2009年11月29日
“おいしい”をキッカケにたどり着いた転職先は八百屋さん ~OLから八百屋さんに転身した矢嶋文子さんをゲストに迎えて~
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは、矢嶋文子さんです。
OLから八百屋さんに転身した、矢嶋文子(やじま・あやこ)さんを都内のお店に訪ね、八百屋さんになったわけや旬な野菜の販売のみならず、調理法まで紹介するこだわりに迫ります。
“おいしい”と感じるものは、体が欲しているもの
●矢嶋さん、はじめまして、今日はよろしくお願いします。私たちは今、東京都新宿区の山伏町、大窪通り沿いにあるお店、「瑞花(すいか)」に来ています。営業を終えたばかりの矢嶋さんにお話をうかがっていきたいと思いますが、私たちの周りには活き活きとした色とりどりの野菜たちが並んでいます。そもそも矢嶋さんはどうしてOLから八百屋さんに転身なさったんですか?
「今、自分に出来ることっていうのが八百屋というか、食材を売ることだったんですね。で、食べ物は体とか心を作っていくってことを考えたときに、当初、教室とかレストランっていうことも考えてはいたんですけど、教室をするにはまだ知識が足りないし、レストランを始めるには調理技術が足りないし、でもとにかく何か始めたいと思っていて、そんなときに『食材を売ることだったら出来るかなぁ』と思って、半ば強引に始めたのがキッカケです(笑)」
●(笑)。この「瑞花」というお店は今年の8月に出来たばかりだそうですね。
「はい。8月20日にオープンしたので、まだ3ヶ月経っていないんです。」
●ついにオープンした「瑞花」、「レストランをやるには知識が足りなくて・・・」と先ほどおっしゃっていましたが、実際、食べ物を売るのも相当大変なんじゃないですか?
「そうですね。八百屋をやるにあたって資格が必要ということはないんですが、やっぱり野菜を知らないことには仕事が出来ないので、たまたま紹介していただいて、私の師匠でもある築地・御厨(ミクリヤ)の内田悟さんのところに弟子入りをするような形で、2年弱くらい、毎朝3時から行って、同じ仕事をさせてもらって、その中で内田さんは『まず野菜のうんちくはいいので、触って食べろ』と言われて、自分で触ったり、五感で感じていくと、季節の移り変わりとかをものすごく感じるようになったんですね。そうすると、1年を通して四季とか季節が移り変わっていくということを、ものすごく分かるようになってきて、人間も同じように季節の中で暮らしているんだってことが分かってきたんですね。」
●季節の移り変わりって具体的にどう分かるようになったんですか?
「風の匂いだったり、当然、お野菜も季節によって変わっていきますよね。今、このお店にはキュウリとかピーマンっていうのは夏野菜なので、一切、置いていないんですよ。そうやって、夏には夏のお野菜を食べる理由があったりとか、冬には冬の野菜を食べる理由があるわけで、そういうのを食べていると、体がそういうのをだんだん分かるようになってくるんですね。体が欲するものが変わっていくっていうんでしょうかね。そうすると、季節の移り変わりって言えるのかなって思いますね。」
●ちなみにこのお店を開く前、OLさんをやっていた頃っていうのは、食に気を使っているほうだったんですか?
「いえ、全くです(笑)。食べたいものを食べるという感じで、OLをやっていたりすると、仕事の終わる時間も遅かったりするので、『帰り、一杯やっていこうよ』とか大好きで(笑)、不摂生な生活をしていたんですけど、私が働いていたのが、教育業界にいたこともあって、子供の様子を見ていたというのもありますし、通勤の中で皆さん疲れた様子で、ぐったりして電車に乗られているのが非常に印象に残っていて、そのときは何も知らないので『みんな、おいしいもの食べていないんだな』って単純に思っていたんですね(笑)。でも、色々調べていくと、おいしいものを食べるというのが、とても大切なことなんだっていうのに気がついて、おいしいって体が感じるものって、実は体が欲しているものだったりするんですね。そうすると、おいしいものを食べていくと体の調子が整っていくので、自分がこれからやっていくにあたって、“おいしい”がキーワードになったら、みんな受け入れやすいし、その裏には“実は体に良くて・・・”っていう裏付けができるんじゃないかと思って、色々勉強し始めると、本当にそれでよかったんだってことが分かってきたんですね。」
野菜の性質を活かすことが、おいしくいただくコツ
●ホームページとかチラシなんかで、お野菜のうんちくとかはもちろんなんですけど、おいしい食べ方とか、色々と載っているじゃないですか。中でも気になったのが、もちろん自然栽培のちゃんとしたものを食べられればベストなんでしょうけど、普段、スーパーとかで買ってしまっている野菜たちが、「ちょっと大丈夫かな!?」って気になったときに、農薬を落とす方法なんかも書かれているじゃないですか? ここでいくつかご紹介していただけますか?
「はい。まず、一番簡単なのは、水洗いをするということですね。あと、気になる方は1パーセントくらいの塩水に5分くらい浸けていただくと、かなり軽減されるということと、キャベツや白菜なんかは周りの葉っぱにしかついてないので、何枚かとっていただくとかなり軽減できます。」
●塩水はどんな野菜でも大丈夫な方法なんですか?
「もちろん、葉物野菜なんかを入れてしまうと、あまりよくないんですけど、例えば、トマトとかナスでしたら、しばらく浸けておいても大丈夫です。」
●矢嶋さんの師匠の内田さんが出されている本をチラッと見たんですけど、例えば、季節によって同じ大根でも切り方が違うって見出しがあって、「なんだとー!?」って思ったんですけど(笑)、実際やっぱり違うんですか?
「はい。全然違いますね。今日も試しにニンジンとかで縦に切ってみるのと、輪切りで切るのとで食べ比べてみると、味が全然違うのがお分かりいただけると思います。季節によって、例えば、ナスなら7月の出始めのナスは皮が柔らかくて、しっとりとしているので、縦に切ったほうがおいしいですし、今の時期の名残のナスっていうのは、皮が厚く張っているので、横に切って召し上がっていただいたほうが味わいがとってもいいですね。」
●スイカなんかも、シマシマになっている黒い部分の太さは、太陽の当たり方によって違うから、真っ二つに割るのではなく、それに沿って切ったほうが甘さが統一するって話を聞いたことがあるんですね。本来だったら食材っていうのは、包丁だと人の勝手で切ってしまうから、本当は手で割くような切り方をしたほうが、野菜自身の「ここで切られたい」ってところで切れるんだよってお話をうかがったことがあって、それ以来、手でちぎれるものはなるべくそのようにしているんですけど、やっぱりそういうところが野菜の主張というか、おいしく食べるコツでもあるんでしょうか?
「そうですね。彼ら野菜も人間に食べられるために生きているわけではなくて(笑)、自分達の身を守るために生きているので、そういう性質をうまく活かしてあげるということが、逆にこちらが味わいよくいただけるというところはあると思います。」
この時期オススメの野菜、調理法は?
●師走も近づき、今、そして、これからの時期、おいしいお野菜っていうのがあると思うんですけど、そのお野菜とおいしい食べ方をご紹介いただけますか?
「これから寒くなってきて、当然、お鍋が恋しくなる季節ですので、白菜、ネギは外せないですよね。あと、通年ありそうで冬野菜っていうのがキャベツだったり、ブロッコリー、カリフラワー、あとホウレン草も冬野菜に入りますし、レンコンなんかもそうですね。オススメの食べ方というと、やっぱり寒くて体を温めていただきたいので、ニンニクとかショウガを使って煮込み料理だったりとか、ポトフのようなスープもとてもおいしいと思いますので、そういった形でスープと一緒に召し上がっていただくようなスタイルがいいかと思います。」
●野菜を摂るっていうと、一般的にはサラダが思い浮かびますが、イメージ的にはキュウリだったり、夏野菜を使ったものが多い気がするんですが・・・。
「そうですね。ただ、真冬に生野菜を食べると体が冷えてしまいがちになるので、できるだけオススメしているのは火を入れて、くたくたに煮たくらいのお野菜を召し上がっていただきたいなと思いますね。なので、ラタトゥイユとか筑前煮みたいなものをできるだけオススメしています。」
●おいしいですもんねー。「瑞花」さんのお野菜を拝見していても、ニンジンも大根も葉ごと並んでいて、抜いてそのままって感じの見事なお野菜が並んでいます。スーパーや普通の八百屋さんなんかでは葉っぱは落としてしまっているので、葉のおいしい食べ方だったり使い方っていうのが分からないと思うんですが、葉っぱの部分も当然無駄なく食べられるんですもんね。
「もちろんです。なので、分からないものに関しては、なるべくアドバイスをさせていただいていて、ただ、葉つきのニンジンなんかは、『葉っぱと主根(オレンジの部分)と合わせて天ぷらにしたら彩りもキレイですし、一緒に召し上がっていただけますよ』とか、あとは葉っぱの部分だけをショウガとお醤油でよく炒めていただいて、それをご飯に混ぜて菜飯みたいにして召し上がっていただくとすごくおいしいので、オススメしています。」
●お腹すいてきちゃったー!(笑)
「そうですねー!(笑) あと、白飯があればね(笑)」
●本当ですねー(笑)。おいしいご飯があって、おかずがあって、冬場は火が通ったお野菜をいただけば、もうお肉はいらないなぁって思ってしまうくらいですね。
「そうですね。この世界に入って私、大分お肉とか魚の量が減ってきたように思います。」
●お肉が減って和食に寄ったのではなくて、野菜が中心になったんですね。
「はい。私はベジタリアンではないので、何でも食べたい人なんですけど(笑)、自分で食事を整えるときにはお肉が一品あればいいかなっていう程度で、あと、お野菜からものすごくダシが出るので、お味噌汁なんかもかつお・昆布だしも引かずに、根菜とかを何種類か入れてゆっくり煮出してあげて、あとお水を入れるだけとか。」
●それで十分だしが出るんですか?
「十分出ます。くたくたに柔らかくなるまでゆっくり煮出してあげると、お野菜のエキスがじわーっと出てきて・・・。」
●せっかちに強火でやっちゃうとダメですよね?
「『暑い暑い!』ってお野菜が縮こまってしまうので、人間もぬるま湯にじわーっと浸かると伸びてくるように(笑)、多分、彼らもそういう気分なんじゃないかなと思って、いつも火を入れているんです(笑)」
●そっか!(笑) 自分と同じだと思えば、そういう扱いをそれぞれの食材にしてあげると、それぞれが活きてくる・・・。
「いい役割をしてくれますね。」
体が欲しているものを食べてあげることが大事
●こちらのお店「瑞花」は真っ白なお店で、お店としてはそんなに広くないんですけど、それぞれのお野菜がギャラリーに来たかのように整然とも雑然ともいえる感じで、居心地よさそうに並んでいて、私たちはその真ん中に座ってお話をうかがっているんですが、落ち着いちゃいますね。
「そうですね。みなさん、ここへ来ると、解放されるのか分からないんですが、たくさんお話いただいて帰られる方が多いですね。でも逆にお野菜に関しては私、色々見てきたので、そういったことをお伝えできるんですけど、生活の知恵とか、『これってこういうふうに食べたらおいしかったわよ』ってお話をいただくことで、自分の勉強にもなっているので、本当にお店を開いてよかったなぁって思っています。」
●最近、言葉ではよく「食育」とか聞きますけど、まだ浸透しきれていない部分ってたくさんあると思うんですね。特にお野菜などは旬のものを食べるっていうのが、一番大事と言えるんでしょうかね。
「そうですね。あとは、自分が食べたいもの、これは体が欲しているなっていうものを食べてあげることが一番大事なのかなと思っています。」
●あまりストレスを溜めないように、例えば「ケーキが食べたい」と思ったら、糖分を欲しているということで、無茶食いさえしなければOKと(笑)。今年の8月にオープンしたばかりということで、まだまだ矢嶋さんご自身ももっとこうしていきたいとかってあると思うんですけど、最終的にこの「瑞花」っていうお店をどのようにしたいと考えていらっしゃいますか?
「ここはこれだけの広さしかないので、出来ることというのは限られていると思うんですね。なので、今、来ていただいているお客様をまず大事にするということと、それから、もっとOLさんとか、小さなお子さんをお持ちのお母さん達に来ていただいて、コミュニケーションの場にしていきたいなと思っています。」
●これから、季節毎に「瑞花」に訪れて、季節ごとの旬なお野菜を見て、いただいて、体が春夏秋冬の体になるよう、私も時折、お邪魔したいなと思っています。
「お待ちしています。」
●今日はどうもありがとうございました。
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