2008年4月20日

サンゴの保全活動を続ける女優/NPO法人アクアプラネットの会長、田中律子さんを迎えて

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンは、田中律子さんのインタビューです。
田中律子さん

 自然や海が大好きな女優の田中律子さんをお迎えし、田中さんが会長を務めるNPO法人アクアプラネットの活動のことなどうかがいます。

珊瑚を守るのが使命

●お久しぶりです。「キャンプで会いましょう」と言ってから15年も経ってしまいました(笑)。

「すごいですねー(笑)」

●田中さんも今では女優業の傍ら、NPO法人アクアプラネットの会長さんもなさっているんですよね。

「はい。会長でございます(笑)」

●田中会長!(笑)

「はい、会長です!(笑)」

●(笑)。立派な会長さんとしてご活躍なさっているわけですが、まず、アクアプラネットという団体について教えていただけますか?

「私達は沖縄でサンゴの保全と再生活動をやっているんですね。で今、沖縄ではサンゴがどんどん死んでしまっていて、私14歳からダイビングをやっているんですけど、ずっと海で遊んできて、毎年沖縄に遊びに行っていたんですよ。で、10年くらい前に、慶良間諸島っていう本当にキレイなところがあるんですけど、そこでダイビングをしていたら、今までブルーとかピンクとかすごくきれいだったサンゴ礁が、10年ちょっと前に潜ったらあたり一面のサンゴが真っ白になっていたんですよ。そのとき全然分からなくて、『なんで、あんなにカラフルでキレイだったサンゴが真っ白なんだろう?』と思って、『すごくキレイだねー』って言って見ていたんですよ。で、その1年後に同じところに潜ったら、その真っ白だったサンゴすらなくなって、もうグレーの世界だったんですよ。サンゴが全部折れちゃってて、『ここ、同じところ!?』っていうくらい衝撃を受けて、あとから聞いたら、あの真っ白だったサンゴは白化現象っていって、死ぬ直前のサンゴで、その後1年後くらいに潜ってグレーだったのは、そのサンゴが全て死んでしまった後だったんだよっていうのを何年か経ってから聞いて、『やだー。あのとき真っ白だったサンゴたちを見て、私たち“キレイ”って言っちゃったねー』って言ってて、そのとき、白化現象とか温暖化っていう言葉もなかったんですよ。で、今思うと、私たちが見てきたのって白化現象だったんですね。で、そんなのを目の当たりにして自分で見てきて、これは何とかしないといけないなって思ったんですね。サンゴがどんどんなくなっていくんですよ」

●今まで、楽しみで潜っていて、「カラフルだねー」って言って見ていたところが、どんどんなくなっていったんですね。

田中律子さん
田中律子さんと理事長の金城さん達

「ビックリするくらいのスピードでなくなるんですよ。という恐ろしい現状があって、何とかできないかなぁって思っているときに、ウチの理事長の金城さんっていう人がいて、一生懸命サンゴの移植をやっているおじさんと出会ったわけですよ。で、『私、これだ!』と思ったんですね。『14歳からダイビングをやっていたのも、きっとこれをするためだったんだ!』と思って、私の使命だと思って、何かお手伝いできないかなぁっていうときに、きちんとした活動をするためにも、NPO法人を立ち上げようということで、このアクアプラネットを立ち上げたんですよ」

●それが何年前くらいですか?

「2年前ですね。やっぱり、私はこういう仕事をしているから、自分は会長でもあり、広報としてみんなに広めていくのが私の役割だと思って、ラジオとか雑誌とかテレビに出るときには必ず、『今、サンゴはこういう状況なんだよ』というのを、1人でも多くの人に知ってもらうっていうのが大事かなと思っています」

●この番組を長年やらせていただいている中で、全然知らなかった白化現象や、死んでいることを最初は「だから?」って思っていたんですけど、サンゴの働き、サンゴの重要性について田中会長の口から改めて語っていただけますでしょうか。

「はい。サンゴ礁っていうのはこんなに海が広い中で、なんと世界中で0.2パーセントしかないんですよ。ほんのちょこっとしかないの。だけど、その0.2パーセントのサンゴ礁の中に、魚とか貝といった海洋生物の45パーセントが生息しているんですよ。何らかの形で関わっている。ということは、サンゴって魚たちのお家なんですね。そのサンゴが今どんどん死滅しているっていうことは、魚のお家がなくなっていて、小さな小魚がいなくなるっていうことは、それを食べにきていた大きな魚もいなくなるし、生態系が今どんどん変わってきちゃっているんですね。あとは、自然の防波堤の役割もしている。サンゴがなくなってしまうと、防波堤がなくなってしまって、台風が来たときとかに、高波がどんどん押し寄せて、土地を削っていってしまうっていう現状もある。だから、サンゴっていうのはとても大事なものなんですね」

一番温暖化が見えるのは海

●サンゴの白化現象って、最近話題でよく耳にするようになったんですけど、ホワイトシンドロームっていうのもあるでしょ?

「ありますねー」

●これはまた別のものなんですよね?

「はい。これはまた別のもので、サンゴの真ん中に白線がひかれちゃうんですよ。で、そこから死んでしまうっていう現象で、これがどうして起こるのかまだ解明されていなくて、謎の病気なんですよ」

●これはもう、あちこちで起こっているんですか?

「沖縄でも見られますね。それに、ホワイトシンドロームにかかるサンゴとならないサンゴといるんですよ。テーブルサンゴとかが結構なってしまって、枝サンゴは大丈夫とか。病原菌があるらしいんだけど、海の中だから波に漂ってきちゃって防げないじゃないですか。薬もないしっていう。ゆっくり死んでいくのを見るしかないんですよ」

●今のところ、なす術がないんですね。

「ないんですよ」

●早く解明だけでもできると、何らかの対処もできるんでしょうけどね。東京で普通に生活していると、一見、遠いところの話のように感じてしまうでしょ。でも、私たち自身にも関わってくる問題ですよね。

「関わってきますよ。お魚が食べられなくなっちゃうかも」

●まず、食っていうところから関わってくるわけですね。

「すごく重要なところで、魚がどんどん減ってしまうんですね。今、環境が変わってきているから、環境の変化もゆっくり進んでくれたら、そこで生息している魚たちもゆっくりついていけると思うんだけど、今、急激に変わっているんですよ。やっぱり、温度がすごく上昇してしまったりとか」

●今、現状では、どの程度ダメになっちゃっているんですか?

「30年位前と比べると、今は80パーセントくらいが失われているといわれていますね」

●80パーセント!? ということは、もう20パーセントしか残っていないんですか?

「そうなんです。ある程度、10年位前にすごいエルニーニョが来たあとに、少しずつ復活しているところはあるんですよ。生命力はもともと強いので、頑張って自分たちの力で生きているサンゴもいるんですね。で、サンゴって動物なのね。で、年に1回産卵もするんですよ」

●昔、テレビで見たことあるかも!

「あるでしょ!? これを見たらすごく感動しますから。満月の夜に月明かりの中で産卵をするんですよ。小さいピンクのつぶつぶがいっせいにサンゴの体からパーンって出るんですよ」

●直に見られたことはあるんですか?

「もちろん! 夜、月明かりの中、ライトを持って潜るんですよ。そうすると、みんな海に潜っているでしょ。だけど、みんなの声が聞こえるの。『うぉー!』って(笑)。『うぉー! ボコボコボコ』って(笑)。みんなの歓声が海に響くくらい感動するんですよ」

●でも、それだけの産卵をしても、それが、全て生きていけるわけじゃないんですよね。

「定着しないんですねー」

●それってどれくらいの率なんですか?

「今、かなり厳しくて、やっぱり水温が上がってしまうと、サンゴって褐虫藻(かっちゅうそう)っていう藻が共生しているのね。体にその藻がくっついていて、その子は太陽で光合成することによって、サンゴに酸素だったり、栄養を供給しているの。でも、水温が30℃を超えてしまうと、その褐虫藻が『暑い暑い!』っていってサンゴの体から逃げちゃうんですよ。そうすると、サンゴは栄養をもらえなくて、死んでしまうんですよ。だからといって、サンゴ礁のところに氷を入れても無理だしね。
 だから、夏に人間が海に行って、水が温かいと『わーっ! 気持ちいい!』って遊ぶけど、サンゴや魚にとっては、1℃や2℃が何十度って感じるくらいに暑くて暑くて、たかが1℃がされど1℃で、自然界の中ではその1℃っていうのがものすごい危機を招くわけですよ。それは潜っていると実際に目で見えるので、私、生活をしていて一番温暖化が見えるのは海だと思うんですよ。サンゴが死んでいく様子も見られるし、一番最初に影響を受けるのがサンゴだったり、海じゃないかなと思いますね」

豊かな山があれば、豊かな海がある

●今は20パーセントしか残っていないという沖縄のサンゴなんですけど、アクアプラネットの活動として、さっきちょっとお話がありましたけど、サンゴを移植していらっしゃるそうですね。

養殖珊瑚
珊瑚の移植作業の様子
かごをかぶせた移植した珊瑚

「そうなんですよ。私達アクアプラネットの水槽があって、そこでサンゴを養殖しているんですよ」

●サンゴって養殖ができるんですね!

「そうなの。『えっ!?』って思うでしょ! 私達、沖縄の砂でT字のピンを焼いているんですよ。そのT字のピンの上にサンゴの親株があって、それを折ってT字のピンの上に乗せておくと、珊瑚がそのピンを包み込むように成長するんですよ。で、ある程度その水槽で育てたサンゴが大きくなったら、海に持っていって水中ドリルで穴を開けて、そこに1本1本手で移植しているんです」

●それって、まさに海の中の植林活動ですね。

「そうですね。苗木を水槽で育て、ある程度育ったらそれを植えに行くという」

●そうやって移植して植えたサンゴって、生息率はどうなんですか?

「結構、頑張って育っていますよ。私達はもう2年ちょっとやっているんだけど、最初は親指くらいなんですよ。親指の先っちょくらいの大きさが、海に戻して半年くらい経つと拳のグーくらいの大きさになるんです。で、1年経つと手のひら、パーになるんです。中にはパー2つ分くらいに成長するのもあります」

●やりがいありますねー。

「もう子供みたい。手塩にかけてね(笑)。だから、ウチの箱入り娘なんですよ」

●そんな箱入り娘が真っ白になった日には・・・。

「もう、そんなの耐えられない!(笑) その海に戻したサンゴは、しばらくオニヒトデとか、ブダイに食べられないようにちゃんとかごをかぶせてあげて、それこそ本当に箱入り娘ですよ。ある程度大きくなるまでかごで2年くらい育てて、大きくなったらそのかごを外してあげて、『あとは頑張るんだぞー!』っていう」

●2年くらいっていうことは、活動を始めて最初に移植したサンゴが箱から嫁に出すくらいな感じですね(笑)。

「そうですね(笑)。今年の5月とか6月くらいにかごを外して、要は成人式ですね(笑)」

●逞しく、美しく育っていってほしいですよね。

「そうですね。私達が植えている根があるんだけど、そこはもともとサンゴがあった岩場だったんだけど、サンゴが全くなくなってしまって、その岩場にドリルで穴を開けて移植をしているから、はげ山にポコポコっとサンゴという木が植わっていく感じなんですよ。その岩場が見えなくなるくらいサンゴで覆いつくされるのを夢見ています」

●それって大体どれくらいかかりそうなんですか?

「どれくらいかなー。10年はかからないでできるんじゃないかなってみんなで言っているんですけどね。それまでにまた大きなエルニーニョが来なければ」

●そうなると、外敵はある程度守れても、水温だけは守ってあげられないですもんね。それも、アクアプラネットのメンバーだけの努力ではどうにもできないっていう問題でしょ。そういう意味でいったら、私達が生活の中でちょっとした意識を持たない限り、どうにもならないですよね。

「そうなんですよ。使っていない部屋の電気は消すとか、朝歯を磨くときも、水を出しっぱなしにするんじゃなくて、きちんと止めてコップにお水を注いで、口をゆすぐとか、シャンプーをするときも、今まで出しっぱなしにしていたシャワーを止めるとか、ほんのちょっとのことでいいんですよ。無理せずに、毎日自分で続けられることをみんなが心がけてくれれば、もっと温暖化が止められるんじゃないかなって」

●CO2を出してしまう要因となるようなことをやるときには、「田中さんたちが植えたサンゴたちが、この一瞬で暑い思いをするかもしれない」なんて思うと、やはり意識がそっちへ向きますよね。

「そうそう! だから、携帯を充電するときも、充電が終わってもみんなコンセントを差したままじゃないですか。コンセントを差しているだけでCO2が出るんだよ! それも抜くとかね」

●今、タップ式の延長コードとかもありますからね。

「そういうのを利用して、続けてもらえたら嬉しいですね」

●今年は世界サンゴ礁年だそうですね。

「そうなんです。国際サンゴ礁年」

●私、初めて聞いた言葉だったんですけど、これにもアクアプラネットは色々関わっていらっしゃるんですか?

「そうですね。色々と協力して、これは世界各国の参加している国がみんなでサンゴの大事さだったりとか、保全のために『どうしたらいいんだろう?』っていう話し合いの年なので、色々なところでイベントがあったりとか、ダイビング・フェスティバルがあったりとか、そういうところに私達は参加して、私もトーク・ショーをやったりとか、1人でも多くの人に知ってもらえるように頑張っています」

●やっぱり知らないとね。

「分からないですからね。ダイビングをやったことないともちろん分からないし、興味を持ってもらえないから、それを私が広報活動として伝えていきたいと思っています」

●イベントももうすぐありますよね。

2007年のイベント時の集合写真

「5月にありますね。アクアプラネットで毎年やっているんですけど、移植イベントがあります。これは、ダイビングができる方限定になってしまうんですけど、ボランティアでダイバーの方を募集しているので、5月24日、25日の土日です。沖縄に遊びに来る方は、是非、来てください」

●せっかく沖縄に行くんだったらこの時期に行くと楽しいですよね。

「一緒に潜れます。で、このイベントのときは一緒に潜って移植の仕方をレクチャーして、一緒に潜って水中で私が1本1本みんなにサンゴを渡して、写真を撮ったりして(笑)、そんなイベントがあります」

●田植えイベントみたいですね(笑)。

「本当にそうですね(笑)」

●これからは、山の植林はもちろんなんですけど、海の中の山も育てる意識を持ってもらえるといいですね。海の中にも四季がありますしね。

「そうなんですよ。サンゴは二酸化炭素を吸収して、酸素を排出してくれるので、木と同じなんですよね。だから、豊かな山があれば、豊かな海があるっていう。繋がっていますからね」

●是非また、「こんな変化があったよ」とか「こんなに育ったよ」っていう報告を番組にしてくださいね。

「是非、また遊びに来ます。15年後とか言わずにね(笑)」

●15年後くらいになると、私も「あれ? どなたでしたっけ?」ってなっているかもしれないので(笑)、もうちょっと早いうちに是非、来ていただきたいと思います。

「もし、よかったら沖縄に来ていただいてもいいですしね。沖縄で収録とかね!? ほら、向こうでスタッフがみんなうなずいている(笑)」

●では、次回はできれば沖縄で波の音を聞きながら・・・。

「いやぁ、最高最高! 泡盛でも飲みながらね!(笑)」

●いいですねー!(笑) 今日はどうもありがとうございました。

AMY'S MONOLOGUE~エイミーのひと言~

 地球温暖化の影響で水温があがっていることで苦しんでいるサンゴ。それに加え、大敵のオニヒトデやブダイも温暖化によってその数が増えサンゴを更に苦しめている。田中さんの話では、海に潜っているときブダイがゴリゴリと音を立ててサンゴを食べているのが聞こえることもあるそうです。すべての生きものを苦しめている温暖化を止められるのは、その原因を作っている私たち人間。皆さんも温暖化防止のために、ぜひ今日から行動してくださいね。
 それにしても田中さんに15年前初めて番組に出演していただいたときには、正直言ってまさかNPO法人の会長となってサンゴの再生活動をするようになるとは思ってもみませんでした(笑)。

このページのトップへ

NPO法人アクアプラネット情報

 女優の田中律子さんが会長を務めるNPO法人アクアプラネットは、サンゴ礁の保護/再生活動を行なっている団体。危機的状況にあるサンゴ礁を守るために、様々なイベントも開催しているので、ぜひご参加下さい。

サンゴ礁再生イベント
 水槽で養殖したサンゴを移植するイベント。
日程:5月24日(土)~25日(日)
場所:沖縄本島の北谷
資格:スキューバダイビングのライセンスを持っている人
参加費:1万5,750円(タンク代やボート代を含む)
   ただし、現地集合・現地解散なので、交通費や宿泊費は別途負担
定員:30名

会員募集中!
 ダイビングの資格は持っていないけど、ぜひ支援したいという方はぜひ、アクアプラネットの会員になって下さい。
費用:個人会員で、入会金1,000円、会費1,000円

 また「アクアプラネット」が扱うTシャツを購入すると、その代金の一部がサンゴの移植活動に役立てられる「自然に恩返し代行」というシステムもあり、協力すると購入した方の名前のプレートと移植したサンゴの写真が「海からの感謝状」となって届くことになっています。

「NPO法人アクアプラネット」のHPhttp://www.aqua-planet.org/

このページのトップへ

オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. I LOVE YOUR SMILE / SHANICE

M2. 踊ろよ、フィッシュ / 山下達郎

M3. BIGGEST PART OF ME / AMBROSIA

油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M4. HANDLE WITH CARE / TRAVELING WILBURYS

M5. LONGER / DAN FOGELBERG

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M6. やさしさに包まれたなら / 荒井由実

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
このページのトップへ

新着情報へ  今週のゲストトークへ  今までのゲストトーク・リストへ  イベント情報へ
今後の放送予定へ  地球の雑学へ  リンク集へ  ジジクリ写真館へ 

番組へのご意見・ご感想をメールでお寄せください。お待ちしています。

Copyright © UNITED PROJECTS LTD. All Rights Reserved.
photos Copyright © 1992-2010 Kenji Kurihara All Rights Reserved.