2010年6月6日
「東京近郊ゆる登山」西野淑子さん流、山の登り方・楽しみ方
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは、西野淑子さんです。
ライターの「西野淑子(にしの・としこ)」さんは、30歳を過ぎてから、山歩きの楽しさに目覚め、今年3月に実業之日本社から「東京近郊ゆる登山」という本を出版されています。
今回はそんな西野さんから、「ゆる登山」とはどんな登山なのか等うかがいます。
ゆる登山とは?
●今回のゲストは、ライターの西野淑子さんです。西野さんは、実業之日本社から「東京近郊ゆる登山」という本を出版されています。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします。」
●「東京近郊ゆる登山」という本ですが、私、この本を見つけたときに、思わず「これだ!」と思って、手に取って「これ買います!」という感じで、レジに走っちゃいました(笑)。
「ありがとうございます(笑)」
●この本は、私のような「これから山に登りたい」という初心者のために必要な情報がたくさん載っていそうで、初心者でもすごく読みやすそうだなと思ったのが、最初の印象だったんですね。まず、この「東京近郊ゆる登山」というタイトルなんですが、ゆる登山とは、どういう登山なんですか?
「ゆる登山とは、登山だけど、ストイックに楽しむというより、肩肘を張らずに、山の全てを、ゆるく・まったりと楽しむということで“ゆる登山”と言っています。」
●登山というと、ピーク・ハンティングというような、頂上を目指してアタックする、アクティブなイメージがあったんですけど、ゆる登山というのは、女性でも気軽に楽しんでもらうような感じですか?
「そうですね。最近では、山に登る若い女性も増えてきていますし、山に登ったことがないお友達と話をしていると『行ってみたい』という人も多いんですね。そういう方に、もっと気軽に楽しんでもらいたいなという感じですね。ピーク・ハンティングみたいに、山頂を目指して、苦しい自分と戦いながら、ガツガツと登ったりするのも、登山の一部ではあるんですけど、もう少し肩の力を抜いて、山のいいところを楽しんで、山を好きになってもらいたいなと思っています。」
●そもそも、女性向けの、ゆる登山の本を書こうと思ったきっかけは何だったんですか?
「元々、山のガイドブックに興味があったんですね。すると、いつも親しくしている出版社の担当の方が、私が登山をしていることもよく知っていたので『よかったら、女性向けの登山の本を、女性が書いてみませんか?』というお話をいただいて、『ちょっと頑張ってみようかな』と思って、書きました。」
●女性が書くという点で、特に気をつけたことってあるんですか?
「読者が女性や初心者だということを想定していたので、例えば、山の紹介をする文章で、なるべく難しい言葉を使わないようにしたんですね。登山の専門用語があって、それを書いてしまうのは簡単なんですが、そうではなくて、噛み砕いて説明したり、山の細かい道情報を書くより、その山で何が見えるとか、どんなことが楽しいのかなど、歩いていて楽しく思えることを、なるべく文章に取り入れるようにしています。」
西野さんの山での失敗とは?
●年齢のことに触れるのは、失礼かもしれないんですけど、本の中にある、自己紹介の部分で「30歳を過ぎてから、山歩きの楽しさに目覚める」と書いてあったんですが、割と時間が経ってから、山のよさに目覚めたという感じですか?
「そうですね。30歳を過ぎてから登山を始めて、そろそろ10年ぐらいになりますね。」
●年齢に関係なく、登山というのは始めることができるんですか?
「もちろんです! 山って、特別な運動神経とかって必要じゃないんですよね。スポーツのように『センスがないとダメ』とか『○○力がないといけない』というのがなくて、ひたすら足を動かして、山を登っていけばいいんですよね。だから、どんな人でもできる、そして、山登りの気持ちよさが分かる、そんな趣味じゃないかなと思います。若いときに始めても楽しかったと思うし、30歳を過ぎても楽しいですし、50・60歳を過ぎてから始めても、ハマる方も結構多いですね。年齢・性別相応に楽しむことができるのが、登山だと思います。」
●山の魅力って何ですか?
「私の場合は“山の一部になる”というところですね。歩いているうちに、緑を見たり、風の音を感じたりしているうちに、山の一部になっている感覚がすごく好きなんですね。ゆっくりと山頂を目指しているうちに、山頂や途中の展望ポイントで景色が見えたり、歩いていると、綺麗な花があったりして、自然にある1つ1つのものを見るのが楽しいと思います。もちろん、この他にも色々な楽しみ方があって、重たい荷物を持ちながら、辛い思いをしながら山頂を目指して、山頂に着いたらパーッとやることが好きという人もいますし、テントを担いで登って、テント場で大宴会をやることが好きという方もいますので、色々な形で楽しめるのが登山だと思います。」
●それとは違って、山で怖かったこととか、失敗したことってあるんですか?
「もちろんあります。色々な失敗をしてきました。非常に分かりやすい失敗だと、登山を始めたばかりの頃に、普通の綿製のTシャツで山を登っていたんですが、途中で雨が降ってきたんですね。綿のシャツって、普段着ていると分からないと思うんですが、ずぶ濡れになると、シャツが乾かないんです。山で濡れて、シャツが乾かないと、どんどん寒くなってしまうんですね。休むと寒いし、歩くと疲れるといった感じで、さらにそのとき、私は着替えを持ってきていなくて、もうどうしようもなくなってしまったんですね。一緒に歩いていた人が、山用の、濡れてもすぐ乾く素材のシャツを着ていて『あ、これだな』って思いました。よく登山の本で『綿のシャツはダメ、Gパンはダメ』って書いてあるんですが、それは“乾きにくいから”なんですけど、それを身をもって体験して、次に生かしたりしていましたね。
後は、秋から冬ぐらいまでの間のときに山に登ったんですが、普段は温かい飲み物を魔法瓶の水筒に入れて持っていくんですけど、それを忘れてしまったんですね。そうしたら、すごく寒いのに、普通の水しか持っていっていなくて、水を飲むと、体が冷えるんです。だけど、歩いて温まろうとすると、すごく疲れるという風になって『やっぱり温かい飲み物を持っていかないとダメだな』って、歩きながら悲しい気分になったりとかしましたね。そういう失敗はよくあります。未だに初歩的な失敗もしていますし、失敗をする度に『これだといけないな』という風に学習をする、そういうことの連続ですね(笑)」
●(笑)。そういったノウハウが、「東京近郊ゆる登山」には詰まっているんですね。
「そうなんです。実際に失敗したことや、友達が失敗したことなどを、『こうしたらダメですよ』という情報として、さりげなく入れています。」
●この本に書かれている注意事項の一部は、西野さんが失敗したことかもしれないんですね。
「そうですね。」
初心者向けの山と、その楽しみ方
●西野さんは、今までたくさんの山に登ってきたと思うんですけど、1番印象に残っている山は、どこの山ですか?
「私は、よっぽどのことがないかぎり、登った山は全部好きになるんです。その中で、印象に残っている山というと、北アルプスに“穂高岳”という山があるんですね。そこに、あまり天気がよくないときに行ってしまって、友達と一緒に登っていたんですけど、山頂に着いても、霧がすごくて、景色があまり見えない状態だったんです。それでも、ひたすら歩いていたら、あるとき、霧が晴れて、目の前に山が見えたときに、感動したのか、涙がでてきたんですね。『来てよかった』って感じで、泣いてしまったんです。そんな思いをしたのが、印象深いですね。」
●私も、そういった、泣けるような登山をしてみたいなって思うんですけど、「東京近郊ゆる登山」には、おススメの山のルートから見どころまで、詳細に書かれているんですが、これからの季節に、初心者である私が行きやすい山ってどんな山ですか?
「『東京近郊ゆる登山』には、“登山レベル”というものが書いてあるんですね。この本には、20個の山を紹介していて、それぞれのコースにレベルで『初めてでも』とか『慣れてきたら』という風に書いてあります。『初めてでも』というのは、本当に初めて登山をする方がお友達同士で歩いても、気持ちよく歩ける山だと思います。今の時期でおススメの山は、本当初めての状態で、楽しもうとしたら、高尾山ですかね。高尾山は人がすごくたくさんいて、それほど楽しくないよっていう方もいるんですが、私は、その人の多さを含めて、この山の楽しさだと思っているんですね。」
●そうなんですか!? 人が多いと面白いんですか?
「人間観察だと思えば、面白いですね。高尾山には、山頂に行くためのルートがいくつかあるんですけど、その中でも1番よく使われているのが、1号路という、薬王院を通って山頂に行くルートがあるんですけど、老若男女問わず、ものすごく人が多くて、中には、お年寄りの方がゆっくりと歩いていたり、若いカップルが楽しそうに歩いていたりして、色々な方を見ながら歩くのが楽しいですね。『人が多くて嫌だな』って思うと、それまでなんですけど、『この人たちはどんな人なんだろう』って思って見ていると、意外と面白かったりします。」
●そういうことも楽しみながら、登山をするということですね。
「そうなんですよ。その1号路とは違う道で帰ると、全然人がいなくて、自然の中を歩いていくような感じになって、ギャップの激しさに驚きますね。」
●具体的には、朝何時ぐらいに高尾山口駅に行って、何時ぐらいに帰るといったスケジュールを組めばいいんでしょうか?
「あまり深く考えなくていいと思います。ただ、例えば、朝10時ぐらいに、高尾山口駅まで友達と行ったり、集合したりして、ケーブルカーやリフトに乗って楽をして、1時間ぐらいかけてゆっくり歩いて、お昼前に山頂に着いて、ゆっくりご飯を食べて、1時間半ぐらいかけてゆっくり下山してきて、高尾山口駅に行くというスケジュールだと、午後2時半~3時ぐらいに下山できて、帰りにお土産を買ったり、名物のとろろそばを食べたりできますね。」
●ゆっくり登っているときや下山しているときに、写真を撮ったりしてもいいんですか?
「もちろんです! 私も写真を撮るのは嫌いではないので、下手くそですけど、友達の写真を撮ったり、見つけた写真を撮ったり、風景の写真を撮ったりして、楽しんでいますね。写真を撮らなくても、『ここ景色いいよ!』って感じで、そこでボーッとしたり、お茶飲んだりしています。」
山登りは気負わず、無理せず、ゆっくりと
●高尾山ぐらいなら大丈夫かもしれないんですけど、初心者とはいえ、色々気をつけないといけないことってあると思うんですね。高尾山から始まって、徐々にレベルを上げていって、最終的には富士山に登ってみたいと思っているんですけど、初心者だから、注意しないといけないことってありますか?
「どんな方でもそうだと思うんですが、“無理をしない”ということですね。『ちょっと体調が悪いんだけど、約束しちゃったから行こうかな』とか『体調がよくないけど、とりあえず来たし、山頂までいかないと嫌だな』とか思うと思うんですけど、山は逃げないし、体調が悪くなって、辛い思いをして、山が嫌いになってしまったら元も子もないし、山で体調が悪くなったりしても、救急車や助けてくれる人がすぐ来てくれるとは限らないんですね。携帯電話も、場所によっては繋がらなかったりしますし、舗装された道路じゃないから、車が入れなかったりするので、そういうことで恐い思いや痛い思いをするよりも、無理をせず『今日はちょっと無理かな』って思ったら、途中で下りたり、登山自体を止めて、次にもっと調子のいいときに行ったりすることだと思います。
あと、あまり気負わずに、とりあえず楽しむことですね。例えば、高尾山みたいな、あまりきつくない山であれば、気負わずに、とりあえず登ってみて、面白かったら、ハマっていけばいいんじゃないかと思います。好きになればなるほど、色々なことが知りたくなると思うんですね。例えば『道具を揃えたい』と思ったり、道が分からなくなって、恐い思いをしたら『地図のことをもっと勉強したい』とか、友達が怪我をしたら『助けてあげられるようになりたい』とか思うようになると思うんですね。そこまで大げさでなくても、少しずつ山のことを知っていって、登山を安全に楽しむために、向き合っていけるようになると思います。だから最初は、あまり気負わなくていいと思いますね。」
●とりあえず、「東京近郊ゆる登山」に載っている山に、この本を持って、登ってみるということが大事ということですね。
「そうですね。この本で『初めてでも』と書いてあるような山なら、とりあえず友達と行ってみても十分楽しいと思いますし、ゆるゆると楽しんでもらいたいと思います。」
●私も早速、高尾山に、この本を持って行きたいと思います! 今度是非、機会があれば、千葉の山に一緒に登りましょう!
「そうですね。分かりました。」
●今回のゲストは、ライターの西野淑子さんでした。ありがとうございました。
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