2010年1月17日
歌を通して、人との繋がり、自然との繋がりを伝えていきたい
~シンガー・ソングライター、ユウサミイさんをゲストに迎えて~
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは、ユウサミイさんです。
今週はオーストラリア・ゴールドコースト在住の男性シンガー・ソングライター、ユウサミイさんをゲストにお迎えします。WWF(世界自然保護基金)が行なっている取り組みにも協力されているユウサミイさんに、オーストラリアの自然や、気になっている環境問題のことなどうかがいます。
ユウサミイさんがミュージシャンになったきっかけは?
●今週のゲストはシンガー・ソングライターのユウサミイさんです。初めまして。よろしくお願いします。
「初めまして。よろしくお願いします。」
●ユウサミイさんは、39歳のときにミュージシャンに転身されたということなんですが、それまではどのようなお仕事をされていたんですか?
「元々は宝石鑑定士の仕事をしていまして、仕事の関係でオーストラリアの永住権を取って、宝石屋のようなおみやげ屋さんで働いていたんですね。そこから、誰でも持っている、某有名ブランド会社に勤めまして、そこからしばらく、バッグ関係のお店の店員をしていたんですけど、39歳のときに『2000年にオーストラリアの永住権を取って、家も買って、お給料もよくて、これで人生も安心だ!』って思ったら、ものすごくつまらなくなっちゃったんですね(笑)。それで、学生のころ、ミュージシャンを目指して一生懸命頑張っていたときがあったので、『ちょっと音楽でもやってみようかな』って思って始めたら、自分が考えていたよりも、思うようにどんどん話が広がっていって、いつの間にか仕事も辞めてしまっていましたね。そこから日本で活動するようになっていったんです。」
●今はオーストラリアのゴールドコーストにお住まいになっていますけど、ミュージシャンになる前から既にオーストラリアに住んでいらっしゃったんですか?
「そうですね。1988年に1度、1年ちょっと行きまして、それから『どうしてもオーストラリアに住みたい』って思って、行ったり来たりしたんですね。その後、96年から永住している状態ですね。」
●なぜ、オーストラリアなんですか?
「色々なところで『自分の可能性を試すために』とか、よく嘘をついてきたんですけど(笑)、本当は学生のときに『1年だけ自由に遊んでみたい』って思っていたんですね。でも、日本で遊んでいると、当時でいう“プー太郎”になっちゃいますから、海外に行けば格好がつくかなって思って、ワーキング・ホリデー・ビザという、観光しながら働いてもいいというビザがあったので、それを使って、オーストラリアにとりあえず1年行ってみようって思って、行ったんです。行ったら、もうすっかり好きになりまして(笑)。そのときにサーフィンを覚えたんですよね。そこからサーフィンにハマって、自分のライフ・スタイルの中心がサーフィンになっていきましたね。それで『どうしてもオーストラリアに住みたい』って思ったんですね。」
●そのときに、オーストラリアではなくて、例えばアメリカだったり、ハワイだったり、ロンドンだったりと、場所が違っていたら、もしかしたらミュージシャンになっていないかもしれないですよね?
「なっていないかもしれないですね。例えばハワイだったら、永住権はもう少し取りづらかったでしょうしね。実は去年、ホノルル・マラソンでライヴがあって、ハワイに行ってきたんですけど、素晴らしいところだったんですね。もし、あのときハワイに行っていたら、ハワイに住みたいって思ったかもしれないですね。住めたかどうかは分からないですけどね。だから、あのときオーストラリアに行っていなかったら、ミュージシャンになっていなかったかもしれないですね。それか、そのまま日本にいて、ミュージシャンになっていたかもしれないですね。」
●いずれにしても転機としては、きっとどこかで「このままじゃ、つまらないぞ」って思われたでしょうね。今、思い返してみても、日本にいたときに、ミュージシャンをやろうって思うのと、オーストラリアでやろうって思うのとでは、そのときに、環境が与えるインスピレーションだったりとか、違いって大きかったって思いますか?
「大きかったと思いますね。こんなことを自分で言うのも変なんですけど、長い間、ゴールドコーストっていう世界的な観光地に住むことで、その観光地にあるヴァイブレーションみたいなものが、やっぱり音に影響してきますからね。それにプラス、本が好きなので、割と言葉をいっぱい知っていましたので、それらを混ぜ合わせて、自分で曲を作ってみたときに『自分なりのものが作れるな』っていう風に思ったのが、本気でやっていこうって思った、すごく大きなモチベーションになりましたね。なので、長くゴールドコーストに住んでいたということ自体が、ミュージシャンになる上では、大きな要因になったと思いますね。」
FSCの活動を通じて、森林の大切さを実感した
●ユウサミイさんは現在、WWFが行なっている取り組みに協力されているということなんですが、具体的にはどういうことをされているんですか?
「FSC(Forest Stewardship Council:フォレスト・スチュワードシップ・カウンシル)っていうんですけど、日本語で、森林認証運動っていう意味なんですね。これは、違法森林伐採だったり、違法ではなかったとしても、社会的に問題があったりとか、そういう風に伐採された木材で作られた製品を使うのを止めましょう、きちんと再生可能な状態で、伐採されている森林から出た木材で生活しましょうよっていう運動なんですね。この運動はヨーロッパなどでも広まっていますし、ブラジルでは、多くの紙製品にはFSCマークというものが付いていて、そのマークが付いているものに限り、伐採した森林は再生可能で、生命活動にも影響を与えないですよっていうことをはっきりさせる取り組みを行なっているんですね。」
●これに参加されたきっかけは、なんだったんですか?
「これは本当ありがたい話で、僕のライヴに、僕のファンと一緒に来ていた方が、FSCに関わっていまして、僕のライヴを見て、気に入ってくださったんですね。僕自身、割と環境保護の話をするので、『それじゃあ、一度お会いしましょう』っていうことで、お話をしたところ、意気投合をしまして、少しでも社会の役に立てられるような活動であればということで、参加させていただきました。」
●オーストラリアといえば、タスマニアにも結構行かれるんですか?
「タスマニアの森林伐採の問題っていうのが、最初に森林保護に興味を持ったキッカケだったんですね。実はタスマニアにはまだ1度も行ったことがないんですけど、友達からは『いいところだ』って随分聞いていたので、いつか妻と一緒に行こうって思っていたときに、テレビで森林伐採の問題を取り上げていたんですね。その番組では、違法ではないんですけど、一部の業者や政府の一部が結託して、伐採していたと言っていたんです。それから、森林伐採だけの問題じゃなくて、森林を伐採したあとに、今度は木材原料になりやすいユーカリを植えていくんですね。これを植えていくに際して、それまで、そこに住んでいた動物が中に入ってこられないように、1080(テン・エイティー)っていう毒物を染みこませたニンジンをばらまくんですね。
そうやって、元々そこにはなかったタイプの木を植えて、ユーカリの畑を作ってしまうんです。それが生態系に大きく影響を与えていて、既に世界第2位の絶滅種を出してしまったんですね。絶滅種を出さないようにと世界に訴えている国にも関わらず、たくさんの絶滅種を出す可能性を生み出してしまっているっていうのをテレビで見て『これは嫌だな』って思いましたね。」
●元々、森林保護に興味があったところへの、このFSCのお話だったんですね。イベントなどでは色々な例えをしながら、熱くお話をされているんですね。
「元々、千葉で生まれて、埼玉の比較的山奥で育ったんで、家の隣に森があって、子供のころは、森の中に秘密基地を作ったりして、森の中で生活してきたので、知らない人に『森ってすごく楽しいよ』っていうのを知ってほしいんですよ。森の話とか、林の中で遊ぶ話とかになると、やっぱり熱くなりますね。だから、どうしてもこれからの子供たちのために、そういうものを残していくことが義務なんじゃないかって思うんですよね。」
日本よりも切迫しているオーストラリアの環境問題
●最近、日本ではテレビなどで、環境問題が扱われるようになって、かなり耳にする機会が増えてきていると思うんですけど、オーストラリアは、環境に対する意識は高いんですか?
「日本と比べると環境問題が生活に直結するので、意識は高いと思います。これが地球温暖化にどれだけ関係しているかは分からないんですが、ここ10年ぐらいに、極端な干ばつが多くなったんですね。みなさん覚えていらっしゃると思うんですけど、メルボルンの山火事がありましたよね。あれって実は、他の場所でたくさんの火災があったんですね。僕の家の近所に牧場があるんですけど、干ばつが続くから、そこの草が生えてこなくて、餌がないんですよ。そうすると、あばらが浮いて、とてもヒツジとは思えない、なにか別の生き物になってしまったようなヒツジがたくさんいて、僕らはそれを直接、目にしますので、その原因が環境問題だということが手に取るように分かるんですよね。
東京にいて、環境問題が分かるのは、暑い・寒いぐらいですからね。だから、オーストラリアにいると直接見られて『怖いな』って思うことがすごく多いんですよ。例えば、ヤシの葉っぱが落ちて、それを数日放っておいて、ある日ふっと見たら、それが焦げていたりするんですよね。元々油が多い植物ですから、ずっと雨が降らないで、乾燥した状態になると、何かの拍子で焦げたりするんですよね。『下手したら家に火が点くな』とか思うんですよね。だから、環境問題に関しては、みんな敏感ですよね。」
●ユウサミイさんが向こうに住まれてから、約10年ぐらいですよね?
「延べ16年ぐらいになりますね。」
●その間も、目に見えて変化していますか?
「変化していますね。ゴールドコーストは、夏は涼しくて、冬は暖かい場所だったんですけど、最近では、夏が日本の夏のように暑いっていうことが起きるようになったんですね。僕の家の隣に、75歳ぐらいの元衆議院議員の方が住んでいるんですよ。その人はここ5~6年に『こんなの見るのは初めてだ』ってよく言っているんですよね。」
●そういうことを横で聴いていると、怖いですよね。
「そうですね、怖いですね。」
●ただ、環境問題だけは、いくら地域だったり、オーストラリアだったら、オーストラリア全土で一生懸命になっても、地球環境の問題ですから、どうにもならない部分ってあるじゃないですか。
「どこに、なんのために環境問題を考えるのか、なんのために環境を保護していきたいのかっていうモチベーションになる対象がはっきりすることが重要だと思いますね。例えば、僕が『これやらなきゃいけないよ、あれやらなきゃいけないよ』って言ったところで、聞いてくれる人は少ないと思うんですよね。それよりも、僕が子供のときから森の中で育って、今も森の中に住んでいて、森はどれだけ気持ちのいいもので、その中でどれだけのエネルギーがもらえるのかっていうのを、自分の体で知っているわけですから、それを『こんなにいいことあるよ』っていうのを話した方が早いと思うんですよ。それで『そうなんだ』って思った人が、実際に体験してみて、『本当だ。じゃあ守ろうよ』って思ってくれるのであれば、そこから次に繋がっていくかもしれないし、逆に、『こうだから、こういう風にしちゃダメだよ』っていう言い方では、もう世の中は変わらないと思うんですよね。人間って、やりたいと思ったことしかやらないと僕は思うんですよ。環境を守ることで、どんないいことがあるのか、そこから発信していった方が、あとになって『これがなくなったら、どうなる』って分かりやすいと思うんですよね。それが気持ちいいって分かってから、『これがなくなったら、まずいでしょ』って分かった方が、より深く浸透すると思うんですよね。」
●ミュージシャンとして、ご自身でも曲を書いているわけですから、環境問題をテーマにして、歌にしたっていうことはあるんですか?
「あります。明らかに環境問題をテーマにしましたっていう曲も数曲ありますし、そうでないものであっても、どこかに環境意識っていうのは残ったまま作っているっていうのはありますね。どんな歌でもどこかに環境を大切にしたいという気持ちを持ちながら、作っているっていう部分はありますね。」
●実は今日、ユウサミイさんの横に、ギターがあるんですよね。
「これ、いつも持っているんです。」
●(笑)。しかもこのギター、色が特徴的ですね。
「これは、オーストラリアのブランドで、これも多少環境に配慮しているんですね。なるべく早い時間でギター材になるような材料を使っているんです。これ、いい音出るんですよ。」
●そのいい音を是非、この場で聴かせていただければと思うんですけど、今回、どういう曲を演奏してくれるんでしょうか?
「これはWWFさんと関わるようになってから、より後世に残したいことってなんだろうってすごく思うようになって、それを形にした曲なんです。まだ音源になっていなくて、ライヴで時々しかやっていないんですよ。」
●曲名は何ていう曲なんですか?
「『通り過ぎる日々に』っていう歌です。」
●では、ここで聴いていただきましょう。
(放送ではここで、ユウサミイさん生演奏による「通り過ぎる日々に」を聴いていただきました)
人が繋がっていけるような歌を作りたい
●ユウサミイさんが、音楽を通して、今1番伝えていきたいことって、なんですか?
「日本って人と人の繋がりが少し薄くなっているように感じるんですよね。オーストラリアの場合って、多国籍国家なので、昔は白豪主義とかいって、人種差別がいっぱいあった国だからこそ、余計に今は、お互いをなんとか理解して生活していこうっていう気持ちを持っている人が多いんですね。それだけに、人と人との繋がりを大事にする国なんですね。それに比べると、今の日本って少し間違ってしまっている状態が、かなり大きくなってきていると思うんです。テレビでもゴキブリが出たっていうことで救急車を呼ぶだとか、そういう宣伝があるじゃないですか。あれはオーストラリアでは、ありえないですからね(笑)。自分勝手に生きないで、1番近くにいる人から、どんどん愛を持って接していくことで、人と人との繋がりがもっと強くなっていくと思うんですよ。そういう思いを歌にしているっていうこともありますね。
もう一方で思ったのが、最近の若い人たちが、それに気付き始めているように思うんですね。『それじゃいけない』って思っている若い人たち、特に30代は日本が色々な危機に直面し始めてから、大人になっている世代なので、今の30代より下の人たちが、人との繋がりっていうことにすごく関心を持つようになっているんですよね。だから、そういう人たちが、より繋がっていけるような歌を作っていければいいなっていうのがすごくあって、ちょっとでも『オーストラリアだと、こうだよ』っていうのを歌にして、影響を与えられれば嬉しいなって思いますね。」
●そんな若い人たちが、ユウサミイさんの、そういうメッセージが込められた曲を聴くことができる場というのは、今年はどのぐらいあるのでしょうか?
「実はいっぱいあるんですけど、まだ詳しく言えない状態なんですね(笑)。なので、もう少しすると、ブログやオフィシャル・サイトできちんとした情報が出ます。」
●それは関東の情報もあるんですか?
「関東でももちろん、色々あるはずです。これからの細かい予定などは、オフィシャル・サイトやブログで見れるようになると思うので、是非ご覧ください。」
●そしてまた、決まったらこの番組でもご紹介いきますので、皆さんも是非、足を運んでいただければと思います。人と人との繋がりということで、オーストラリア在住のユウサミイさんと、日本在住の私たち、ザ・フリントストーンが今後もずっと繋がっていければいいなって思います。また、日本に来られた際には、番組にもお立ち寄りください。
「是非、お願いします。」
●今週は、シンガー・ソングライターのユウサミイさんをお迎えして、お話をうかがってきました。どうもありがとうございました。
エコプロダクツ2009のステージ。トーク&ライヴから。
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