2007年10月28日
信越トレイル「バックパッカー加藤則芳さんと歩くツアー」取材レポート今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンは信越トレイル・ツアーの取材レポートです。
皆さんは信越トレイルというトレッキング・ルートをご存知ですか? 信越トレイルは、長野県と新潟県の県境に位置する関田山脈の尾根づたいに延びるルートで、西側の起点、斑尾山(まだらおさん)から、東側の天水山(あまみずやま)まで、総延長は80キロ。現在は、途中の牧峠(まきとうげ)までの50キロが開通しています。
哲人を彷彿とさせるブナ林前半は、先日開催された「バックパッカー加藤則芳さんと歩く信越トレイル・ツアー」の模様をメインにお送りします。まず、バックパッカー加藤則芳さんに信越トレイルの特徴を話していただきました。
加藤さん「場所場所によってそれぞれの特徴があるんですけど、やはり、関田山脈、信越トレイルの一番の魅力はやはりブナの森だと思います。ブナの森というのは木自体が哲人を彷彿とさせるような、独特の雰囲気があるところなんですね。木の肌の色が灰白色で、ブナの森っていうのは純林なんですね。中にはそこの植生帯に適した色々な木はあるんですけど、基本的に純林に近い森なんです。ですから、非常に不思議な雰囲気をかもし出している森です。私にとってという言い方が正しいかもしれませんが、それが信越トレイルの一番の魅力ですね。それから、斑尾山方面に行きますと、湿原もあります。湿地帯の上に木道を敷いて、トレイルになっています。
世界一の豪雪文化先日、開催された『バックパッカー加藤則芳さんと歩く信越トレイル・ツアー』。今回は、50キロを5日間かけて歩くというものでした。今回、取材班は地元・飯山出身のガイドさん渡辺貴光さんが引率する班に同行したんですが、トレイルの所々で立ち止まり、こんな興味深い説明をしてくれました。
渡辺さん「この山は特徴的な山で、関田山脈という名前がついていますが、新潟側が非常に崩れているんですね。落ち込んでいて急斜面なんです。ここも藪があって分かりませんけど、ちょっとのぞいていただくと崖ですね。長野県側は今、バスであがってきていただいてお分かりの通り、緩やかに広い台地を上がってくる感じで、畑がたくさんあったりするんですけど、そういう山です。もともとは海底で、それが隆起して出来上がった山なんです。長野県側に押し出されるように隆起してきたんですね。ですから、長野県側がとても緩やかなんですが、新潟側がもろに断面が出てしまっていて、非常に弱い層です。第4期層という層だそうです。私はあまり層には詳しくないんですが、非常に弱くて崩れやすいということで、新潟側が崩れやすくて、地すべり博物館っていうのがあるくらい地すべりが多いところなんです。ここから見ると大分整理されて四角い田んぼになっていますが、昔は棚田がたくさんあったんですね。ああいったところも地すべりの後に作った田んぼだそうです。地すべりが起きるっていうことは当然、水が豊富ですから水には困らずに田んぼを始められるんですね。そうやって田んぼを始めて水を管理することによって、土砂崩れが起きなくなってくるんですね。そんなことでああいうふうに山の斜面にたくさん田んぼが作られているのが新潟側の特徴ですね」 ★ ★ ★
渡辺さん「この辺に来ると曲がったり横に生えている木が大分多くなってきます。先ほどみたいにくぼんでちょっと平らになると、真っ直ぐな木が出てくるんですが、尾根沿いっていうのは木がなかなか大きくなれないんですね。特に、先ほど海が見えていましたけど、シベリアから冬、季節風や寒気がやってきて一番最初にぶつかるのがこの山なんですね。ちょうどその頃には日本海に暖流が入ってきて、シベリアから来た乾いた空気が水分をたくさん吸い込んで、ここにやってきてこの山に一番最初にぶつかるんですね。ものすごい量の雪を降らせます。今、僕達が立っているところで4メートルから5メートルくらい積もります。で、ここは逆に吹きさらしになるのでその程度なんですね。ちょっとその辺に下りると7メーターとか8メーターっていう積雪量になります。ここは、3月とかによくイベントをやるので来ると、こんな木は全くありません。真っ白い尾根です」 加藤さん「その上を歩くんですよ」
渡辺さん「で、こういう小さな植物達はその雪の下で生きていくということなんですね。これみんなブナです。先ほど真っ直ぐ立っていたブナと同じブナです。曲げられながらもしっかり生きていますけど、すごいですよね。雪国っていうのは雪に押されても折れずに曲がって生きていける木じゃないと生きていけないですね。ですから、樹種は限られてきます。その中で1000メートルくらいの本当に環境が厳しいところになると、ブナしかなくなってくるんですね。やはり、ブナが一番雪に強い性質を持っています。ここなんかも1度折れているんですけど、完全に取れない限り、周りの皮を寄せてきて完全に修復するんですよね。で、またそこから上に上って生きていこうとする。お日様に向かっていこうということで繰り返していくのでこんな形になっていきます。
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渡辺さん「関田山脈という山は特徴があって、尾根沿いに大小たくさんの池があるんですね。ここはまだ小さいほうですけど、関田峠の近くに茶屋池という大きな池があります。他にもいくつか池がありますが、全て尾根の上にあるというのが特徴で、特に流れ込みはないんですね。じゃあ、何によって出来ているかといったらやはり雪ですよね。雪とブナをはじめとした広葉樹があるおかげで、少しずつ染み出したお水で一年中保たれています。この前の冬は雪がとても少なかったものですから、場所によってはかん水しているところもあります。茶屋池なんかは農業用にお水を使っていますので、いつもより減っている気がします。ですから、我々、住んでいるととてもつらい雪ですけど、やっぱり水を作ってくれているんだっていうのは実感しますね。また春に来ていただくといいと思います」 参加者「この池は人が作ったんですか?」 渡辺さん「全て自然の池です。尾根沿いにある池は全て自然の池です。少し堤防を水が落ちやすいように改造してあるところもありますけど、尾根沿いの池は全て自然の池です」 歴史と文化を繋ぐロング・トレイル
後半は、信越トレイルを支えるNPO法人信越トレイルクラブにスポットを当てます。2004年に、NPO法人として認証された信越トレイルクラブは、総延長80キロにも及ぶロング・トレイルを整備し、その維持管理を行ないながら、トレイルを歩く人たちが、里山の自然、地域の文化や伝統、歴史に触れられるようにサポートする活動を行なっています。
加藤さん「アパラチアン・トレイルの素晴しさは、トレイル自体ナチュラル・トレイルとしての素晴らしさ以上に、それを支える人達がいる。3500キロにわたって31のメンテナンス団体が、自分のエリアを毎年きちんとメンテナンスをする。それを統括するアパラチアン・トレイル協議会っていうのがある。しかも、そのトレイルのかなりの部分が国有林です。で、日本でいう林野庁、アメリカでいう森林局っていうところが管理しています。それから、2ヶ所国立公園があります。それは、ナショナル・パーク・サービス、つまり国立公園局が管理しているところです。この国の組織と、メンテナンス団体全てがボランティアです。ボランティアの市民団体とかが非常にうまく協力し合って、このトレイルを管理しているんですね。
地域の人達が思いを寄せるトレイル当初から信越トレイル作りに協力している加藤さんは、なによりも大事なことは、地元と連係することだとおっしゃっています。
加藤さん「信越トレイルを作るための理念書を作りました。それはどういうものかというと、ハードだけではなくて、『作って、はい、おしまい』ではトレイルが消滅してしまうんですね。それは長距離自然歩道もそうですし、日本中の色々な自治体で自分の村の中に、村民のために1キロ、2キロのほんの小さな遊歩道みたいなものが色々なところに出来ているんですけど、そういうものを見ても、『作りました。はい、おしまいです』とか、作ったけど地元の人には使われていないというのがほとんどだったんですね。そういうものを知っていた上で、理念書を作ったんですけど、それは、ハードを作るだけではなくて、何よりも大切なのはソフトウエアだと。つまり、作ってそれをきちっと管理するシステムがなければいけない。
そんな加藤さんの考え方に共鳴し、トレイルとそのシステム作りに奔走している信越トレイルクラブの顧問、木村宏さんはこう話してらっしゃいます。
木村さん「地域の人たちが地域の良さを知ってこそですね。人に自慢が出来るものであったり、お越しいただくということに繋がってくると思うんですが、まず、その地域の遺産、文化、誇れるもの、宝物を地域の人達が作る、守る、見るということが大事な要素だと思うんですね。そこに、過疎高齢化が進んでいる地域ですので、それに共感したボランタリーの精神を持った人たちがこの地域に集まってきて、ここでようやく道作りが始まるわけですね。この道作りについては、自然を侵さないとか、道が作られることによって壊す物を最小限にとどめるとか、色々な細かなルールを加藤さんとともに作りながら、これがだんだんと道になっていくわけです。こういう道の作り方というのは先駆的かなぁと思いますし、今までは観光のために作る道というのは、観光関係者が作っていたり、行政がよかれと思って作っていたりとか、もちろん色々な出来方があると思うんですが、この信越トレイルについては、まず地域の人達が思いを寄せる。で、これに賛同する人たちがさらに力を貸してくれる。それを知っていただきたいという呼びかけにこたえた方が歩くというのが、今までのトレッキング・ルートとかハイキングの道と違うところじゃないかなと思いますし、これが80キロ続いているということは、アメリカの300キロとか、3000キロには到底及びませんけど、日本では初めてそういう想いがあって出来上がった道なんじゃないかなというふうに思います」 四季のそれぞれの魅力を楽しんでほしい<加藤則芳>
信越トレイルにはきちっとしたトレッキング・ルールが定められています。ご紹介すると、「トレイル内を歩く」、「動植物を大切にする」、「ゴミはすべて持ち帰る」、「トイレは施設を利用する」、「表示された決まりを守る」、「他人に配慮する」、「事前に情報を収集し、計画を立てる」の7つのルールが掲げられています。
参加者・そしのさん「信越トレイルを歩いたのは初めてで、紅葉はまだ早いということだったんですけど、ナナカマドとかの赤が鮮やかでしたし、ブナの林の木の話とかすごく面白かったです。コース自体も本当になだらかで歩きやすくて、ゆっくりと久々にのんびりできました。本当に楽しかったです。ありがとうございました」 参加者・秋山さん「自然の色々な木がだんだん色づいていくのを実感できて気持ちよかったです」 参加者・みないさん「本当にひんやりしていて湿った空気の中、森の歩きということで、山登りとはまた違った楽しさが信越トレイルの道にはあるということで何度も参加させていただいています」 群馬からいらした「そしの・まさみ」さん、東京の「秋山ゆういち」さん、そして山梨からいらした「みない・てつや」さん、ありがとうございました。そして、最後に加藤さんからのメッセージです。
加藤さん「信越トレイルの素晴しさは、やはり豪雪地帯というのがポイントで、魅力のかなり大きな部分だと思います。先ほどいいましたように、里山的なところです。なおかつ、普通の年でも6メートルから8メートルの雪が積もるところです。それほどの豪雪地帯に、スノーシューとか、クロスカントリー・スキー、あるいはバック・カントリー・スキーを履いて入れちゃうんですね。で、信越トレイルは信越トレイルクラブというNPOが管理しています。この管理団体の素晴らしさは、きちっとしたガイド組織があります。30人ほどの人が登録しています。ですから、初めての人でも、ガイドと一緒に本来なら選ばれた人しか入れなかったようなところに入れるんですね。それから、それも含めた四季の美しさ。ブナの広葉樹の森ですから、実際に入るとものを書く私ですら、秋の美しさは言葉で表せないほど感動します。それから春、新緑の季節はまだ雪が残っています。雪の上を新緑を楽しみながら歩くというところですね。ただ、標高が低いので、夏は非常に暑いです。はっきりとした四季を楽しむトレイルとしても、とても優れたところですから、1つの季節ではなくて、それぞれの季節を楽しんで欲しいなと思います」 ■このほかの加藤則芳さんのインタビューもご覧ください。
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AMY'S MONOLOGUE~エイミーのひと言~
残念ながら今回、私は参加できなかったのですが、参加したスタッフは、初日の4.4キロを歩いただけで、ぜひ残りを歩きたいと思わせる魅力が、自然の景観だけではなく、ガイドさんや信越トレイルを支えるシステムにあったと話していました。
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■信越トレイル情報
総延長80キロのうち、現在、歩けるのは50キロで、残りの30キロはまだ整備中(地元の方を始めとするボランティアの人たちが、環境面の調査や整備を行なっているそうです)。全線の開通は、来年秋の予定。
NPO法人 信越トレイルクラブ |
オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」
M1. TAKE ME HOME, COUNTRY ROADS / OLIVIA NEWTON-JOHN
M2. WALKING MAN / JAMES TAYLOR
M3. HARVEST MOON / NEIL YOUNG
M4. 森を歩く / HEATWAVE
ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」
M5. WORK TO DO / AMERICA
M6. ふるさと / 里アンナ
M7. PINK MOON / NICK DRAKE
油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」
エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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