水産女子プロジェクト! さかなメデリスト!?
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、水産庁・福釜知佳(ふくがま・ちか)さんです。
子供の頃から海や魚介類を食べることが大好きだった福釜さんは、千葉の海で行なわれた、高校の臨海教室でコーチをやった経験から、泳ぐことだけではなく、海のことも生徒たちに教えたいという思いが芽生え、東京大学大学院で海の生物などを研究。そして、水産資源の管理に興味を抱き、農林水産省に入省。現在は水産庁でご活躍されています。
福釜さんは子どもの頃から魚料理と海が好きで、大人になった今では、お魚に関する仕事をされているんです。
今回はそんな福釜さんに、水産庁が進めている水産女子プロジェクトや、お魚を愛でる「メデリスト」のお話などうかがいます。
水産女子プロジェクトとは?
※水産庁では現在、「水産女子プロジェクト」を進めています。どんなプロジェクトなのでしょう。
「漁業者さんって女性がすごく少ないんですけれど、それでも働いている人はいらっしゃるので、そういった人を元気にする、あるいは漁師の嫁として嫁がれた人が水産界では活躍されていて、港での荷捌きとか、水産加工業、あるいは流通業で働いている人の環境改善を目指す、そういったプロジェクトです」
●漁師の人のお嫁さんっていうのは分かるんですけど、漁業者の人も実際、女性の人っていらっしゃるんですね。
「例えば海女さんは、ほとんど女性が多いですよね」
●あー、そうですね! 海女さんも水産女子プロジェクトの一員になるんですね。プロジェクトのメンバーはだいたい何人ぐらいいらっしゃるんですか?
「現在、50名の人が所属されていらっしゃいます」
●活動は個々にされているってことですか?
「そうですね」
●どんな活動を皆さんされているんですか?
「例えば漁師さんであれば、ただ漁をするだけではなくて、自然に優しい漁をしようということで、ゴミを回収したりとか、あるいはもっと高く売れるようにしようということで、産地直送の取り組みをされていたりします。
水産加工、流通、あるいは魚食普及をやっていらっしゃるメンバーもいるんですけれども、そうした人は一般向けにお魚捌き教室とかワークショップだとか、そうした活動を通じて、魚の消費拡大を目指した活動をされていることが多いです。
推進会議というものをこちらで開いて、全国で活躍されている皆さんを集めて、一同に介して交流してもらう、といった会議を行なっています」
●会議はだいたいどれぐらいの頻度でされているんですか?
「推進会議は年に1回から2回ぐらいです。このプロジェクト自体が、一昨年2018年の11月に発足したので、まだ1年と半年もいっていないプロジェクトなんですね。推進会議を3回開いたということで、今も試行錯誤中ではあるんですけど、年1回程度は今後も開かれていくのかなと思います」
●漁師の人もいれば漁師のお嫁さんもいて、また海女さんなどもいて……色んな方々が集まって、具体的にどんなことを話し合われるんですか?
「そうですね、それぞれの活動の紹介を通じて交流を図るっていうのがひとつ。それから、自分たちが具体的にどんなことについて困っているか、それに対してどういう解決方法があるか、といったことについて話をしてもらいました。
例えば、漁師は一般的にきついとか、あとは魚が売れないとか、女性用のグッズがないとかですね。そういった意見があります。それに対して、例えば売れないってことであれば、価値を高める産地直送だとか、加工して売ろう、とかですね。
あるいは、水産用のカッパは男性物しかなくて、女性物っていうのがあまりないので、可愛い色だとか、もう少し小さいサイズのものを作ってもらえるようにお願いしようっていう話をしています。
例えば今、企業さんとコラボして新しい商品を作るっていうのが、このプロジェクトの活動のひとつなんですけれど、モンベルさんと共同開発をしていて、“フィッシャーマンビブ”っていうカッパを開発するっていうことで今現在、改良を重ねているというところです」
●漁業に携わる女性の方々がどんどん増えたらいいですよね!
「そうですね」
さかなメデリスト!?
※「さかなメデリスト」とは一体、どんな資格なんでしょうか。
「水産女子プロジェクトのメンバーでいらっしゃる、水島さんっていう人が魚食普及の活動をされているんですけれど、その人が、都市に住んでいる人でも魚を身近に感じられるような資格を、ということで、ワークショップを開いています。
そして、“さかなメデリスト”っていうのは魚を五感で感じるという、どうやったら五感で感じられるかっていうことをわかっている人、というものです」
●魚を五感で、どう感じるんですか?
「正面から見たり、触ってみたり“ウロコがあるな、ないな”とかですね。あとは、磯の近くに棲んでいる魚はちょっと臭うなとか、そういったところですかね。そして最後には食べる、と(笑)」
●さかなメデリストになりたい! って思っても、誰でもなれるわけではないんですよね?
「私は仕事とかで関わっているので、日常的に関わっている人として認定していただいたんですけれど(笑)、水島さんが開いている手まり寿司ワークショップだとか、あとはツアーに参加されたら認定いただけるということでした」
●私、資格マニアなので、さかなメデリストってすごく興味があったんですけど(笑)、試験があるとかではないんですね。
「そうですね、見かたを教えてもらえればメデリストになれますね」
●ワークショップ、ちょっと参加してみたいです(笑)。
「是非、参加してみてください!」
●魚は、見るのも食べるのもやはり大事なことなんだよ、っていうのを教えていただけるワークショップっていうことなんですね。
「そうですね」
<サステナブル・シーフード>
「サステナブル」は「持続可能」という意味で、直訳すると「持続可能な海の幸」。私たちがこの先も海の幸を食べ続けられるように、水産資源や環境に配慮した漁業で獲られたり、環境と社会への影響の少ない養殖場で育てられた水産物を意味します。
ちゃんと基準もあって、水産資源と環境に配慮した漁業で獲られた天然の水産物には、「MSC=海洋管理協議会」の認証マーク、そして、環境と社会への影響を最小限にして育てられた養殖の水産物には「ASC=水産養殖管理協議会」の認証マークがつけられています。
この先、将来もずっと海の幸をいただくために意識しておきたいことですね。皆さんも、今度、スーパーマーケットなどの水産コーナーでMSCまたはASCのラベルがついた「サステナブル・シーフード」を探してみてはいかがでしょうか?
そんな「サステナブル・シーフード」の普及に、積極的に取り組んでいる企業もあります。それは、大手電機メーカー・パナソニック。2018年3月から、本社を含む2つの拠点の社員食堂で「サステナブル・シーフード」を導入していて、今年2020年中に国内全ての社員食堂で導入を目指しています。
また、国内外のトップシェフの間にも「サステナブル・シーフード」を料理に使ったり、お客さんに勧めたりする動きが出始めていて、飲食関係者向けのセミナーなども開かれているんだとか。食材と日々向き合う料理人だからこその危機感、使命感があるのではないでしょうか。
魚をみんなで管理!?
※年々、漁獲高が減っている中、どんな対策が有効なんでしょうか。
「科学的な情報に基づいて、みんなで管理を行なっていくっていうのが大事だと思っています」
●みんなで管理、というのは?
「例えば、魚は誰のものでもないので、誰か一人が獲り過ぎてしまうと“俺も獲りたい!”って人がたくさん出てきてしまって、みんなで魚の獲り合いになってしまいます。なので、獲るためのルールを決める。例えば上限、あるいは獲る回数だとかを決めて、そのルールに基づいて漁業をしていくっていうことが重要だと思います」
●こういった漁獲量が減ってきているというのは、温暖化の影響などもあるんですか?
「例えば今年2020年だとサケとかスルメイカが不漁になったりしています。一方で、これまでは西のほうは暖かい海でしか捕れてこなかったブリとかシイラとかが、例えば北海道でブリが大漁に捕れているとか、魚の北限が北に上がってきているっていうことも言われています」
●福釜さんご自身が心配されていることって、何かありますか?
「今まで食べられていたものが食べられなくなってしまうっていうのは心配しています」
●そうですよね……。福釜さんは、魚を食べることが小さい頃からお好きだったんですか?
「そうですね! 小さい頃、風邪で熱を出した時にですね、私はお粥がとても嫌いで、それでお粥は食べられないんだけれども、手巻き寿司なら食べられる! っていうことで、お寿司をパクパク食べていたぐらいですね(笑)」
●そうなんですね! じゃあ、お魚に対して親しみはずっと小さい頃からあったんですね。じゃあ、現在も食生活の中心はお魚なんですか?
「そうですね、どんなに少ない日でも1日1品以上は魚介類を食べるようにしています。もし食べられなかった時は、おやつに海苔だとか、あるいは飲み物として出汁を飲んだりしてます」
●出汁を!? なるほど〜、凄いですね! 日々、海のものを生活に取り入れているんですね。お休みの日とかは海に出かけたりもするんですか?
「そうですね、今でも高校の水泳教室に、教える者として参加しているので、夏には千葉の鋸南町に泳ぎに行っています」
●そうなんですか〜!
その魚、どこから来たの?
※水産資源が減っているなか、私たち消費者が出来ることは何か、お聞きしました。
「エコラベルが付いてる魚を買われるっていうのは、消費者として出来ることのひとつかなと思っています。皆さんもフェアトレードのコーヒーとかを選んで購入される人もいると思うんですけど、それと同じようにですね、選択肢のひとつとして環境に優しい漁業で獲った水産物を購入するっていうのが出来ることかなと考えます。
それから皆さん中々、捌かれてない魚に触れる機会が少なくなってきていると思いますので、そうした機会を少しずつ増やすとか、捌いていない魚をお魚屋さんに頼んで捌いてもらって、それで買うっていうだけでも、だいぶお子さんとかも含めて意識が変わってくると思います。なので、どういうところから来たかっていうことに、少し思いを馳せてもらえればなと思います」
INFORMATION
水産女子プロジェクト
水産庁が進めている水産女子プロジェクトには、全国から様々な活動をされている人が参加されています。メンバーや活動内容も含めて、詳しくは水産女子プロジェクトのサイトをご覧ください。
さかなメデリスト
魚をめでるワークショップなどの開催情報や内容が載っています。詳しくは、さかなメデリストのサイトをご覧ください。
- さかなメデリストHP:https://sakanamedelist.com