リスナーの皆さんの中にも花粉症で苦しんでいらっしゃる方は多いと思うんですが、現在、東京都の花粉症患者は、すでにその人口の30%を越えているのではないかと言われるほど。
そもそも、花粉症の人がいきなり増えた理由の1つとして、戦後に植林されたスギが繁殖期に入り、花粉を大量に発生させている事が挙げられていて、スギはすっかり悪者扱いされているわけですが、本来、森の中に自生しているスギの木そのものは、周囲の生物や私たち人間にとっても、多くの恵みを与えてくれている木なんです。
例えば、スギは空気を清浄する力や、殺菌効果が高い事から、小鳥たちは産卵の際、巣の中にスギの葉を入れていたり、山に暮らす人々も、「ちょっとくらいの風邪なら、杉山に入れば直る」と言っている他、スギの葉の香りの成分の中には、気分を和らげたり、脳の働きを良くする効果がある事から、お香の原料にも使われています。
また、「フィトンチット」を多く含むスギの木で家を建てると、家自体が森林浴の効果をもたらすと言われているなど、スギ自体は決して悪くないし、その昔、人々が大量にスギを植えた気持ちもわからなくはありません。
ただ、問題なのは、そうした植林によって、人間が大きく生態系を変えてしまったという事。そこに、食生活や住環境の変化、更に、大気汚染が加わって、結果、スギ花粉症の人が急激に増えてしまったという事なんですね。
また、花粉症と一口に言っても、スギ以外にも、ヒノキはもちろん、イチョウやマツ類、そしてなんと、ソメイヨシノで花粉症を起こしたという例があるなど、花粉症の原因となる樹木や植物は、日本国内だけでも、実に40種類以上もあるんだそうです。
また、「所変われば、品変わる」とでも言うんでしょうか、イギリスでは最も花粉症を引き起こす樹木の代表にサクラが挙げられている他、アメリカのフロリダでは、なんとマンゴーの花粉に反応する人が多いんだとか。
一方では豊かな恵みを与えてくれている樹木や植物たちが、もう一方では苦しみの元になってしまった現代社会。もしかしたら、花粉症は、科学物質にまみれてしまった私たち人間への、自然界からの警鐘なのかもしれませんね。