2010年3月28日
「地球交響曲/ガイアシンフォニー・第七番」完成! その内容とは・・・ ~龍村仁監督をゲストに迎えて~
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは、龍村仁さんです。
龍村仁さんは“地球はそれ自体がひとつの生命体である”という「ガイア理論」に基づいたオムニバス形式のドキュメンタリー映画「地球交響曲/ガイアシンフォニー」を制作されています。昨年1月に出演してくださったときは、第七番を制作中でしたが、ついに、第七番が完成しました。今回は龍村監督から、第七番についてのお話をうかがいます。
キーワードは「It's always both.」
●今回のゲストは、「地球交響曲/ガイアシンフォニー」の監督、龍村仁さんです。ごぶさたしております。
「おひさしぶりです。」
●前回ご出演してくださったのは、2009年1月で、そのときは、第七番の撮影が開始してから半年ぐらいだったので、完成するのを楽しみにしていたのですが、ついに、「第七番」が完成しましたね!
「そうですね。」
●その第七番なんですけど、前回お話をうかがったときに、大きなテーマとして「自然治癒力」だと言っていましたが、既に自然治癒力という言葉自体は一般的に知られていると思います。
「そうですね。自然治癒って英語で『spontaneous healing』って言うでしょ? spontaneousには“自発的な”という意味があるじゃないですか。ですから、自然治癒力にプラスして、自然や人の中に宿っていて、おのずと湧き出てくるようなという意味で、spontaneousを映画の中では付け加えてますね。だから、映画の中では意識的に“自発的治癒力”という言葉使いにしています。」
●前回お話をうかがったときには、今回の出演者2名が決まっていて、撮影も進んでいるということでしたが、その出演者の1人が、自然治癒力を世界的に広めた「アンドリュー・ワイル」博士。アリゾナ大学のお医者さんでありながら、東洋医学とか生薬など、西洋・東洋の医学に、先住民の方たちの治療なども含めた“統合医療”を推進されているんですよね。
「そうですね。実は、この“統合”という意味の中に、すごく重要なことがあって、古代から伝わっている英知、治療の意味でいえば、伝統医療ですよね。そういうものと、一方で、人間が科学の進歩によって、進化してきた現代医学の最先端、この2つを共に含んでいるのが“統合”なんですね。その点で、今、僕やワイルが言っていることがあって、『It's always both』という言葉があるんですよ。」
●It's always both?
「そう。少し難しくなるけど、陰と陽や、男性と女性とか、善と悪とか、美と醜とか、幸と不幸など、対立すると思われているその2つが、共にあることが大事だというのが彼の基本的な考えなんですね。医学的なことでいうと、気孔だとか、マッサージとか針とか、自然の生薬みたいな、いわゆるシャーマニズムみたいなことと、現代医学の薬、これらを全部含んでいるんですね。どっちに重きを置いていくかというと、伝統医療とか生薬になって、それが自然治癒力のニュアンスになるんだけど、彼は、偏った考え方になるけれど、現代医学の最先端が到達していることも、人間が持っている1つの英知だから、その両方が大事だということで、『It's always both』というのが、彼の言葉になっているんだよね。」
●そのワイルさんの取材は、アリゾナ州ツーソンにあるご自宅と、ブリティッシュコロンビア州のコルテス島にある別荘で行なわれたんですよね?
「そう。すごく面白いのが、アリゾナって砂漠じゃないですか。そういうような場所に住んでいるのに、別荘はブリティッシュコロンビアのコルテス島にあって、そこは僕がすごく馴染みのあるところだけど、霧と原生林と水とクジラっていうところなので、正反対なんですよ。」
●It's always bothなんですね?(笑)
「その通りですね(笑)。その対比がすごくよくて、ワイルさんとしては、我々の先祖が、長い経験の中で発見している、色々な薬草があって、その薬草を自ら試して、患者さんに提供するんだけど、砂漠で育つ薬草と、温暖湿潤の中で育つ薬草とでは、全然違うのね。この2つが育つということは、自然環境が両方ともあって、自然は多様性なんですよ。この多様性を、彼は、人が100人いれば100人違うように、それぞれに対応した薬を提供できるようにするということを考えているんですね。彼の思想とライフスタイルは、すごくマッチしていて、無理がないんですよね。」
目の前にクジラが出てきた!
●去年お話をうかがったときに、もう1方出演が決まっていた、高野孝子さん。この方は国際チームで犬ぞりとスキーで北極圏を縦断されたんですが、龍村さんが、なぜ彼女に決めたかという1番の理由は「みんなが重量を減らすために反対したにも関わらず、コンピューターとバッテリーを積んで、世界中の子供たちに、常に旅の模様を見せてきた。その後は南魚沼で伝統的な米作りをしながら、子供たちにその体験をさせる“環境教育活動家”として活動しているから」だということですが・・・。
「そうなんだよね。彼女は肩書きが嫌いでさ。『肩書きどうしますか?』って聞いたら、悩んでましたよ。」
●(笑)。そんな彼女を撮影した場所は南魚沼と、フィンランドでしたっけ?
「違うよ。グリーンランドだよ。グリーンランドって今、氷が解ける問題があって、環境問題的な視点もあるけど、やっぱりスケールが違うね。氷の色と氷の大きさと、どんどん崩れてくる氷山って、ある意味では地球のネガティブな未来のように見えてくるけど、どでかい氷河がすぐ目の前にいっぱい沸いてきて、その青さとか大きさとかスケールを見ると、美しいって思うのね。その美しさと偉大さと同時に、環境問題が含まれているという、この感覚を感じられたので、グリーンランドに行ってよかったと思いますね。でも、お金がなくて、3~4日間ぐらいしかいられなくて『こんなところまで来て3~4日間か』っていう感じではあるけれど、それでもいい思いをしたね。特に、飛行機で行けば40分で行けるところを、それだとかなりお金がかかるので、仕方ないから、ボートで何時間もかけて行ったのね。これは時間のロスに思えるけど、そのおかげで、氷に閉じ込められそうな感じになるぐらい、接近するんですよ。そうすると、上からだと絶対に撮れないような画が撮れているのね。そういう意味でも、よかったですよ。」
●それを見るのが楽しみなんですけど、そのメイキングの中で、本来、時期的にもその辺りでは、めったに見ることのできないクジラが、そのボートのすぐ近くで潮を吹いたんですよね。「やっぱり、ガイアシンフォニーってこういうことが起こるんだな」って思いながら見ていました。
「自分が特別っていう感じで受け取らないでほしいんですが、クジラはね、絶対になにかありますよ。1ヶ月待ってもクジラに会えなかったっていう人がよくいるんだけど、こんな短い間のこんなときに、目の前に出てくるというのは、ありがとうございますって感じですね。」
グレッグさんの、日本が好きな理由とは?
●今回の「第七番」に登場する、もう1人の出演者は、元ツールド・フランスのチャンピオン、グレッグ・レモンさんなんですよね?
「僕は40年ぐらい自転車に乗っているんですよ。僕は都会だけですけど、自転車を乗っている人の感覚として、必ず体の中のあるものが開いていて、何かを知っているんですよね。それが何かというと、僕が大事だと思う『身体が持つ英知』が敏感になったときに、体の問題だけじゃなくて、五感が解き放たれて、第六感が敏感になってくるということを知っている人が絶対いるのは分かっていたのね。それを誰にやってもらうかというときに、頭の中でグレッグを考えていたんですね。なぜかというと、自転車レースのチャンピオンになって、祖国の英雄になってから半年後に、猟銃事故で散弾銃の弾が60発入って、体内の70%ぐらいの血が出たんですね。そのとき、たまたまアメリカのハイウェイ・パトロールのヘリコプターが通っていたから助かったんですけど、もし通っていなくて、あと20分遅かったら、出血多量で死んでいたと思うんですよ。だから、チャンピオンになったのにも関わらず、終わったと思って、誰も復活すると思ってなかったんです。ところが、それから2年後に、鉛の弾が数十発体内に入ったままなのに、復活してきたんですよ。だけど、2年前は世界ランキング1位だったのが、復活してきたときは350位ぐらいになっていて、誰も期待していなかったんですよ。それが、最後の最後に、トップだったフランスの英雄を、わずか8秒差で抜いて、チャンピオンに返り咲いたのね。そこから彼は“奇跡の人”として、世界的に有名になったんだよ。だから彼は、自転車のことを知っているのと同時に、死を知っていて、なおかつ、死から蘇る感覚も知っているということで、彼がいいなと思ったのね。
だけど『そんな有名人にどうやってコンタクトを取るんだ?』って思って、夢で終わると思ってたのね。それが、例によって、ガイアシンフォニーのとんでもない奇跡が起きたんですよ。彼は日本が大好きで、特に日本の神道とか武道のバック・グラウンドにある精神性、そういう日本文化にある、日本人が無意識に持っている何かに、特別なことを感じていて、いつか、そういう日本の精神の原点となるところを、自転車で旅をしたいと、ずっと思っていたみたいなのね。だから『ちょうどいい機会だから、僕の方から行くよ』ということで、日本に来てくれたのよ。彼の興味は、縄文時代から弥生時代、弥生時代から大和朝廷へと、その時期から発生している、日本人の精神性に触れたいということだったのね。『それだったら、紀伊半島、明日香村から熊野本宮とかを通って、新宮までツーリングしたらどう?』って聞いたら『それは是非お願いします』ということで、実現したんですよ。最後に彼が『自分の血は、18パーセントはネイティヴ・アメリカンの血が流れていて、4パーセントはアジアの血が流れている』って告白してくたんですね。それで『僕が日本が好きな理由の1つとして、日本に来る度に、普通のおばあちゃんの中に、自分のおばあちゃんにすごく似ている人がいて、『なんでかな?』って思って自分のDNAを調べてみたら、自分の中に、アジアの血があることが分かったからなんだ』っていうんですね。実は、ネイティヴ・アメリカンとか、ポリネシアンとか、アラスカとか、今までガイアをやってきた中に、全て日本人との繋がりがあるんですね。
今回『神道編』の原点は、その辺りにさかのぼると思っているのね。我々は対立民族だと思っているけど、我々の血のルーツを探っていくと、8000年ぐらい前から、色々なものが、海からも来るし、北からも南からも来るし、それらが混ざっていく中で、一方は排斥して、一方だけが生き残ったという、ジェノサイドのような、一神教の争いではなくて、結局ずっと、自分の中に混じって、重層化していく、このことが日本を受け入れていくんですよ。だから、多様なものを、自然と内側に受け入れていくという無意識が、日本人の原点だとすると、彼が言っていることって、実は神道の自然観や生命観の原点にあることを言っているわけですよね。」
自分を知ることと同時に、「木火土鉱水」を意識してほしい
●この第七番は、2008年の7月に天河神社の中にある日輪大弁才天が、本来は60年に1度しか開帳しないのが、あと30年ぐらいを残して、突然開帳することになり、そこからクランクインして、翌年の2009年7月の皆既日食でクランクアップしました。今回の映画の中でも、霊性の原風景というものがありまして、その原風景でいうのであれば、“太陽と月”も1つのキーワードですし、風も大きなキーワードだったり、森、砂漠、海と、地球上の色々な自然が登場していきますよね。
「今までそういうことをずっとやってきているんだよね。今回の神道編でいうと、全ての自然現象の中に、神が宿っているんですね。木にも、水にも、火にも、もちろん我々1人1人にも、分霊(わけみたま)が宿っていて、天に神様がいて、それに対して拝んでいるのではなくて、自分の中に自然の大いなる力が宿っているんですね。それらのキーワードの中に『木火土鉱水』っていうのがあって、この5文字の要素が、自然界の生命を形づくる原点みたいなところにあるということで、日本の神事の中に、それぞれで扱い方というのがあるんですよ。それを今回、我々の祖先が木をどういう風に扱ってきたのか、水をどう思ってきたのか、岩をどう思ってきたのか、火をどう思ってきたのかを、なにかの形で、なんとかして描きたいと思っていました。
これは、日本人のよさだと思っているんだけど、そういうことって意識化していないんですよ。なんとなく、スッと受け入れちゃってるんですよね。例えば、神社に大きな木があって、それは御神木と言われていて、ただの木じゃないとはいいつつも、木に何かを感じているんですよね。その反対もあって、平気で木を切る鈍感さもあるけど、日本人は、そういうことを歴史の流れの中で、無意識のうちに知っていると思うんですよ。ただ、無意識ということで曖昧にしていたものが、自分が好きなものとか嫌いなものとか、こっちを選んでこっちを選ばないとか、そういう日常でやっていることの原点って、自分の経験で得られた感覚だけじゃないものがあるということを、ちゃんと意識しないといけないですよね。あるいは、なぜ日本人が、このような文化を築きあげ、こういう時代を生きているかということを、自分の知るということの中に、そういうことをちょっと意識しないといけないと思うんですよね。そうじゃないと、グローバルに、色々なことが語れないですよね。『自分はこう思うんですよ』だけでは、異文化との多様性の協調は有り得ないわけだから、自分を知らないとダメ。そういう意味では、今回、『木火土鉱水』みたいなことって、実は、古代からどういう風に扱ってきたかということを感じてくれるようなシーンを、短いですけど、あると思いますので、そういうシーンを見ながら、自分の中にある何かを見てほしいなって思います。」
●5月には、一般の方も参加できる、完成披露試写会がありまして、是非私も、心して第七番を拝見したいと思います。というわけで、今回は「地球交響曲/ガイアシンフォニー」の監督、龍村仁さんをお迎えして、お話をうかがいました。ありがとうございました。
「たくさんしゃべりましたけど、是非、映画を観てください。」
●楽しみにしています。
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