2007年7月22日

レジェンド・サーファー、ジェリー・ロペスさんを迎えて

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストはジェリー・ロペスさんです。
ジェリー・ロペスさん

 チューブライディングの先駆者、レジェンド・サーファーのジェリー・ロペスさんをお迎えし、30年以上も続けているサーフィンと、新たにのめり込んだスノーボードの魅力などうかがいます。

海は陰、山は陽

●ジェリーさんは、7月25日に「ビクターエンタテインメント」から『ライフ・スタイル・オブ・ジェリー・ロペス~ザ・クリーネスト・ライン』というDVDをリリースするんですが、そんなジェリーさんが先日、来日した際、お話をうかがうことができたので、その時の模様をお届けします。
 ジェリーさんのライフスタイルを考えた時、最初に思い浮かぶのがサーフィン。特に“マスター・オブ・パイプライン”としての彼の姿ですが、初めてチューブライディングを始めた当時のことを話してもらいました。

『ライフ・スタイル・オブ・ジェリー・ロペス~ザ・クリーネスト・ライン』

ジェリーさん「あまりたくさんの人がやっていなかったから、その点ではやりやすかったよ。ただチューブライディングは、基本的にはサーフボード自体の進化によってもたらされた技なんだ。それまでああいったライディングを成功させている人が少なかったのは、ボードが不適切だったからなんだよ。私の場合は幸運にも、サーフィンの歴史において、のちに「ショートボード・レヴォリューション」と呼ばれる時代、つまりサーフボードがロングボードからどんどん短くなっていた時代に属していたし、サーフボードのシェイパーもやっていたから、パイプライン用の独自のボードを作ることができたんだ。そしてそのお陰で波に飲み込まれずに済んだんだ。それまでサーフ・ムービーでパイプラインの映像が流れるのは、ワイプアウト・シーンばかりで、みんなかなりひどく打ちのめされていたよ。つまり私がチューブライティングで成功を収められたのは、ボードのおかげなのさ」

●私は今でも映画のワンシーンで、波のトンネルをくぐり抜ける若き日のジェリー・ロペスの姿を覚えているんですが、チューブの中はいったいどんな感じなのでしょうか。

ジェリーさん「チューブの中は全くの別世界で、言葉で言い表わすことなんてできないよ。ただウェーブの中心はまるで子宮の中にいるような、強力なパワーを感じる。そしてそのエネルギーは自分の周りをグルグル回っているような感覚なんだよ。あと、チューブの中にいると時間がゆっくりと流れるような気がする。それからすごく静かなんだよね。とにかく素晴らしいところだよ。ただあっという間に終わってしまうから、経験を積まないと周りを楽しむ余裕なんてないんだ。しかしチューブをくぐればくぐるほど、景色を堪能できるようになるんだ」

●ジェリーさんは現在、アメリカ西海岸に位置するオレゴン州に家族とともに暮らしているのですが、オレゴンといえば、カスケード山脈が有名。海に囲まれた、ハワイ・マウイ島から雄大な山脈を連想させるオレゴンに移り住んで、どのような違いがあるのんでしょうか?

ジェリー・ロペスさん

ジェリーさん「極端な違いは感じなかったよ。というのも、マウイで住んでいた場所は、ハレアカラ火山の山麓で、標高からいうと、今の住んでいる場所とさほど変わらないんだ。1000メートルほど低いけどね。だから別に苦労もなく、すぐに順応できたんだよ。もちろんスノーボードや雪、ウィンター・シーズン、というより、季節という感覚自体はハワイでは味わえなかったけど、とても素晴らしいね。移り行く季節の一部として生きていることをとても楽しんでいるよ。
 例えば、陰陽、つまり人生のバランスを考えたとき、海は陰で、山は陽なんだ。一見、海はとても活発に見え、山は死んでいるかのように、とても静かで動きがないように見えるけど、山の動きというのは全くの別物で、とてもゆっくりとすべてが動いているんだ。だから長時間、静かに座っていると、色々な生きものたちが動き始め、姿を現わしてくれる。海は常にそこにあって、その一部として常に触れることができる。しかし、山の環境は全く違うんだ。そこに宿る命と触れ合うためには、山のペースに合わせなければならない、とてもゆっくりとした山のペースにね。
 私は山と海の両方を行ったり来たりしているんだけど、今の時点ではどちらも同じくらい大好きだよ。バランスがあると思うんだよね。多くの人が理由も分からず、ただバランスを失っているように感じることがあると思うが、もしかしたら山と海、つまり陰陽の両方を味わうことがバランスにつながるのかもしれない。少なくとも私や私の家族にとってはそれが最善の方法のように思えるんだ」

日本で感じたアロハ・スピリットとは?

●オレゴンに移り住み、スノーボードもやるようになったというジェリーさん。サーフィンとスノーボードとの違いをこんな風に語っています。

ジェリー・ロペスさん

ジェリーさん「サーフィンとスノーボードは似ている点が多いよ。1つ面白いのは、雪が降っているとき風が吹くと、雪が波のような形になるんだ。それは海で見る波と同じくらい美しいのだが、雪の波は全く動かないんだよ。一晩中雪が降った翌朝、山の麓から斜面を見上げると、息を飲むような景色が広がっている。新鮮な雪が降り積もった山はとても静かで美しく、神々しくさえ感じる。そしてそこには雪の波があちこちにできているんだ。サーファーがそんな雪の波を見るときの目は、海で波を見るときの目と全く同じなんだ。だからサーフィンと同じように、雪の波を乗りたいと思うんだよ。そして面白いことに、サーファーがスノーボードを始めると、サーフボードに乗るときと全く同じスタイルでスノーボードに乗るんだ。だから私はサーフィン仲間がスノーボードで斜面を滑っている姿を見て、それが誰かがすぐにわかるんだ。まさに雪の上でサーフィンをしているように滑っているからね」

●世界中の波に乗っているジェリーさんですが、日本の波の印象を聞いてみました。

ジェリーさん「四国の波はとてもいいよ。それから湘南や千葉でも何ヶ所かでいい思い出があるよ。日本のサーファー人口はこの25年ほどの間、世界3位を保ち続けている。日本でサーフィンが盛んな理由は、いい波があるからなんだよ。
 世界中どこへ行っても、それぞれの波には個性、特徴があるんだ(笑)。ちょっとバカっぽく聞こえるかもしれないけど、日本の波はとても日本的なのさ。例えば、湘南でいえば、東京湾の内側に面しているから、波はきれいに整っていて、とても優雅なんだ。ハワイの波のように荒削りではないんだよ。ちなみに、ハワイの波はすごくパワフルで知られている。たぶん世界一パワフルなんじゃないかな。カリフォルニアの波の特徴は、ポイント・ブレイクがとても長いこと。フランスの波は海岸近くで砕けるのが特徴で、常に変化しているが、時折、すごくいい波が立つ。とにかくどんなところにも、その場所特有の波が立つんだ。日本の波も個性的だが、ほかに負けないくらい良い波だよ」

●先週(2007年7月15日)、この番組に登場して下さった、復元されたハワイの古代外洋航海カヌー、ホクレア号のキャンプテン、星の航海士のナイノア・トンプソンさんとジェリーさんとは、子供の頃からの知り合いだそうですが、ナイノアは、日本でアロハ・スピリットを感じたと話していました。そのことについてジェリーの意見も聞いてみましょう。

ジェリー・ロペスさん

ジェリーさん「それは私も日本でサーフィンをしていて感じたよ。ハワイやアメリカ西海岸、そしてそのほか、あちこちでサーフィンをしてきたけど、サーフィンが盛んな場所はどこも混み合っていて、サーファー同士のアティチュードも決していいとは言えない。すごくサーファー同士の摩擦を感じるんだ。本来サーフィンは楽しいものなのに、彼らは全く楽しんでいるように見えない。そんな中、日本に来て海に入っているとき、また、混んだ地下鉄に乗っているときも感じたことがあるんだ。アメリカだったら、みんなカッカして、当たり構わず怒鳴り散らしているような状況なのに、日本ではみんながとても落ち着いていて、とても礼儀正しく、とても教養のある人間として互いに接している。その姿を見て私はショックを受けたよ。そして私もこんな風になりたいって思ったんだ。そういう意味では日本でいい勉強をさせてもらったよ。それからの私はできるだけそんな風に人と接するように努力してきたんだ。ナイノアが言っているのは、まさにそういうことなんだよ。人々が教養のある文明人として、礼儀正しく互いに接すること。自分のことばかり考えるのではなく、周りのことも考えること。人の数だけそれぞれの事情があるわけだから、自己中心的にならず、相手を理解すること。それがアロハ・スピリットなんだ」

人間には地球環境を治す手助けをする義務がある

●長年、海と接してきたジェリーさん曰く、変わらないものが1つだけあるそうです。

ジェリー・ロペスさん

ジェリーさん「50年近くサーフィンをしてきて感じるのは、一番安定しているのが波だということ。サーファーたちやライフスタイル、サーファーの人口やビーチ周りの環境、そのすべてが劇的に変化していっている中で、波だけはずっと変わらずにいるような気がするんだ。少なくとも今のところはね。でも変わらないものがあるってとても安心感があるよね。例えば、人間の身体を考えてみよう。我々が色々害を及ぼしているのに、ほとんどの場合、ちゃんと治癒力が働いて自然に治している。自然環境も同じで、自らを治す力を持っている。ただ現時点では地球上の多くの場所で、我々の文明が自然を圧倒し、治癒する力を奪ってしまっている。だから我々はもっと自然環境に目を向け、自然環境のことを考え、出来れば行動しなければならない。そうやって変化しすぎないように自然環境を保たなければならないんだ。もし我々人間がいなくて、何もしていなければ、地球は全く問題なかったはずだからね(笑)。しかし、我々は汚染し、森林を伐採し、自然が自ら治癒できないほど、様々なことをしている。だから我々には治す手助けをする義務があるんだよ。
 そのために最初にしなければならないことは、自らを癒すこと。まずは自分自身を健康な状態にしなければ何もできないからね。まぁ、肉体的にはもう手遅れかもしれないけど、特に、精神を健康な状態にする必要があるんだ。それがすべてのベースになるんだよ。心身ともに健康な状態を得ることができれば、環境を治す取り組みに参加することは、とても自然で、当たり前の責任として考えられるはずさ」

●精神を健康な状態にするためにはヨガがオススメだとジェリーさんは言います。

ジェリー・ロペスさん

ジェリーさん「少なくとも私にとって、精神と肉体の健康のために、ヨガは一番簡単な方法なんだ。とてもピュアでナチュラルな状態に戻るために必要な多くのレッスンをヨガから学んだよ。そしてその瞬間をより体感するための集中力も深まったんだ。実はいいサーフィンをするために必要なのは、精神を瞑想状態にすることなんだよ。だから、いいサーファーを見ると、もちろんいい体をしている。サーフィンはかなりの体力を要するスポーツだからね。でも同時に、海に入って、波という自然と触れ合うことで、とてもスピリチュアルな意識を持つようになる。そうやってバランスを得ているんだよ。
 70年代の始めに、私は湘南にサーフィンをしに行ったことがあるんだ。当時、サーファーの数はとても少なかったんだが、何よりびっくりしたのはビーチがとても汚かったことなんだ。ゴミだらけで本当に驚いたよ。もちろんハワイのビーチにもゴミは落ちているけど、良心的な人が何人かいて掃除してくれるから、けっこうきれいな状態を保っているんだ。だから余計、日本での光景がショックだったんだよね。しかし、そんな日本でサーファーの数が増えるとともに、ビーチがきれいになっているのに気づいたんだ。実は私も何組かのサーフ・グループとビーチクリーンに参加したことがあるんだ。そういったビーチクリーンは、誰でもが気軽に参加できる環境保護活動の一つなんじゃないかな。関わり方は色々あるから、どの程度、関わるかはその人次第だと思うけど、みんなが何らかの形で関わるべきだと私は思っているよ」

サーフィンで学んだこと全てが人生に置き換えられる

●このまま地球温暖化が進むと、日本の海岸線は無くなり、山には雪が無くなると言われています。そんな意見に対してジェリーさんはこんな風に話してくれました。

ジェリー・ロペスさん

ジェリーさん「そうならないで欲しいよね。昔から予言書などでも言われてきたことだけど、我々1人1人が少しずつでも努力をして、政府を動かすことができれば、地球が自らを治癒できる状態に戻せるのではないかな。私はまるで説教のように、温暖化が地球を滅ぼすという極端なことを叫んでいる人々をあまり信用していないんだ。
 ただ、私たちは天然資源を使い果たしたり、地球自体を使い果たすといったトレンドを食い止めるために、これまで以上に努力しなければいけないことは確かだよ」

●7月25日に発売されるジェリーさんのDVD『ライフ・スタイル・オブ・ジェリー・ロペス~ザ・クリーネスト・ライン』の中でジェリーさんは“サーフィンをマスターすれば、海と調和できる”と話しています。

ジェリーさん「それはサーファー全員が目指していることだと思うよ。というのも、波を乗りこなすためには、波と一体にならなければいけないんだ。一体感を感じながら自分の意志を通すっていうのかな。波はダンスのパートナーみたいなものなんだ。だから波に身を委ね、波の一部になって流れに乗る。
 私が長年サーフィンをやってきてわかったことは、サーフィンで学んだ全てのことが人生に置き換えられるということなんだ。サーフィンというのは、水の中で学んだことのほんの表面的な部分でしかなく、その奥にはもっと深く大きな教えが潜んでいたんだよ。そのことに気づいて、それらの学びを人生に活かすことができれば、色んなことが少しは楽になり、色んなことがより良くなってくるんだ」


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『ライフスタイル・オブ・ジェリー・ロペス~ザ・クリーネスト・ライン』

■レジェンド・サーファー、ジェリー・ロペスさんのDVD、7月25日発売!

ライフスタイル・オブ・ジェリー・ロペス
 ~ザ・クリーネスト・ライン

ビクターエンタテインメント/VIBY-290/定価5,800円
 サーファー、サーフボードのシェイパー、スノーボーダー、ヨガ・マスター、俳優、アウトドア・ブランド「パタゴニア」の海部門のアンバサダーなど、様々な顔を持つジェリー・ロペスさん。そんなジェリーさんの懐かしい若き日の姿やスノーボードを楽しむ姿、また友人たちによるコメントなど、彼の人となりや生き方を描いた作品。
 

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. BLUE SKY / LEIGH NASH

M2. THE THEME FROM BIG WAVE / 山下達郎

M3. SONG BIRD / KALAPANA

油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M4. BABY, I LOVE YOUR WAY / PETER FRAMPTON

M5. LOVE IS THE SEVENTH WAVE / STING

M6. TIMES LIKE THESE / JACK JOHNSON

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M7. HOT FUN IN THE SUMMERTIME / SLY & THE FAMILY STONE

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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