シマウマの鳴き声はワンワン!?
〜生き物たちの意外な生態!
今週のベイエフエム/ ザ・フリントストーンのゲストは、生きものカメラマン・松橋利光(まつはし・としみつ)さんです。
松橋さんは1969年、神奈川県相模原市生まれ。水族館勤務のあと、生きものカメラマンに転身。水辺などにいる野生の生き物から、水族館や動物園の生き物、さらに、変わったペット動物などを撮影し、主に子供向けの本を出してらっしゃいます。2015年に出版した『その道のプロに聞く 生きものの持ちかた』はロングセラーとなっています。
最近では、テレビの人気番組「世界一受けたい授業」の出演でも話題になった松橋さん、先ごろ、新しい本『その道のプロに聞く 生きもののワォ! 知ってそうで知らない豆知識』を出されました。今回はそんな松橋さんに、生き物の、とんでもなく不思議で面白い生態などうかがいます。
口の中に鼻がある!?
●新刊『生きもののワォ!』を拝見しました! すっごく面白かったです!
「ありがとうございます!」
●“へぇ〜、そうなんだ!”って思うところがいっぱいありました。“あ、これ、誰かに言いたいな”って思うところに付箋を付けていたんですけど、そしたら付箋だらけになってしまったぐらい、本当に面白かったです! 中でも“シマウマがワンワンと鳴く”って載っていて……えっ、犬じゃないんですか!?
「本当に想像通り、犬の“ワンワン”とそっくりです!」
●えっ、シマウマが?
「“ウマ”ってついてるだけで“ヒヒーン!”なイメージありますけど、本当に“ワンワン”です」
●じゃあ、よくお子さんに向かって“ほらワンワンだよー”とか言うじゃないですか? もう言えなくなりますね(笑)。
「まあ、知っちゃうと言えないですよね(笑)。“シマウマのことか?”っていうことになっちゃいます」
●えーっ、そうだったんですね! 全然知らなかったです!
「あんまり(シマウマは)鳴かないので、動物園で(鳴いている姿を)見る機会は本当に少なくて、それもやっぱり飼育員さんといっぱい話をしていると、そういうことを教えてくれますね。威嚇だったりいろんな理由があると思うんですけど、動物園は平和なので、そんなに鳴く必要はないんじゃないかと思いますね」
●それから“カバの汗の色が赤い”っていうのも驚いたんですけど……?
「よく話題になるのは、血の汗をかくとか、ちょっと大げさな表現で有名になっちゃったんですけど、赤と言ってもカラメルみたいな、赤褐色や茶褐色のような色なので、正しく写真を出したいなと思って、割と知っている人も最近は多いと思うんですけど、あえて載せました」
●どうしてこんな茶色いんですか?
「カバって本当に、水の生き物といえるくらい水の中にいるんですよ。なので、陸に上がった時にその汗に殺菌作用があったり乾燥を防ぐ効果があるって言われていますね」
●乾燥を防ぐ効果って、なんか女性にはいいなって思っちゃいましたけど(笑)。
「でも、玉のような汗なので、本当に垂れるほど汗をかかないと乾燥を防げなそうですけどね。カバは手で塗れないですからね」
●それから、イルカの鼻が頭の上にあったりとか、ヘビの鼻が口の中にあったり……。鼻は顔の真ん中にあるものじゃないんですね(笑)。
「臭いを嗅ぐためのものが鼻だと思うじゃないですか。イルカにとっては本当に呼吸のためで、イルカって口で呼吸できないんですよ。口は食べ物を消化器官に持ち込むだけのもので、鼻は頭に付いている穴なんですけど、あれは呼吸のためなんですよ。
イルカとクジラって同じ生き物なので、よく昔、クジラが背中から水をピューって吹いて、口から飲まれて頭の鼻からピューって出る、みたいな漫画とかあったじゃないですか。あれはね、繋がってないからありえないんです」
●えーっ、そうなんですか!? じゃあ、アニメの世界ってことですか!
「アニメの世界です(笑)。息をバーって吹く時に、周りの水を巻き込んでプシャーってなるので、水を吹いてる、潮を吹いてるって言われてるんですけど、本当は息なだけで、あそこは口と繋がっていないんです」
●へぇ〜、そうだったんですね! それで、イルカの鼻は頭の上に!
「そうですね。機能的ですよね、水面からそこだけ出せばピューっと呼吸が出来るので」
●確かに。あと、ヘビの鼻は口の中って、舌ってことですか?
「ヘビって、ちゃんと鼻の穴があるんですけど、そんなに臭いを嗅ぐっていう能力はないらしいんですよ。口の上アゴの裏にヤコブソン器官っていう、臭いを感じる器官があるんですね。ヘビのベロって二股ですよね? それを外に開いて出して臭い物質をまとわせて、しまう時に上唇をなぞる感じで情報を伝達するんです。……ちょっと伝わりにくいですね(笑)。
匂いを息と一緒に吸って……っていう人間の感覚とは違くて、物質を得ることで伝達する、って言ったらいいのかな? そういう方式を採っているみたいですね。
エサがありそうな場所も、“なんか動いているな?”と思ったら、舌をペロペロってして、その先に何がいるかを、匂い物質を感じ取って口の中で匂いを分析することで“あ、エサだ!”と思ってエサに襲いかかるとか……。結構、高度な技術を使っているというか、凄い体なんですよ!」
カエルとの衝撃的な出会い!?
※続いて、「生きものカメラマン」という肩書きにした理由についてお話いただきました。
「動物カメラマンとか、自然カメラマンとか、風景カメラマンとか、いろんな名前がありますよね。その中でも、まず写真家っていう言葉が、どちらかというとイラストレーターと画家のような、カメラマンと写真家の差を凄く感じていたんです。
私はあまり、1枚で人に見せるような芸術的な写真を撮るタイプではないので、まずカメラマンなんですね。……凄く理屈っぽくてごめんなさい(笑)。
それで、生き物も、動物っていうと大きな動物を皆さん思うんですけど、メインがカエルとかヘビとかトカゲとか、あとは変わったペットだとか……。動物園の生き物も撮るんですけど、あまりこだわりがなくて、自分が面白いと思った生き物を撮るので、なんか“動物”という表現も違くって……。でも、全部自分が決めたわけじゃなくて、だんだん本を作っていく上で、みんながそう言い出したのが“生きものカメラマン”だったので、そう名乗っています(笑)」
●動物写真家ではなく、生きものカメラマン……。
「はい。もっと気楽に、漫画を読むように呼んで欲しいと思って本を作っているので、ぴったりかなと思っています!」
●もともと、そういった生き物が小さい頃からお好きだったんですか?
「はい、小さい頃からですね! “カエル、何で好きなんですか?”って聞かれるんですけど、理由は思い当たらないぐらい昔から好きで、たまたま出会いとかは覚えていますけど。カエルは衝撃的な出会いだったんですよ、可愛くて!」
●か、可愛くて…!? どんな出会いがあったんですか?
「もともと、その前から動物園とかに行くとカエルのおもちゃを欲しがったらしいんですけどね。実際には、よく不良と危険な人しか集まらないような沼みたいなのが近所にあったんですけど、マムシもいて、“危ないから行っちゃダメ!”って言われるようなところに生き物がいっぱいいたので、よく学校から帰ってくると行っていたんですね。
そこでは、やっぱり用心して歩くんですけど、そこで水に浮いているカエルを見たんですよ。そこで初めて実際のカエルを見た時、もうマムシも何も関係なく駆け寄ってしまっていた自分がいて(笑)。
それから、カエルをなんとか自分の庭で飼えないかとか、いろいろやりましたけど、そういうことを繰り返しているうちにカメラマンになっていたっていう感じです(笑)」
●水族館にも勤務されていたんですよね?
「はい、8年弱ぐらいは水族館にいました」
●それは、カメラマンになる前っていうことですか?
「前ですね。高校を出て、生き物の仕事にやっぱり就きたくて、それでたまたま縁があったので、江ノ島水族館に入社して、それから少しの間だけラッコの飼育係だとか、ショーのアシスタントだとかをやっていました。それで、淡水魚の水族館が近くにあったんですけど、そこを江ノ島水族館が飼育を担当していたので、そこに異動してからはずーっとカエルとかオオサンショウウオとか、そういうのばっかり展示していました」
●じゃあ、もう毎日が楽しくて仕方なかったんじゃないですか?
「毎日ね、午前中に仕事を終わらせて、“調査”という名目で、よくそこら辺の田んぼに出てカエルを捕まえてきて、“◯月になると、このカエルの卵があるよ”とかを、廊下のちょっとしたスペースで見せる展示をしていましたね。それをやっている時に、やっぱり解説板を作るために写真を撮り始めたんですね。それで何となく、今の状況にあります」
動物の持ち方もいろいろ
※松橋さんは子供たち向けに「生きものの持ち方教室」も行なっています。その教室のお話もしていただきました。
「『生きものの持ち方教室』っていうのを結構、広くやっているんですね。それで、小学校や図書館に呼んでもらったりしてやるんですけど、本当に持てないけど来てみたっていう子でも、ちゃんと大人が“こう持てば危険じゃないよ”とか、正しい持ち方を教えれば“やってみようかな?”って必ず言うので、本当に何も持たずに帰る子ってほぼいないんですね」
●好奇心がやっぱりありますもんね! 松橋さんの本の中に、『生きものの持ちかた』っていう本もありましたけれども、確かに“こうやって持つんだよ”っていうのがズラーっと載っていましたね。“カエルも種類によって持ち方が違うんだ!”とか、“ヒキガエルとアマガエルとツチガエルで、持ち方が全然違うんだ!”とか、面白かったです!
「ありがとうございます! 本当にね、大きさとか持った時の生き物の反応で変える必要もあるので、(本に載っている持ち方が)絶対ではないんですけど、ある程度の基準というか、こう持つといいよっていうのを知っていると、どこに行っても困らないと思うんですよね。
今だと、結構キャンプとかみなさん、しますよね? キャンプ場には必ずヘビもカエルもトカゲも虫もいるので、そういう時にちょっと(この本を)持って行っていただければ、参考になるかなと思います。
ヘビをわざわざ捕まえる必要はないんですよ。それに、マムシとか毒ヘビもいるので、知らずに捕まえてはいけないんですけど、でも例えば、捕まえざるを得ない状況、テントの横にいたとか、中に入って来ちゃったとかっていう場合には、凄く役に立つんじゃないかなと思います」
●そっかぁ、松橋さん自身も、小さい頃の経験があるから今に繋がっているんですもんね。
「そうですね。持ち方っていうのは自分独自でいろいろあったんですけど、ペットショップだとか動物園だとか獣医さんだとか、いろんな動物つながりの友だちが出来ると、“えっ、お前はそうやって持つんだ!?”みたいなのがあるんですよ。
それって職業柄もあって、ペットショップなら、本当に移動するために効率がいいとか、そんなことをやっていたら(動物に)掴まれちゃったり噛まれちゃうとか、いろんな合理的な理由があったり、それをまとめたのがこの本なんですね」
●確かに、獣医さんはこう持っていますよとか、ペットショップの方はこう持っていますよとか、いろんな違いもあって、着眼点が面白いって思いました!
「子供の頃からやっていたことを、子供に教えたくなっただけです」
持とう、飼おう、捕まえよう!
●松橋さんの本を読んでいると、“あ、生き物って可愛いな”とか、“こんな生態があったんだな”とか、面白いなっていうふうに、生き物に触れてみたいなって気持ちになりました!
「それがもう狙いなので、本当にありがたいです!」
●私、実際に父と母が小さい頃に犬をそれぞれ飼っていて、死んじゃったことが凄く悲しかったので、娘に同じ思いをさせたくないっていうことで、私自身はペットを飼ったことがなかったんですね。グッピーしか飼ったことがなくって、なので生き物にちょっと苦手意識があったんですけど、松橋さんの本を読んだら、“あ、生き物って、いいかも……”って思いました!
「まぁ、飼わなくてもいろいろと、本当にどこに行っても生き物には会えるのでね。この本にも書いたんですけど、“見学”っていう言葉。例えば水族館見学だとかってありますけど、見学ってやっぱり、さらっと観て“あー、この生き物がいた!”とかでみんな動いて行っちゃうんですね。
でもそうじゃなく、もう少し“観察”を動物園や水族館でも、自然の中で生き物に会うのと同じ感覚で、観察のつもりで観ると、いろいろなことに出会えたりするんです。“生き物は身近だよ!”っていうことをずっと伝えたくて……。そう思っていただければ嬉しいです」
●“見学”じゃなく“観察”というと、具体的にどんなことをすればいいんですか?
「水族館で魚の前にいると、どうしても解説板を見て“あ、いた!”で終わっちゃいますよね。そうじゃなくて、そこの解説板には必ず、どういう魚かとか、こんなことをするよ、とかが書いてあるので、それが行なわれるまで観るんです。
で、それを知りたければ、飼育員さんがいたら呼び止めて、“これ、いつもやるんですか?”とか、ちゃんとコミュニケーションをとれば、“日中はやらないよ”と言われたら、そこでずっと観察していてもしょうがないですしね。そういうふうに、自分からチャンスを探せば観察に繋がるなと思っているんですよね」
●確かに、小さいころに水族館だったりとか、動物園だったりっていうのは、行く機会は多かったのにもかかわらず、全然生き物について知らなかったなって思いました!
「そうですよね。目視というか、確認のために行っているような見方をみんなするので」
●“わー、ペンギンだ”“わー、イルカだ”とか……。もうそれで終わっちゃっている気がします。でも、今の子供たちって、実際に生き物に触れる機会ってあんまりないんじゃないですかね?
「そうですね。なので、“身近な生き物”っていう表現を、よくカエルとかヘビとかトカゲにしていたんですけど、もう最近では、身近っていうとペットショップのハムスターとかって言い出す子が、本当にいるんですよ!
それって何でかなと思った時に、今、“自然保護”っていうと、ちょっと距離を置いて見守りましょうとか、自然に立ち入らないようにしましょうとか、生き物は捕まえないようにとか、飼わないようにとかって言うんですけど、それじゃあ全然(生き物に)興味を持たないと思うんですね。
実際に田んぼの横の水路を歩いているサワガニを捕まえたから自然が壊れるわけではなくて、その水路を潰しちゃったら自然が壊れるんですけど、小学生がサワガニを捕まえたぐらいで絶滅するわけでもないと思うんですね。
なので、私は積極的に、やっぱり捕まえよう(と言っています)。そうすれば(サワガニのハサミに)挟まれて、その生き物が挟むんだっていうことも、自分が痛いっていうこともわかりますよね。
そういう、いろんな記憶があって、初めて自然っていうものを理解したり興味を持つと思うんです。それが、“あ、ここにはサワガニがいたな。ゴミは捨てないようにしよう”とかに繋がるんじゃないかなという思いで、子供にずーっと、生き物を持とう、飼おう、捕まえようっていうのは言い続けています」
INFORMATION
新刊『その道のプロに聞く 生きもののワォ! 知ってそうで知らない豆知識』
大和書房 / 税込価格1,650円
哺乳類から爬虫類、鳥、昆虫、海や川の生物まで、生き物の不思議を楽しく学べる本。写真がたくさん載っていて、解説文もわかりやすいのでオススメです。ぜひ、お子さんと一緒に読んでみてください!
また、ロングセラーになっている本『その道のプロに聞く 生きものの持ちかた』は、知っていると、いざという時に役立ちますよ!
いずれも詳しくは、大和書房のHPをご覧ください。
松橋さんの近況はオフィシャルブログをご覧ください。