2010年4月25日
清水国明さん・15回目の定点観測(千葉・大網編)
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは、清水国明さんです。
芸能界きってのアウトドアズマン、清水国明さんの15回目となった定点観測。今回は、千葉県・大網にある「スローライフ研究所」にお邪魔して、お話をうかがってきました。
還暦は、パーツ交換の時期
●今回のゲストは、芸能界きってのアウトドアズマンで、「自然暮らしの会」の代表でもある、清水国明さんです。よろしくお願いします。
「よろしくお願いいたします。エイミーさんと代わったんだって。」
●そうなんです! 4月からこの番組を担当させていただいています。
「いやぁ、惜しい人を亡くしたねぇ。」
●いやいや、死んではいません!(笑) 今でも東京で元気に仕事をしております。
「よかった(笑)。それはなりよりです。でも、代わったと聞いたときは驚きました。何が起きるか分からない世の中ですからね。私も死にかけましたしね。」
●去年、病気で大きな手術をされたとうかがっています。
「そうなんですよ。毎年、定点観測として出ているんだけれど、前回は手術をする前に取材してもらったんだっけ。」
●前回は、1回目の手術が終わって、2回目の手術の前という、大変な時期にインタビューをさせていただいています。
「なるほどね。1回目の手術のときは『この腫瘍は良性ですね。内視鏡で取れば大丈夫です』ということで、十二指腸にできた腫瘍を取ったんですよ。だけど、良性だと言っていたにも関わらず、変なものがあったわけですよ。」
●検査では分からなかったんですか?
「そういうものがあるということは分かっていたんですけど、そもそも十二指腸というのは、色々な心配事とかのストレスによって、腫瘍ができやすいんです。その頃、会社のこととか資金繰りが大変で、ストレスが溜まっていたんですね。それで、腫瘍を取ってみたら、腫瘍の中にグリグリってしたものが入っていたんですね。『何かな?』って思って、よく見てみたら“資金グリ”だったんですよ。」
●早速、面白いお話、ありがとうございます(笑)。
「そんなにウケていただけるとは思いませんでした。」
●ビックリしました(笑)。
「その“資金グリ”がでてきて、ガンだということが分かったんですね。それまで、そういうことを気にしていなかったのに、急にガンと言われたときのショックって分かりますか。」
●いやぁ、体験したことがないので分からないです。
「“ガーン”ですよ(笑)。こんなのでいいんですかね?。」
●私、どういうテンションでいけばいいんでしょうか?(笑)
「まぁ、自然にいきましょう。そういうことがあって、4月6日に手術をしまして、それから1年が経ちましたよ。あっという間に回復しましたよ。」
●今はお元気ということですね?
「そうなんですよ。不思議なことに、前よりも元気になったんですよ。」
●そうなんですか!? 悪い物を取ったことがよかったんですね?
「そうそう! 腹黒いところを取ったからね(笑)。いい人間になっちゃって『こんなにいい人だったかしら?』という感じで、みんなが気持ち悪がってますよ(笑)。やっぱり腹黒いところは早めに取っておいた方がいいね。スッキリしました。今は、十二指腸ぐらいなくなってもいいと思いますけど、最初はショックで『俺だけ十二指腸がない』というコンプレックスがあって、それに関して、僕の友達が同情して、お見舞いをくれるんですね。ご存知ないかもしれないですけど、原田伸郎という奴が、僕のために、京都市長と神戸市長と大阪市長と、市長さんの写真を12枚持ってきてくれたんですよ。」
●それって、もしかして・・・(笑)。
「ご推察の通り“十二市長”ということで、持ってきてくれたんですね。だけど、ちょうど手術でみぞおちから下を切ったばかりで、傷口がくっつく途中なのに笑わせる笑わせる(笑)。『お前、腹割れるじゃないか! ガンでギャグを取ろうとするな! 人の不幸を笑うと、バチが当たるぞ!』と、相棒ですけど、本気で怒りましたね(笑)。この1年を振り返ると、色々なことがありました。もうじき60歳になるんですね。アラウンド・シックスティーだったかな? そういうときというのは、車検切れみたいなものですから、体のパーツ交換の時期なんです。」
●そうなんですか?
「そうなんです。散々酷使してきて『疲れたよ』といった臓器もありますから、取り替えたり、弱ったところだと取っちゃうという時期なので、リフレッシュして、そこからまたやり直すということですよね。還暦の“還”は、巡る・回るという意味があるから、マラソンでいうと、折り返し地点なんですよ。ここからスタート地点まで戻っていかないといけない。これは大変ですわ。」
●ということは、少なくても、あと60年は元気に生きていくということですね?
「そういうことですよね。」
今は『一人十色』の時代
●実は今回、千葉県の大網にある「スローライフ研究所」という、ログハウスの中でお話をうかがっています。
「この建物、木に囲まれていますよね。このログハウスは、私の仲間と一緒に作ったんです。」
●この建物は、自分で作ったんですか?
「そうそう。買ってきたのではなく、置いてあったわけでもなくて、自分で作ったんです(笑)。『自然暮らしの会』が、このログハウスを作ったんですね。」
●ログハウスって、大工さんじゃなくても作れるんですか?
「逆にいうと、大工さんではログハウスは作れないです。」
●そうなんですか?
「ログ・ビルダーという人でないと作れないです。」
●専門の方がいらっしゃるんですか?
「そうです。“ログハウスを作る人たち”ですね。『自然暮らしの会』というのは、ログハウスを作る集団でもあるんですね。もちろん、それだけじゃないですよ。カヌーも作るし、釣竿も作るし、子供も作るしね。」
●(笑)。
「モノ作りの会ですから、必要なものは、何でも自分たちで作ってしまおうという感じですね。」
●へぇー!
「もちろん、作れないものもあるんですよ。」
●そうなんですか? 何が作れないんですか?
「そうですねぇ。お金とかは作りにくいですね。下手に作ると捕まってしまうからね。だから“必要なものだけを作ろう”ということですね。作れないものがあったら、それを無理矢理手に入れようとすると、生活がいびつになってくるんですね。だから“作れないのであれば、それを必要としない生活に切り替える”ということが大事ですね。ということは、お金がなくても生きていける、お金は要らないものだという生活をすればいいんでしょ? こういうのは“無いものねだり”みたいなもので、作れないのに、無理矢理手に入れようとすると、人に頼んだり、人のものを盗んだり、人を騙したりすることが必要になってくるんですよ。そうじゃなくて、自分の範囲で生活をしていくというのが、自然暮らしなんですね。基本的に、外国にあるようなものを、飲みたい・食べたいと思ったり、冬なのに夏の食べ物を食べたいというのは不自然なんですよ。1キロ・2キロあたりにあるものを食べたり、旬のものを食べたり、自分の稼ぎの中で食べているのは、自然に無理なく生活できている、そういう暮らしをしていこうというのが、自然暮らしの会の目指すところで、“無理のない自然”、“スローライフ”なんですね。何か面白く、楽しいことをやりたいんです。これから、世の中で1番大切なことは何かというと“ワクワクすること”、“楽しむこと”なんですよね。そう思いませんか。」
●そう思います。
「ですよね。そのことだけをやりたいんですよ。そこで“ワクワクする”“楽しいことをする”ことに必要なものは何かというと、“仲間”なんですよ。家族に1度見捨てられたときに、家族の大切さがすごく分かりました。『今日から1人で好きなことをやってやろう』と思って、富士山の麓で過ごしていたら、すごく虚しかったですね。つまり、人間というのは、家族を喜ばすことで自分が喜ぶことができるという難儀な関係なんですよね。なので、仲間と一緒に喜ぶことによって、その喜びが増幅されて、ワクワク・ハラハラ・ドキドキができるんです。仲間がいなくて、自分だけ楽しんでいたり、自分だけ食べ物を食べていたら、美味しさが1対1なんですよ。でも、2人で『美味いね』『うん、美味いね』って言いながら食べていると、食べる量は分けるから半分になるかもしれないけど、美味しさは倍になりますよね。こういうのが、仲間の効果・効能なんですよね。だから、『スローライフ研究所』というのは、生き方を教えたり、伝えたりするのではなくて、そういう考え方が似ている人、相手を否定しない人が集まって、面白く、楽しいことをいくつもしようというところです。」
●具体的には、どんなプログラムがあるんですか?
「具体的に、今やっているのは、ゴルフですね。あとは、ゴルフをやって、ゴルフをしていますね。」
●(笑)。ゴルフとゴルフとゴルフですか(笑)。
「それと、魚釣りをやって、散歩して、家庭菜園をやって、キャンプ、バーベキューをやったりしていますね。いくつもやりたいんですよ。というのは、十人いたら、十人の種類がある『十人十色』という言葉があるじゃないですか。今は違うんです。『一人十色』の時代なんですよね。」
●一人で十色ということですか。
「そうなんです。都会暮らしもやり、田舎暮らしもやる。海にも山にも行く。太った人と付き合い、痩せた人とも付き合うというような、そういうバラエティに富んだ、多種多様なことをやるのが、豊かさですよね。これだけ情報化が進んでいる今って、そういう時代ですよね。その道一筋で行くというのも、それはそれで価値があるけれど、やせ我慢をしているようにしか見えないんですよ。『俺は田舎暮らしにこだわるんだ!』って田舎にずっとこだわっているのを見ると、『お前はアホか! 1回六本木で飲んでみろ。面白いぞ』って言いたくなりますね(笑)。六本木で楽しく飲んで、その後に自然の中に入って、魚釣りをしたら、2倍楽しめますよね? こだわってしまったり、宣言をしてしまうから『田舎でしか暮らさないといけない』と思って、禁欲生活になってしまう。そういうのは自然じゃないし、僕はカッコいいとは思わないね。スローライフというのは、ゆっくりということが強調されすぎているんですが、別にゆっくりじゃなくてもよくて、いっぱい楽しむということで、仲間を増やしつつあります。」
子供のときに、自然の中で育てることが大事
●2歳の息子さんがいらっしゃるとお聞きしました。
「そうなんですよ。国太郎っていいまして、結婚は3回目なんですけど、子供は公式では4人目ですね(笑)」
●(笑)。非公式には何人ぐらいいらっしゃるんですか?(笑)
「それには触れないでください。」
●そうですね、すみません(笑)。
「いやいや、いないと思うんですけどね(笑)。前の妻の息子が3人いまして、この子たちも大切な大切な子供なんですけど、みんな女の子なんですね。僕は元々、女好きなので、女の子でよかったんですけど、どこかで『男の子がほしい』という思いがあったんですね。」
●自分の弟子というか、そういう存在がほしかったということですよね。
「そうですね。昔、こんなことがあったんですが、スキーかキャンプかなにかに行くことになりまして、雪道を通ることになりまして、出発前に、品川の家の前で、買ってきたばかりのタイヤ・チェーンを付けてみたんですよ。車にチェーンを付けるというのは、ワクワクしませんか? ところが、娘たちは家の中でテレビを見ながら『パパ、何してるの?』みたいな感じだったんですよ。それを見て『見にこいよ! 邪魔するぐらい手伝えよ!』って思ったんですね。これは、男の子と女の子の違いなんだなって思いましたね。だけど、国太郎は、チェンソーのエンジンをかけると、転がるように喜んで、『やらせて』といって、自分でアイドリングでブンブンやるまでやりまして、泣き叫ぶんですよ。あと、僕がユンボを操縦すると、キャタピラに乗っかりながらよじ登ってくるぐらい、そういうものが好きですね。これが男の子と女の子の違いかなって思いますね。」
●今から、男らしく育てるために、アウトドアな環境で子供を育てるというのは、すごくいいですよね。私、弟がいまして、草食系なんですよ。
「なるほどね。今、肉食系とか草食系とかというらしいね。」
●本当に、自発的に何かをするということが、少ない子なんですね。「もう少し自然の中で育てておけばよかったんじゃないかな」って思うんですね。
「なんだか、わが子のように話していますけど、弟なんでしょ?。」
●はい、弟です(笑)。
「いくつ違いなんですか。」
●10歳離れています。
「それは、結構離れていますね。」
●本当に、わが子のような、可愛い弟なんですけど、「もうちょっとたくましく育てておけばよかったかな」って今すごく後悔しているんですね。
「あんた、母親じゃないんだから。」
●(笑)。そういう風に思っている親も多いのではないかと思うんですけど、アウトドアな環境で育てるというのは、どうなんですか?
「『男=たくましさ』と結びつけるのは、あまりよろしくないと思うんですが、男・女関係なく、人間は生まれたら、0~3歳までに、デジタル情報ではなく、暑いとか寒いとか臭いとか痛いとか、原始の頃からある、そういう刺激を、本物の自然の中で受けることによって、人間に育てていくんです。だけど、今は暑いとか寒いとかを通らずに、バイパスを通って、成長をしてしまうから、そういう機能は本来備わっているけど、その機能にスイッチが入らないまま、大人になってしまっているんですね。子供のまま、大人になってしまう人のことを“こどな”というらしいですね。」
●そういう造語があるんですね。
「これはパクリですけど(笑)、そういうことも言えますよね。そういう意味では、そんなに遅くはなくて、自分の中にインストールされている、色々な機能とか能力、本能みたいなものがあるから、それを、再起動のきっかけというか、何かのきっかけで目覚めさせないといけないですね。今知ったかぶりをしていますけど(笑)、パソコンでもそうじゃないですか。元々入っていても、それをアップするには、手続きが必要でしょ? そういう手続きを経ることによって、人間本来のたくましさとか生きる力とか、そういったところにスイッチが入って、人間らしく、自然体になるんじゃないかと思いますね。今は、不自然な体とか精神状態とか環境が多すぎるですよ。」
●では、今からでも遅くはないですか?
「いやいや、これからですよ。今まで、そういうスイッチを入れずに大きくなってしまった人の、スイッチが入る瞬間って、楽しみですよ。」
スローライフは、過程をゆっくり、楽しんでいく
●清水さんは、千葉・大網の「スローライフ研究所」と、河口湖の麓にもご自宅があるということなんですが、例えば、ログハウスを造りたいと思ったときに、河口湖の「森と湖の楽園」で、ログハウスの造り方って習えるんですか?
「できますよ。『自然を楽しむ学校』とか『森と湖の楽園』というのは、“人に教える”というところではなくて、“自分で気づいてもらう”というところなんですよ。うちのスタッフも、インストラクターではないんですよ。“アウトフィッター”と呼んでいるんです。僕もそうなんだけど、人に教わって、できるようになったということって、あまり感動がないんですよ。『これ、教わりたいな』と思って、簡単に人に教えてもらっても、すぐ忘れてしまうんですよ。だから僕は、ログハウスとか、カヌーとか、ナイフとか釣竿とか色々なものを作ったんですが、全部人から教わらずに、独学で作りました。先生はいるんですけど、先生が実践しているところをジーっと見て『ああいう風にするのか。ああいう構えか。ああいう音か。指とか爪はあれだけ汚れるのか。火花はああいう風にして散るのか』と1日ぐらい見て、盗んで、その後、家に帰ってから同じ物を買って、ナイフ作りなら『あの人は爪が汚れていたな』とか思い出しながらやっていたり、ログハウス造りなら、先生がチェンソーを使っていたときの音を思い出しながら、その音が出るように木を切ったりしていくと、分からないことがものすごくあるんだけど、熱が出るほど考えて『そうか! これか!』と分かった瞬間が、最高ですね!
結局、ログハウスが欲しければ、金を出して買えばいいんだけど、僕たちは作りたい、作るプロセスが大事だから、それを簡単に教えてもらったりしたら、もったいない! それって、推理小説の犯人を先に教えてもらうようなものだよね。『この本は、この人が犯人ですよ』って教えてもらって『これはどうもありがとうございます。これで、読む手間が省けてよかったです』ってなっても、嬉しくないじゃないですか。犯人を、悩みながら探っていくのが面白いんですよね。人生ってそういうものかもしれないですね。能率・効率っていうと、間を省略して、結論だけというか、いいところだけをつまみ食いするようになるけれど、ゆっくり、途中を楽しみながらやっていく。これが、スローライフというものですかね。うまくまとまりましたね。」
●うまくまとめていただいて、ありがとうございます(笑)。是非、今度は河口湖のご自宅にお邪魔させていただきたいと思います。というわけで、今回のゲストは、芸能界きってのアウトドアズマンで、「自然暮らしの会」の代表でもある、清水国明さんでした。ありがとうございました。
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