2012年4月28日
今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、田久保雅己さんです。
ヨット・ボートの総合出版社「舵社」の田久保雅己さんは、この番組にとって、「ヨット」や「ボート」を通して、海にいざなってくれたキーマンなんです。田久保さんが編集長を務められたボートやヨットの専門誌「KAZI」と、この番組が以前タイアップし、「THE FLINTSTONE ON THE WATER 」というシリーズ企画を行ない、ボートにシーカヤックを積んで、東京湾の浮島周辺でシーカヤックを楽しんだり、プレジャーボートで川から桜を愛でたりと、斬新な企画で話題になりました。
そんな田久保さんが先頃、新刊「ヨット・ボートに乗るキッカケ、教えます!」を出されました。そこで今回は、本のタイトル通り、超初心者に向けたヨットやボートの入門編をお送りします。
※田久保さんはヨットやボートの魅力を知り尽くした大ベテラン。一方、長澤は少しだけヨットの経験があるビギナーなんですが、そんな二人のトークはこんな話から始まりました。
●実は、私も学生時代に少しだけヨットに乗っていたことがあったんですけど、エンジンを使わずに風の力だけで前に進むヨットって、すごく気持ちいいものですよね!
「そうですよね! クルーザーの場合、港やヨットハーバーから海に出るときに、補助エンジンというものを使うんですけど、それを使って沖まで出たらセイルを上げて、風が当たって、クルーザーが走り始めたら、エンジンを切ります。すると、エンジン音が消えて、聞こえてくるのは舳先が波を切る音と、かすかに風がセイルに当たる音だけという世界を味わえるんですよね。それと、自然の力で海の上を走っている感覚を、この番組を聴いてるリスナーのみなさんに味わっていただきたいですね。これほど言葉に表せない爽快な気分って、滅多に味わえないですからね。その感覚って分かりますよね?。」
●自分が自然に溶け込んでる感じがしますよね。
「そうですよね。特に、長澤さんも乗られていたかと思いますが、セーリング・ディンギーというキャビンがない小型のヨットで走ると、視点が海に近いので、より海と一体となって走っている感覚を味わえるんですよね。」
●仰る通りです! 目線が低いので、“海・私・風”みたいな感じになるんですよね!
「たまにはひっくり返って、海に入っちゃったりしますよね(笑)。」
●そうなんですよね(笑)。ただ、ヨットをやっていると、「ヨットの魅力は分かるんだけど、乗る機会がない」とか「どうやって乗ればいいのか分からない」といったことをよく聞くんですけど、そんな方のために、田久保さんは今回“ヨット・ボートに乗るキッカケ、教えます!”という本を出版されました。この本はどういった本なんですか?
「僕は舵社という会社に入って、ヨット・ボートに関わって36年ぐらい経つんですけど、必ず『ヨットって、お金持ちの遊びでしょ?』、『肉体が強靭じゃないとダメなんでしょ?』って聞かれるんですよね。でも、実はやってみると、そうでもないんですよ。
お金持ちの遊びだと一般的に誤解されていますけど、例えば、僕は共同オーナーという形でボートを買ったことがあって、それに六年ぐらい乗りました。一人当たり8万ぐらい出して、50万円の船を六人で買ったんです。係留場所が公的な場所だったので、月に18000円を六人で出したんで、一人あたり3000円の負担だったんですよ。そのぐらいの金額で船を持つことができて、江戸川からお台場の方まで川沿いを移動して、途中で日向ぼっこしたり、東京湾に出て釣りをしたりすることができるんですよ。
なので、そのぐらいの金額でそういうことができるということを、この本で書きたかったんです。そして、たくさんの人にヨット・ボートに乗りにきてもらいたいと思っています。別に壁は高くないですし、それを越えたら先には、すごく素敵な世界があるということを10項目に分けて書いてあります。どうすれば、ヨット・ボートに乗れるのか、そして、無料で乗れる方法なども書いてあります。」
●無料でですか!? どこに行けば無料で乗れるんですか?
「一つは、マリーナやマリンスポーツ財団といった色々な団体が普及のために、無料体験会というものを、全国様々なところでやっています。その体験会では、無料で乗れますので、ネットで検索していただければ、出てきます。そういった方法を、この本に書いています。」
●その体験会は、子供たちとかも参加できるんですか?
「もちろんです! 東京の夢の島にある東京ヨットクラブでは、親子でヨットレースに出ることができるんですよ!。」
●レースに出られるんですか!?
「そうなんですよ。東京ヨットクラブのメンバーのヨットレースに、その日だけ、一隻に親子一組で参加できて、20組ぐらいがそれぞれのヨットに乗って、参加できるんですよ。そういうことをやっているところもあります。」
※続いて、ヨットやボートを、もう少しやってみたいと思う方にアドバイスをいただきました。
「まずは、スクールに入ることをオススメします。ボートの場合だと、免許を取れば“レンタルクラブ”という、車でいうレンタカーみたいに、ボートを貸してくれるところがあるので、最初から船を買うよりも、レンタルクラブに加入して、実際にボートを借りて、乗ってみたらいいんじゃないでしょうか。
ボート免許教室で実技として、実際にボートには乗りますが、実技以外でボートを実際に運転するのは初めてだった場合、そのことをレンタルクラブに言えば、通常よりお金がかかってしまいますが、そこのスタッフの人が一緒に乗ってくれます。そうじゃないと、レンタルする側も、話を聞きながら、その人がどの程度の技量かを見定めて、『この人は一人だとまだ危ないから、スタッフが一緒に乗った方がいいな』と、安全面を考えて判断しないといけないんです。なので、そのときには仲間と一緒に行ってもいいんですよ。『仲間と釣りに行きたい』と思ったら、釣りのポイントまで連れていってくれますし、その途中でスタッフの人が船の操縦のコツを教えてくれるので、運転できないからといって、心配しなくて大丈夫だと思います。
スクールといっても、色々な種類があります。ヨットスクールだと、セーリング・ディンギーのスクールとかありますし、そういうところって、スパルタみたいに厳しく教えるということはないですよ。例えば、江ノ島でやっているヨットの体験スクールがあるんですよ。それは13000円ぐらい払えば、スタッフが艤装という、船のセッティングから教えてくれて、スタッフと一緒にセーリングすることができるんですよ。最初の頃は、風がどこから吹いていて、どうやって走っているのか分からないと思いますが、それよりも、セーリングってどれだけ爽快なものなのかを午前中に体験して、昼には、シャワーを浴びたあと、1ドリンク付でバーベキューをするという内容の体験スクールなんですね。そういうことを体験すると、スクールに入りたくなるじゃないですか。そこで、正式なスクールの申し込みをいいんですよね。」
●正式なスクールだと、いくらぐらいになるんですか?
「一日大体15,000円~20,000円ぐらいですね。何艇か一緒ですけど、インストラクターからじっくりと教えてもらえます。三日間コースとか土日だけ行くコースとかありますけど、大体三~四日間ぐらいちゃんと教えてもらえば、一人で乗れるようになりますよ。」
●セーリング・ディンギーに関しては、私でも乗れるぐらいなので、意外と簡単なんですよね! 確認なんですけど、ヨットは免許がいらないですよね?
「ヨットはいらないですけど、ヨットでも、大きなクルーザーで、補助エンジンが付くとなると、ボート免許が必要になります。」
●エンジンが付いたら、免許が必要になってくるということですね。
「ただし、平成14年に規制緩和があって、ボートの長さが3メートル未満で2馬力以下のエンジンだと、免許がいらなくなったんです。それによって、ヨットが一気に普及しましたね。
どういった感じなのかというと、公園に手漕ぎのボートがあるじゃないですか。あれに2馬力以下のエンジンを付けたような船であれば、免許は必要ないということになったんです。なぜそうなったかというと『日本は海に囲まれている島国なのに、ボート・ヨットがなかなか普及しないし、そのぐらいのボートなら、遠くに行くことはできないので、免許はいらないようにしよう』ということになったんです。ただし、そういう種類のボートに乗るには、最低限のルールは守ってほしいというガイドブックがあります。それは国が発行しているものなんですけど、それを読んで、最低限のルールだけは守ってほしいなと思います。
逆に、船が小さいので、沖に出てしまうと危険なんですよ。波にのまれたり、小さい船だから、エンジンも小さいので、ガス欠を起こしたりすることもよくありますし、船と船が行き交うときのルールもありますので、それらを最低限の知識として覚えておいて、遊んでいただけたいと思いますね。」
※ヨットやボートにはまだまだ知らない楽しみ方がありそうな気がしますが、改めて、その魅力について話していただきました。
「極端に言えば、ヨットって、世界中のどこにでも行けるんですよね。僕の知人の話ですけど、退職した昨年の春に、夫婦でスペインで中古のヨットを買って、スペインから地中海をグルグル廻る旅を半年以上していました。」
●いいですねー!
「彼らの計画では、五年かけて世界を一周する予定だそうです。そういうことが、ヨットの場合はできるんですよね。モーターボートの場合は、相当大きくないと、燃料が足りなくなってきますので、太平洋を渡るのは、難しいんですけど、ヨットだと燃料は風なので、風さえあれば、世界中どこにでも行けるんですよ。それが素晴らしいんですよね。
それから、日本の港なんですけど、僕らはクルージングをするときに漁港の片隅に泊めさせていただくんですが、それを巡る旅って、最高ですよ!」
●漁港ですか!? 一体、どんな感じなんですか?
「僕は、関東から始まって、紀伊半島ぐらいまでのところと八丈島まで行きましたけど、それぞれに漁港があるんですよ。その漁港の片隅に、漁師の方にお話をして泊めさせていただくんですけど、その漁港の近くに泊めさせていただいたら、買出しに行くんですね。漁港の近くだと、海の幸がいっぱいあるじゃないですか。そして、そこが温泉地だったりすると、温泉に入っちゃったりしますよね。温泉に入ってから買出しに行ったりすると、その漁村の風情を味わえるわけですよ。そんなことをしながら船に戻ったら、キャビンの中に台所があるので、そこで料理をするんですよね。その料理を肴に、海の上で宴会をするんですよ。
夜になると、潮騒が聞こえてくるし、空は満点の星空なんですよね。夏になると、デッキの上でランタンの下で語らいながら遅くまで飲んでいたりすると、すごくストレス解消になりますよね。そういうことができるんですよね。僕は学生時代の夏に、二十日ぐらい乗りっぱなしの港を巡るクルージングをしたことがあるんですけど、その魅力にハマっちゃいましたね(笑)。なんといっても、海辺なので、海の幸はたくさんあるんですよ。しかも、その漁港で獲れる海産物が安く手に入るんですよね。どこかで食事に出かけることもあるんですが、基本的にはヨットの中で自分たちで料理をします。
僕はこれって、何よりも安い旅じゃないかなと思っているんですよね。例えば、30フィートぐらいの船であれば、中古だと150万円ぐらいで売っているので、それを買ったら、船の中にはベッド・台所・トイレが付いていますし、燃料は風なので、お金はかからない上にエコですよね。寝泊りは、船の中でできるので、宿泊費もかからないです。食事は、たまには外食もしていいと思いますが、基本的には船の中でできるので、衣食住の全てが船の中で済んでしまうんです。それで日本一周の旅をしている人が結構いるんですよね。だから、お金持ちの遊びじゃないんですよ。特に欧米とかでは、子供の頃から、生活の中に中古のヨットやボートに乗る習慣があって、そのことについて、それほど大きく報道されていませんが、それだけ日常生活に溶け込んでいるからこそ報道されていないので、ヨットやボートに乗る文化が根付いているんですよね。でも日本は、せっかく海がこんなにも近くにあるのに、『怖い』とか『危険』って思われているんですよね。だけど、実際はそれほど危険じゃないんですよね。確かに、安全に気をつけながら、ヨットやボートに乗っていただきたいんですが、誰でもできます。そのために、この本を書いたので、是非、買って読んでいただけると嬉しいです!」
(この他の田久保雅己さんのインタビューもご覧下さい)
ヨットやボートというと、どうしても敷居が高い気がしますが、今回、田久保さんに無料体験会や、レンタルボートなど、誰でも楽しめる方法を教えていただきましたし、何より、私でも乗ることができるので、皆さんも是非、気軽にヨット、ボートに挑戦してみてはいかがでしょうか。風を切りながら海の上を走る感覚は、本当に爽快ですよ!
舵社/定価1,260円
田久保さんの新刊となるこの本は、難しい専門用語を使っていない、今までにないヨットやボートの入門書といえます。とても読みやすく、項目も「無料で乗る」・「スクールで学ぶ」・「借りて乗る」など、目的別でわかりやすく、写真やイラストもたくさん載っているので、初心者にも分かりやすい内容になっています。
この本のことをもっと詳しく知りたい方は、舵社のホームページをご覧ください。