2007年11月25日
自然と楽しみ、自然を学ぶ「ネイチャーゲーム」
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは佐々木香織さんです。 |
ネイチャーゲーム研究所の佐々木香織さんをお迎えし、自然体験プログラム・ネイチャーゲームと、“自然保護の父”または“国立公園の父”といわれるジョン・ミューアの関係性についてうかがいます。
●ネイチャーゲームはこの番組が始まってすぐ位に、三好直子さんにお話をうかがったんですけど、時間がかなり経ってしまいました。その間もネイチャーゲームという言葉があちこちで聞けるようになって私達も嬉しく思っているんですけど、改めてネイチャーゲームとはどういうものなのかを簡単にご説明していただけますか?
「分かりました。ネイチャーゲームというものは、1979年にアメリカ人のナチュラリスト、ジョセフ・コーネルさんという方が考案したものなんですね。で、アメリカでは『シェアリング・ネイチャー・ウィズ・チルドレン』というタイトルの本で紹介されたのが最初で、それを日本に紹介するときにネイチャーゲームという名前をつけて、翻訳本を出すというところから出発した活動です。色々な環境教育の自然の中でやる活動がある中で、とても特徴的だと私達が思っているのは、1人1人個性がありますけど、1人1人がもともと持っている五感と呼ばれる感覚、目でじっくり見たりとか、耳を研ぎ澄ませて聞いてみたり、手で触れてみたりというふうに、1人1人がもともと持っている感覚を呼び覚まして、その感覚を使って自然に直接触れていくという活動なんですね。なので、答えが何かひとつあるっていうのではなくて、活動を通して自分の感覚で自然を感じ取るというような活動なんですね」
●以前、15年位前に三好さんにお話をうかがったときのネイチャーゲームの1つで、今でも印象に残っているのが、秋、枯葉が積もっている中に自分も埋もれてみるっていうゲームで、自分も枯葉の一部になるっていうものだったんですが、今でも枯葉を見るとそのゲームのことを思い出すんですね。
「それは大地の窓というネイチャーゲームなんですね。とても代表的なものですけど、今おっしゃったように落ち葉がたくさんあるところで、横になって全身を落ち葉の中にうずめて、目だけを出して、自分が地面と一体になって森や空を見上げるというゲームなんですね。ただそれだけのことなんですけど、じーっと落ち葉に埋もれて、大地に横たわっていると、だんだん自分の体の皮膚の境界線みたいなものがなくなっていくような感覚というか、自分が大地と一体になっているような面白い体験をすることができるんですね」
●ネイチャーゲームって小さなお子さんもとっても楽しんでやれるでしょうし、小さい頃からネイチャーゲームに接していると、自然と五感で感じるっていうことが体験的に分かってくると思うんですね。そして、しばらくそういう遊びを忘れてしまって忙しくしている大人も、改めて楽しめたり、癒されたり、考えさせられるゲームですよね。
「よく親子のネイチャーゲーム体験イベントというのを色々な地域でやるんですけど、大概、子供が夢中になるだろうと思って、子供向けのプログラムを考えるんですけど、どちらかというとお父さんやお母さんが夢中になって、子供そっちのけで心から楽しんでいる姿を見ることがあります。多分、それも親だからとか大人だからというのではなくて、1人1人が持っている感覚を使うので、本当に自分のまま楽しめるっていうところが、色々な方々に受け入れられる理由なのかなって思います」
●そんなネイチャーゲームの創始者でナチュラリストのジョセフ・コーネルさんが書かれた「ジョン・ミューア~自然と共に歩いた人生」、原題が「ジョン・ミューア・マイ・ライフ・ウィズ・ネイチャー」っていうこのご本が日本ネイチャーゲーム協会の翻訳のもと、ネイチャーゲーム研究所から発売になりました。ジョン・ミューアという人は、私たちはバックパッカーの加藤則芳さんを通して、国立公園の父、または自然保護の父という形で、その功績については色々とお話をうかがい、「ジョン・ミューア・トレイルにも行ってみたいねー」と言って早10年以上経ってしまったわけなんですが(笑)、このジョン・ミューアとネイチャーゲームとはどういう形で繋がっているんですか?
「ミューアが生まれたのは今から170年くらい前で、かなり昔の方ですので(笑)、直接会ったとか、そういう接点はないんですけど、ネイチャーゲームの創始者であるジョセフ・コーネルさんは、ミューアから多大な影響を受けたんですね。で、ミューア自身が自然の中で体験したことというのが、ミューア自身の文章で執筆されたものがたくさん残っているんですね。そういうものを見ると、ミューアがネイチャーゲーム的な感覚、感性、精神で自然に接していたということがよく分かると思うんですね。例えば、感覚を研ぎ澄ませて自然の中に入っていくことや、自然と自分が一体である感覚とか、自分と自然が別のものではなくて、自己の感覚がとても広くなっている感じとか、野生動物への接し方、自然に対する謙虚さといったところが、ネイチャーゲームの根本にある精神に繋がっていると思うんです。コーネルさんはミューアからたくさんの影響を受けて、それを元にネイチャーゲームのプログラムを作り上げたというふうに、ご自分でも語っていらっしゃって、この本はコーネルさんが執筆をされているんですけど、ミューアの視点に立って書かれていますよね。なので、物語を読んでいくと、本当にミューアと一緒に自然の中で大冒険をしたり、野生動物と心を通わせたりというようなことをやっているような感覚になりますよね」
●それがネイチャーゲームの根底にある精神なんですね。
「そうですね」
●で、その精神をどういうふうに感じられるかというので、色々な形のゲームでプログラムを作ってやっていらっしゃるのがネイチャーゲームなんですね。
「そうですね」
●ネイチャーゲーム研究所ではこの度、佐々木さんが編集を担当された「ジョン・ミューア~自然と共に歩いた人生」という本を出版されています。そんなジョン・ミューアなんですけど、ネイチャーゲーム研究所の佐々木さんから見て、どんなところが功績としては大きかったんですか?
「もちろん、ルーズベルト大統領をヨセミテの自然の中に連れて行って、キャンプ生活を何日か一緒に体験してもらって、その結果、アメリカに国立公園が生まれるキッカケとなったっていうエピソードを聞くと、自然保護という観点でいくと、ミューアがアメリカだけではなくて、全世界に及ぼした影響というのはとても大きいものだったと思うんですね。
それともう1つ、ミューアの特徴として、執筆活動をたくさんされていたということが挙げられるんですね。今回の『ジョン・ミューア~自然と共に歩いた人生』の中でも、ミューアが書いた本をもとに、コーネルさんが書き起こしている感じなんですけど、自分自身が自然の中に身一つで入っていって、色々な体験をしたことを、とても分かりやすくて美しい文章でたくさん残してくれているっていうのが、とても大きな功績だったんじゃないかなと思います。それがなかったら今回のこの本も生まれていなかったと思います」
●ジョン・ミューアがいなかったら、アメリカに国立公園というものが出来るのももっと遅れていたでしょうし、もっと自然が破壊されていた可能性ってすごく高いわけじゃないですか。それを、今の日本に置き換えてみると、日本にもジョン・ミューアのように総理を山の中に一緒に連れて行って、キャンプをするような人がいてくれればもうちょっと変わるのかなぁって思いました。
「そうですね。ある1人の人物の大きな功績を作るっていうことも、ミューアさんの場合はそうだったんでしょうけど、日本の中でも自然と共に歩くとか、ライフスタイルを見直すとか、様々なロハスもそうでしょうし、そういう注目が今すごく高まっていると思うんですね。で、それぐらいの危機に瀕しているという状況ももちろんあると思うんですけど、やっぱり1人1人が自分の中で自然と自分の付き合い方を見つめなおしたり、実践してみたりすると、いずれ大きな力に繋がるのではないかと思っています」
●小さい頃から学校のプログラムの1つにネイチャーゲームが100パーセント組み込まれて、政治家になるためにはネイチャーゲームをある程度パスしないとダメっていうくらいになれば、人間として変わるのかなって思うんですけど(笑)、実際、ジョン・ミューアさんって日本に来たことはあるんですか?
「はい。船旅をしながら世界中をまわっていた方なんですけど、資料によると1904年の4月頃に日本に上陸したという記録が残っているんですね。で、当時は船旅だったので、神戸、横浜を経由したとの資料が残っています。なので、確かに日本には立ち寄られていると思います」
●どんなふうに日本の自然を見ていたんでしょうね。
「私もすごく気になるんです。日本に立ち寄った記録というものがミューアさんの日記に残っているようなんですけど、残念ながら当時の日本の滞在記録というものはメモ程度だったようで、その文字もとても読みづらい文章だったらしくて、解読不可能という状況だそうです(笑)。なので、どんなふうに日本を捉えたかというのは、想像の域を超えないというか、全く分からないといった状況ですね」
●それは、いずれ改めてこの国をしっかり見たいと思って走り書きで終わったのか、あまり興味を持ってもらえなかったのか、非常に気になりますね。でも、それから大分、日本も変わりましたから、もしも今、ミューアさんが生きていたら日本の自然をどう見ていたんでしょうね。また逆に、ミューアさんのことをよく知っているジョセフ・コーネルさんは日本には来られたことはあるんですか?
「ええ。何度も来ています。ちょうど今年、ネイチャーゲームが日本に紹介されてちょうど20周年の節目の年だったので、様々な行事をしたんですけど、コーネルさんもお招きして、シンポジウムをやったり、ワークショップをやったり、記者会見をやってもらったり、取材に応えてもらったり、色々なことをして帰られました」
●日本の自然について、コーネルさんはどういうふうにおっしゃっていましたか?
「どういうふうに感じているんでしょうね。日本とアメリカは気候、風土が随分違いますよね。でも、どんな自然でも楽しむ心を忘れないというのが、コーネルさんの信条というか、ベースにあるところなので、どんな自然でも、雨でも霧でも晴れでも曇りでも、本当に楽しそうに過ごしていらっしゃいますね」
●ネイチャーゲームは英語でシェアリング・ネイチャー・プログラムという、自然を分かち合うという言葉でいわれているように、天気は関係ないということなんですね。
「そうですね。多分、国境とか国とかも関係ないんじゃないかと思います。本当に楽しそうに、『自分が一番楽しんでいるでしょ!?』ってみんなに言われていますけど(笑)、まさにそうなんじゃないかって思います」
●佐々木さんは加藤則芳さんと一緒に、ジョン・ミューアの功績を称えて作られたジョン・ミューア・トレイルに何度か行かれたそうですね。
「はい。2004年と2006年の2度行かせていただきました」
●どうでしたか?
「まず、日本の自然と大分違うので、それに驚くのが最初でした。まず美とか調和っていう言葉がヒットするというか、日本の自然でもそう思うことはあるんですけど、ジョン・ミューア・トレイルの風景を見るともっと圧倒的なんですよね。美しさとか、調和しているっていうことが、見た目と自分の魂からそれを理解するというか。自然というものは全てのものがなきゃいけないし、あるもの全部に無駄なものはないってよくいわれますけど、全てが調和していて、調和しているっていう姿がとても美しいということを、心と魂で実感するという経験をしたんですね。
ジョン・ミューア・トレイルのすごいところは、人間が入っていいエリアというのが、30センチくらいの道1本なんですね。そのトレイルから外れていい条件っていうのが、例えばキャンプをするためにこの部分だけはいいよというふうに決められていたりして、人間が入るスペースが非常に限られているんですね。しかも、その距離が340キロという非常に大きな面積の、大きな自然がほとんど手付かずの、まさにミューアが生きていた頃と同じ、まさにミューアが見ていた自然がそっくりそのまま残っているという点では、スケールの大きい自然が残っているんですね。日本の自然ももちろん美しいですし、調和とか美を感じることはありますけど、やはり、人間の手が入っている部分が割合として、とても多いのかなというふうに感じますね」
●ジョン・ミューア・トレイルには2度行かれているわけですけど、そこで感じたことや体験したことっていうのは、今、佐々木さんにとっては大きいですか?
「大きいと思います。とても自分の価値観だとか、自然観、人生観などあらゆるものに色々な影響を与えているなと思います。自分が実体験をもって行き着いた考えみたいなものっていうのは、自分の哲学になっているというか、すごく根付いていて、『それはこれです!』とはなかなか言えないんですけど、色々なものにすごく影響を与えていると思います」
●ジョン・ミューア・トレイルを歩いたことは、すごくスケールの大きなネイチャーゲームのプログラムを体験した感じかもしれませんね。
「もしかしたらそうかもしれませんね。あまりそういうふうに考えたことはなかったですけど、ジョン・ミューア・トレイルを歩きながらも、いわゆるネイチャーゲームの活動を1人でやってみたり、そういうことはしていたんです(笑)。自分なりに取り入れられるところでは、息抜き程度にやっていたんですけど、そういわれてみると、全行程がそうだったのかもといわれればそうかもしれませんね」
●これから寒いから、公園で遊ぶとか、雪の中に埋もれるのはちょっとつらいでしょうけど、気軽に普段の生活の中で、通勤、通学の途中にでもできるようなネイチャーゲームのプログラムってありますか?
「たくさんありますよ(笑)。今日、実はここのスタジオに来る前に5分くらい早く着いたので、1人ネイチャーゲームをやっていたんです(笑)。カメラゲームというネイチャーゲームがあって、普通の活動では2人1組のペアでやるものなんですけど、今日は1人でそれをやってみたんですね。やり方はすごく簡単です。結構、木がたくさん茂っていたので、幹越しに木を下から見上げてみたんですね。で、1回自分の目を閉じて、しばらく自分の気持ちが落ち着いたなと思ったら、パッと目を開けるんですね。3秒間くらい目を開けて、また目を閉じます。3秒間だけ自分の目にその風景が映し出されるんですけど、自分がまさにカメラになって、自然の一瞬の美しさを切り取って、自分のカメラで写真に撮ってみるっていうプログラムなんです」
●まばたきシャッターなわけですね!
「そうです! そんな感じの活動なんですけど、今日はサクラの木だったのかな。緑と黄色が少し混じった葉っぱと青い空のコントラストがとてもきれいな写真が1枚撮れました」
●いいじゃないですかー! それって、目にもよさそうですよね。
「目にもいいかもしれませんね」
●普段、パソコンなんかで目を酷使して疲れたっていうときに、ちょっとオフィスを出て、街路樹の下に立って見上げて、まばたきシャッターでお気に入りの写真を1枚脳裏にインプットするっていうのがいいんじゃないですか。
「そうですね。漠然と見ているときにはちょっと気がつかないような美しさみたいなものが、たった3秒間っていう時間でみつけることができるっていうのが面白いところだと思います。あとは、これは私が考案したものなんですけど、自然の紋という活動があります。それは、日本には家紋というものがありますが、家紋っていうのは自然をモチーフにしていますよね。葉っぱだったり、花だったり、鳥だったりというふうに、自然のモチーフを日本人の美意識によってとっても洗練されたデザインに作り上げていると思うんですけど、そんな形で、1人1人が『面白いなぁ』とか『きれいだなー』って思うものを自然の中から探してきて、それを家紋風に図案化してみるという活動なんですね。1人1人の感性とか、『自分にはないけど、この人はこれをこういうふうに見たのか!』っていう驚きがあったりして、とても面白い活動ですね」
●自分独自の紋が作っちゃうんですね。面白そう! みなさんも考えてみてはいかがでしょうか。この度、出版された「ジョン・ミューア~自然と共に歩いた人生」という本で書かれているような精神っていうのは今後、もっと日本や日本人の中に浸透し、語らなくても自然とそうなっていく気配ってありますか?
「今、ネイチャーゲームはとても広がっていて、昔は比較的、自然に特別に興味のある方々に親しまれていたような部分があるのかなと思うんですけど、ネイチャーゲームの指導者の資格がとれる研修会があるんですけど、それに参加される方の雰囲気や層を見ていても、専門的なものを詳しくっていうよりも、日常の中で何か自然と関わりを持つことが出来ないかなって思われている方がすごく増えてきているような実感があります。なので、徐々に日本全体がそういう方向になっているのかなっていう感覚はありますね」
●みなさんにも是非、親子でネイチャーゲームに参加してほしいですね。
「そうですね。とても気持ちのいい活動ですので、リフレッシュや日々の疲れを癒すっていう効果もあると思いますし、1回体験したことが1回で終わりにならないので、また持ち帰って、自分の暮らしの中で取り入れることも十分出来ると思います」
●ザ・フリントストーンもしばしやっていないので、今度、是非、新しいプログラムをスタッフ全員で参加したいと思いますので、そのときは面白いプログラムを色々教えてくださいね。
「よろしくお願いします。お待ちしています」
●今日はどうもありがとうございました。
AMY'S MONOLOGUE~エイミーのひと言~
「ジョン・ミューア~自然と共に歩いた人生~」という本の中で、ジョン・ミューアのこんな言葉が引用されています。「自然は神の微笑みそのものなのだ。」自然をこんなにも破壊してしまった私たち人間は、神様の微笑みを奪ってしまった・・・。人間にとっても住みよい環境は、神様が再び微笑んだとき戻ってくるといえるのかもしれませんね。 |
■ネイチャーゲーム関連情報
ジョセフ・コーネルさん著
ネイチャーゲームについてもっと知りたい方、あるいは、指導者の講座を受けたい方はぜひ「社団法人 日本ネイチャーゲーム協会」のホームページをご覧下さい。
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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」
M1. CARRY YOU / JIMMY EAT WORLD
M2. MOTHER NATURE'S SON / THE BEATLES
M3. I WANNA LEARN / ANDERSON BRUFORD WAKEMAN HOWE
ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」
油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」
M4. STUBBORN KIND OF FELLOW / FRANKIE MILLER
M5. LONG PROMISED ROAD / THE BEACH BOYS
M6. MANY THE MILES / SARA BAREILLES
エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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