2011年6月18日
今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、高砂淳二さんです。
ハワイをライフワークにしている自然写真家の高砂淳二さんは、大自然の風景や自然現象、様々な生き物などを撮影。その独特なトーンと構図、そして生き物への愛情を感じる写真で多くのファンから支持されています。そんな高砂さんがハワイの自然写真の集大成として、写真集「チルドレン・オブ・ザ・レインボー」を小学館から出されました。今回はそんな高砂さんに、ハワイに伝わる知恵のお話などうかがいます。
※ハワイをライフワークにしている高砂さんは、15年前からハワイに通っているそうですが、どんなところに魅かれたのか、お聞きしました。
「最初は、気持ちがいいからということで撮影に行っていたんですが、行くにつれて“なぜ気持ちがいいのか”ということが分かってきたんですよ。なぜなら、ハワイの人ってよく『アロハ』って言いますけど、ハワイの人たちは昔から“アロハに生きよう”としているんですね。
アロハって、一般的に知られているのは、挨拶や愛だったりするんですけど、実はもっと深い意味があって、目の前の瞬間とか、神の息吹を共有するといったような意味もあって、そのときそのときで味わいながら生きるといったようなニュアンスもあるんですよね。あと、人や自然に対して“アロハをもって生きる”といったようなことを、ずっと気をつけて生きているんですね。
なぜ、僕が旅人として行って、いいなと思ったかと、そういう風にして生きているから、旅人に対しても“アロハの気持ちを持って”接してくれるからなんですね。それが僕らに居心地のよさを与えてくれたりしてくれているんだと思いますね。そこからさらに、ハワイアンの知恵といったようなものにハマっていったんですね。」
●そのハワイアンの知恵って、誰かに教わったんですか?
「はい、教わりましたね。2001年頃に、マウイ島にカイポさんという人がいまして、友人が僕にその人を紹介してくれたんですよ。カイポさんは先住民族で、人を癒したりする人なんですね。例えば、薬草を持ってきて、それを使って、病気を治したり、西洋的にいえばカウンセリングのようなことをしたりしています。」
●シャーマンといわれているようなものですか?
「そうですね。シャーマンやヒーラーといったような人なんです。その人に会って、話を聞いていたら、薬草の話や月と人間の関係の話、虹の話など、一つ一つの話が全部面白いんですよね。僕らは、虹といえば、雨が降って、そこに光が当たって、水滴の中で光が屈折してできるって教わっていますけど、ハワイの人たちにとって、自然現象や動物などとの出会いには意味があって、『ただ単に、自然現象として出会っているんじゃない』という考え方を持っているんですね。例えば、虹だったら“祝福”という意味があったりするんですよね。
その虹の話のときに、“夜の虹”があることを教えてくれたんですよ。『月明かりで出る夜の虹があって、それは最高の祝福を意味しているんだ。あと、先祖が癒しや知恵を私たちに与えるために現れてくれているんだ』と教えてくれて、『絶対に見たい!』と思いました。すると、三日後ぐらいに、満月の夜に移動していたら、雨が降って、月明かりに照らされて、虹が出たんですよ! 僕は既に何年も通っていたんですけど、初めて見たので、写真を撮りました。タイミング的にも、話を聞いたばかりだったので、『これはすごい』と思って、それからさらにハワイにハマっていきました。」
●今回出版された写真集「チルドレン・オブ・ザ・レインボー」にある、カウアイ島の写真を見せていただいてビックリしたことがあったんですね。それは、夜のジャングルのようなところに滝があって、その滝の滝つぼの辺りに虹が出ていたんですけど、すごく不思議なのが、虹というと、太陽と虹はセットになっているイメージがあったんですけど、その写真は、星と月しか出ていないんですよね。
「そうなんですよ。あの虹も、昼間に出る虹と原理は同じなんですね。昼間の虹は太陽が後ろにあって、前に雨が降って、そこに光が当たることで虹が出るんですけど、夜の虹も、月にある程度の光量がないといけないんですけど、月が後ろにあって、それに雨が照らされて、虹が出るんです。その虹は、月の周りに丸く出る虹とは違って、アーチ型の虹なんです。」
※高砂さんが、ハワイに伝わる“光の伝説”について話してくださいました。
「“どの子供も、光のボールを持って生まれてくる”といわれているんですね。ボールといっても、球じゃなくて、器の方のボールなんですけど、その子は、鳥と一緒に空を飛ぶこともできるし、サメと一緒に海を泳ぐこともできるし、どんなことでも理解をすることができるといわれているんですね。ただ、段々と成長していって、妬みとか怒りを持つようになると、その光のボールに石ころを入れるようになるので、次第にボールの光が薄れていってしまって、それを続けていくと、最後は自分が石ころになってしまうんです。ただし、そのことに気づいたときに、ボールをひっくり返せば、光を取り戻すことができて、また何でもできるようになるという言い伝えがあるんです。それって、いい話じゃないですか?」
●そうですね。私たちの日頃の心構えにも通じるところがある気がします。
「僕もその話を聞いたときに『いい話だな』と思って、そこから色々なことを勉強したり、人に話を聞いたりしたんですね。すると、“ホオポノポノ”というハワイの知恵があるんですけど、一般的には“人と人との問題解決法”という風に知られているんですけど、実は大きな意味があるものなんです。その中で特に大事なことは“許す”ということなんですね。後は“愛する”という意味がある“アロハ”と、“感謝する”とか“リスペクトする”ということを大事にしていきながら、“正しい”ということを“ポノ”というんですけど、ポノの状態に戻すことを、ホオポノポノというんです。
そのホオポノポノの中で、特に大事にされているのが“許す”ことで、妬みとか怒りなどが、自分のボールの中に石ころとして溜まったときに、どちらがいい・悪いということを超えて、相手を許したり、自分自身を許したり、許されたりして、お互いを許すことで初めて向上して、お互いの怒りとか妬みとかをひっくり返して空っぽにすると、光を取り戻すことができるといわれているんですね。」
●ポノの状態にすることによって、ボールの中の石ころが一度リセットされるんですね。
「そうなんです。特に人がそういう気持ちを持つのって、誰かに対する怒りだったり、うまくいかないときの自分に対する怒りだったり、嫉妬心だったりと色々あると思うんですよ。ボールの中にそれらが溜まってきたら、ボールをひっくり返せばいいんだと思い出すことが大事だということなんですよね。
さらに面白いのが、許すことをハワイ語で“カーラ”というんですけど、同時に“光を取り戻す”という意味もあるので、それは、ボールをひっくり返すのと同じ意味があるんですよね。」
●光と虹って、密接な関係にあると思うんですけど、今回の写真集のタイトルの「チルドレン・オブ・ザ・レインボー」には、どういった意味が込められているんですか?
「これは、何年か前にカウアイ島で撮影をしていたときに、カウアイ島の図書館に寄って、“チルドレン・オブ・ザ・レインボー”という本を見つけたんですよ。その本は、昔アメリカがハワイに渡ってきて、ハワイの人たちに“ハワイ語を禁止”“フラを禁止”“ヒーラーの様々な技を禁止”したりと、ハワイ独特の文化を全部禁止して、アメリカに制圧のようなことをされた時期があったんですね。
そのときに、あるアメリカ人が、ハワイアンを見たり、会ったりしているうちに、『もしかしたら、この人たちはすごい知恵を持っているかもしれない』ということに気がついて、色々と調べたり、勉強したり、人に聞いたりして、その知恵の全容を見たらしんですね。そのことを本にしたのが“チルドレン・オブ・ザ・レインボー”という本なんです。ハワイって、虹がたくさんでるところなんですけど、『虹の国に住むこの人たちは“虹の子供”だ!』ということで、このタイトルを付けたみたいなんですね。
なので、僕は今回、ハワイの自然の色々な写真を撮ってきて、それを見てもらいたいのと一緒に、ハワイアンの知恵をみんなに知ってほしいという思いがあったんですね。そうしたら、ハワイの人々の知恵だから、“チルドレン・オブ・ザ・レインボー”というタイトルをもらって、付けたいなと思ったんです。あと、この本を作っていたときが、東日本大震災の前後で、僕の実家は石巻市にあるので、被災したんですよ。地震後、色々な人の手助けとか世界中の人が手を差し伸べてくれたことに感動して、『ハワイアンだけが虹の子供じゃない。みんな虹の子供で、みんな知恵とかアロハの心とかを持っているんだ』と思ったんですね。それも込めて今回のタイトルにしました。
また、その本に書かれているのが“ホオポノポノ”のことで、それはまさに、ハーモニーのことなんですね。ハーモニーといえば“虹”ですよね。そういうこともあって、今回のタイトルにしました。」
※高砂さんは、最新の写真集を出すためにハワイに撮影に行ったとき、こんな素晴らしい体験をされたそうです。
「今回の本を出す最後の撮影として、12月に半月ほどハワイに行っていたんですよ。そのときに、色々な島を回ったんですけど、そのときはすごく運がよくて、イルカの写真やクジラの写真なども撮れて、今回の写真集に載せているんですけど、25年ほど海に潜ったりしていながら、そのとき初めてだと思ったことが起きたんです。
それは、ボートで海を走っていたときに、ハシナガイルカの群れが来て、その群れの中に飛び込んだんですね。ほとんどのイルカはそのまま泳ぎ去っていったんですけど、その中に一頭だけ白いイルカがいて、カワイイなと思っていると、そのイルカが僕の方に来たんですね。『俺のところに来ちゃったな。なんかウロウロしているけど、遊びたいのかな?』と思っていたら、たまたま僕とイルカとの間に小さいヤシの実が浮かんでいたので、そのヤシの実を取って、イルカに向かって投げたんですよ。すると、そのイルカが、そのヤシの実を鼻で取って、僕の方に持ってきてくれたんですね。そのヤシの実を僕がまた投げたら、また持ってきてくれるといった感じで、キャッチボールのような状態になったんですね。それで、右手で写真を撮りながら、左手でキャッチボールをしていたんですけど、『こんなこともあるんだ』と思って、驚きましたね。
同じ日に、クジラ5頭に海の中で囲まれて、その中の1頭が目の前に近づいてきたんですね。それらを見て、キャプテンも『こんなこと、普通はないよ』と、ものすごくビックリしていました。」
●まさに奇跡ですね!
「そうですね。そういうのは、お願いをしても、なかなか体験できないものですよね。」
※続いて、先ほど高砂さんのお話にも出てきたハワイの言い伝え“ホオポノポノ”の意味について、お話していただきました
「“ホオポノポノ”が、今回の写真集のテーマなんですけど、それって例えば、自分と相手との仲とのバランスを正しい位置に戻すという意味もあるし、人間と神々との間のバランスをとったり、人間と自然とのバランスをとったり、その人の自分の中でのバランスをとったりと、色々な意味合いがあるんですね。ということは、全ての中でバランスをとっていって、ポノの状態に戻す必要があるんですね。
例えば、人間と自然との間だと、ハワイ州のモットーになっている言葉があるんですね。それは、『高潔さの中に、大地の生命が保たれる』という言葉なんですけど、人がポノに生きることで、初めて大地の生命が保たれて、自然のサイクルがうまくいくということなんですね。言い換えれば、人は自然をちゃんと見る役目があるわけで、ただ取り放題みたいに、乱獲をするのは、それらのバランスを失うことなんだと思うんですよ。だから、自分が自然に対して、どうあるべきかを、ポノに戻しながら考えて生きるというのは、結果として、そこに繋がるんじゃないかと思います。」
(この他の高砂淳二さんのインタビューもご覧下さい)
高砂さんのお話や写真集を見せて頂いて、流れていく雲、打ち寄せる波、空にかかる大きな虹など、ハワイの自然の力強いパワーを感じました。そして、そんなダイナミックな自然と共生しているハワイアンの叡智は、私たちの暮らしや、生きるヒントがたくさん隠されていますよね。とても奥深いと思うので、これからもっともっと学びたいです!
小学館/定価2,625円
自然写真家・高砂淳二さんが伝えたい、ハワイに伝わる叡智や伝説、そして、高砂さんだから撮れた奇跡のようなハワイの自然写真が満載の写真集「チルドレン・オブ・ザ・レインボー」を見て下さい。
ヤシの実でイルカと遊んだときの写真や、夜の虹の写真などが掲載されています。
今回の写真集の発売を記念して、現在六本木の東京ミッドタウンにある、フジフィルム・スクエアで写真展を開催中です。大きなパネルで、約70点ほど展示されていて迫力充分! 会場には、高砂さんもいらっしゃるということなので、ぜひお出かけください。
また、6月25日(土)の午後2時から3時30分まで、高砂さんと旅行作家・山下マヌーさんのトークショーが開催されます。
◎開催:6月29日まで
◎開館時間:午前10時~午後7時まで
◎入場:無料
◎お問い合わせ:フジフィルム・スクエアのホームページ
高砂さんの作品や近況などをチェックしたい方は、高砂さんのホームページをご覧ください。これまでの写真集の一覧や、ブログにも行けますので、ぜひともチェックしてください。