2011年4月23日
今週のベイエフエム「NEC presents ザ・フリントストーン」のゲストは、C.W.ニコルさんです。
作家、そして「C.W.ニコル・アファンの森財団」の理事長でいらっしゃるC.W.ニコルさんは、今年が国際森林年ということで、オークヴィレッジの代表・稲本正さんや、南青山のレストラン「レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ」のオーナーシェフ・成澤由浩さんと共に新しいプロジェクトを立ち上げ、それぞれの立場から森について発信していくそうです。
今回はそんなニコルさんに、森づくりのお話などうかがいます。
※ニコルさんは、オークヴィレッジの代表・稲本正さんが中心となって立ち上げた“国際森林年プロジェクト”に、日本を代表するシェフ・成澤由浩さんと共に協力しあい、イベントなどを行なうことになっています。このプロジェクトのテーマが「森を創る・森を使う・森を食べる」ということで、ニコルさんは森創りの立場から発信していくそうですが、ニコルさんは森創りについて、こんな考えをもってらっしゃいます。
「まず、大昔からある原生林は、時間と神様が作り上げたものなので、人間がその中に入るとすごく落ち着く、特別な場所だと思いますけど、日本のような文明国には、原生林は森全体の面積の3パーセントぐらいしかないですね。今、森といわれているところのほとんどは、スギだけだったり、カラマツだけ、ヒノキだけという、一斉林のような森なんですね。そういうところを僕は森だと思っていません。木の畑だと思っています。だから、これからの森づくりは、生物多様性が大事なんです。原生林に近い、色々な木々、色々な鳥、色々な虫、色々な動物が住むことができる森が理想的です。そういう森は、食べ物もいっぱいあって、夢もいっぱいありますよ。」
●それが、今ニコルさんが作っている“アファンの森”なんですね。
「そうです。二次林のような森で、人間の都合は放っておいて、色々な生き物のことを考えたら、森の恵みはどんどん出てくるんですよね。それは、黒姫で26年間、森づくりをやってきた僕もビックリしたことです。」
●アファンの森は今、春だと思いますが、春のアファンの森はどんな感じなんですか?
「今は、雪が半分ぐらい溶けました。なので、桜はまだ咲いてないです。アファンの森では、桜とコブシは一緒に咲きます。それから、フキノトウがどんどん出てきます。」
●ということは、まだアファンの森は寒いんですね。
「夜は寒いですね。」
●これから新緑の季節になって、様々な植物の芽が出てくるんですよね。
「そうですね。小鳥たちは巣作りを始めますね。まずオスたちは、自分の縄張りを決めます。そして、メスに向かって、『僕は一番いい男で、ここは一番いいところだから、こっちにおいで!』といった感じで、一生懸命唄います。だから、春と夏の始まりはとても賑やかですね(笑)。それから、巣にある卵から小鳥が出てきたら、静かになります。だって、自分の巣がそこにあるということを、みんなに教えたくないじゃないですか。なので、子供が卵から出てきたら、静かになります。そうなると、カエルが合唱を始めて、昆虫たちも唄い始めます。いつも小川が笑っていて、風で揺れた木の葉っぱが唄ったり踊ったりしているので、賑やかで楽しいですよ(笑)。」
●それはいいですね!(笑) アファンの森では、今年の春も植林をするんですか?
「するかどうかは、どの程度のダメージがあるかを見てからですね。あと、3、4年前ぐらいに新しく手に入れた土地を、間伐しないといけないんです。間伐してから、木を植えるかどうかを決めます。」
●どのぐらいのダメージがあると、植えなおすんですか?
「森は9万坪もあるから、全部同じパターンで植えなおしていません。ダメージというのは、冬の間にネズミが若い木の根を食べてしまうと、その木が死んでしまうんです。そういうものが木のダメージなんですけど、そのときに同じ種類の木を植えなおすか、違う種類を植えるかを判断します。あと、雪で折れたとか、色々なダメージがあるんですね。『新しく木を植えましょう! これで自然保護をやりました! はい、終わり!』というわけにはいかないんです。僕と森番の松木さんは100年先の森のことを考えています。」
●ちなみに、どのような種類の木を植えるんですか?
「今まで、その森に元々ある木ですが、26種類の木を植えています。」
●広葉樹ですか?
「広葉樹も針葉樹もあります。僕としては、これからは、あまり大きくならないような木も植えていきたいですね。クロモジとかサンショウ、ミズメザクラやニオイコブシなどの種類を増やしていきたいです。」
●それはなぜですか?
「アロマオイルが、そういう木の枝や葉っぱから取れるからです。あと、その方が、鳥や昆虫たちも喜びます。」
●そういった木たちが育ってくれるといいですね!
●日本は、今回の震災から復興していかないといけないですけど、そのときに“森”が重要なキーワードの一つになるんじゃないかと思うんですが、ニコルさんはどう思っていますか?
「誰だって分かっていることですけど、家を無くした人たちや家族を亡くした人たち、仕事を失くした人たちのケアをすることが最優先じゃないですか。みんなでどうにかしないといけないんですね。それから、今回の地震で日本の土地に大怪我を負いましたけど、これは人間の力では治せません。なので、人が健康的な森と山と川に、汗と知恵と愛情をかけていったら、森と山と川の力で、傷ついた日本の土地と海岸が、少しずつ良くなると思いますね。
これから、コンクリートを張るとか埋め立てるとか、そういうことをやると思いますけど、それだけではよくなりません。日本の面積の67パーセントは森です。なので、健康的な森があれば、健康的な川がでてきて、健康的な森と川があれば、空気と水が生まれますよね。
日本の森は、日本人の心のふるさとです。日本人の心を治すには何が必要なのかというと、僕は健康的な自然が必要だと思いますね。トラウマを受けた人とか、すごく悲しくなった人などが、健康的な森の中に入って、焚き火の前に座って、熱いお茶を飲みながら、人の心の温もりを感じることができれば『自分は一人じゃない』って思えるんですよね。」
●ニコルさんはこれまで、心に傷を負った子供たちをアファンの森に受け入れる “こころの森プロジェクト”を行なっていらっしゃいますが、今回、このプロジェクトで、東日本大震災で孤児になってしまった子供たちを受け入れようとしているんですよね?
「7年前から、トラウマを受けた子供たちとか、目が不自由な子供たち500人以上を、僕たちの森に受け入れてきました。今回はもう少し拡大して、災害でものすごく大きなトラウマを受けた子供たちも受け入れていきたいと思っています。」
●やはり、森に来ると、子供たちの様子は変わりますか?
「子供たちが、生きている森に来れば、閉ざされた心の窓が少しでも開くんじゃないかと、僕は信じています。この7年の間に、奇跡に近い変化も見てきています。生きている森って、子供の心を癒すパワーがものすごくあるんですね。僕たちが出来ることって限られていますけど、それが数人、何十人が集まって、継続的に協力しあえば、大きな力になると思います。」
※ニコルさんは4月23日(土)と4月24日(日)に、代々木公園周辺で開催される「アースデイ東京」の実行委員長を務めてらっしゃいますが、今回、特別にニコルさんプロデュースのレストラン「C.W.ニコルのフォレスト・キッチン」が登場します。そこでは、こんな食材を使っています。
「植物系しか食べない人は怒るかもしれないですけど、鹿の肉を使います。『バンビちゃん、かわいそうじゃないか』という人がいますけど、日本で一年間に大体14万匹の鹿が有害駆除で殺されていて、95パーセント以上の肉は捨てられています。僕は、鹿一頭あれば、100人分の料理を作ることができるんです。
年間で14万匹の鹿が駆除されていますけど、本当は20万匹ぐらい捕らないとダメなんです。鹿が畑や森、森の中の珍しい植物、牧草地、ワサビ畑などに対してすごく有害なんですよ。だから鹿を駆除しないとダメなんです。駆除するなら、美味しいから、肉も食べましょう。鹿の肉は、コレステロールが少ないし、アミノ酸は高いから、健康にいいですよ。」
●どんな味がするんですか?
「鹿はあまり脂がないので、さっぱりしています。肉って、肉独特の味があるんですよね。都会の人は、鹿やイノシシの肉を『臭い』っていうんですけど、僕はそれを聞くと、本当に腹が立ちます! もし、本当に肉が臭いなら、その肉の扱い方が間違っています。もしくは、自分にとって慣れていない匂いを嗅いだときに『臭い』と思ってしまっているのかもしれないですね。鹿の味って、その鹿が何を食べていたかによるんですよね。」
●同じ鹿でも、一頭一頭違うんですね!
「それから、年齢によっても違います。ただし、鹿はよく走るので、肉の中にある鉄分が高いんですよね。だから、血をちゃんと抜かないと、錆びた感じの味がします。それさえ気をつければ、その味はしないですね。なので、僕が出す料理は、臭くないです。『臭い』なんていう人がいたら、フライパンなどで、頭をボンっと一発叩きますよ(笑)。」
●(笑)。アースデイ東京では、すごく美味しい鹿肉の料理が食べられるんですね。
「鹿肉とシイタケを使ったハンバーガーを出します。それと、キーマカレーと焼肉を出しますね。料理をイッパイ出したいんですけど、アースデイでは無理らしいです(笑)」
(このほかのC.W.ニコルさんのインタビューもご覧ください。)
今回、ニコルさんにお話をうかがって、改めて森を「創る」事の大切さを知りました。ただ、植林をするだけでなく、多様性を考えながら、まさに創り上げていくんですね!
でも、やっぱり百聞は一見に如かず。ぜひ、次回はアファンの森に行ってみたいです。
オークヴィレッジの代表「稲本正」さんが中心となってスタートし、作家のC.W.ニコルさんも協力する「国際森林年プロジェクト」の特別イベントが開催されます。
「緑の国へ」というテーマで、オークヴィレッジの森づくりやモノ造り、そして「C.W.ニコル・アファンの森財団」の取り組みなどが紹介されます。
◎開催:5月11日から15日まで。
◎会場:南青山・スパイラルガーデン
(東京メトロ・表参道駅すぐ)
さらに、5月12日(木)の夜7時から、緊急提言シンポジウムも開催されます。こちらは、被災された気仙沼の漁師さんで「森は海の恋人」運動で知られる「畠山重篤」さんをはじめ、稲本さんやニコルさん他も参加してディスカッションが行なわれることになっています。
◎お問い合わせ:オークヴィレッジ内・事務局
TEL:03-5368-1209(平日)
ニコルさんが理事長を務める「C.W.ニコル・アファンの森財団」では、活動をサポートしてくださる会員を随時募集しています。個人会員は一口5,000円から。会員になると、アファンの森の見学会に参加できるなどの特典があります。
詳しくは、C.W.ニコル・アファンの森財団のホームページをご覧ください。随時更新されている森の写真を見ることができたり、財団の活動内容などを知ることができます。