2011年8月6日
今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、古見きゅうさんです。
世界中の海をフィールドに、海の生き物達の写真を独自の視点で撮り続ける古見きゅうさんは今回で2度目のご出演になります。そんな今回、古見さんが今いちばん気になっているガラパゴス諸島のお話をうかがいます。
※世界中の海をフィールドに撮影を続ける古見さんが今いちばんハマっている場所がガラパゴス諸島です。南米エクアドルの沖合、赤道直下の太平洋上にあるガラパゴス諸島は固有種が多く、ダーウィンが訪れ、進化論のヒントになった島としても有名で、78年には、世界自然遺産にも登録されました。
そんなガラパゴス諸島に、古見さんはいつ頃から行くようになったのでしょうか?
「初めて行ったのが2010年の9月から10月にかけて、1ヶ月ぐらいガラパゴスに滞在していました。その間に、色々な島を回るクルーズに乗ったり、ダイビング・クルーズに乗ってガラパゴスの色々な海を見たりしていました。」
●初めて行ったということは、その後も何回か行ったんですか?
「今年に入ってから一度、ゴールデンウィークのときに行っていて、9月頃にもう一度行く予定です。」
●結構行っているんですね。それは、何か魅かれるものがあるから、何度も行くんですか?
「やっぱり、僕が今まで潜ってきた海とは印象が全然違ったので、『ここは通いつめて、写真を撮っておかないといけないな』と思いました。」
●どんな風に違ったんですか?
「まず、ガラパゴス諸島は、南米大陸から1000キロ以上離れた場所にあるので、大陸の動物と交わっていない、独自の生態系があるので、固有の動物がすごく多いんですね。それが面白いんですよね。」
●陸地だけではなくて、海の生物も、他のところとは違うんですか?
「ある程度共通しているところもあるんですけど、ガラパゴス固有の生き物が多いですね。」
●他の地域の生き物と、ガラパゴスの固有種では、どのような違いがありますか?
「僕は世界中の色々な海に行っているんですけど、全く見たことのないような形だったり、初めて見るような模様だったりするんですね。近い種類の魚は他の海でも見ていたりするんですけど、よく見てみると、カラーバリエーションが違っていたりしているんですよね。」
●ガラパゴスの魚って、大きそうなイメージがあるんですけど、どうなんですか?
「確かに大きいですね。あそこは全体的に生き物が大きいんです。」
●気候はどうなんですか?
「気候もすごく独特な感じですね。一応、赤道直下に位置しているんですけど、南極からの海流が上がってきたりするので、結構寒いんですよ。」
●そうなんですか!? 意外でした!
「日中は日差しがすごく強いんですけど、風が冷たかったりしますし、海の中も、フンボルト海流と呼ばれる、南極からの冷たい栄養を含んだ水が南米大陸の西側を上がってきて、ガラパゴスに来るので、それに乗ってきたペンギンがいたりするんですね。ガラパゴス・ペンギンと呼ばれているんですけど、そのペンギンは唯一、赤道直下の環境に適応したペンギンなんです。」
●人間にとっては少し住みづらい、過酷な環境だったりするんですか?
「いわゆる、リゾート的なところではないですね(笑)。」
●(笑)。実際に行ってみてどうでしたか? 大変な思いをしたりしたんじゃないですか?
「朝と晩は、長袖を着ていて涼しいと感じるぐらい寒いんですけど、日中になると日差しがキツくて暑くなるんですね。でも、風が吹くと寒いんです。そして、海に入ると冷たいといった感じなんですよね(笑)。」
●それはトレーニングにもなりますね(笑)。古見さんは、ガラパゴスのどの辺りに行ったんですか?
「ガラパゴスって、島がたくさんあるんですが、空港があるエリアは“セントラルエリア”と呼ばれていて、人が住んでいる島が密集しているんです。まずはそのエリアで、島を回りながら陸上の動物を観察して、その後はダイビング・クルーズに乗りました。ガラパゴスには、ダイビング・クルーズじゃないと行けない島があるんですよ。セントラルエリアから北西に100キロ以上離れたところにある“ダーウィン島”という、チャールズ・ダーウィンの名前が付けられた島があります。そこは、他の島を回る普通のクルーズでは、行くことができなくて、ダイビング・クルーズでしか行くことができないです。」
●ということは、島に入るための規制が多かったりするんですか?
「そうですね。島はすごくたくさんあるんですけど、上陸するために、たくさんの申請をしないといけない島があったり、上陸できない島があったりします。」
●それはやはり、そこにいる動植物を守るために、そういった規制が定められているんですか?」
「そういうことになりますね。」
※古見さんは、今まで2回、撮影で訪れたガラパゴスで、忘れられないシーンがあるそうです。
「すごく印象に残っているのは、ダイビング・クルーズに乗って、ダーウィン島に行ったときですね。その島の周りって、日本の海水浴場なのでたまに出てくるシュモクザメが何千匹と思えるような群れを作って泳いでいたいんですね。」
●そんなにたくさんいるんですか!?
「そうなんですよ。それが見られることで有名な島なので『本当に見られるのかな?』って、ちょっとドキドキしながら行ったんですけど、海に入ったら、そのような群れがすぐ目の前に現れてきたんですね。」
●それはすごいですね!
「すごいところでした。」
●それって、一匹でも迫力があるじゃないですか。それが何千匹となると、どんなことになっちゃっているんですか?
「まず、ここのシュモクザメは、大きさが3メートルぐらいあって、他の海で見るシュモクザメよりも大きいんですよ。そんなやつらが、僕らのことを何も気にしないで、横を通りすぎていくんですね。それを見て『すごいところに来たな』と思いましたね。」
●恐怖心はなかったんですか?
「音もなく向かってくる感じがするので、最初はドキッとしますよね。」
●まさに、映画のジョーズのような感じですね(笑)。
「でも、慣れてくるのか、それが段々と怖くなくなってしまうんですよね。」
●そういうものなんですね。襲ってきたりしないんですか?
「多分ないと思います。」
●そうなんですね。すごい経験をされたんですね。あと、『これは大変だった?』といったような思い出はありますか?
「“水が冷たい”と“気温が低い”というのは、過酷な条件でしたね。あと、風が強かったりするので、波が荒かったりしました。なので、南の島にリラックスするためにダイビングをしにいくという感じではないですね。でも、“暖かいところだけが楽園じゃない”って、よく分かりました。」
●そういった厳しい環境だからこそ、感じることって多かったんですか?
「ガラパゴスに生きている生き物たちが、僕たちを恐れずに、いつもの状態で僕たちと接してくれるんですよ。僕たちって、いつも動物に見つからないように、こっそり近づいて写真を撮っていたりするんですけど、彼らは僕たちのことを何も気にしないで、ありのままの状態で接してくれるんですよね。野生の動物で、そういうことってあるんだなと思って、すごく新鮮でした。」
●確かに、ダイビングをしていると、私たちが近づけば、すぐ逃げちゃうんですけど、本当の自然の中で生きている生き物にとって、人間がいる・いないってあまり関係ないのかもしれないですね。
※古見さんは現在、キャノンギャラリー銀座で「ガラパゴス~僕たちが特別ではなくなる場所」という写真展を開催しています。写真展のタイトルにある、“僕たちが特別ではなくなる場所”とはどんな意味が込められているのか、話していただきました。
「言い方としてどうかなって思うかと思うんですが、僕は人間って、動物の中では特別だと思っていたんですね。それは変わらないと思うんですけど、ガラパゴスに行って、動物と接していると、ガラパゴスの生き物たちが僕たちのことを意識せず、彼らが普段生きている状態で接してくれるので、『この感じはなんだろう?』って思ったんですね。それって、彼らは僕らを同じ動物として迎えてくれているんじゃないかと思ったんです。いい顔をするだけではないけれど、ごく普通の姿で僕らの目の前にいてくれることが印象的だったので、“特別ではなくなる場所”じゃないかなと思って、こういうタイトルにしました。」
●そういう意味があったんですね。今回の写真展で、ガラパゴスの様々な美しい風景があると思いますが、来ていただいた方に、特に見ていただきたい写真ってありますか?
「一番は、生き生きとしているガラパゴスの動物たちの力強さや、僕たちも含めた動物たちの繋がりといったものが伝わればいいなと思いますね。」
●それが一番感じられる写真ってありますか?
「個人的に面白いと思ったのが、ウミイグアナなんですけど、ウミイグアナって普段、昼間は岩の上で甲羅干しをしているような状態で、ほとんど動かないんです。それが夕方、僕が撮影をしていたら、オスとメスなのか分からないんですが、ウミイグアナ同士がキスをするような形になったんですね。ほんの一瞬の出来事だったんですけど、『すごくいい瞬間に出会えた』と思って、涙が出そうになりました。」
●実は、その写真が私の手元にあるんですけど、本当にキスをしているみたいですね。
「してましたね(笑)。」
●(笑)。確かに、この写真は心が温かくなるようなステキな一枚なので、来ていただいた方には是非とも見てもらいたいですね。古見さんが今後行きたい場所ってありますか?
「ガラパゴスには、この先も通っていきますけど、他に通いたいところでは、この間世界遺産に登録された小笠原とか、沖縄の島々にもゆっくり回ってみたいと思いますね。」
●小笠原に行ったんですか!?
「はい、行きました。」
●小笠原といえば、“東洋のガラパゴス”と呼ばれていますけど、ガラパゴスと比較してどうですか? 違いだったり、共通点があったりしましたか?
「共通点というと、小笠原も本島から1000キロぐらい離れた孤島なので、小笠原の中で独自の生態系があるというところは共通していると思いますね。」
●今後撮っていきたい、写真のテーマはありますか?
「僕が撮った写真の中で大元となるテーマは“繋がり”なんです。それは動物同士の繋がりや、動物と人との繋がりといったことなんですが、それが一番大きなテーマとなっています。」
●動物同士の繋がりというと、具体的にはどういうことなんでしょうか?
「例えば、自然の中にいる動物たちって、色々な種類の生き物がいるじゃないですか。それって、僕らが毎日コミュニケーションを取るようなことと同じじゃないかと思うんですね。そういうことが、動物の世界にもあって、動物と人間は同じ生き物というカテゴリの中にはいますけど、どういう接し方をしていくのがいいのかといったことを、大きなテーマとして撮影しています。」
(この他の古見きゅうさんのインタビューもご覧下さい)
古見さんの今回の写真展のタイトルでもある“僕たちが特別ではなくなる場所”という言葉が、とても印象的でした。確かに、本来は人間も地球上で生きる動物の一種類ですし、そこでたくさんの生き物と共生しているんですよね。古見さんの、ガラパゴスの写真を見せて頂きながら、改めてその事について考えてみたいと思います。
水中写真家・古見きゅうさんの現在開催中の写真展「ガラパゴス~僕たちが特別ではなくなる場所~」では、ウミイグアナがキスしているように見える写真や、水中や陸上で撮った生き物の写真など、40点が展示されています。尚、会場には古見さんもいらっしゃいます。
◎開催期間:8月10日まで
◎開館時間:午前10時半~午後6時まで(最終日の10日は午後3時まで)
◎会場:キャノンギャラリー銀座
(都営地下鉄・東銀座駅A7またはA8出口から徒歩1分)
◎お問い合わせ:キャノンギャラリー TEL:03-3542-1860