2012年4月21日
今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、清水国明さんです。
この番組ではおなじみ、芸能界きってのアウトドアズ・マン、清水国明さんには毎年4月にご出演いただき、その時々に清水さんが一体どんなことに夢中になっているのか、前回の出演から1年、それまでにどんなことをやってきたのか、「定点観測」を行なっています。そんな定点観測も今回で17回目です。今回も話題満載の内容でお送りします。
※これまで、清水さんのインタビューは、アウトドアで行なってきましたが、今回はスタジオにお越しいただき、昨年の定点観測のお話からスタートしました。
●昨年お話をうかがったときは、東日本大震災の直後でした。
「そうでしたね。被災者支援活動の真っ最中でしたね。ということは、前回の話は、そのときの話がてんこ盛りだったんでしょうね。」
●そうですね。子供たちに対する支援活動をしているというお話をうかがったんですけど、その後はどういった活動をしているんですか?
「その支援は継続しているんですが、その支援活動から学んだことがあったんですよ。それは、現地でのニーズって、そのときの状況によって変わってくるんですけど、支援する側は同じ支援をするから、徐々にズレてくるんですよ。僕たちは被災地に64回行ったんですけど、最初の頃は、おにぎりやパンを持っていったら、すごく喜ばれていたんですが、段々と『もう、パンなんて見たくもない!』といったことを言われるようになったんですよ。
どうしてかというと、農業や漁業をしている人たちって、パン食じゃないんですよね。なのに、朝から晩までパンなんです。僕たちは支援のためにやっているけど、今やそれがありがた迷惑になっているということなんですよね。それを正直に言っていただいて、すごく助かりましたね。そういった感じで、被災地のニーズって常に変わっているので、本当に喜ばれる支援とは何なのかを、被災地のみなさんの立場になって考えて、ずっと支援してきました。それが今でも続いています。これからは、支援から学んだことを、世の中の人たちにどうやってフィードバックしていくかを考えていかないといけないですよね。」
●被災された子供たちをご自宅のある河口湖に受け入れていましたよね。そちらの方はどうですか?
「今ではかなり落ち着いてきて、河口湖周辺に住んでいるご家族がいくつかいらっしゃいますし、向こうに戻った方もいます。そんな人たちを集めて同窓会を行なったり、ディズニーランドに招待するといったお話があったら、何人か呼んで行ったりして、支援者が僕たちを通して支援するということが中心になっています。」
●旅行にも一緒に行ったそうですね。
「行きましたねー! 海外旅行にも行きましたが、大変でしたね(笑)。そういうことで、今や地球規模で支援してくれる人がいるんだということを分かってもらえればいいなということで、やっています。僕たちは間に入っただけですけど、支援してくれる人たちが色々と頑張ってくれましたね。
ただ、最近思うのは、支援するだけじゃなくて、そこから学んだことを世の中の人たちに伝えるということを、ボランティアの最前線にいた人間の役割として、やっていかないといけないなと思いますね。」
●その活動の一環なんだと思いますが、無人島暮らしを始めたんですよね。
「今まではずっと富士山の麓の森の中で暮らしていたんですが、河口湖の中に無人島があるんですね。富士五湖の中で、河口湖にだけ無人島があるんですよ。その無人島に“みんなの防災・冒険の島”と名づけて、みんなでキャンプをしたり、バーベキューをやったり、カヌーに乗ったり、魚を釣ったりといったことが自由にできる島を手に入れました。」
●それは楽しそうですね! それをやろうと思ったキッカケというのは、ボランティア活動から得たものを色々な人に伝えていこうという思いがあったからなんですか?
「そうですね。日本って、今ではすごく便利になって、何でもすぐ救いの手があったり、近くにコンビニがあったりしますけど、そういったものがない、隔離した状況の中で訓練するには無人島が一番いいんですが、海の方にある無人島に行こうとしたら、結構遠かったりするんですよね。だけど、森と湖の楽園のすぐ近くには河口湖があるので、『ここはいいな!』と思いましたね。天然のゲートなので、一度入ったら、なかなか逃げては帰れないですよ(笑)」。
アウトドアは防災力を高めるにはすごくいいと思うんですよね。僕が見たり聞いたり体験したりしたことって、次の災害に備えるには一番いい方法じゃないかなと思いますね。楽しい・面白いだけじゃないアウトドアを生かして、防災力を高める場所にしたいと思っています。」
※今回は、「みんなの防災・冒険の島」と名付けた、河口湖の無人島で行なっている体験プログラムのお話をうかがっています。続いて、清水さんが提案している「防災力テスト」のお話です。
●防災力テストが書かれた紙が、今私の手元にあるんですが、10項目あるんですね。
「この番組を聴いてる人にも、実際やってもらってほしいですね。このテストは、何項目できるかによって、その人の防災力が分かります。つまり、その人の災害時での生存率が分かるんです。」
●10項目ありますので、ざっと紹介します。
1:救命胴衣を正しく装着できますか?
2:マッチで薪に火を付けられますか?
3:ロープを結べますか?
4:一人でテントを立てて寝ることができますか?
5:木登りや崖を登ることができますか?
6:野外での保温の方法を知っていますか?
7:止血、骨折の手当て、人工呼吸ができますか?
8:魚を釣って料理できますか?
9:溺れている人を助けられますか?
10:災害用の臨時トイレを使ったことがありますか?
以上、10項目です。
「例えば、3つしか答えられなかった人は生存率30パーセントだということになります。『そんなことで!?』って思うかもしれないですが、このテストは、震災救命協会が発行している検定試験に出てくる問題で、回答した数がそのまま生存率に繋がります。ちなみに、長澤さんは何点でしたか?」
●すみません。私は一個だけでした。
「ダメじゃないですか(笑)。即アウトじゃないですか! でも、無人島で一泊サバイバルキャンプをやってもらうだけで、100パーセントになりますよ。例えば、救命胴衣ですが、『こんなの、ただ着ればいいんでしょ?』と思うかもしれないですが、もし、子供に救命胴衣を着せて、カヌーを乗せてたときに、カヌーから落ちたときに、ただ着ただけだったら、人間だけ落ちてしまうんです。『これは大変だ!』と思って、救命胴衣を持って引き上げたら、救命胴衣だけ回収するという事態になってしまうんですよ。だから、ベルトの締め方やキツさなど、学んでおかないといけないことがあるんですよね。
あと、“マッチで薪に火を付けられますか?”という項目ですが、人間としての基本は“火や道具の使い方ができる”というところなんですけど、マッチで薪に火を付けられない人ってすごく多いんですよ。」
●そうですね。付けた経験がないですね。
「ほとんどの人は、燃えるものだけ燃やして、その火を大きな火にすることができないんですよね。火を大きくしたり小さくしたり、長引かせたりすることができるのが人間なので、火が使えなかったらサルより劣っているということになりますよね。
“ロープを結べますか?”という項目も、救命するためだったり、高いところから降りたり、子供を下に降ろしたり、下から引っ張り上げたりするときに、ちゃんとした結び方をしないと危ないですよね。変な締め方をしてしまったら、腰がウインナーみたいな状態になってしまいますからね(笑)。
あと、テントをすぐ建てたりすることができるようになるのも、災害時には大事ですし、木や崖に登ることができなかったら、瓦礫の中からや家の上に昇り降りができないじゃないですか。あと、野外では、36.5~37度より上がっても死ぬし、下がっても死んでしまうんですよね。そして、この項目の中で一番大事なのは“災害用の臨時トイレを使ったことがありますか?”という項目なんですよね。」
●私、それが一番気になったんですよ! これって大事なんですか?
「これは一番大事ですよ! 今回の震災で一番多かったのは、トイレに行かないで体調を崩したり、トイレに行かないように、水を飲まなかったりして、エコノミー症候群になったりしたことなんですよね。そこで、野外で排泄行為ができるようになると、一気に元気になれるんですよ。
人間は、新しい住居に入ったとき、最初にトイレを使ったら落ち着くんですよね。一種のマーキング行為のようなものなんですよね。なので、災害が起きたときに、まず最初にするべきことはトイレですね。災害用トイレって、今ではどこにでもありますけど、臭かったり狭かったりして、嫌な気持ちになるかもしれませんが、そういうことを一度でも経験しておくと、後は気にならなくなりますので、非常に重要なことなんです。それを、今のうちに経験しておきましょうということなんです。そんなことを、無人島で体験してもらおうというプログラムになっています。
一番いいのが、自分の防災力を高めることですね。阪神大震災のときも今回の震災もそうだったんですが、『誰に助けてもらいましたか?』というアンケートを取ると九割の人が“近所”なんです。そういうことで、近所の人たちの防災力を高めるのが一番いい供えですね。自衛隊や救助隊が来るのは、地震が起きてから二~三日なので、災害が発生した瞬間に助けてくれるのは、すぐ隣にいる人なんですよね。まず、自分の命を救わないといけないし、自分にとって大切な人を救わないといけないという状況のときに、誰かを頼りにしていたらダメですよね。そういうときこそ“自助・共助”の力を高めていくのが一番の備えじゃないかと思います。自分の体を防災体質に変えることが、今一番必要なことじゃないかと思って、今教えているんですよね。」
※実は清水さん、今年から山梨学院大学の客員教授になったそうです。
「教授の清水国明でございます(笑)。一部では、『お前が教授だなんて、世も末だ』という人もいます(笑)。大学教授って、無免許でできるんですよ。中学や高校の先生は、教職課程を経て、教員免許を取らないといけないじゃないですか。しかし、大学教授に関しては、特殊な才能があれば、できるらしいですよ。それでも、文部科学省が認めなければダメなんですけどね。まぁ、それが危なかったですけどね(笑)。
では、何が特殊なのかというと、昨年一年間、震災の支援活動をしていたことによって、体験したことを伝えることができると思うんですね。その活動を通じて、問題点がたくさん出てきたんです。中でも、“困ったちゃんボランティア”というものがたくさん出てきました。それは何かというと、『ボランティアでもするか』、『ボランティアしかできないな』といった感じで、安易な気持ちでボランティアをしてしまう人が多かったんですよ。でも、ボランティアってすごく重要なポジションで、本来なら専門的な知識や技術がないと、迷惑をかけるだけになってしまうんですよ。そういう事例が、今回の震災ではたくさんあったんですよね。泊まる場所を探してもらったり、食べ物を買い漁って、被災者が食べられなかったり、現地の行政の人たちに怒ったり、その文句をネットで発言したりしたんですよね。
でも、ボランティアが行かなかったことによって、被災地が大変な思いをしたということもあるので、ボランティアとしてやらないといけないことと、やってはいけないことという基本的なことを学んだ上で、ボランティアに行って、被災者のお役に立つことができる“プロフェッショナルなボランティアを育てる”というのが、僕の授業なんです。」
●実際に、生徒のみなさんと触れ合ったと思いますが、どうですか?
「実は、清水国明が何をしている人なのか、全然知らない人ばかりなんですよね(笑)」
●そうなんですね(笑)。世代的に知らないのかもしれないですね。
「逆にその方がやりやすいですよね。『赤とんぼの唄歌ってよー!』って言われることはありませんからね(笑)。そういう若い人たちに教えています。プロ・ボランティアの資格を取るというのは、就職にも役立つと思うんですよね。僕の授業は、震災救命協会が発行している資格を発行することができる授業なので、学生の就活に役立つし、もちろん自分の命を守って、周りを助けるといった技術も身につけられるので、非常にいい授業だと思いますよ。」
●私も、清水さんの授業を受けてみたいなって思います。
「防災力テストで10パーセントだった長澤さんは、受けた方がいいんじゃないですか(笑)。自分の命は自分で守る。そして、親戚や子供、お年寄りといった大切な人一人ぐらいを救えるような力を身につけておいておきたいですよね。」
(この他の清水国明さんのインタビューもご覧下さい)
今回の定点観測のポイントは“防災力”。これに尽きると思います。国明さんが推奨する防災力テストで、生存率10パーセントのレッテルを貼られてしまった私としては、「みんなの防災・冒険の島」で、清水教授に鍛えていただかないと、かなりマズイなと思いました。
今回のお話にもあった河口湖の無人島「みんなの防災・冒険の島」では、1泊2日の無人島サバイバル・レスキュー・キャンプツアーや、日帰りバーベキューツアーを実施しています。
◎料金:
サバイバル・レスキュー・キャンプツアー:
中学生以上・7,500円、小学生以下・5,500円
日帰りバーベキューツアー:
中学生以上・3,300円、小学生以下・2,800円
その他、清水さんが代表を務める河口湖の「森と湖の楽園」では、様々な自然体験プログラムを行なっています。詳しい情報は森と湖の楽園のホームページをご覧下さい。