2007年11月11日
東京モーターショー2007取材レポート「エコとクルマの近未来」今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンは東京モーターショー2007取材レポートです。
今週は、11月11日(日)に閉幕した『第40回 東京モーターショー2007』の取材レポート。今回は「エコとクルマの近未来」というテーマで、国内の車メーカーにしぼり、最新のエコカーや、メーカーの環境への取り組みなどにスポットを当ててお送りします。 電気自動車に変えるとランニング・コストが9分の1に 今回の『第40回 東京モーターショー2007』は、各メーカーからエコを強く意識したコンセプト・カーが多く出展されるということで、開催前から話題を集めていましたよね。確かに素晴らしい考え方で、地球の未来を考えたクルマが、様々に展示されていたんですが、実用化、市販モデルということになると、多くのクルマは、“2020年以降に実用化”とか、“2050年をめどに技術開発”という感じで、待ったなしの温暖化の実態を考えると、遠い未来の話のようにも感じられました。
現在、地球上を走るクルマは、およそ7億4,000万台と言われ、地球全体のエネルギー消費で排出されたCO2のうち、クルマが排出した割合は、なんと17%といわれています。つまり、これからの自動車産業にとって、CO2排出削減は、絶対避けて通れない、重要なテーマでもあるわけです。
ひとくちにエコカーといっても、色々な考え方がありますよね。“クルマをどうやって動かすか”という観点からみれば、現在の主流である“ガソリン・エンジンからの脱却”という意味で、電気自動車や燃料電池車、あるいは、それらとエンジンとの併用というハイブリッド車という方向があります。
そんな中で私たちが注目したのは“100%電気で動くクルマ”、「三菱自動車」の『i-MieV(アイミーブ)』というクルマでした。まず、このクルマについて「三菱自動車」の「吉田」さんにお話を伺いました。 吉田さん「まず基本的にピュアな電気自動車でして、車体の骨格構造を何も変えることなく、電気自動車化をしております。そのために使っている技術は、小型の高性能モーター、大容量のリチウム・イオン・バッテリーを床下に搭載するという形をとっております」 ●小型で小回りが利きそうな、都会にはピッタリのサイズですね。この車は1回の充電でどれくらい走れるんですか?
吉田さん「一充電で160キロ走ります」 ●充電は家庭で普通に出来るんですか? 吉田さん「はい。普通にできます。3ウェイの電源システムを持っていまして、基本的に家庭で充電する100ボルト、それから家庭には200ボルトもきていますけど、その200ボルトも使えます。で、100ボルトの場合は充電時間が14時間、200ボルトだと7時間ですね。これは完全に使い切った状態からフル充電するまでの時間です。家庭の場合は、深夜電力を使うというような安価な電力が使えます。今、1キロワットアワーで7円とかなんですけど、これを使いますと、ベースとなったガソリン車がありますが、これに対してランニング・コストが9分の1になります。言ってみれば、1キロメートル走るのに1円くらいしかかからないんですね。こういうお財布に優しいというのも1つの効果ですので、ここを大事にしていただきたいなぁと我々は思っております。
●それは、いつぐらいに、どれくらいの数を増やせそうですか? 吉田さん「基本的にはガソリンスタンド並にというのが目標になると思いますが、1度に一気に全国に展開しても、電気自動車が一気に全国に展開するわけではありませんので、集中的にモデル地区のようなものを作りながら、配置していくということになると思います。東京電力様はもっぱら、例えば東京の港区とか、横浜のあたりの電力会社様の営業所全部に充電器を設置すると、5キロ圏内に急速充電スタンドが出来ることになります。それを目標にしたいと思っております」 今のところ、“都市の中で、小回りを利かした利用をする”ということが前提で、ロング・ドライヴをしたり、大勢で乗る大型車への展開というのは、難しい状況ではあるようですが、地球にも、お財布にも優しい小型車で、実用化もそう遠くなさそうだとなれば、ポイントである街中の急速充電器、もしくは、充電ステーションの広がりとともに電気自動車の普及にも期待を持っていいのかもしれませんね。 世界に誇れる燃料連続無充填での走行距離を達成! さて、“CO2排出をゼロに”ということを考えると、どうしても期待してしまうのが、燃料電池車です。
ところが『東京モーターショー2007』の「トヨタ・ブース」で“大阪から東京まで、水素を補充しないで走ってきました”という燃料電池車を見つけたんです。正確に言うとFCHV、つまり燃料電池のハイブリッド車なんですが、さっそく、このクルマについて「トヨタ自動車」の「石黒」さんにお話を伺いました。 石黒さん「大阪にステーションがあるので、そこで水素ガスをチャージしまして、満タンにしてきました。そこから東京のお台場まで、一切、水素を補給することなく走りきれたということで、約560キロ間を走ってきました」 ●これは、今のトヨタさんの車でいうと、常識になりつつある距離なんですか? 石黒さん「そうですね。我々は、一般に使われている皆様のお車が500キロくらいの走行をされているということは色々なデータを見て知っていますので、燃料電池車もターゲットとしては、500キロ以上走らないと、商品としては扱っていただけないかなぁということがありましたので、我々も最低でも500キロは走ろうということで、取り組んで参りました」 ●燃料電池車についてもう1つ懸念されるのが、ステーションの問題だと思うんですね。大阪で充填したのはいいけれど、万が一寄り道したり、違うところへ行く途中で、改めて充填したいということきに、今あまりステーションがないですよね。今後の見通しというのはどのようになっているのか教えていただけますか?
石黒さん「我々、車を提供させていただく側から、ステーションを作るっていうのは大変難しい問題もたくさんありますので、これは我々、車を提供させていただく側と、政府とか官庁等で一体になって、こういった取り組みを今後とも進めていかなくちゃいけないと思っております。特に、これに関しては、JHFC、日本水素FCという協会がありますけど、そこを母体として政府機関と色々と相談させていただきながら、将来、こういった拠点、例えば、首都圏、大阪、名古屋、北海道、九州とか色々な拠点に展開していかなくちゃいけないということで、ご提案は色々と差し上げさせていただいています」 ●燃料電池車に関しては、他社も色々あると思うんですけど、トヨタさんの「他とは違うぞ!」という点を教えていただけますか? 石黒さん「今回、このように走ってまいりまして、出来ればギネスブックにも載せたいっていうくらいの気持ちでいますけど、連続無充填での走行距離は今のところ、世界に誇れるのではないかなというのが1つ。もう1つは、我々は寒いところ、日本だけではなくて、カナダとか北極圏に近いところに冬場、車両を持っていきまして、低温始動性っていうのも大きなテーマにしております。これも今現在、走ってきたところではマイナス37度という、とても人間が住めるところではないところでも走ってまいりまして、そこでもちゃんと動いて運転してきました。私自身もやってきましたし、そういったことで非常に寒いところでも使っていただける。特に、燃料電池というのは水を出しますので、水っていうのは0度以下では凍ってしまうっていうのが一般的な常識なものですから、凍る状態でも運転できるっていうところが他社さんとアドバンテージいただいている点かなと思っております」 |
色々な形で補充ができる「ホーム・エナジー・ステーション」 地球に優しいクルマ社会を考える時、理想としてはCO2の排出がゼロとなる電気自動車か燃料電池車による社会ということになるわけですが、問題は今までみてきたように、燃料となる電気、もしくは、水素をどうやって得るかということ。
小村さん「水素は実は色々なものの中に入っていまして、我々の体の中にも形を変えて、いっぱい入っています。その中から科学的に取り出す方法が、改質タイプといわれております。このホーム・エナジー・ステーションというのは、入り口が天然ガス、日本でいうと都市ガスになるんですが、メタンを使っておりまして、これをもらって水と混ぜて、化学反応を起こします。そうすると、二酸化炭素と水素に変えることができます。その水素を使って発電をしたり、車に供給するということをやっています。実際、家庭に向けては、電気とそのときに出来てくる熱を供給しています。で、出来た水素を非常にクリーンな状態にしてあげて、その状態の水素を車に充填もするような機能が入っています。で、なぜこういうことをやっているかというと、トータルでエネルギー的なものを作りますと、生活全体のエネルギーの約3割くらいを落とすことが出来ます。3割というのは、もともと電力は普通に電力会社から買っている、お風呂に入るためにはガスを使っている、車にはガソリンを入れているという生活があるんですが、その生活に対してこれを導入して、例えばFCXで走って生活をすると、エネルギー的にも3割、CO2的にも3割落とすことが出来ます。ちなみに、アメリカで生活の3割というと、車1台分くらいのエネルギーに相当します」 ●それで、ホーム・エナジー・ステーションという言い方になるんですね。 小村さん「家で水素を作ることを受け入れてもらえるかどうかまだ分からないんですけど、エネルギーをセーブするというふうに考えていきますと、車だけではなくて、生活全体を考えなければいけないなぁと思います」 ということで、「ホーム・エナジー・ステーション」として、家庭のエネルギーを管理する中で、クルマのエネルギーも一緒に考えようという発想。まだ実用化していませんが、かなり近いのではないかという雰囲気でした。
小村さん「水素の場合はガソリンとか石油と違って、例えばどこからか掘ってきて、1カ所で精製して、全てのところにデリバリーしなければならないというものではありませんので、色々な作り方がありますし、答えはいっぱいあると思うんですね。例えば、現在のガソリンスタンドのような形態もあるでしょうし、それから、どこかに単独のステーションがあっても構わないでしょうし、家庭という形態もあるかもしれませんし、コンビニのようなところで入れられるような形態もあるかもしれません。色々な答えが平面的にあって、今のやり方とは変わってくるのかなと思っています」 ●発想を変えると、窓口がたくさんあるんですね。 小村さん「ええ。作り方が多岐にわたるので、それこそ地域の特性に合わせた水素というのもあるかもしれないなと思っているので、例えば、光が強い地域でしたら、太陽電池からの電気分解のような水素がいいでしょうし、風が強いところでしたらウィンド・タービンからの水素でも構いませんし、あるいはバイオマスのようなものが豊富なところであれば、それでも構わないと思うので、産地特有の水素みたいなものがあってもいいのかなぁと思います」 雑草からもエネルギーを得られる「セルロース・エタノール」 水素にしろ、電気にしろ、今後の課題は、“街中でいかにエネルギーを充填できるようにするか”ということで、それには、行政の取り組みが不可欠。でも、国土交通省や経済産業省の、この件に関するブースは出ておらず、国レベルの対策の遅れを痛感しました。となると、現時点で有効なエコ対策は、すでに普及が進んでいる、「トヨタ」の『プリウス』に代表されるガソリンと電気モーターのハイブリッド車か、ヨーロッパやブラジルで進んでいるバイオ・エタノールのディーゼル・エンジン車ということになりそうです。
松原さん「燃料に関しましては、自動車業界だけではなかなか手が打てないので、関連業界と連係していますけど、今、環境省さんの方では、エタノール3パーセント混合燃料というのを市場で試すということが始まっていますので、まだ、緒に就いたばかりという段階でございます。ただ、外国の流れを見ますと、これがどんどん拡大していく傾向にあるのと、それに伴って技術も対応していかなくちゃいけないものですから、そこを燃料業界、自動車業界、政府、自治体等が連携をして、この普及を図っていくという初期段階だと考えております。
こう聞くと、日本でもバイオ燃料によるクルマ社会の到来、そう遠くないことのように感じますが、実はバイオ・エタノールの普及は、思わぬところで問題を浮き彫りにしています。「ホンダ」の「磯部」さんに伺いました。
磯部さん「元々バイオ・エタノールが始まったのは、ブラジルのサトウキビ畑なんですね。結局、砂糖は山のようにあって、余っていたと。で、それをアルコールにすることによって、燃料として使えることが分かって、元々サトウキビは糖なので、発酵さえすればアルコールになるんですね。なので、すごく簡単にできるのでやってみましたと。ところが最近ブームになって、石油危機から代替燃料ということになって、そちらのほうが高く売れるっていうことで、お砂糖作りよりもアルコール化っていう動きが強くなったんですね。そうすると、違う作物を作っていたところも『じゃあ、サトウキビを作って、燃料にしちゃおう』っていう動きが出たものですから、今どんどんと問題になっているんですね。ですから、地域に合った作り方であればいいんじゃないかと思っています」 「磯部」さんがおっしゃる通り、地球に優しいクルマ社会にとって、バイオ・エタノールは救世主のように思われましたが、一方で、食料を燃料に転化することから生じる需要と供給の関係で、食糧そのものの値段が上がったり、食料難が予想されたり。果ては、今ある森を伐採/開墾して、農地にする動きが出るなど、温暖化防止の観点からみると、逆効果にもなりかねない問題も浮上しているんです。
磯部さん「今、世の中で食料との競合で問題になっているバイオ・エタノールっていうのは、植物からとったエタノールのことをいいます。で、ただそれはあくまでも食べる分、例えばサトウキビですとか、トウモロコシの実を使って、作るエタノールのことを呼んでいますので、我々は食べる部分ではなくて、実を取った後の茎とか葉っぱから燃料を作ろうということで、同じバイオ・エタノールなんですけど、勘違いされたら困るので、あえてセルロース・エタノールという言い方をさせていただいています。で、なぜセルロースかっていいますと、葉っぱや茎に含まれているセルロース分が糖に置き換わると。つまり、植物にはセルロース以外のものもたくさん入っているんですけど、その中のセルロースだけが糖に変えられるようになりまして、要は原料としてはセルロースということでそういう表現をしています」 ●それは食物として食べている植物以外の植物からもとれるということなんですか? 磯部さん「ええ。極端なことを言いますと、堤防に生えている雑草とか、そういったのも全部同じですね」 お米が主食の日本には、たくさんの稲ワラがあります。そこから燃料が作り出せれば、かなり有効なんじゃないかと思いますが、「磯部」さんによれば、今ある燃料に取って代わるだけの量は見込めないだろうということなんです。いずれにしても、まだ開発/研究の途中ではありますが、一日も早く、食糧以外のもので燃料を作り出す技術、実用化されて欲しいですね。 |
AMY'S MONOLOGUE~エイミーのひと言~
今回の取材で私が個人的に一番興味を持ったのは、クルマだけではなく家庭のエネルギーも一緒に考えるという発想のホンダの「ホーム・エナジー・ステーション」。
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■東京モーターショー2007公式ホームページモーターショーの会場内の様子をブログで見ることができたり、出展会社の情報を見ることができます。また、キッズ向けのページもあります。 ・東京モーターショー2007公式HP:http://www.tokyo-motorshow.com/ |
オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」
M1. I DROVE ALL NIGHT / CYNDI LAUPER
M2. JOYRIDE / ROXETTE
M3. ROCKIN' DOWN THE HIGHWAY / THE DOOBIE BROTHERS
ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」
油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」
M4. SOME KIND OF WONDERFUL / CAROLE KING
M5. HOPE OF DELIVERENCE / PAUL McCARTNEY
M6. DRIVE / THE CARS
エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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