2012年2月11日
今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、久保田真理さんです。
主に環境をテーマにお仕事をされているライターでフォトグラファーの久保田真理さんは、オーストラリアに滞在しているとき、オーガニックな食材やパーマ・カルチャーに出会い、影響を受けたそうです。
今回はそんな久保田さんに、オーストラリアで体験した有機農場を核として行なわれている「WWOOF」という仕組みのお話などうかがいます。
※オーストラリアでの滞在経験がある久保田さんに、オーストラリアの人たちの環境意識について話していただきました。
「オーストラリア全般で言えば、日本と同じように、それほど関心のない層があるかもしれませんが、私がオーストラリアに滞在していたとき、環境問題に関心のある方や活動をしている人にたくさん会って、そういった方々から、今抱えている問題などを学ぶことができました。
例えば、都心部にいて身近に感じたのは、日本でも今ではオーガニック野菜や地場野菜のコーナーがあるかと思いますが、オーストラリアでは、私が滞在していた6~7年ぐらい前から、普通のスーパーでもそういったコーナーが設けられていましたし、ビニール袋を極力使わない活動をしている方々がいたり、店にある商品が全て計り売りだったりしたのがすごく印象的でした。」
●トレイなどに乗っていないということですか?
「そうです。海苔一枚でも計り売りなんです。それで、袋を持参するか、一枚10円ぐらいで購入できる袋を使うか選べるシステムを導入しているお店もありましたね。」
●そうなると、ゴミの量ってかなり違ってきますよね。
「そうですね。東京で生活をしているとよく分かるかと思いますが、一人暮らしでもかなりの量のプラスチックのゴミが出ますよね。でも、それまで普通に使っていたプラスチックの袋にお金を払わないといけなくなることで、普段何気なくやっていたことに気づかされるということがありましたね。」
●オーストラリアでは、リサイクルはどのようにされていたんですか?
「都心部と地方では少し状況が違うんですが、中でも印象的だったのは、ゴミが回収されない地域があるんですよね。その地域は、ゴミ処理場とまでいかないですが、ゴミをまとめて置かれるところがあるんですけど、そこまで自分で持っていかないといけないんです。そして、そのゴミの量によって、お金を払って捨てるんです。」
●そうなると、ゴミをなるべく出さない方が安く済むので、いいですよね!
「そうすると、買う段階から『捨てるのにお金がかかるんだったら、捨てないで済むものを購入しよう』という意識に変わってきますよね。」
※久保田さんはオーストラリアで有機農場を核とする“WWOOF”という仕組みに出会ったそうです。
「“WWOOF”って聞き慣れない言葉かと思いますが、私が滞在していたときは“Willing Workers On Organic Farms” (有機農場で働きたい人たち)という捉え方をされていました。これは、ホストと呼ばれる、大小関係なく、有機農場を所有しているところに行って、一日四~六時間ほどの農作業をします。その見返りとして、一日三回の食事と宿泊場所を提供してもらえるというシステムです。」
●これは、オーストラリアではポピュラーなシステムなんですか?
「そうですね。でも、実はイギリスから始まったシステムなんです。オーストラリアでは、私が参加していたころは、ホストが1500ヶ所ありましたが、今現在では2300ヶ所になっています。」
●ということは、登録されているところも多いし、働きたいと思っているウーファーも多いということですか?
「そうですね。また、これは外国の方によく知られている制度なので、オーストラリアの国内をウーファーとして回っているオーストラリア人もいますが、中にはワーキングホリデービザでたくさんの人が一年間滞在するんですが、普通ならお金がかかってしまうので、WWOOFの制度を使って、移動費・プライベートでの食事や買い物以外での費用を削減するという人もいます。私の友人に、一年間に30ヶ所のホストを回って、ほとんどお金を使わずに旅をしたという人がいます(笑)」
●それはいいですね!(笑) 久保田さんもこれを体験されたんですか?
「そうですね。私は一年間で、オーストラリアは12ヶ所、ニュージーランドは1ヶ所のホストを回りました。」
●体験してどうでしたか?
「非常によかったです! なぜなら、私は以前、写真学校に通っていた関係で、メルボルンに一年半ほど滞在していたんですが、比較的緑が多く、川が流れていたり、高い建物がないぐらい自然が溢れているメルボルンよりも、WWOOFのホストはもっと田舎で、想像ができないぐらいの環境に住んでいるんですね。生活の仕方もとてもユニークな人が多いので、農作業を楽しんだことはもちろん、色々な人の生き方を見ることができたことも面白かったですね。
あと、敷地が広いところが多かったですね。例えば、敷地内に自分たちが住んでいる家以外には何もなかったりするんですよね。朝になると、丘から朝日が昇ってくる様子が見えて、まさに“朝日と共に起きる”という体験ができて、雄大な自然に囲まれて生きているのが気持ちいいなと感じられることがありましたね。」
●そのお話を聞いて、興味を持った方が多いと思うんですが、そのWWOOFって日本でも体験できるんですか?
「実は、このWWOOFは、今では50ヶ国に広がっていて、日本でも1994年から始まって、北海道から沖縄まで、日本全国に展開されていて、登録費用を払えばメンバーになることができて、参加できるようになります。」
●久保田さんは、日本では体験されたんですか?
「私は体験していないんですけど、神奈川県三浦市でWWOOFのホストをしている方から、日本でのWWOOFの話をうかがったことがあります。」
●その方はどういった形で行なっていたんですか?
「その人はオーガニック野菜の農園を持っている方で、WWOOFを始めてから四年になるということなんですが、今まで世界中から100人以上の人がウーファーとして来たそうです。その人たちは、イチゴの苗を植えたり、草抜きなどといった細かな農作業を手伝ってもらったそうです。
ただ、現実的なこととして、どれほどの労働力になるかというと、一日四~六時間ほどの労働な上、農作業に関して、素人な人がいたりするので、それほど期待できない部分があるけれど、外国の人が農作業をしに来ることで、正社員として普段から農作業をしている方にとって、すごく刺激になるみたいですね。なので、異文化交流も兼ねて、楽しみながらWWOOFの生活をしていると話していました。」
※久保田さんがオーストラリアで出会った“パーマ・カルチャー”というムーブメントについて話していただきました。
「“パーマ・カルチャー”は、“パーマネント”(永久的な)という言葉と“アグリカルチャー”(農業)を合わせた造語で、“恒久的持続可能な生活”を意味している言葉です。同時に“恒久的に継続した文化”という意味もあって、生活の知恵がたくさん詰まっている理論だと言われています。
向こうの家を例にすると、太陽の高度は季節によって変わってくるので、太陽が高くなる夏には、室内に日が差し込まないように、太陽が低くなる冬には、室内に日が差し込むように設計するんです。それを“パッシブ・ソーラー・ハウス”というんですが、そうすると、夏は涼しくて、冬は暖かいという状態になるんです。そうすることで、冷暖房を使わなくても済むようになるんですね。
まずそういう家を建てて、そこから生活に必要なものを同心円状に配置していきます。例えば、キッチンの近くによく使うハーブを植えて、その周りに果樹を植えて家庭菜園を作って、その周りに家畜を飼うといったように、その中だけで物事が循環するような仕組みを作り出すのがパーマ・カルチャーなんです。。」
●理にかなった素晴らしい考え方だと思いますが、実際に、今の生活の中にそれを実践することって可能なんですか?
「パーマ・カルチャーの考え方を全て取り入れようとすると、広大な土地を購入して、色々なものを一から作るとなると、時間やお金がかかってしまうので、誰もができることじゃないんですね。ですが、全て実践しなくても、一部でもいいので、生活の中に取り入れていくことで、個人の力はそれほど大きくないかもしれないですが、実践する人がたくさん増えることで、地球に対するインパクトは変わってくるんじゃないかと思います。」
●今後、パーマ・カルチャーが日本で広まっていくためには、どういったことが必要になってきますか?
「パーマ・カルチャーもすごく素晴らしい生き方の一つだなと思うんですが、実は今、もう一つ別のものを実践しようとする運動が起きています。それは“トランジション”(移行する)というものです。これは、パーマ・カルチャーの先生をしていたイギリス人が2005年ごろから提唱している考え方で、パーマ・カルチャーの場合だと、新しく土地を購入したり、設備を整えるのに時間がかかってしまったり、エコビレッジを一つ作るために、同じような考え方の人が集まって実践するということになってしまうんですが、トランジションの場合は、既にある地域や街をエコロジカルなところに変えていくという考え方なんですね。
例えば、神奈川県の藤野というところで、2011年に“エコ長屋”というものを作った人たちがいます。四軒合わさっている長屋なんですけど、そこにパーマ・カルチャーの考え方をいくつか取り入れたんですね。例えば、雨水を溜めるタンクを設置したり、ソーラーシステムを導入したりして、従来のエネルギーに頼らない暮らしをしているんですね。さらに、彼らはトランジションも実践しているんですね。例えば、映画の上映会や野菜を加工するグループといったような、色々なワークショップを作って、地域の人たちに参加してもらうように呼びかけて、地域毎でそういった取り組みを強化していこうとしているんですね。日本でエコビレッジを作ろうとしている人もいて、取り組みとしてそれは面白いと思うんですが、短時間で多くの人に関心を持ってもらうには、トランジションという方法が有効じゃないかと思います。
また、今の世の中って、このままだと枯渇してしまう石油や、激しい気候変動対して、今から準備するという二つの命題を持ちつつ、大きなシステムに依存するという考え方が、今の生活を窮屈にしていると思うんですね。そこで、こういった地域のつながりや仲間との連携があれば、大きなシステムに依存しなくて済むと思うんです。2011年の大震災によって、そういったことを強く思った方がたくさんいたかと思いますが、まさにそういったことを求めている方にも受け入れてもらえるような運動じゃないかと思いますし、実践している方もそう思っていると思います。」
今回のインタビューではご紹介できなかったんですが、久保田さんは有機農場で小麦粉などの粉から何でも作ったり、レーズンパンも酵母からレシピを見ずに、過去の記憶だけを頼りに作られたそうです。
そういった体験を通して“自分で一から何でも作れるんだ”という感覚を磨かれたとおっしゃっていました。
今は買ってしまえば何でも揃う便利な時代ですが、その便利さが駄目になってしまった時に、久保田さんのように“自分で何でも作れる”と思えることは、とても重要なことなのではないでしょうか。
環境ライター・久保田真理さんは、ロハスピープルのための快適生活マガジン「ソトコト」に毎月記事を書いてらっしゃいます。最新号の3月号が先日発売されましたので、ぜひチェックしてください。
久保田さんが出会った、オーストラリアで有機農場を核とする仕組みWWOOF。 どういったものなのか、気になる方は、オフィシャルサイトをご覧ください。