2007年4月22日
心に木を育てよう! 稲本正さんの緑の環境立国宣言今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは稲本正さんです。オークヴィレッジの代表、木工芸家、そして作家の稲本 正さんをお迎えし、木を使って豊かな心を育てる“木育(もくいく)”や日本人の環境問題への取り組み方などうかがいます。 人間は1日に20キロ空気を吸う!?●先日、稲本さんは新しい本『心に木を育てよう~緑の環境立国宣言』を出されたばかりなんですけど、この本のお話をする前に、先日、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書で、地球温暖化は世界にどういう影響を及ぼすかという予測を示されました。これは、このまま温暖化が進めば2020年には途上国を中心に数億人が水不足に陥って、洪水や熱波が起こって感染症の危険が高まるなど、すごく深刻だっていうことを表したレポートだったんですけど、これに関してはどう思いますか? 「日本はまだいいの。なぜかっていうと周りを海に囲まれて、雨がたくさん降るし、森がたくさんあるから、水がきれいなんですよ。日本の最大の戦略商品って水なのね。日本は石油も金属もなければ、プラスチックなどのあらゆる素材がないの。だけど、水だけはキレイな水がある。でも、世界を見てみると、アフリカにチャド湖ってあるでしょ。それがなくなりつつあるの。世界で第6位だった湖が今、なくなりつつあるんだよ。どんどん少なくなって、ほとんど水がない」 ●枯れあがっちゃうっていうことなんですか? 「そうそう。世界的に枯れあがっているものっていっぱいある。黄河ってあるでしょ。これも、向こうが見えないくらい広い川なわけ。それが今、水がなくて歩いて行けるところがあるの。断水っていって水がない。断水している川の長さが日本の信濃川より長いのよ」 ●日本にいるとそういう危機感ってないですよね。 「分からないでしょ。僕が世界を回った頃からその兆候は出てきていたんだよね。だから、温暖化っていう言葉はちょっと間違えで、正確に言うと気候変動なんだよね。異常気象になっているよってことで、それがますます出てきているから、予告しているとおりのことになるので、一刻も早く手を打たなきゃいけない。僕が『緑の環境立国宣言』って言っているのは、日本で環境のいいモデルを作って、この方法でやれば大丈夫だよっていうことが分かるように書いた本なの」 ●それがこの本、『心に木を育てよう』なんですね。帯に「『不都合な真実』を越える具体策がある」と書かれているんですが、あの映画を見たあとに、たとえば日本ではどう行動を起こせばいいのかということが書かれているんですか?
「あの映画、もちろん僕も見たし、本も読んだんだけど、あれを読んでいると『もう絶望だー! もうだめだー!』って思えてきてさ(笑)。彼、いくつかのことをうしろに書いてはいるんだけど、そんなことくらいではダメなんじゃないかなぁって思うくらい世界の現実は厳しいわけ。
●数字で考えることってないですもんね!
「吸って吐いて吸って吐いてってしているわけよ。その空気が悪いとダメ。で、CO2も明らかに増えているし、それ以外にも汚いものはいっぱいあるわけ。その空気をキレイにするためにも、山に木を植えなきゃいけない。
●分からないです。 「ドイツ100パーセント。アメリカは輸出しているから130パーセント。フランス140パーセント。カナダ160パーセント。デンマーク200パーセントだよ!」 ●で、日本が?(笑) 「40パーセント(笑)」 ●この違い何なの!?(笑) 「(笑)。要するに、日本人は間違えているのよ。だって、食料が来なくなったら6割の人が死ぬんだよ。もはや食糧危機だよね。だから、食料自給率を高めて、おいしい日本のものを食べるっていうことをやればいいだけのことなの。それが環境にいいんだから。で、頑張れば食料自給率を今の倍くらいにはできますよ。昔は70パーセント自給していたんだから。で、江戸時代は100パーセントだったんだから。いくらでもできるんですよ。だって、休耕田っていっぱいあるんだもん」 メールで植林をしよう!●おいしい空気、おいしい水、おいしい食べ物を食べていれば、私達は大丈夫ですか? 「そうですね。もう1つ問題なのは、木材。木のうち8割も輸入しているんだよ! 食料の6割どころじゃなくて8割よ。実際は今、山に木がいっぱい余っているの。特に、戦後すぐに植えた木で、50~60年生の木がいっぱい余っているの。だから、木材はあるのよ。フード・マイレージとかウッド・マイレージっていう言葉があるんだけど、ウッド・マイレージは世界でダントツに高いの」 ●森林国と言われているのに? 「そう。木はいっぱい余っているのにだよ。北欧から来る材はどうやって日本に来ると思う? 日本はフィンランドとか北欧から木材を買っているのよ。どうやって日本に来るかというと、大西洋を渡ってくるのよ。世界で2番目に大きい海を渡って、パナマ運河をやっと越えて、それで太平洋を渡って、ってこんなバカなことをしてはいけないでしょう」 ●必要がないんですもんね。 「そうですよ。日本でいっぱい木が余っているし、日本の木工技術は世界一なんだから。何か勘違いしているんだよね。環境にいいことって意外と簡単で、まず日本の木を使い、日本の食糧を食べ、少しでも山に木を植えておいしい水を飲み、おいしい空気を吸うって、この基本原則をやれば日本は環境立国になれる」 ●これだけ、健康で環境にもいい生活ができる状況が揃っている日本という国にいながら、その日本自体が海外に頼る生活をしているっていうのはおかしいですよね。 「うん。だからね、ちょっとスイッチを間違えたところに入れちゃったんだな。要するに、外国のブランドや外国のものに日本人が憧れすぎて、自分たちのいいところが分からなくなった。例えば、ヨーロッパの国なんかは自国を大切にするのね。アメリカだってそうだよ。日本は戦争に負けたのもあって、なぜか自国を犠牲にしちゃうんだなぁ。自分の国っていうことは土であり、水であり、空気であり、そういうものを大切にする。それは、結果的には健康にいい生活なんだよね。自分の健康にいいことをすることは、地球にもいいんだよね。それを今度の本で、『こうしてこうやればよくなりますよ』って具体的に書いたんですね。例えば、アスパラガスの輸入ものを食べるのはほとんど犯罪に近いんだけど(笑)、それを国産に変えるだけで、クールビズ7日間やったのと同じ効果があるのよ」 ●国産のアスパラガスを食べるだけで、1週間クールビズやったのと同じ? 「そう。アメリカ産のチェリーとか、アメリカ産のイチゴを1パック食べちゃったら大変なもんだよ。クールビズを10日くらいやらなきゃいけない」 ●これからどんどん夏に向けて熱くなっていくじゃないですか? すると、クールビズとか冷房の温度をちょっと変えようとか色々気を使いますよね。それを一生懸命やっていても、外国産のアスパラガスや果物をちょっと食べてしまうと台無しなんですね。
「そうそう。でも、クルービズはクールビズでやったほうがいいんだよ。だけど、それをやっても外国産の食べ物とか、外国産の水を飲んでしまったら効果が低くなってしまうんだよね。また、水が入っているペットボトルもよくないんだけどね。それならせめて日本産の水を飲む。昔、『おいしい生活』っていうコマーシャルがあったけど、おいしい水を飲み、おいしい空気を吸い、おいしい食べ物を食べるっていう基本を心がける。それは自分の健康を育てることや、結果的に地球をよくすることになるっていうことを、まずみんなに分かってもらいたいんですね。その上で、なるべく電気を切ったりすれば、さらに効果的ですよね。
●ヴァーチャル植林ができちゃうんですね。 「そう。それから、本の中にあるシリアル・ナンバーをメールで送ってもいいの。ハガキで出してもいいし、メールで送ってもいいの。そうすると、その人の木が山に植えられるのよ。そうすると、僕の印税がそれで減るんだけどさ(笑)。僕の印税のお金が実際にドングリの会に入って、それで山に木を植えられるわけ。最初はヴァーチャルな森ができて、皆さんにも是非、寄付をしてほしいんだけど、そのうち山にも森ができるっていう仕掛けを作っているの」 石油製品を木製に変えられれば人類は救われる●稲本さんの最新刊『心に木を育てよう~緑の環境立国宣言』の中で、食育と木育というのがあるんですけど、食育という点で言えば、先ほどお話にあった自分を健康にするということイコール、環境にもいいことというのも含まれますよね? 「うん。だから、自分が食べるものをよくしていく。それで、なるべく日本のものを食べる。それを、うまく料理する。それで、自分の体がよくなって、それが環境にもよくなる。要するに、採れた場所の環境や水が悪かったら、いいものが採れないわけだからね。だから、なるべく農家の人をよくしていく。そういう流れがあるよね。それと、もうひとつの木育っていうのは、昔はみんな日本の木を30~40種類くらい知っていたわけ。でも、最近は分からない人がいるんだ。外材か日本材かすら分からない」 ●すみません! 下向いちゃいます(笑)。 「(笑)。『森の合唱団』っていう、叩くとドレミの音がする木琴のおもちゃがあるのね。これは、ヒノキとか柔らかい木だと音が低くて、カバなんかだと音が高くてね。木琴って短いものが高くて、長いものが低いでしょ。ところが、『森の合唱団』は同じ長さでちゃんとドレミが出るんだよね。これが、全国の幼稚園で爆発的に採用されているのよ」 ●面白いですよね。 「木の種類によって違うっていうのが分かる、これが木育なんですよ」 ●そういう意味では、もしかしたら日本人って昔は木育がちゃんとされていたのが、今はどんどん忘れられてしまっているんですね。
「昔は木育がちゃんとされていたから、環境にいいこともしていたわけ。木の物を大切に使ったり、木を植えていたわけですね。あと今、バット材の残りのアオダモを使って、『ケータイお箸運動』っていうのをローソンとかでやっているのよ。プロ野球の選手会長をやっている宮本慎也選手が働きかけて、ヤクルトの選手と西武の選手がみんな、オークヴィレッジが作った漆塗りのケータイお箸を使っているのよ。今、プロ野球界から環境運動を起こそうって動きになりつつあるの。今までの環境運動って、『あれをやっちゃいけない、これをやっちゃいけない』って理屈っぽかったじゃない。そうじゃなくて、『これをやれば楽しいよ』っていう感じで、スポーツ選手もやるし、音楽家もやるし、落語家もやるし、普通の人もみんな楽しみながらやるっていう運動にしたいんですよ。
●それを率先してできるのが、あまり豊かとは呼べなくなってしまった森を持つ日本なんですね。 「手入れをすればいいんだよね。手入れをしながらその木を使い、またさらに手入れをすることによって、日本の森はよくなる。大体、石油はあと30~40年でなくなるんだから。そのときに再生可能な木を使えば、環境にもよくなるし、今の文明の中でも味わえるものがどんどんできるわけ。ウチは、洋漆器っていって、マグカップやビアジョッキを木で作って、漆を塗って出しているの。今まで木のものって赤とか黒とか茶色だったのね。で、コーヒーとかは赤とか黒とか茶色に入れるとまずいのよ」 ●お味噌汁はいいけれどっていう感じですよね(笑)。 「そう(笑)。そこで、白い漆を開発したわけ。で、残念ながら最初から白いわけじゃなくて、最初の頃は茶色が残るの。これが10年経つと白くなるのよ」 ●使えば使うほどに味が出るんですね。 「うん。それで今、マグカップが爆発的に売れていて、生産が追いつかないくらいなんだけど、木のカップの何がいいかというと、飲むじゃない? 飲み物を入れる前は軽いの。それが飲み物を入れると重くなるじゃない。それで、飲み終わるとまたすごく軽くなるの。だから、『飲んだなー!』って気がするの(笑)」 ●なるほどね(笑)。 「ジョッキなんかモロよ。ビールがいっぱい入るじゃない。『重いなぁ』って思うけど、夏なんかカーって飲むじゃない。そうすると、本当に軽くなるのよ(笑)。木だからすごく軽いの。『この(ジョッキの)分、俺に入ったなぁー』って思うのよ(笑)」 ●そのビールがおいしい水で作られていたりすると、「あぁー、いいものが入ったなぁー!」って気分になれるんですね(笑)。 「ウチはアサヒビールと組んで、アサヒビールの工場の上に木を植えているんだよ。アサヒビールもなかなかのもので、工場の上にちゃんと木を植えているの。だから、そのお金を少しでも植林に回せば、みんなが楽しくてなおかつおいしくていいじゃない」 ●ということは、研究の余地がまだまだあるんですね。 「まだまだ研究されていない」 日本が世界の環境モデルになろう!●今回の新しい本『心に木を育てよう~緑の環境立国宣言』は、分かりやすくいくつかの章に分かれていて、「こうするといい」という具体的なことが書いてあるので、これを参考にしながら生活していくと、地球もよりよい方向へ向かっていくんですね。 「そう。若い人向けにも書いてあるし、団塊の人向けのメッセージもあるんだけど、ウェブと環境の具体的な案が繋がるっていうのは、これからすごく重要だと思っていて、そろそろウェブ上にロハス・シティができるの。今、一生懸命作っているところなんだけど、みんな、ウェブ上にいい環境のサンプルが出来て、それが具体的にも繋がるっていうやり方をやろうとしているの」 ●これらをやれば、人が自分の健康を気遣い、よくなっていって、最終的に環境もよくなっていけば、まだ間に合いますか? 「まだ間に合う。悪くなるのにもスピードがあるんだけど、よくなるのにもスピードがあるんだよね。だって、たった6パーセントなわけだよ。100あるうちの6ついいことしようって話だから、6つくらいできるでしょう。できれば14個くらいはやりたいんだけどね。心が変われば、日本はいくらでも到達可能。ただ、世界の問題はもうひとつあるんだよ。世界の問題はもっと厳しいから。だけど、日本はまず到達可能なので、日本はできたっていうモデルをまず作りましょうと。逆にいうと、日本にできなかったら世界的にもほぼ危ない」 ●私達日本人の心次第なんですね。 「そうそう。世界のサンプルになれるかどうかなのよ。今、京都議定書に中国もアメリカも入っていないでしょ。ドイツはもうサンプルを示しているわけ。アジアで日本がサンプルになれるかどうかがすごく重要なの」 ●生活スタイルをちょっと変えるだけで、世界の見本になれるわけですからね。 「そう。江戸時代は世界の中でも環境チャンピオンだったんだもん」 ●だったら、できますよね。 「そんなに難しいことじゃないですよ」 ●そのためにもみなさんも『心に木を育てよう~緑の環境立国宣言』をヒントにしながら、生活していっていただきたいと思います。 「項目に分けて『こうすればいい』っていうのを10項目くらい書いてありますから」 ●すごく分かりやすいので、できるところからやっていただければと思います。この夏は、私も木のビアジョッキでカーッと飲んでみたいと思います(笑)。今日はどうもありがとうございました。 ■このほかの稲本正さんのインタビューもご覧ください。
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■オークヴィレッジ代表「稲本 正」さんの新刊
『心に木を育てよう 「緑の環境立国」宣言』
・「ドングリの会」のHP:http://www.dongurinokai.or.jp/
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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」
M1. LISTEN TO WHAT THE MAN SAID / PAUL McCARTNEY & WINGS
M2. DEPENDIN' ON YOU / THE DOOBIE BROTHERS
M3. BETTER DAYS / THE GOO GOO DOLLS
油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」
M4. WHAT CAN I DO / THE CORRS
M5. THE RIGHT THING TO DO / CARLY SIMON
M6. CHANGE THE WORLD / ERIC CLAPTON
ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」
M7. THE WATER IS WIDE / JAMES TAYLOR
エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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