2011年12月17日
今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、華恵さんです。
才色兼備の山ガールとして注目されているエッセイストの華恵さんは、2003年に出版した「小学生日記」で大注目され、現在は学業と並行して、山やアウトドア雑誌などにエッセイを書いたり、アウトドアのイベントにも参加されたりしています。また、昨年「華恵、山に行く」という本を出版されました。
今回はそんな華恵さんに、山登りの魅力や、雑誌の企画で訪れたノルウェーのお話などうかがいます。
※まず、華恵さんが山を好きになったキッカケをお聞きしました
「小学校の頃、知り合いのカメラマンさんに誘ってもらったのがキッカケですね。体力は元からあったので『山に行きたい!』って言って、行ったんです。行った時期は春で、雪解けがすごくて、歩いていてもズボズボと雪に足がはまるような感じがして、ひどい山歩きで本当に疲れたんですけど、そのひどい疲れが私には合っているようで、気持ちよかったんですよね。
エッセイを普段書いているので、そのときのことをエッセイに書いたら、エッセイがエッセイを呼んで、山に行く企画とかできたりして、仕事なんですけど、遊んでいるのか仕事しているのか分からなくなるぐらい、のめり込んでいきました。そこから、スノーシューをやってみたり、アイゼンを履くような、ちょっとキツイ雪山を登ってみたりしましたね。あと、ロック・クライミングが好きですね。」
●そうなんですか! 見た目がすごく可愛らしいから、ロック・クライミングというのは想像できないです(笑)。じゃあ、山歩きというよりも、ハードな登山もされているんですね。
「そうですね、やり始めた頃は、自分の体力の限界を知りたいと思っていました。限界へ挑戦するとか、無理と思っていても、『まだ行ける』といったようなことに魅力を感じていたんです。
自分一人で山に登っていたら、疲れてもすぐ休むことができるんですけど、みんなで登っていたら、みんなのペースがあるんで、いつも以上に頑張るんですよね。だから、『私ってこんなにも頑張れるんだ』と思えて、そこが好きでやっていたんですが、最近では、散歩みたいな感覚で山を歩くとか、山に行って、体力を消耗する事ばかりじゃなく、山にいる人に取材をして色々とお話を聞いてみるとか、そっちの方にも魅力を感じてきています。」
●今までは、どんな山に登られてきたんですか?
「高尾山を始め、関東近辺の低山や日和田山とか行きました。あと、長野に行くことが多いんですよね。北アルプスとか、八ヶ岳、富士山や磐梯山も登りましたね。」
●富士山も登ったんですか!?
「はい。二年前の高校3年生の夏休みのときに登りました。」
●私も一回は富士山に登ってみたいと思っているんですけど、どのぐらい素敵な山なんですか?
「富士山って、日本の山の中で最初に名前がでるぐらい、存在感からして、カッコイイんですけど、行ってみると、色々なルートがあるんですよね。緑がたくさんあるところがあれば、景色が広がったところ、人が多い所、少ない所といった感じで、色々な選択肢があるんですよね。あと、富士山を登ると、だいたい一泊しますよね。だから、富士山に行くと、山の中の色々な道を一気に見られるような気がするんですよね。
都心で富士山が見えたら、『富士山が見えた!』って言うじゃないですか。だから富士山って、“見る山”だと思っていたんですけど、登ってみると、富士山は富士山の呼吸の仕方があるんですよね。なだらかで、アップダウンもあまりなく、斜めの直線をずっと登っていくんですね。すると、段々と『これが富士山か』と身にしみて分かってくるんですよ。そうすると、改めて遠くから富士山を見たときに、それまでのシンボルとしての富士山というものとは違って、気持ち的に親近感を持って見られるかなと思います。」
●華恵さん流の山の楽しみ方って、どんな感じなんですか?
「私は、山に入ると、無口になるんです(笑)。話すことはなくても、自分の息づかいが耳に響いて聞こえたり、風の音や、自分のアウターが岩と擦れる音とか、そういったものに注意が向くようになるんですね。そこに“非日常さ”があって、いいなぁと思うんですよね。
普段、街を歩いてるときはイヤフォンをして音楽を聞いてるから、自分で音環境を作っているんですけど、山だと、受身になる時間なので、そういう楽しみ方をしています。」
※華恵さんは、登山以外のアウトドア・アクティビティにも興味があるようです。
「登山以外のアウトドアをやり始めたのは、最近ですね。モンベルの『SEA TO SUMMIT』という、カヤックを海でこいて、そのあと、登山口まで自転車で行って、登山口から歩く大会があるんですけど、その大会で体験して、『登山以外もやってみたら面白いかも』と思ったんです。だから、カヤックとかカヌーとか、泳ぐなどのジャンルに興味があるというよりも、自分が行動するフィールドが山だけじゃなくていいのかなっていう風に思い始めているんですね。
登山って、登山口からスタートするものだと思っていたんですが、考えてみれば、地面は海まで続いていますし、日本は島国だから、“海から山へ”というのをあちこちで味わえるはずなんですね。今はまだやっていないんですが、これからは、それをガンガンやってみたいなぁと思っています。今年は、鳥海山と大山のSEA TO SUMMITに行きましたけれど、結構キツイです(笑)」
●(笑)。長い距離なので、途中、色々な事があったと思うんですが、どうでしたか?
「自転車漕いでいるときは失神しそうでした(笑)。でも一番辛かったのは、海でも山でもない、その間の部分でしたね。海と山をつなぐのが、SEA TO SUMMITの特徴だし、一番面白いところではあるんですが、海とも山とも名付けられない、私たちが日々暮らしているようなところを全部移動するというのが、すごく大変でしたね。辺りの景色は、民家から、段々と山が近づいてきて、車道になって、人が段々といなくなって、緑が濃くなっていったりと、どんどん変わっていくので、見てて楽しいんですけど、体が追いつかないんですよね。『頑張りたい! 行きたい!』という風に、感情だけが先に走っていくんですよ。それが、今までやってきたアウトドアの中で一番辛かったし、一番ムキになってやりました(笑)。
SEA TO SUMMIT に参加して、“達成感”じゃなく、“自分のアウトドアの概念”を変えてくれたので、よかったです。アウトドアというと、海・山、あるいは、クライミングができる室内のジムといった場所を選んでしまうじゃないですか。でもそうじゃなくて、SEA TO SUMMITは道が用意されていましたけど、本来なら、道って自分でも作れるから、どこかの海や山を選べばすぐできるじゃないですか。それをどんどんやりたいなぁという風に思わせるような魅力が、SEA TO SUMMITに参加したときの疲れにはありましたね。普段見ているところなのに、実際に登ってみると、私たちって自然豊かなところを切り開いて暮らしているんだなという事がわかりましたね。」
※華恵さんは雑誌の取材で訪れたノルウェーで、こんなことを感じたそうです。
「ノルウェーに行ってみて、自然の中に人が暮らしているというのを強く感じました。私はオスロに行ったんですけど、今回はノルウェーの中の郊外に行かないで、あえてオスロを楽しむ事にしたんですね。オスロって、一番の都会なのに、自然が多いんですよね。」
●ちょっと想像ができないんですが、どんな感じなんですか?
「オペラハウスや大きなショッピングモールといった大きい建物があるんですが、その近くに海があったり、山があったりするんですよね。ある日、『ちょっと山歩きをしよう』という予定をたてて、電車で行ったんですけど、丘のような大自然公園のようなところがあるんですが、オスロの中心地から電車で行って20~30分なんですよね。電車に乗っていてもドンドン緑が増えていくし、『え? もう着いちゃったの?』思うぐらい、近い距離にあるということに、まずビックリしましたね。
岩登りや、すごく高い山があるというわけではないんですが、標高が低くて生い茂っている森がたくさんあるんですね。だから、『○○のところにいた』と思ったら、いつの間にか全然違うところにいたりして、『○○に行きました』という感じではなく、『山歩きをしました』という感じなんですよね。
あと、海も近いんですよ。船でフィヨルドを通って移動するということもすごく多かったので、それだけ海や山が近いことって、日本では革命的な事みたいに感じでいたんですけど、オスロでは当たり前のように感じているんですよね。それは目からウロコでした。」
●現地の方はそういった中で、当たり前のように暮らしているんですか?
「そうですね。出勤するのに船を使っている人もいます。ビックリしたのが、私って外人っぽい外見をしているので、ノルウェーの人と勘違いされるんで、日本とアメリカのハーフだという事を言ったら『船は持っている?』って聞かれたんです。『どういう事だろう? すごい大金持ちだと勘違いされたのかな?』と思ったら、そうじゃなくて、ノルウェーでは大抵、家族で船を一つ持っているんですね。外国人で都会のアパートで暮らしているという方であれば別ですけど、昔からノルウェーに住んでいる人は、移動で船を使うので、持っていて不思議じゃないんですよね。そこで、日本とアメリカの血が入っている私に対して『ノルウェーの人じゃなくても、船って持ってるの?』という感覚で聞かれたんですよね。『車持ってるの?』や『自転車持ってるの?』の感覚で船が出てくるのが、面白かったですね。」
●それって、自然と暮らしが共生している感じがして、いいですね。
「気持ちがのびのびとしましたね。私は山に行くと、“非日常なところに行く”感じがして、山から帰ってきて、また大学の生活が続くと、それが“日常”だと思っていたんですけれども、ノルウェーでは海も山も学校も会社も色々な仕事の暮らしも全部続いているので、“日常と非日常”がないんですよね。それがすごくよかったですね。ここにいると、気持ちや体のバランスが取りやすいだろうなと思いました。」
●さて、華恵さん、今後、登りたい山、もしくはやってみたいアウトドアスポーツはありますか?
「今後登りたい山でいうと、登っている山が関東か長野ばっかりなんです。そういう面でいえば、全部行ってみたいという気持ちもあるんですが、今は“島の山”を登ってみたいですね。
屋久島でもいいし、大島とかでもいいんですけど、そこだと、海と山が近くに感じられるのかなと思ってるんですね。面積が小さい所で高低差を感じられて、その中に暮らしがあるといった“一体感”があると思うんですね。そのすべての流れというものを、もっと密に感じられる所にどんどん行ってみたいと思いますね。
スポーツとしての登山じゃなくて、アウトドアスポーツで何をやりたいかと考えると、なかなか思い浮かばないんですよね。例えば、自転車を使うとかバス使うといった交通の手段みたいな感じで、海から山に行く時に、カヤックやカヌーといったアウトドアスポーツを選んでいけたらと思います。やりたい物はそこに行って見て感じることだと思っています。」
●どんな事を見て、感じたいですか?
「やっぱり、最初にもお話しした“音”ですかね。“音”って、どうしても意識が自分の中に入ってきてしまうんですね。歩いていると息づかいが荒くなってくるじゃないですか。あと、アウターウェアってガシャガシャという音が聞こえてくるんですよね。だから、自分の全ての動作が音として聞こえて、私はそれに魅せられているんですけど、そうじゃなくて、外の音を吸収する方向に行きたいなと思いますね。
それって、場所によって聞こえてくる音は違ったりするのか、あるいは、どこに行っても同じだったりするのか、そこら辺を知りたいし、その音素材で作品を作れれば面白いだろうなとも思っています。」
華恵さんにお話しを伺っていて、最初は山に登る事そのものに集中されていましたが、今では音も含めて、自然そのものを本当に楽しんでいらっしゃるんだなぁと感じました。
華恵さんの文章はとても素敵なので、ぜひそういった自然から感じられた事を、これからも華恵さんらしい言葉で私たちに伝えてもらえたら嬉しいです。
エッセイスト・華恵さんは近々、テレビ番組に出演されます。
◎12月25日(日):「北アルプス 四季物語」(BS朝日 午後9時から放送)
(華恵さんはナビゲーターとして、北アルプスの自然や山に魅せられた人たちを紹介します)
華恵さんが先日行なったノルウェーの旅の模様は、ニーハイメディア・ジャパンから出ている「PAPER SKY」という雑誌の37号「ノルウェー特集」に掲載されています。是非ご覧ください!
詳しい情報:テレビマンユニオン(華恵さんのマネジメント会社)