2011年9月17日
今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、中村忠昌さんです。
今回は、日本人ならではの文化、秋の虫の音を聴く“虫聴き”体験の模様をお届けします。先日、葛西臨海公園にうかがって、以前にもお世話になった、NPO法人・生態教育センターの主任指導員・中村忠昌さんに夜の公園を案内していただきながら、秋の虫の音を録音。また、虫の生態についてのお話もうかがってきました。
●私は今、葛西臨海公園・鳥類園ウォッチングセンターに来ています。既に虫の音がたくさん聴こえてきていますが、今回はNPO法人・生態教育センターの主任指導員・中村忠昌さんにガイドしていただきながら、秋の虫の音を楽しみたいと思います。中村さん、よろしくお願いします。
「よろしくお願いします。」
●早速ですが、この時期に鳴く虫には、どのような虫がいるんですか?
「大まかにいうと、コオロギやキリギリスの仲間がいます。例えば、既に周りでたくさん鳴いていますが、これは木の上に住んでいる“アオマツムシ”という名前で、いちばん鳴き声が聴こえる虫ですね。」
●他には、どのような虫がいるんですか?
「例えば、“エンマコオロギ”や、街中にもいるんですが、意外と気づいていない“カンタン”という幻想的な声を出すものなど、普通の観察会だけでも5~6種類ぐらいは聴こえると思いますね。」
●今回はそういった種類の虫の音を聴きにいくんですね! 鳴くのは、オスだけですか?
「そうですね。でも“鳴く”といっても、口から音を出すのではなくて、羽を擦り合わせて音を出すんですね。虫って、イメージをしにくいかもしれないですが、複雑な音を出していて、その小さな体で大きな音を出しています。」
●羽を擦り合わせる以外に、音を出す方法ってありますか?
「夜に鳴くは少ないんですけど、昼間に音を出すバッタの仲間は、後ろ足と体を擦り合わせて鳴く種類もいます。」
●それはすごく器用ですね! そういった鳴き声って、動物たちにとっての求愛行動になるんですか?
「そうですね。オスがメスを呼んだり、オス同士で自分の縄張りを主張したりするために鳴いたりしますね。」
●それでは早速移動して、虫の音を楽しみにいきたいと思います!
※長澤と中村さんは鳥類園ウォッチングセンターを出て、最初のポイントに移動しました
●私たちは、鳥類園ウォッチングセンターを出てすぐのところに来ているんですけど、向こう側には観覧車が見えます。キレイですね。
「そうですね。よく見えますね。」
●今、目の前に大きな木があるんですけど、これは桜の木ですか?
「そうですね。」
●既に虫の音が聴こえてきていますけど、今一番大きく鳴いているこの虫の音は、何という名前の虫ですか?
「これは“アオマツムシ”ですね。」
●アオマツムシはどういった特徴がある虫ですか?
「これは元々日本にいた種類ではなくて、中国の方からやってきた外来種です。今、頭の上から鳴き声が聴こえているんですけど、普通はコオロギやキリギリスなど、みんな草むらといった足下に生息しているようなイメージがあると思うんですね。でも、この種類は木の上といった、高いところに生息しているので、高いところから声が聴こえるんです。」
●確かに、降ってくるように聴こえてきますね。大きさはどのぐらいの虫なんですか?
「大きさは大体4センチぐらいですね。」
●色はどういった色をしているんですか?
「この種類は、木の上の葉っぱの陰といったところにいるので、葉っぱと同じ緑色です。」
●残念ながら、今は夜なので、その姿は見えないんですが、そういった虫なんですね。では、アオマツムシの声を聴いてみましょう。
(放送では、ここでアオマツムシの鳴き声を聴いていただきました)
※中村さんは、次にこんな虫を紹介してくれました
●先ほどの場所から少し移動して、池の近くに来ましたが、少し違う虫の音が聴こえてきていますが、これは何という虫ですか?
「これは低い声なので聴きにくいと思いますが、“カンタン”という虫です。」
●この虫は、どういった色をしていて、どのぐらいの大きさなんですか?
「これは、アオマツムシよりもやや小さい、3センチぐらいで細い虫ですね。」
●この虫はどういった特徴があるんですか?
「非常に臆病な虫で、葛というツル性の葉っぱが茂っているところにいるんですが、その中にある穴から外の様子を見ます。体を全部出すのではなくて、窓から外を脅えながら眺めるといった生活をしています。」
●ということは、アオマツムシとは違った場所に生息しているということですか?
「そうですね。アオマツムシは木の上が好きな虫で、カンタンは荒地みたいな草原が好きな虫ですね。」
●では、カンタンの声をよく聴きたいので、カンタンがいる場所に近づいていきましょう!
(長澤と中村さんは、カンタンの傍まで移動します)
●今、かなり生い茂った草むらの中を分け入っていますけど、もう一種類、虫の音が聴こえるような気がするんですが、カンタンとは別の虫も鳴いているんですか?
「そうですね。実は何種類か鳴いているんですけど、カンタンはずっと鳴き続けているので、ちゃんと聴いていないと聴こえないんですね。そして、先ほど鳴いていたのが“エンマコオロギ”という虫が鳴いていました。」
●そのエンマコオロギとは別に、常に低く鳴いているカンタンの声が聴こえるんですね?
「今も聴こえてますね。」
●では、聴いてみましょうか。
(放送では、ここでカンタンの鳴き声を聴いていただきました)
●すごく幻想的な声ですね。「聴いていると、すごく心地いい声だと思います。」
※夜の葛西臨海公園では散策していると、虫以外にも生き物の気配を感じました。そんな夜行性の生き物について中村さんに話していただきました。
●私実は、夜の公園に来るのって初めての体験なんですけど、よく見ると、鳥が飛んでいたり、色々な生き物がいるんですね。
「実は、この葛西臨海公園では“夜の観察会”をやっているぐらい、たくさんの種類がいるんですね。あ、今、ゴイサギという鳥が目の前を通過していったんですけど、夜行性のサギですね。」
●結構大きいですね!
「カラスぐらいあったと思うんですけど、ああいった鳥がいたり、足下にカニやカエルといった夜行性の動物たちが歩いていたりします。」
●それらは水辺から道路を移動しているんでしょうか?
「そうですね。ちなみに、ここにいるカニは湿ったところは好きなんですが、昼間はところどころにある道の隙間に隠れていて、夜になると出てきます。なので、普段水の中に入っているカニとはちょっと違いますね。」
●他にも、夜にだけ出てくる生き物とかいるんですか?
「なかなか見るチャンスはないんですけど、タヌキやハクビシンといった哺乳類も出てきたりしますね。」
●こんな都会にもいるんですね! 昼の公園とは違った楽しみ方もあるんですね。
「そうですね。特に、今の季節だと、夜の方が楽しいかもしれないですね。 ●それはやっぱり、涼しいからですか?(笑)
「それはありますね(笑)。」
●(笑)。今、空に何羽かコウモリが飛んでいますけど、このコウモリは何を食べるんでしょうか?
「これは、蚊みたいな、飛んでいる小さな昆虫を食べます。」
●そんな小さな昆虫をどうやって捕まえているんですか?
「コウモリは夜に活動をするので、目は使えません。その代わりに、超音波を出して虫の位置を把握して、捕まえて食べるんです。」
●その超音波は、一定の周波数で出ているんですよね?
「種類によって、それぞれ違いますが、一定の周波数で出しています。」
●今、中村さんは何やら機械を持っていますけど、それは何ですか?
「これはですね、人間は普段超音波を聞くことはできないんですけど、その超音波を人間が聴こえるように変換をしてくれる機械で、“バットディテクター”といいます。」
●これで、コウモリの超音波が聴こえるんですね!
「そうですね。どんな風に出しているのかが分かります。ちょっと使ってみましょうか。」
●是非、聞かせてください!
(ここで、“バットディテクター”を使ってみました)
●この「タタタタ」といった音がコウモリの超音波なんですね?
「目で見るとコウモリを見ることができないんですけど、意外とたくさん鳴いてますね。「タタタタ」といったように、細切れにたくさん超音波を出しながら虫を探して、虫が見つかったら、その間隔を狭めていって、正確な位置を知ろうとするんですね。今「ビーッ」といいましたけど、多分虫を捕まえたときの音ですね。」
※続いてご紹介するのは、秋に鳴く虫の中でも一番ポピュラーな虫かもしれません。中村さんの解説をどうぞ。
●私たちは、鳥類園の中をまた移動して、芝生のところに来ていますが、夜の公園って意外と暗いですね。
「そうですね。特にここは街灯が少ないですからね。普段都会にいると、こういうところを歩く機会がないと思います。」
●懐中電灯がないと、足下も見えないぐらい暗いんだなって分かりました。ここではどんな虫の音が聴こえるんでしょうか?
「色々な声が聴こえているんですが、その中でも特徴的なのは、“エンマコオロギ”という、今鳴いているんですが、『リリリリ』と非常にキレイな鳴き声をする虫です。」
●エンマコオロギはよく耳にする名前なんですけど、なぜ“エンマ”っていう名前が付いているんですか?
「ちょっと怖い名前が付いていますけど、その理由の一つに、恐らく、他のコオロギに比べて体が大きいんですね。」
●どのぐらいあるんですか?
「成虫になると4センチぐらいあって、体も太いので、見た目が大きく感じますね。」
●その外観から、エンマコオロギと呼ばれるようになったんですね。
「あと『顔が怖い』と言われているんですが、これは人それぞれだと思いますね。僕は丸顔で可愛いなと思うんですけど(笑)、そういったことで、エンマという名前が付いていると思います。」
●どういった特徴があるんでしょうか?
「非常にキレイな鳴き声をしていると思います。鈴虫など、人が飼っている虫も声はキレイなんですけど、僕はこのエンマコオロギもかなりキレイな声をしていると思いますし、特徴的な声をしているので、覚えやすいと思います。また、意外と街中でも鳴いているコオロギなので、是非家の周りで探してほしいと思います。」
●では、そのキレイな鳴き声を聴いてみましょう。
(放送では、ここでエンマコオロギの鳴き声を聴いていただきました)
※夜の葛西臨海公園での虫聴きを終え、鳥類園ウォッチングセンターに戻ってきました。
●というわけで、類園ウォッチングセンターに戻ってきました。今回はアオマツムシ、カンタン、エンマコオロギの三種類の虫の音を聞きましたが、虫の種類によって、こんなにも鳴き声が違うっていうことが分かって、面白かったです!
「そうですね。特徴的なものばかりで覚えやすかったんじゃないかと思います。」
●今日は残念ながら聴くことができなかったんですけど、中村さんオススメの面白い虫の音があるんですよね!?
「“セスジツユムシ”という名前の虫なんですが、これが出す鳴き声が線香花火にそっくりなんですね! 今日も少しは鳴いていたんですが、あらかじめ録音してあるものがありますので、それを聴いていただきたいと思います」
(放送では、ここでセスジツユムシの鳴き声を聴いていただきました)
●本当に線香花火のように、始めに火が付いて、徐々に激しくなっていって、最後に火が落ちていくところが、この虫の音と同じですね!
「これだと、どっちが先なのか分からないですよね。これを真似て線香花火を作ったのかもしれないと思えるぐらい、そっくりなんですよね。」
●今回、たくさんの虫の音を聴かせていただいたんですが、虫はどのような一生を送るんですか?
「鳴く虫は、大体一年で一生を終えます。春先に卵から出てきて、幼虫になり、幼虫が脱皮を繰り返して大人になります。秋にオスとメスが出会って交尾をして、卵を産んでしまうと死んでしまうんです。」
●ということは、一生に一度だけ、この秋に鳴くんですね。
「そうですね。」
●そういったお話を聞くと、ますます虫の音って心に沁みてくるなって思ったんですけど、こういった虫の音を楽しむのは、日本人独特の文化なのでしょうか?
「そうですね。欧米の方はどうも、こういった虫の音を雑音として聴いてしまう人が多いと言われています。中国では、鳴く虫を飼っていたりするんですが、虫聞きを楽しむより戦わせることがメインとなっていて、音を聴いて楽しむことはなさそうですね。」
●今回、たくさんの虫の音を聴かせていただいて、「一生懸命鳴いているな」と思って、「私も頑張ろう!」という気持ちになったんですけど、中村さんが思う、秋の虫たちが私たちに教えてくれていることって何だと思いますか?
「まず、“気づかないと、鳴いているということすら分からない”んですけど、少しでも気づけば、たくさんの種類が鳴いていることに気づくんですね。なので『意外と身の回りにもたくさんいるんだな』ということが分かると思います。」
●私もこれから耳をすませて、虫の音に注目したいと思います。今回は本当にありがとうございました。
(この他の 中村忠昌さんのインタビューもご覧下さい)
この後、改めて家の近所で虫の音を聴いてみたんですが、今まで聴き逃していた色々な種類の虫の音が聴けて、とても面白かったです。中村さんもおっしゃっていましたが、都会でも色々な虫の音が聴けるそうなので、ぜひ皆さんも、この秋は一生に一度の虫達の儚い歌を楽しんでみて下さい!
葛西臨海公園で、コスモス祭りと同時開催されるこのイベントでは、鳥類園に生息する野鳥や昆虫、植物などを解説するガイド・ツアーほか、木の実工作教室や、以前この番組にも出演してくださったNPO法人・生態教育センターの主任指導員・中村忠昌さんによるケニアで撮影してきた写真のスライド上映会なども行なわれます。
◎開催日時:10月1日(土)と2日(日)の午前11時から午後4時まで
(ガイド・ツアーのみは午前10時から1日5回。各回先着20名)
◎最寄り駅:JR京葉線・葛西臨海公園駅
◎詳しい情報:葛西臨海公園のホームページ
NPO法人・生態教育センターの主任指導員・中村忠昌さんは、葛西臨海公園内の鳥類園ウォッチングセンターでガイドとして活動。以前、番組でもお世話になりましたが、バードウォッチングの指導や野鳥の観察などを行なってらっしゃいます。
そんなNPO法人・生態教育センターの活動内容などは、ホームページで確認することができます。気になる方は是非ご覧ください。