)。 「もう、50~60株あるかもしれない」 ●奥さんから「また、クリスマスローズなの!?」って言われちゃうんじゃないですか?(笑) 「だから、『買ってきた』なんて言いませんよ(笑)。あと、どんな花よりも春、一番に咲くので、僕は好きなんですよね。八ヶ岳って冬が長いから、冬を打ち破ってくれる花、クリスマスローズは僕にとっては特別な花ですね。で、その花を見るためには僕が這いつくばらないと見られないわけです」 ●真吾さん、特に背が高いからひざを着いたくらいじゃ見えませんもんね。 「腹ばいになって下から、『おーっ、咲いたか!』って見るんです」 ●高さ的にはどれくらいの高さなんですか? 「15センチくらいのところで下を向いて咲くんですよ」 ●じゃあ、ほっぺを地面につける感じで見るんですね。 「そうです。そうすると、ちょっとご褒美があって、落ち葉の匂いがするんですよ。春は一番先に何からやってくるかっていうと、香りから来るんです。凍っていた土が解けて、落ち葉が土に返っていく、土の中の微生物がもぞもぞ動き出したのを、鼻で感じる。そうすると、木が水を吸い上げて、ようやく芽が膨らんで、葉っぱが出るんですよ。だから、『新緑がキレイだから、春だね!』って言っている頃は、土の中はとっくの昔に春なんですね。それも気づかせてくれるのがクリスマスローズで、腹ばいになって春のにおいを感じてっていう花なんです」 柳生真吾さんの園芸の極意とは?●『柳生真吾の、家族の里山園芸』という本は5つの章に分かれていて、最後の章で「遊ぶ」っていうのがあって、これは是非、みなさんもやってほしいなと思うのが、お庭を造るのであれば、サンダルでそのまま家族全員がお庭に出られる状態が一番好ましいし、楽しい。そして、そんなお庭でバーベキューをやるなら七厘だというふうに書いてありました。 「そう! 七厘はいいです。バーべキュー・セットでバーベキューをしたことあります?」 ●あります! 「当然ありますよね。バーベキュー・セットは大きいじゃないですか。で、火を起こすのが結構大変。で、待っている間、焼き手が結構つらいんですよね。『温まっていないから、まだ焼けないんだ。ごめんねー』とかって言って。これが温まりすぎると、バンバン焼けてくる。『もう、早く食べて!』とか言っちゃったりして、自分が食べる暇がない。ドンドン焼いて、結構熱いですし、みんなに『食べて食べて! 次こっち!』って言って、今度は焦げて中まで火が通らないとか。しばらくすると、火が足りなくなるんですよ。『ごめん! もうちょっと待ってくれ』っていうことになるじゃないですか。焼き手がかわいそう過ぎるんですよね」 ●大体、そういう場合お父さんですもんね。 「やっぱり、庭っていうのは、全員で楽しむ舞台じゃないといけないと思う。七厘はあの焼けるペースがいいですね。で、火が落ちてきても七厘ってよく出来ていて、本体自体が温まっているんですよ。だから、グッと下がらないし、すぐにまた火が起こせるし、のんびりのんびりやって、それと、子供に火を教えるのにとってもいいんです。危なくないんですね。で、うちの子も小学校1年生くらいになると焼き手をやりたがるんですね。で、トロトロ焼きおにぎりを作ったり、焼き鳥を焼いたり、あのペースが僕は好きですね。スピードが七厘のスピード」 ●みんなでゆっくりワイワイ話しながら、楽しみながらバーベキューが出来るのが七厘。そんなに大きな庭がなくても楽しめちゃいますもんね。
「そう。バーベキューをするにも、大掛かりすぎると庭に出るチャンスって少なくなるんですよね。僕は、気がついたら庭にいたっていうのが理想だと思うんです。『あれ? 気づいたら庭にいたよ』っていう日常にしたいのね。だから、庭にしても眺める庭ばかりだと思うんですけど、もっとみんなが出て行きたくなる庭があってもいいと思うんですね。それはカブトムシが出てくるエサ台だったり、家と庭の段差を少なくして、ポンポンポンと出られる庭だったり、テラスやデッキに手すりをつけなかったり。いいスリッパをいつも置いておくだったり。
●なるほど。この本の中でとても大切だなって思ったのが、育てる植物もそうなんだけど、「害虫だって命。自分の手や足を使って害虫をつぶす」っていうふうに書かれている部分なんですよね。 「一番最初にお話ししたかもしれませんが、みかんの木やサンショウの木にアゲハチョウの幼虫が来たら、たくさんついたら害虫です。木が枯れちゃうから退治しなくちゃいけない。で、退治してもいいの。でも、僕は迷わず一枝だけアゲハチョウにあげることにしているんです。だけど、他のものはその木が枯れてしまうから退治しなくちゃいけない。子供と一緒にとってつぶすんです。必ず、足でつぶす。そうするとプチッていう感触があるでしょ。『あーっ!』って思う。でも、それで木が生きながらえて、来年もまたアゲハがそこで羽化する。その感動がまた経験できる。そうしないと全部枯れてしまう。全部、命ですからね。だけど、命をいただかないと人間は生きていけないし、感動も得られないわけで。生き方がとても難しいんですけど、人間は何も作れないから、命をいただいて大きくなるんですよ。だから、ご飯を食べるときに『いただきます』って言うじゃないですか。あれは、色々な命を『いただきます』ってしていると思うんですけど、そういうのを感じるためにも庭はとてもいい舞台なんじゃないかなって思うんですね」 八ヶ岳倶楽部探検隊、結成!●12月の八ヶ岳倶楽部にまだ私、行ったことがないんですよ。 「そうでしたっけ?」 ●そうなんですよ。 「12月はキレイですよー!」 ●今はどんな感じなんですか? 雪に覆われて・・・。 「ウチはね、根雪はないんですよ。八ヶ岳の南麓で清里の隣、大泉というところなんですけど、南麓はいつも陽が当たっているので、意外とぽかぽか暖かいんですよ。その代わり、夜冷え込むの。で、冬はものすごく晴天率が良くて、日本一らしいです。だから、隣の野辺山っていうところに国立の天文台があるくらいでして、非常に天気がいいんですね。だから、雪が降っても昼間にすぐ解けちゃう。で、夜ぐっと冷える。そんな気候なんです。で今、林はどんな状態かっていうと、何の化粧もしていないすっぴんの状態です。何の葉っぱもない花もない、そして草も生えていない。地面の起伏と幹の美しさと、こずえのカサカサカサっていう感じと、青空と雲、あと鳥だけ。そんな景色なんですよ。全部がシーンとしていて、清潔な感じですね。みんながぐっと息をこらえている。それを感じるような季節ですね」 ●私、知らなかったんですけど、八ヶ岳倶楽部探検隊というものが結成されているそうですね。 「そうそうそう! あれ? 何で知っているの? あ、ホームページか!」 ●そうなんです。八ヶ岳倶楽部にホームページが出来たんですよね。そこに探検隊のことが載っていたんですけど、隊長は真吾さん? 「お恥ずかしながら。八ヶ岳倶楽部探検隊というのをやっているんですよ。八ヶ岳にいるときは僕、毎日、庭を一周するんですね。『これは誰かに見せたいな』って思ったときに、八ヶ岳倶楽部のお店にパッと張り紙を張りだすの。『本日、探検があります』って突然張り出すんですね。その時にたまたま来ている人が、たまたま申し込んだら、僕と一緒に1時間から1時間半、ずっと林を探検するんですよ」 ●じゃあ、参加方法っていうのは、八ヶ岳倶楽部にいて、真吾さんがその張り紙を出すタイミングに出会ったら参加できるんですね。 「偶然ですね(笑)。そのときの天気とか、見せたいものがあったとか、あるいは『これがいた! あれホラ、見て見て!』っていうときに、バンッと張り紙を出して、その1時間後にみんなで歩くんです」 ●でも、真吾さんのことですから、年末ジャンボ宝くじよりは当たる確率が高いような気がします(笑)。 「ええ(笑)。割としょっちゅうやっています」 ●なので今度、私達も収録機材を持っていつでも取材できるようにして行きたいと思います!(笑) 「いいですよ! 八ヶ岳探検隊ライヴ!」 ●今度は是非、八ヶ岳倶楽部探検隊に参加させていただきたいと思います。 「どの季節が一番いいかってよくきかれるんですけど、それも一番困る質問で、どの季節も本当にいいんだ! で、今は12月だから冬の自慢話をしに来たんだけど(笑)、冬のピーンと張り詰めた空気と星と鳥とすっぴんの林。何の化粧もしていないすっぴんの林を見てほしいなぁー。近いうちに来てください!」 ●是非! プライベートでもうかがいたいと思います。 「機材を持ってきていただいても結構ですし」 ●機材も持ってうかがいます!(笑) 今日はどうもありがとうございました。 「楽しかった! ありがとうございました」 ■このほかの柳生真吾さんのインタビューもご覧ください。
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■園芸家「柳生真吾」さん情報
新刊『柳生真吾の、家族の里山園芸』
レストラン&ギャラリー「八ケ岳倶楽部」
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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」
M1. FAMILY OF MAN / 3 DOG NIGHT
M2. DON'T ASK ME WHY / BILLY JOEL
M3. 世界に一つだけの花 / 槇原敬之
ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」
M4. WE WISH YOU A MERRY CHRISTMAS / KENNY G.
油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」
M5. BOOK OF DREAMS / SUZANNE VEGA
M6. THE GARDEN / CARLY SIMON
M7. HERE, THERE AND EVERYWHERE / THE BEATLES
エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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