2009年12月13日
レコーディングで訪れたアイスランドで学んだ「もてなしの心」 ~女優/シンガーの原田知世さんを迎えて~
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは、原田知世さんです。
女優/シンガーの原田知世さんをお迎えし、新作『eyia(エイヤ)』をレコーディングした、アイスランドの気候風土や人々のお話をうかがいます。
アイスランドのアットホームな雰囲気の中でのレコーディング
●10月にリリースされた新作『eyia(エイヤ)』なんですが、“エイヤ”というのはアイスランド語ですか?
「はい。アイスランド語で“島”という意味です。」
●レコーディングもアイスランドで行なわれたそうですね。
「そうです。日本をベースにアイスランドへも行って、ふたつの島国でレコーディングをしたということで『エイヤ』というタイトルにしました。」
●アイスランドって私の中のイメージだと、火山だったり、すごく寒いとか、音楽だったらBjorkというくらいのイメージしか浮かばないんですけど、どんなところなんですか?
「グリーンランドとイギリスの間くらいの位置にあって、人口が30万人くらいと聞いています。そして、国の大きさは北海道と四国を足したくらいの大きさです。」
●そんなに大きくないんですね。
「それで音楽は私も、Bjork、SIGUR ROS、mumとか、ほかにもたくさん素敵なアーティストがうまれている国ですね。あと、気候は『アイスランド』という名前なんですけど、それほど寒くないらしいんです。私が今回、レコーディングで行ったのは夏だったんですけど、冬は零下になることがあまりなくて、凍らない湖とかもあって、冬に行くとオーロラが見えるんですけど、空と湖に写った両方が見られて、とてもロマンティックなオーロラが見られる場所だと聞いています。」
●今回なぜ、アイスランドでレコーディングされたんですか?
「先ほど挙げたSIGUR ROSとか、mumが作る音楽が独特で、言葉では形容しがたい美しい音楽だと思って、他の北欧とも違いますし、アメリカやイギリス、ヨーロッパとも違う、独特の世界観、空気感を音楽から感じていて、彼らの音楽が生まれた国はどういうところなんだろう、どういう感じでレコーディングしているんだろうって興味があって、それに惹かれて行ったという感じです。」
●実際に行かれてみてどうでしたか? 日本でのレコーディングとアイスランドでのレコーディングの違いって感じましたか?
「アイスランドはレイキャビックという首都でレコーディングしたんですけど、小さな町でみんながつながっているというか、大体が知り合いっていう感じなんですね。で、ミュージシャンの方たちもつながっていて、私たちが行ったのは、Bjorkの音作りもしているヴァルゲイル・シグルドソンさんっていう方に今回、曲をお願いして、彼のスタジオでレコーディングをしたわけなんですけど、彼の呼びかけで色々なアーティストの方が来てくれて、とてもアットホームな雰囲気でレコーディングしました。ハウス・スタジオだったんですけど、静かな住宅街の中にある一軒家で、外から見るとスタジオとは思えないような場所で、そこでみんなでレコーディングをしながらとても楽しい時を過ごせました。
食事も日本だとどこかから店屋物とかなりますけど、スタジオのアシスタントの男の子が毎日手作りで作ってくれて、それを全員でいただきました。そういう時間もあったので、レコーディング自体は短かったんですけど、とても親しみが湧いて、早く仲良くなれたし、楽しかったですね。」
●合宿みたいですね!
「そうですね。ホテルは別なんですけど、そこにいる時間が長かったので、仲良くレコーディングができました。」
(放送ではここで、原田知世さんのアルバム『eyia』から「FINE」という曲を聴いていただきました)
アイスランドは特別なエネルギーがある場所
●アイスランドでのレコーディングは期間的にはどれくらいの長さだったんですか?
「レコーディングとプロモーション・ビデオ、そしてジャケットの撮影で2週間です。」
●旅先での2週間で、レコーディングだったり撮影があると、あっという間ですよね。
「あっという間ですね。しかも今回、夏で白夜だったんです。だから、撮影は延々できるんですね。ちょっとモリモリ仕事をして帰ってきたような感じです(笑)」
●(笑)。北欧の人にお話をうかがうと、「白夜の時期っていうのは、普通だったら暗くなったら眠くなるって体内時計も働くんだけど、だんだん体内時計が働かなくなってきちゃって、好きなときに寝るしかないんだ」って聞いたことがあるんですね。「だから、やろうと思ったら好きなだけできちゃうから、ちょっと危険な部分もあるんだよね」って笑いながらおっしゃっていたんですね。
「私たちもそうでした。夜も完全にカーテンを閉め切って、自分で夜を作らないと眠れないんですね。興奮状態というか、日がまだ明るいから『頑張ろう!』ってなっちゃうみたいで、不思議なものだなぁと思いましたね。しかも、撮影するに当たって光がいい時間、夕陽の手前くらいって光が柔らかくて撮影をするにはいい時間なんですね。それを撮影しようとすると、夜中の12時くらいとかになっちゃうので・・・(笑)」
●感覚的に全然、夕陽じゃないですよね(笑)。
「夕陽じゃないんですよ(笑)。もう寝なきゃいけないんですけどっていう中で撮影したりしたので、夜型になってしまいましたね。」
●今回の新作『eyia』のジャケット写真やブックレットの写真を拝見していると、本当に不思議な世界なんだなって感じました。色合いもそうですし、きっと空気感なんだと思うんですけど、原田さんが妖精のように見えたりとか・・・。
「ありがとうございます。凍えていますね(笑)」
●(笑)。このまま気をつけていないと消えちゃうんじゃないかってくらいに溶け込んでいるんですけど、それも行った場所の雰囲気に合わせようっていうのはあったんですか?
「これは不思議なんですけど、多分、誰が行っても自然と浄化される場所だと思うんです。頭で考えて、こうっていうのではなくて、いってここの自然の中で呼吸をしているだけで、デトックスではないですけど、そういうことが行なわれている気がしました。そういう特別なエネルギーがある場所じゃないかなぁと思います。」
●それは、今回のニュー・アルバムを聴いていると、そのままの空気感が・・・。
「影響はあると思いますね。」
●サウンド的にもそうなんですけど、原田さんの歌い方といい、声といい、まさにふぅっと落ち着くような感じがしました。
「そう言っていただくとすごく嬉しいです。私も最終的にアイスランドのミュージシャンの人たちと日本の方と、『この曲は完全にアイスランド』とかって分けていなくて、日本で録ってきたベーシックなものに、アイスランドで録ってきた音を被せていくとか、細かく編み込むように作ったんですね。で、それがうまく編み込めるのかどうかっていうのは、みんなハッキリとは分からなかったんですね。でも、重ねていくうちに自然に新しい音楽ができたという感じなんです。不思議なのは、ヘッドフォンで聴くと心の内側の世界に入っていく気がするし、あとは生活の中でBGMとしてかけていると、それはそれで生活の一部として活きてくれるっていう、今回のアルバムがそういう音作りになったっていうことがとても嬉しいですね。なので、聴いてくださる方には朝でも夜でも、自分がいいなって思うときに聴いていただけたら嬉しいです。」
●今回のアルバムでは詞のほうも書かれていらっしゃって、アイスランドに行ったからこそ生まれた詞とかってありますか?
「ほとんどが日本で書いていって、日本からアイスランドを思いながら書いた曲もありますし、自分の日常を書いたものもあります。ただ、1曲だけヴァルゲイルさんに書いてもらった曲が、どうしても日本では書けなかったんです。で、『これはアイスランドに行って、アイスランドで何か生まれるのを待とう』と思って行って、向こうの景色を見たり、白夜の中で色々な思いが浮かんできて、最後に『MARMALADE』という曲が完成したので、この曲だけがアイスランド産です。」
(放送ではここで、原田知世さんのアルバム『eyia』から「MARMALADE」という曲を聴いていただきました)
アイスランドの人たちにもてなしの心を教えてもらった
●ニュー・アルバム『eyia』の中の写真を拝見していると、原田さんが世界最大の露天風呂といわれている「ブルーラグーン」に入っている気持ちよさそうな写真なんかもあるんですけど、実際どうでしたか?
「あんなに大きな温泉に入ったのは初めてした。地熱発電所で使い終わった温泉水を前はそのまま流していて、いつの間にか大きな池ができていて、それを再利用できないかということで作られたのがブルーラグーンという温泉なんですね。溶岩の大地の中に突然ミルキー・ブルーの温泉があって、日本の人からするとちょっと温めなんですけど、延々入っていられるような感じで、アイスランドの方々がたくさん入っていて、飲み物とかも中で飲めたりして本当に天国です。冬はそこからオーロラが見えるらしいんです。温泉に浸かりながらオーロラが見れるなんて、いつか冬にまた行きたいですね。」
●今回が夏でしたから、下見ということで。次回は自分が使っている温泉にも反射するオーロラが見られるかもしれないんですね。
「見たいですね!」
●上下にオーロラがあったら、自分がオーロラの中にいるような感覚ですね!
「本当の自然に包まれる感覚がブルーラグーンでは味わえますね。」
●あちこちに行かれていると思うんですけど、例えば、同じ島という意味では日本とアイスランドを比べて、日本にも素晴らしい自然がたくさん残っていると思うんですけど、質が違うっていうか、比較にならないって感じなんでしょうか?
「そうですね。中心地のレイキャビックから10~15分車で行っただけで、手付かずの自然に触れることができるっていうのは、豊かだなぁと思いましたし、私は2週間しかいられなかったので、本当はもう少し足を伸ばせば氷河に触れられたり、本当の自然に触れられる場所がたくさんあるから、本の一部しか触れられていないと思うんですね。だから、次回はトレッキングをしたり、色々なことをしたいなと思います。」
●人はどうでしたか?
「人は本当に優しいです。こんなにいい人達ばかりがいるなんてって感動しました。親切です。だから、アルバム作りには本当にたくさんの方に力を貸していただきました。プロモーション・ビデオは20人近いエキストラの方が必要で、現地に行ってから探そうということでとりあえず行ってみたんですね。で、それぞれ向こうで知り合った人達に紹介してもらったり、町でカワイイ人や『あの人いいな』って人に声をかけて、撮影班の人達が例えばスーパーで働いていた、すごくイケメンの男の子に話をして、『実は日本から来ていて、何曜日に撮影をやるんだけど・・・』って説明をして、『よかったら何時にここへ来て』って言って、みんなに声をかけたんですね。で、本当に全員来るかなぁって思っていたら、その時間に全員が来てくださって、それには感動しましたね。日本ではこういうことはなかなかないですよね。見ず知らずの人に頼まれて、仕事を抜けて来てくれた人もいたりして、なんて温かいんだろうって。だから、日本に帰って、もし旅人に出会ったら絶対、親切にしようって、もてなしの心を教えてもらいました。」
●聞いた話では、ヴァイキングの教えの本「ハヴァマール」があるそうですね。
「小さな子供まで読んでいる本らしいんですね。そこに書かれているのが、外から来る人へのおもてなしの心。昔は訪ねてくる人もものすごく遠くから来たりするから、自然と『中に入ってくれ』って言いながらスープを飲んでもらったりっていうのが自然に行なわれていたことで、彼らからすると当たり前のことが書かれているらしいんですけど、小さな子供にもそれは脈々とヴァイキングの血が流れているって聞きました。」
ライヴでは新たなアレンジで臨みます
●今回、アイスランドと日本という2つの島国でレコーディングされた、“島”という意味の新作『eyia』が発売されました。アイスランドも日本も自然が豊かですけど、今、環境問題とか色々騒がれているじゃないですか。そんな中でエコとか、ロハスという言葉も身近になってきているじゃないですか。原田さんご自身、気をつけていらっしゃることとかってありますか?
「自然にやさしい洗剤に変えたり、できるだけ部屋の温度を調節して、1℃でも2℃でも下げたりして、夏だったり温度を下げすぎないとか、あとは電気をできるだけ使わないようにとか、できることからやっています。」
●1人1人がちょっとしたことをやるだけで確実に変わっていきますからね。
「みんながやれば大きく変わると思っているので、大きなことはできないけど、そういうことは心がけていきたいと思っています。」
●ニュー・アルバムは10月にリリースされたわけですけど、来年はライヴ・ツアーもスタートしますね。
「はい。2月から4月までやります。」
●もうその準備は始まっているんですか?
「そうですね。そろそろ選曲を始めています。この『eyia』っていうタイトルがライヴのツアーにもついていて、アルバム『eyia』が中心となるわけですが、アルバムとは違う音、ライヴならではの『eyia』を作れたらいいなと考えて、アレンジも含めて、また新鮮な気持ちでできたらなと思っているので、アルバムを聴いてくださった方が『あ、こういうふうになったの!』って変化を楽しんでもらえたらいいですね。」
●関東では4月に東京で行なわれるということで私も楽しみにしています。それまでにアルバムをもっと聴きこんでおきます。今日はありがとうございました。
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