2009年12月20日
農業をキッカケに大人とギャル達の架け橋的存在に
~元ギャル社長・藤田志穂さんをゲストに迎えて~
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは、藤田志穂さんです。
元ギャル社長の藤田志穂さんは「ギャルのイメージをよくしたい」という思いで“ギャル革命”を掲げ、2005年4月に、19歳でマーケティングの会社を設立し、「渋谷のギャルが会社を始めた」ということで話題を呼びました。
そんな藤田さんは、2008年12月に社長を退任し、現在は農業に挑戦中。そんな、お米や野菜を生産し、販売する“ノギャル・プロジェクト”のことや、農作業体験のお話などうかがいます。
『ノギャル・プロジェクト』とは?
●はじめまして、よろしくお願いします。早速、“ノギャル・プロジェクト”についてお聞きしたいのですが、「ノギャル」は「農業をするギャル」ということですか?
「そうですね。『農業をするギャル』ということで、『ノギャル』って言われます。」
●きっかけとかコンセプトとかってなんだったんですか?
「元々、私が農業をやりたいなって思っていたのもあるのですが、若い人達に農業とか食とか、そういう部分に興味をもってもらって、考えてもらえるようなきっかけを作りたいなっていうところからだったんですね。
それをまず考えようって思ったのも、元々は19歳の時に“ギャルでもできる”ということを証明したくて会社を起こして、4年間やってきたんですね。で、会社を始めた当初から環境やエコの活動をして、さらに食育という話も聞いていたんですけど、軽くしか聞いていなかったんですね。でも、次第にニュースなどで原産地の問題や、食料自給率の問題などを聞くようになって、若い人の農業離れが問題のひとつで、高齢化が進んでいるから、作業自体が大変になって、畑とか田んぼとか放置せざるをえないという話も聞いていたんですね。
実は私のおじいちゃんも農業をやっていて、新潟でコシヒカリを作っていたんですね。で、私が中学生の時におじいちゃんが亡くなってしまって、それからずっと放置で、『それってさみしいな』って思っていた現状と一緒だと思って、『どうにかして変わらないかな?』って考えてみたんです。それで、新潟の方に聞いてみたら、私のおじいちゃんの田んぼは知り合いに貸しているって聞いて、『あ、そういう使い方もあるんだ』って知って単純に嬉しくなって、『高齢化が進んでいるなら、若い人たちが作業を手伝ったりできれば、なにか変わるんじゃないか?』って思って、そこから、若い人たちに農業や食に関して、考えてもらえるようなきっかけを作ろうって思ったところから始めましたね。」
●実際にお米作りから始めたわけですが、場所はおじいちゃんが米を作っていた新潟ではなく、秋田だそうですが、どうして秋田にしたんですか?
「そうですよね(笑)。結構、新潟の方や周りの人からビックリされるんですよ。私が最初、農業をやりたいって思ったときに、勉強してから始めたわけではなく、ゼロから始めるということで、色々な農家さんからお問い合わせをいただいて、『何か出来ないかな?』とか『うちはこういうのがおいしい』みたいな話を聞いたんですけど、どこでやればいいのか、何をすればいいのかが分からなかったんですね。そのときに秋田の方からのお問い合わせの中で、『藤田さん、渋谷のハチ公って出身地が秋田だって知っていました?』っていうお話をいただいて、ビックリしたんですね。私の活動の中心は渋谷なんですけど、あのハチ公が秋田犬だということを知らなくて、『むしろ柴犬かな?』って思っていたんですけど(笑)、秋田犬だと聞いて、せっかく若い人たちに興味をもってもらえるようなことをやるのであれば、こういうキッカケって大切かなって思ったんですね。
で、『秋田で何かしよう』って思って、何をするかってなったときに、秋田はお米で有名だし、あとはこれだけ食料自給率が問題だって言われているのに、お米は無駄にしている部分が多かったり、若い人たちがお米離れしているのが問題になっているって聞いて、『じゃあ、お米を秋田で作りましょう』ってなりました。」
●こう言ってはなんですが、渋谷のギャルたちがキチッとメイクをして、「こんちは!」みたいな感じで秋田に行っても、周りの農家さんたちはお仕事でやられてる方たちですから、「どうなんだろう、お前たち」って冷ややかな目をたくさん浴びたと思うんですけど、どうだったんですか?
「まず最初に私が農業を体験したいって言ったときにも、やっぱり『農業をナメるなよ』とか『そんなに甘くないぞ』とか、色々な意見をいただいたんですね。で、実際それを聞いたら落ち込むし、どうしようって思ったけど、でも言われて当たり前かなって思ったんです。確かに私は何も分からないけど、若い人達に伝えたいという気持ちがあったので、分からないからこそ、同じような目線で伝えられることが出来るんじゃないのかなって思って、そこは割り切ってやりました。で、今、一緒にやっている秋田県の大潟村の農家さんも、最初は周りの農家さん達から『大丈夫か?』みたいなことを言われていたみたいなんですね。やっぱりずっと農業をやられていた方からしてみたら、いきなり何日間でまともに農作業できるかっていってもできないし、私自身分からないこともあるけど、逆に言えば、高齢化が進んでいて作業が大変なのであれば、その作業を手伝うことも出来たりすると思うんですよね。本当に今もそうですけど、勉強させてもらいながらやらせていただいてますね。」
農業はエクササイズになる!
●今、若い人達の中で農業に興味をもっている人が少しずつ増えていると思うんですけど、農作業ってすごく大変じゃないですか?
「実際は大変なこともあるんですけど、予想以上に面白いこともあるなっていうのは感じましたね。やっぱり話だけ聞いていると、汚いとかつらいとか大変とか苦しいとか、そういうネガティヴなイメージばかりが表立って出ているような感じがするんですけど、それ以上に農業っていう仕事は、やりがいを感じられたり、達成感がすごくあるので、そういうポジティヴな部分が出ていけばいいのにってすごく思うんですね。やっぱり、いきなり20キロ、30キロの肥料を持たされたのにはビックリしたし、鍬(くわ)を持って作業しただけなのに、次の日『えっ!? こんなところに筋肉あるの?』みたいな背中のよく分からないところが痛くなったりとか(笑)、実際のところすごく大変だったんですけど、それでも徐々に慣れていったときの嬉しさだったりとか、実際に作った食べ物がうまくできたときにはやっぱり嬉しいですね。それは農業を始めるまでは想像もつかなかったような嬉しさでした。」
●今回は苗を育てるところから始まって、草むしりをしたり、トラクターも使いこなしていたそうですね。
「何度か突っ込みそうなときはありましたけど(笑)」
●(笑)。で、この「シブヤ米」と名付けられたお米なんですけど、特徴を教えていただけますか?
「元々『シブヤ米』の品種自体が“あきたこまち”という品種で、このお米は粘り気が強くて甘みが強いですね。例えば、おにぎりにして冷めたとしても、バラバラにならなくて、おいしくいただけるんですね。あとシブヤ米を作る上で、やっぱり安全に安心して食べてほしいということもあって、シブヤ米自体が特別栽培米で、化学肥料を50パーセント以下に減らしていたり、できる限り減農薬をやったり、田んぼの周りに虫が嫌う香りを出すハーブを植えて、できる限り薬を使わなくても虫が寄らないようにっていうことをやったりしています。」
●化学肥料を使わない方が逆にすごく大変なんじゃないですか?
「確かにそっちの方が大変ですね。やっぱりいつ病気になるか分からないし、お米だったらお米にとって流行る病気とかも毎年違うんですよね。『今年はこういう症状が多かった』とかもあるみたいなんですよ。それを薬で止めるっていうのもあると思うんですけど、それが自分に返ってくるって考えたら、うーんって思うんですよね。」
●今回、田植えにはギャル達に募集をかけて、たくさんの人が参加してくれたそうですけど、実は、藤田さんは『ギャル農業』という本を出されていて、この本を読ませていただくと、「農業エクササイズ最高!」っていう声もあったりして、確かに考えてみればすごくいいエクササイズだよなって思うんですけど、どうでしたか?
「ある意味、ポジティヴな部分なんですけど、例えば、すごくつらい種まきのときに、1枚1枚トレイを運んだりするのも1枚5キロとかで、それを2枚持ったり、しゃがんだり立ったりすると、最初はやっぱり重いし、疲れたっていうのもあるんですけど、『これはダイエットだ』と思うと、頑張れるみたいな感じですね。」
●女子ってそういうところありますよね(笑)。
「みんなそういう風に思ってやっていますね(笑)。メンズの場合も『これは筋トレだ』と考えればいいかと思います。」
●そうか! 筋トレね!
「そういう風に思ってもらえれば、全然いいんじゃないのかなと思います。」
●ましてや女子が頑張ってるのに、男子が音を上げるっていうのはちょっとどうなのっていうのもありますからね(笑)。
「もしかしたら体験している間に、女の子の荷物をちょっと持ってくれたら、そこでカッコいいってなるかもしれないですしね(笑)」
●そうですよね!(笑) 今、流行りの婚活にも繋がるかもしれないですね。
ギャルは“作業着”にもこだわる
●藤田さんのご本『ギャル農業』を読んでいて、そして写真を見て、プッと笑っちゃったんですけど、ファッションがカワイイ!(笑)
「ありがとうございます(笑)」
●農作業ファッションとはいえないですよね!(笑)
「これから海にでも行くのかなって思うような子もいたりとかしますからね(笑)」
●花柄の長靴に、カットソーのジーパンにっていう風に、本当に梅雨時の渋谷のファッションみたいな感じですよね。
「一応、長靴がないといけないよっていう話をすると、みんな買ってくるんですけど、みんな柄物とかピンクとか、そういう長靴を買ってくるんですよね。」
●やっぱり「ノギャル・プロジェクト」では、農作業のときでも本気でオシャレをするっていうのはポリシーなんですか?
「ただでさえ、ギャルたちにとって農業って、そういうファッション的な部分であまりいいイメージが湧きづらいのに、そこでさらに『こういう服を着て、こうして』っていうんじゃなくて、『最低限動きやすかったりすれば、それでいいよ』って伝えて、そこから自分のスタイルということでやっていかないと、まずヤル気がおきないかなって自分自身が思っちゃうんですよね。『これを着て農作業をやります』って言われても、『えー、これ自分の好みじゃないのにな』って思って、それだけでテンションが下がってしまうと、すごくもったいないので、自分の好きな格好をして、そこで『あ、ちょっと動きやすい格好の方が良かったかな』って発見してもらえたら、次に活かしながらやってもらえたらいいかなって思っているんですよね。」
●私、逆にギャル達って根性入っていると思う。だってメイクをするためだけに、普通でも5時ぐらいに起きて、作業を始めないといけないのに、それよりも1時間以上早く起きてしっかりとメイクするんでしょ?
「そうですね。5時集合なので、私も4時ぐらいには起きて、化粧して髪の毛まとめたりしていますね。」
●それは下手すると、他の人達よりも根性入っていると思いました。
「でも、それは普段からなんですけど、やっぱり家でダラダラしているときも、化粧をした瞬間ってシャキっと気持ちが入るんですよね。だから、そういう部分では全然OKです。」
●藤田さんは「Twofacy dress」という和服ブランドのプロデューサーも務められているんですけど、実は農作業をするにあたり、秋田に工場を持つ「EDWIN」とのコラボで“イケてる農作業着”を開発したそうですね。
「そうですね。稲刈りが10月だったんですけど、そのときにサンプルが上がって、来年から販売できるようにしているところです。農家さんとギャルの子たちとEDWINさんと3組でどういうのが欲しいとか話し合って、農家さんからは『やっぱり機能面的にこういうのが欲しいです』とか、ギャルの子たちが『それを付けるんだったら、レインボーにしようよ』とか(笑)『じゃあ、そこはもうちょっとこういう形にしようよ』とか、意見を織り交ぜながら、話し合っていますね。」
●基本はオーバーオールなんですか?
「オーバーオールですね。メンズとレディースで。」
●素材がオーバーオールには珍しいストレッチ素材だそうですね。
「EDWINさんもオーバーオールでストレッチ素材は初めてって言っていましたね。ジーンズって聞くとすごく重くて、動きにくいイメージがあるんですけど、モノ自体はすごく軽いし、ストレッチなので、しゃがんだりしても伸びるんですよね。」
●丈夫だしね。
「はい。」
●このウェアってもちろん「ノギャル・プロジェクト」に参加している人たちも喜んで着ると思うんですけど、農家の若いお嫁さんたちも、すごく喜んでいるんじゃないですか?
「そうなんですよ。作るときに来てもらって、一緒に話し合いとかもしてもらったんです。あとは私が最初に農家さんのところに行ったときに、若い農家さんたちから『そういう洋服を作ってほしいです』って言われて、なかなかこういった服でカワイイものを探すのも大変だし、大体がお母さんから譲り受けたものになっちゃうって聞いていて、だったらせっかくだから一緒に作れたらなと思って、意見を聞いたりしています。」
●機能重視だった農作業着が、どんどん変わって、畑とか田んぼに行くと華やかな感じになっていくかもしれないですね。
「そういうのを見たり、知ったりするだけでも、農業をやってみたいなっていうきっかけの1つなればいいなって思いますね。」
藤田さんの夢を叶える言葉“お・か・し”とは!?
●この「ノギャル・プロジェクト」をやる前にも、「EMERALD DRIVE」というエコ・プロジェクトを立ち上げて、イベントを主催したりして、本当にギャルのイメージを一転させる“ギャル革命の申し子”と私は呼びたいと思います(笑)。
「ありがとうございます(笑)」
●そんな藤田さんが同年代や10代の若者たちに今後伝えていきたいことっていうのは、どういうことですか?
「元々は“ギャルでもできる”というのを証明するためにっていう部分から始まったんですけど、今は農業をメインでやっていたり、あとは仕事をするまで全然関わりがなかったような環境の仕事もできたりとか、イベントにも参加できるようになって、今まで自分が興味を持てなかったり、自分からちょっと遠い存在だと思っていたものとかも、会社を作ってから、色々な大人の方たちと触れたりすることで知ることができて、知ってみると意外と興味が持てたりすることが分かったんですね。なので、私が大人と若い人たちの架け橋みたいになって、自分が知れていいなとか、よかったなって思うことは、自分たちの世代だったり、下の世代の子たちにどんどん伝えていきたいなっていうのはずっと思っていますね。」
●藤田さんの本『ギャル農業』の最後に、藤田さんが夢を叶えるための言葉で「お・か・し」というのがあるんですけども、私、とっても気に入りました。「お・か・し」という言葉を紹介していただけますか?
「よく、避難のときの『“おさない・かけない・しゃべらない”みたいな感じ?』って聞かれるんですけど(笑)、これは自分が夢を叶えるために、この3つが大切だなって思ったものの、頭文字を取ったものなんですね。
まず『お』は、思うこと。なりたい自分だったりとか、やりたいこととか、こういう風になったらいいなっていうことを想像するところから、色々なことが始まっていくんだろうなって思うので、まずは『思うこと』。
『か』の場合は、書くこと。やっぱり思うだけでは、なかなかまとまらないというか、頭の中で妄想ばかりが膨らんでいって、どうすればいいんだっていうことになってしまうので、まず書いて、自分の頭の中の整理をする。私の場合だったらブログっていうのを使わせてもらっていて、『こういうことができたらいいな』とか『こういう風にしていきたいなと思います』っていうのを書いて、そのあとの『し』という部分で、しゃべる。周りの人にいっぱいしゃべる。やっぱりせっかく書いて、自分の中に置いておいても、自己満足で終わってしまうので、なりたいことを思って、まとめて書くことで頭の中を整理して、整理したものをしゃべるっていう風にしていくと、自然と夢の方から近づいていくと思うんですよね。
よく『夢への第1歩が踏み込めないんですけど、どういう風にすればいいですか?』って聞かれるんですけど、私の場合はしゃべること自体が夢を叶えることへの第1歩に繋がっていると思っているので、まずは書いてまとめたことを色々な人にしゃべっていく。しゃべり続けていくと、今まで知り合いだった人たちが意外と、『あ、これ知ってるよ』とかって教えてくれたり、『今まで仲良かったのに知らなくて、ビックリだね』とか、『これで困ってるんだったら助けるよ』っていう風に、自分の努力っていうのもあると思うんですけど、気付けば夢の方から近づいてくるような感覚になってくると思うので、『思うこと・書くこと・しゃべること』というのは、夢を叶えるために最低限必要なことじゃないかなって思っています。」
●今後、藤田さんが思ったことをブログに書いて、しゃべりたくなったら、是非またこの番組に来て、いっぱいしゃべっちゃってくださいね(笑)。
「ありがとうございます(笑)」
●お待ちしております。今日はどうもありがとうございました。
|