2011年7月9日
今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、森山伸也さんです。
アウトドアライターの森山伸也さんは、大学時代に探検部に所属。そのときに訪れたボルネオの森で自然の中で過ごすことに魅了され、その後、バックパックを背負って、国内外のトレイルを踏破されています。
今回はそんな森山さんに、北欧のロング・トレイルや国内のお勧めトレイルのお話などうかがいます。
※国内外のトレイルを踏破されている森山さんに、まず、トレイルの定義についてうかがいました。
「日本でいう登山って、一般的にいうと、一番下の登山口から山頂を目指して、頂上に着いたら下山をするものだと思うんですが、海外で言われている“トレイル”は、“点と点を結ぶもの”なんですね。だから、山頂はそれほど重要じゃなくて、スタート地点から湖を抜けたり、森を抜けたり、谷を抜けたりして、山だけじゃなくて、自然全体を楽しむようなもののことで、二日かけて登ったり、十日かけて登ったりと、みんなそれぞれのスタイルで楽しんでいます。」
●ということは、通るのは山道だけじゃないんですね?
「そうですね。湖の湖畔を歩いたり、海岸があるところもありますので、山の中だけに限らず、自然の中を歩くのが、海外でのトレイルです。」
●基本的に、トレイルで行くコースって、どのように決めているんですか?
「僕の場合は、山の中を長く歩きたいと思っているので、第一条件としては“長い距離のあるトレイル”ですね。」
●どのぐらいの長さですか?
「一年目は450キロのトレイルを歩いて、二年目は150キロ、三年目となる去年は850キロを歩きました。基準としては大体200キロ以上は歩きたいですね。」
●その距離を歩く期間の生活用品は全て背負っているんですよね?
「はい。全て持って歩いています。でも、去年の850キロのときは、日数にして53日間かかったんですけど、さすがに53日間の食料は持てないので、二週間歩いて、村に行って食料を補給して、そこから十日歩いて、次の村で食料と燃料を補給するといった感じでしたね。」
●850キロを歩いたトレイルは、どこのトレイルだったんですか?
「ノルウェーとスウェーデンとフィンランドの国境を歩くトレイルがあるんですけど、そこを歩きました。」
●気候的にはどうだったんですか? 北欧となると寒かったりしなかったんですか?
「そうですね。その三ヶ国は全て北極圏なので、8月15日でも雪が降るぐらい、夏の時期でも一日に四季が訪れるといわれているぐらい変化するんですね。暑いときは半袖・短パンで歩けるぐらいなんですが、天気が悪くなると、雪が降ったり風が吹いたりするので、夏とはいえ、日本の雪山を登るような装備で行っていますね。」
※国内外のトレイルにハマっている森山さんが、今いちばん気に入っているのはどこのトレイルなのでしょうか?
「先ほどお話した、北極圏のトレイルですね。他と何が違うかというと、夏に行くと、白夜なんです。24時間明るいときもあったりするので、時間を忘れて歩いてしまったせいで、歩きすぎて体調を崩したっていうこともありました。向こうのトレイルと日本のトレイルの違いって、広さなんですよね。向こうは、すごく広大は景色が広がっていて、明後日到着する目的地が見えたりします。」
●そんなに遠くまで見えちゃうんですか?
「そうなんです。それほど大きな山はないんですけど、ちょっと高めの丘の上に上がったりすると見えるんですよ。すごく広い景色を見ながら、湖を通ったり、森を通ったりして、長く歩くのはすごく面白いんですよね。なので、最近は北欧に通っています。」
●そんな景色を見たら、色々なことに対する考え方が変わっちゃいそうですね。
「そうですね。動物になったような感じになります。北欧はトナカイが多いんですけど、そこのトレイルを歩いていると、トナカイになったような気分になってくるんですよね。長く歩いていると、そんな感じになってきます。」
●確かに、生き物の日々の行動って“歩く・食べる・寝る”ですから、すごくシンプルですよね。
「僕も長く歩いているときは、食べて・歩いて・寝るの繰り返しなんですよね。最初の二・三日は、山を歩いていることが非日常的なんですけど、日にちが段々経っていくにつれて、それが日常化してくるんですよ。最初は『湖がキレイだな』って思うんですけど、長く歩いていると、それが日常の風景になってくるんですよね(笑)。生活リズムが自然の中でできるというのは、すごく魅力的で、最近はずっと自然の中を長く歩くことを考えています。
ここ最近通っている北欧は、テントはどこにでも張っていいし、飲める水はどこにでもあるというのがすごく魅力的なんですね。どこにでもテントを張っていいということは、自分の好きなところが家になるわけですから、一晩、どこでも寝られるというのはすごく楽しいことですよね。」
●自分が寝たいと思ったところが、今日の寝床になるわけですね。
「そうですね。それが楽しくて仕方ないですね! 日本だと山の中でもキャンプができるところが決められているんですが、北欧はそういうことがなく、登山者に任せているんです。」
●自分で決めるということは、森山さんは一人で行くことが多いんですか?
「そうですね。2008年と2009年のときは一人で行って、2010年は、彼女も山登りをするので、彼女と二人で行きました(笑)。」
●(笑)。それはそれで、違った楽しさがありそうですね。
「そうですね。二人で歩くと、それぞれで感動しているところが違ったり、自分では気づかなかったことに気づいたりするので、二人で歩くっていうのも楽しいですね。」
※トレイルは国立公園などの中にあり、国によって、色々な規則やルールがあるのですが、その辺りのことを教えていただきました。
「日本の場合だと、地図を見れば分かるんですけど、キャンプができるところが明確に決められています。アメリカなどでは、場所によって様々なんですけど、例えば、ジョン・ミューア・トレイルというところでは、テントをどこにでも張っていいことになっているんですけど、それでも色々なルールがあるんですね。
トイレをするときは水場から離れたところでしないといけなかったり、熊が多いところでは、食料を入れた袋を木の上に吊るさないといけなかったり、テントの中ではご飯を食べてはいけなかったりといったような規則はあります。」
●そういった各地のルールをキチンと確認をしておく必要があるということですね。他に、守らないといけないルールってありますか?
「アメリカやニュージーランドだと、パーミッションというものがありまして、入山許可証をインターネットや郵送などで、あらかじめ取っておかないといけないんですね。なぜなら、たくさんの人が山に入ってしまうと、それだけ足の踏み跡とかが残ってしまうので、自然保護の観点からパーミッションが定められているトレイルも、世界にはたくさんあります。」
●自然を楽しむには、自分が楽しいっていう考えだけじゃダメということですね。
「そうですよね。自然がなければ、自分たちが気持ちよく歩けないというのは、登山者は皆さん思っていますし、海外の登山者は“自然の中を歩くからには、自然を守っていこう”という意識はすごく高いような気がします。」
●これからトレッキングをしたいと思っている方のためにアドバイスをうかがっていきたいんですけど、持ち物はどのようなものを準備すればいいでしょうか?
「テント泊で山登りをしようとするなら、テントはまず必要になります。あと、寝るための寝袋、食事を作るストーブ、コッヘルという鍋、そして、それらを入れて背中に背負うバックパックが必要になりますね。」
●服装はどうなんですか?
「服装も、汗をかいたり雨に降られたときのことを想定して、綿製の服は止めておいた方がいいというセオリーがあります。なぜ綿は止めた方がいいのかというと、綿は汗や雨の吸い込みはいいんですけど、なかなか乾かないんですね。乾かないまま長時間いると、体温が下がるので、肌着は化繊の物を着るのがセオリーになっています。」
●雨用の道具も持っていった方がいいですか?
「そうですね。肌着の上に着るための、雨と風を弾くレインウェアを上下持っていった方がいいですね。」
●自然の中を歩くと、色々なことを感じると思うんですけど、森山さんは、どんなことを感じながら歩いているんですか?
「最近は、海外のロング・トレイルが多いんですけど、海外の山を歩くと、日本の自然って素晴らしいなって思いますね。日本列島は南北に長くて、北では雪で閉ざされている山があって、南では屋久島のような豊かな森があったりしますよね。海外の山を歩いていると、そういう日本の自然を思い出しますね。」
●そうなんですか!?
「はい。日本の自然はやっぱりすごいなって思いますね。あとは、お腹すいたとか、すごくシンプルなことですね(笑)。あまり難しいことは考えず、とにかく前に向かって歩いています。
二週間ぐらい山の中を歩くときがあるんですけど、そういうときは、極端な表現ですけど“どうやって自分の命を維持するか”といったようなことを考えたりして、どこで食事をしようかとか、どのぐらい休もうとか、そういう生きるためのことを考えたりしています。もちろん、自然も楽しんでいるんですけど、長く歩くときは、食事や休憩のタイミングを考えながら歩いています。」
森山さんはとても楽しそうにトレイルのお話しをされるので、私も本当にトレッキングに行ってみたくなりました。ちなみに、森山さんの国内のお勧めのトレイルコースは、福島・山形・新潟にまたがる飯豊(いいで)連峰という所だそうなので、興味がある方はぜひ行ってみて下さいね!
アウトドアライター、森山伸也さんは「森と山」というタイトルでブログをされています。まめに更新しているので、近況がバッチリ! 各地で撮った写真などもたくさんアップされているので、こちらも楽しめます。