2007年7月1日
(株)ミキハウス・坂本達さんの「エコツアー体験 in ラオス」今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは坂本達さんです。有給休暇を使って自転車で世界を一周したこともある、株式会社ミキハウスの坂本達さんをお迎えし、ラオスで体験したエコツアーについてうかがいます。 価値観が揺らぐような感動と出会った●ご無沙汰しています。エコツアーでラオスに行かれたそうですね。 「サバイディー!(笑)」 ●(笑)。それは、どういう意味なんですか? 「ラオス語の『こんにちは』です」 ●サバイディー。ラオスは何度も行かれていますよね。 「そうですね。世界一周中に自転車で1ヵ月弱走りましたので、2回目となる訪問でした」 ●何年ぶりだったんですか? 「7年ぶりくらいだったと思います」 ●2度目のラオス訪問はどういう目的からだったんですか? 「今回、NHKのハイビジョン番組で世界中のエコツアーを紹介する企画がありまして、その中の1つで、ラオスのエコツアーを紹介するということで、私、坂本達が旅人としてツアーに参加して、ツアーを紹介するお仕事として行かせてもらいました」 ●テレビで拝見した方もいらっしゃるかと思うんですけど、7年前にラオスに行かれたときは、エコツアーとかってあまりなかったんじゃないですか? 「そうですね。もしかしたらラオスにはあったかもしれないんですけど、世間でもそんなには騒がれていなくて、ユネスコが支援しながら積極的に進めているみたいで、当時は全然知らなかったですね」 ●エコツアーのガイドの方は現地の人なんですか? 「そうです。ラオスの人がトレーニングを積んで、公認のガイドになります。現地の山岳民族を訪ねたりしたんですけど、その村の人達が自分達の文化をちゃんと保って、物質的なものが豊かなことはいいことと勘違いしないように、自分達の文化を見に外国の人達が訪れて、誇りを持ってもらうのと同時に、ツアーの参加費用が確実に村に落ちるようないい仕組みが出来ているんですね。で、すごくよかったなぁと思うのが、参加費に村で作ったお土産が料金に含まれているんですね。普段だと、村に行って買ったり買わされたりっていう感じが、貧乏旅行をしている僕にはあったんですけど、最初から含まれているので、気持ちよく確実に村に落ちて、確実にお土産としてもらえるという仕組みがあるんですね。そういうのが非常によく出来た仕組みのエコツアーでした」 ●このエコツアーには何人ぐらいが参加したんですか? 「6人です。いわゆる普通の人達が旅行代理店とかに申し込むようなもので、現地に行かないと申し込めないものなんですけど、イギリスからのカップルと、スウェーデンから1人と、カナダから1人と、日本人の僕と、現地で働いていた日本人の人1人でした」 ●国際的なグループだったんですね(笑)。 「はい(笑)。みんなで話すのが英語で、一番上のカナダ人が銀行員で51歳。一番若い人が19歳ということで、職業も背景もバラバラで、同じものを見ながら『ああだこうだ』とエコツアーについてとか、現地のことについて語り合うのが非常に面白かったですね。自分1人で世界一周をしていたときは、そういう機会もあまりなかったので、すごく面白い体験でしたね。ガイドさんがいないと普通に通り過ごしてしまう植物とか動物とかもすごく面白くて、例えば、15分で歩いてしまうようなところを、1時間近くかけて楽しく歩けるというのは、ツアーのいいところだなぁと思いました」 ●世界中を自転車で旅をなさったときは、1人気ままに自分のペースで歩けたでしょうし、全部が自分だったじゃないですか。でも、今回はエコツアーという形で周りに一緒に行動する人達がいて、しかもガイドさんがいてっていうのは、達さんにとってはぜんぜん違った旅のスタイルだったんじゃないですか? 「そうですね」 ●一番面白かったこと、大変だったことってどんなことでしたか? 「一番面白かったのが、19歳のスウェーデン人の男の子が参加していたんですけど、彼が初めて自分の国を出て外国旅行をして、ラオスに来る前に1人でベトナム旅行をしていたそうなんですけど、そういう国を見る中で、やっぱり自分の国が一番だというような思いを持っていたんですね。で、そういうのを夜な夜な集まると話をするので、51歳のカナダ人と僕が目を合わせて、『若いなぁー』って言っていたんですけど(笑)、実はそれって僕が若いときに感じていたことと同じで、『やっぱり日本が一番だ』とか、『物がなくてかわいそうだなぁ』という物の見方をしていたんです。19歳のトビアス君が旅の最後にインタビューに答えていたのは、村の子供たちと一緒に遊んだときに、子供たちの目とか、何もないのにすごく楽しそうに遊んでいる姿を、彼が一番子供たちとたくさん遊んで、見ていたんですよね。で、その姿を見たときに、考えが分からなくなったと。『あの子達を見ていたら、どっちが豊かかという答えが簡単に出ない』ということを素直に語っていて、そのわずか数日間のツアーに参加しただけなのに、価値観が揺らぐような感動って僕の中にもあって、そういうときってあったなぁって、物事を純粋に見られるって大事だなぁって、逆に教えられたというか、純粋さを教えてもらったような、自分の中で気づきというのがあった気がしますね」 食事で現地の人との距離が縮まる●世界一周を一人旅でなさっていたときっていうのは、感動も独り占めだし、分からないところは村人に聞いたり、本で調べたりすることはできるでしょうけど、エコツアーってガイドの方がポイント・アウトしてくれるじゃないですか。普段だったら目にしているのに気づいていないものとか、耳にしているのに聞いていなかったものを含めて、新たな発見があったんじゃないですか? 達さんは特に、ラオスが初めてじゃなかったから、前にも行っていたのに全然気づいていなかったことっていうのもあったんじゃないですか? 「訪問した場所が全然違ったっていうのもあるんですけど、例えば植物も、家具に使うラタンがこの木から出来るんだとか、実は芽のうちに切って、中の芯はほろ苦いタケノコみたいな味がして食べられるとか、そんなの想像もつかないし(笑)、植物1つ見ても、あれは食べられたり、何かに使えるものだったのかなぁって思うようになりましたね。1人で訪れることが出来なかった村に、ゲストとして招かれるのがエコツアーの面白いところで、今までは自転車だと行き当たりばったりで、『泊めてくれ』とか『ご飯食べさせてくれ』っていうノリで(笑)、僕にとっても『迷惑かけているなぁ』っていう思いがあって、負担が村側にあったんですけど、ツアーではあらかじめいつ、何人来るっていうのが伝わっているので、お互いにとって負担が少ないんですね。こういう形の旅の仕方っていうのは、年齢的に上がってきているのもあって、フェアでいいのかなって思ったりしましたね」 ●ラオスでのおもてなしの中で印象に残っているものを教えていただけますか? 「アカ族という山岳民族がいて、その村は道路も川もないんですね。つまり、陸の孤島みたいなところに住んでいて、そこでは人間と同じように豚が生活していて、朝寒いから人間が火に当たっていると、豚も人間と同じように火に当たりに来るようなところなんですね(笑)。で、晩御飯になると、普段は食べられないんですけど、お客さんが来たときに、その黒豚ちゃんが食卓に並ぶんですね。最初、電気もなくてロウソクの暗い明かりなので、白っぽいかたまりがあるから、フライドポテトだと思って、みんなで食べていたら、それが豚の脂だったんです(笑)」 ●いわゆる脂肪ですね(笑)。通常、私達が切り離して・・・。 「食べない方の脂のかたまりだけが出てきていて、実はそれがおもてなしの意味を込めたものだったんですけど(笑)」 ●ごちそうの価値観の違いがありますからね(笑)。 「はい(笑)。日本だと、ついついチャーシューでも赤身のところばかり食べて、脂を残すような感じがあるんですけど、そのときに19歳のトビアス君が『ポテトだ!』って喜んでいたら、豚脂だったから、『なんだこれー!?』って言って、2日後くらいまで文句を言っていたくらいで、彼は相当ショックだったみたいですね(笑)」 ●(笑)。他の料理は普通に食べられるものだったんですよね。 「そうですね。普段、彼らは菜食なんですね。山に生えているタケノコとか、実とか、草とかですね。後は川で獲れる小さな魚とかがメインなので、もしかしたらグロテスク系な物があるかなぁって思ったんですけど大丈夫でした」 ●達さんなんかは、世界一周しているときに、行く先々でその土地の食べ物をいただくことによって、その土地のエネルギーを得たり、そこの文化やそこの人達のことが分かるっておっしゃっていたじゃないですか。そういう意味では今回の旅を通して、いただいた食から感じ取ったものはありましたか? 「同じようにいただくことで距離がぐっと近くなっていて、多分、彼らは食事のために何日も前から準備をしてくれているので、気がつくと遠巻きにものすごい人だかりができていて、ご飯を食べるときとかも、みんな僕達の方を無言でずっと見ているんですね。食べてくれるかどうかっていうのを、僕の口元まで見ているような感じがするので、食べたときになんとなくその場の空気が変わるような感じがありました。ちょっとずつ挨拶をしたりとか、一緒に子供たちと遊んだりとか、ご飯をいただくっていうのが大きいんですけど、その中で距離が近くなっていくのを感じていましたね」 やりたいことが全部出来たエコツアー●ラオスでのエコツアーのときっていうのは、宿泊っていうのはどういう形なんですか? 「山岳民族の村に行っていたときは、村に泊めてもらいました。でも、村によっては負担があまり多くならないように、特別にゲストハウスを建ててくれているところがあって、現地の村の人と同じ家ということではないんですけど、建て方は現地のものと同じで、森の中でとれる木とか竹とかを使って、釘を一切使わずに同じように建てているところに泊めてもらいました。トイレとかも衛生面とか環境面を配慮して、ちゃんとしたトイレがあって、それを設置するためにお金が使われたりして、村の環境を壊さないような形で配慮がされています。あと、村に泊まれないときはテントに泊まって、道路がない場合はツアーの方たちが、馬とかロバにまたがってキャラバン隊になって、キャンプ道具を一切積んで移動してくれるので、自然の中に暮らしているみたいな感じです」 ●移動は歩きやマウンテンバイクだそうですね。 「はい。今回は、マウンテンバイクも乗りたいということで、全然舗装されていない山岳道路をみんなで自転車に乗ったりとか、カヤックにも乗りました。このツアー、本当にすごくて、トレッキングと、カヤックも2日間あって、川を下って、その途中にある別の村を訪ねたりとか、やりたいことが全部出来ちゃうんですよ。その分、ツアーの裏方の人達が大変で、僕達がニコニコ歩いたり、現地の言葉で『ヨムマデー(ありがとうの意味)』とか挨拶しているうちに、裏でカヤックを運んでくれて、着替えからヘルメットからライフジャケットとか全部用意してくれているんですね。その分、山を自分の足で歩き、カヤックで水面と同じ高さでゆっくり流れながら、うっそうとした森なので両側にジャングルがあって、上に空だけがあって、太陽が差し込むと、本当に幸せな気分になるような移動ができました。これだけのことは絶対に1人では出来ないですよね。ツアーでなければ出来ないような移動も、感動もありました」 ●お話をうかがっていると、本当に至れり尽くせりのツアーだなと感じるんですけど、よくある観光ツアーの至れり尽くせりだと、車で移動して、熱ければ冷房をガツンと入れるし、食事も宿泊も心地よい温度が設定されているホテルだったり、ハイクラスな至れり尽くせりの旅のスタイルがちょっと前までは主流だったじゃないですか。でも、エコツアーの裏方の人達の至れり尽くせりっていうのは、その土地だったり、その自然だったりを存分に一番いい形で、しかもその土地、自然、人々にあまり負担のかからない配慮がされた至れり尽くせりだなぁと思いました。 「まさにその通りですね。僕、そこが今回、感動したところでしたね。彼らがプライドを持って、その土地、その文化を紹介できるようなプログラムになっているのがすごくよかったと思いますね」 ●エコツアーやエコツーリズムって最近、どんどん増えてきていますけど、そう考えると、達さんが体験したエコツアーっていうのは、理想のエコツアーだったんじゃないですか? 「実は何も知らずに参加した初めてのエコツアーだったんですけど、純粋にオススメできるものでしたね。今までのエコツアーのイメージだと、動物園を見て回るような傍観者のようなイメージがあったんですけど、その村の中に負担の少ない形で準備されていて、訪問が出来て、聞かされていたのとは全然違っていたんですね。晴れて暑いというのが、雨で寒かったりとか(笑)。でも、文句を言っても仕方がなくて、参加した全員が文句を言いながらも楽しんでいましたね(笑)。いいなぁと思ったのが、最後、終わった日に打ち上げをやるんですけど、そこにラオス人のスタッフ全員が来るんですよ。ローカル・スタッフ全員なので、英語が出来ない人達も同じテーブルに集まって、みんなで乾杯して、みんなで『無事でよかったー』っていうのが、僕、すごく感動したんですね。参加者だけでおいしい料理を食べて、英語で『よかったね』っていうんじゃなくて、部族語とかも覚えながら、冗談を言い合いながら、ローカル・スタッフ達と一緒にありがとうって出来たのが、すごくよかったですね」 次は「たった。」●前は自転車での一人旅をすごく長い間やっていらっしゃいましたが(笑)、今回のようなエコツアーもオススメですか? 「はい。すごくいいと思います。欧米なんかでも結構話題になっているみたいで、エコツアーって言ったら、みんなすぐに分かって、『なぜ来たの?』って聞いたら、開口一番に『村人達と生活の関わりを持ってみたい』とか、よく知っている人が多いんですね。今回が初めてのエコツアーだったんですけど、もともとはその村の人の生活を知るというのがエコツアーの意味でもあるというのを聞いて、まさにそういうことなんだなぁと感じましたね。日本にいると、生活のこともあまり疑問を感じずに、家に洗剤や石鹸があって、台所用とかお風呂用とかありますけど(笑)、ラオスでは全部1つの石鹸で終わらせていて、狭い家に洗剤のボトルがいっぱいあるんだけど、結局、色とか名前とか匂いが違うだけだったりして(笑)、よく分からないんですけど、そういうことを考えるきっかけになったので、生活を考えたりする上でいいなぁと思いました」 ●次はこんなところのエコツアーに参加してみたいっていうのはありますか? 「あります!(笑) 夢なんですけど、アフリカのアジアといわれている島、マダガスカルですね。世界一周中に自転車で周りたかったんですけど周れなくて、あそこは行ってみたいですね!」 ●では、マダガスカルでのエコツアーがあったら是非? 「はい。自転車ヴァーションがあれば、是非、行ってみたいですね」 ●やっぱり自転車で周りたいんですね。 「はい。自転車に乗ると別なモードになるんですよね」 ●この番組と達さんとは本を通じて色々お話をうかがっていまして、世界一周の旅を終えたときの「やった。」があって、そのあとに感謝の意味で作った井戸を掘ったときの「ほった。」がありまして、次は病院を建てるときの「たった。」というのを書くとおっしゃっていましたけど(笑)、そちらの方は進んでいるんですか? 「実は去年、ギニアに行って診療所の立ち上げをしようと思ったのですが、国の情勢が不安定になりまして、渡航できなくなって、退避勧告が出て、今、現地と連絡がとれるようになって、今年の11月にギニアに行って、『たった。』の足がかりをつけてきて、目標としては2010年を立てているんですけど、その予定で今のところ、イメージ・トレーニングからやっているところです」 ●では、目処がたったら番組でお話を聞かせていただければと思います。今日はどうもありがとうございました。 ■このほかの坂本達さんのインタビューもご覧ください。
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■(株)ミキハウスの社員・坂本達さんのホームページ4年3ヶ月も有給休暇をもらって、世界一周55000キロを自転車で走ってきちゃった男、坂本達さんのホームページです。達さんの近況や、今後の講演予定も詳しく載っているので、是非、チェックしてみてください。 ・坂本達さんのHP:http://www.kikimimi.net/tatsu/ |
オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」
M1. WE LET THE STARS GO / PREFAB SPROUT
M2. ALWAYS LOVE / AMERICA
M3. INTO THE MYSTIC / VAN MORRISON
ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」
油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」
M4. THE THINGS WE DO FOR LOVE / 10cc
M5. MOTHER NATURE'S SON / SHERYL CROW
M6. SHOWER THE PEOPLE / JAMES TAYLOR
エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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