2012年6月9日
今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、鈴木あやのさんです。
水中モデル、写真家、そしてドルフィンスイマーとして活躍されている鈴木あやのさんは、オフィシャル・サイトで青い海の中、白いビキニと足ヒレをつけて、イルカと泳いでいる、とても美しい写真がアップされています。今回はそんな鈴木さんに、水中モデルとして伝えたいことや、御蔵島で顔なじみになったイルカのお話などうかがいます。
※水中モデルになったキッカケは何だったんでしょうか?
「野生のイルカに出会ったときに、そのイルカの姿に魅せられて、そこから海と素潜りにハマって、海の中で泳ぐ練習をしていったんです。最初は、イルカと一緒に泳ぐのが好きで、泳いでいるだけだったんですけど、偶然にもその光景を撮っていただいて、その写真を見たのがキッカケですね。今まで、人とイルカが一緒に写っている写真の中で、人がメインとなっている写真を見たことがなかったので、人とイルカの心が通っているようなシーンを撮っていただきたいという思いで始めました。」
●元から潜るのが好きだったんですか?
「実はそうでもないんですよ。五年前ぐらいに初めて小笠原諸島に行ったんですね。それまで海はあまり好きじゃなかったんですが、小笠原にはイルカやクジラがいるということを聞いたので、野生のイルカに会いに海に潜ったんですねそのときに、イルカが『ピーピー』と鳴きながら私の周りを回ってくれたんですけど、そのイルカの鳴き声や瞳に恋に落ちちゃいましたね(笑)そこからスタートしました。」
●恋に落ちちゃいましたか!(笑) 初めて野生のイルカに会ったとき、どんな気持ちだったんですか?
「それまでは、イルカと泳ぐということが全く想像できなかったんですけど、イルカの群れを見つけて、こっちに来る前に海に入って泳いだときに、イルカが『ピーピー』とかん高い声で鳴きながら、向こうから寄ってきてくれたんですよ。私に興味をもって遊びにきたと思うんですが、『野生の動物が人に興味をもって、寄ってくることってあるんだな』と思って、ビックリしましたね。」
●向こうから寄ってくるんですね! 警戒されなかったんですか?
「もちろんそういうときもあるんですけど、初めてイルカと出会ったときは、イルカの方が興味をもって寄ってきてくれましたね。」
●そこからどんどんハマっていったということですね。
「そうですね。そこから海で泳ぐ練習や素潜りの練習をしましたね。」
●その練習をしたことで、イルカとの距離が近くなったりしたことってありますか?
「ありますね。イルカと何度も泳いでいると、『このイルカは一緒に遊んでくれそうだな』とか『このイルカは寝てるから、そっとしておいてあげよう』とか『このイルカだと、こう言えば来てくれるだろうな』いったように、イルカの行動や感情が分かってくるんですよね。」
●そういうものなんですね! イルカも、人間と同じように性格があるんですね。
「ありますね。人が大好きで、すごく寄ってくるイルカもいれば、いつも冷たくて寄ってこないイルカもいるんですよね(笑)」
●(笑)。私は、そういうイルカをなんとかして振り向かせたいって思うタイプなんですが、それは難しいんですか?
「イルカも気分次第だったりするので、イルカが遊びたいと思っていたら、向こうから遊びにきてくれるんですけど、遊びたくないときは、何をしても来てくれないんですよね(笑)」
●やっぱりそうなんですね(笑)。そういうときは、そっとしておいた方がいいんですね。写真を撮るときも素潜りですか?
「そうですね。特にイルカの場合は、スキューバダイビングが禁止されているところが多いんですよね。なぜなら、空気で驚かせてしまったり、イルカは深く潜って、人に寄らないようにしているときに、不用意に近づかないようにするために、素潜りやシュノーケリングを付けて、イルカと泳いでいます。」
●でも、素潜りだと、大変なこともあるんじゃないですか?
「大きなカメラだと、水の抵抗もすごいし、撮ることに集中しすぎると、気付かないうちに深く潜ってしまったりすることがあるので、気付いたときに『水面があんな遠くに!』ってなってしまうと危ないですね。カメラに集中して、自分の泳ぎができなくなってしまったりすることがあるので、私は最近は、カメラに集中しすぎず、泳ぎながら、自然な状態でイルカの表情を撮影しようとしています。」
●そうすると、イルカの自然な状態の表情が撮れるんですね。
「そうですね。イルカも、人がカメラに意識がいっていることが分かるみたいで、カメラで撮影しようとすると、『なんだ、遊んでくれないのか』って思って、離れていっちゃうんですよね(笑)」
●そうなんですか!?(笑) かわいいですねぇ。じゃあ、撮るときは「私は撮ってないよ」っていう素振りを見せながら撮影しているんですね。
「たまに、レンズを覗き込んできたりして、カメラに興味をもって寄ってくるときもあるんですよね。一眼レフだと、“ハウジング”という水中でも撮影ができるようにするためのケースに入れて撮影をするんですが、そのレンズの前に“ドームポート”という大きなレンズみたいなものが付いているんですね。それに自分の姿が反射するのか、イルカが鼻先を向けて観察してきたり、覗き込んできたりしますね。」
●人間みたいですね。
「色々なものに興味をもっているので、見ていて面白いですね。」
※イルカと泳ぐときの注意点をうかがいました。
「私は野生のイルカと泳いでいるので、野生の場合は絶対に触らない・触ろうとしないようにしています。手を出したりすると、イルカも驚きますし、人に危害を加える可能性があるので、絶対に触ったり、触ろうとしないでください。あと、餌付けもしないでください。」
●場所によって、潜ってはいけない時期とかあるんですか?
「ありますね。私がよく行っている東京の御蔵島というところでは、冬の時期はイルカの保護も兼ねて、ドルフィンスイムは禁止になっています。」
●そういうものは事前に確認しておいた方がいいんですよね?
「そうですね。場所によってのルールがあるので、行く前に確認をしていただければと思います。」
●分かりました! 鈴木さんは主に小笠原と御蔵島で潜っているんですか?
「そうですね。そこが多いですね。」
●小笠原と御蔵島の海やイルカって、どうなんですか?
「小笠原は大自然って感じで、色々な自然の風景があるんですね。イルカだけを見てみると、かなり野生的で、もちろん遊ぶときは遊ぶんですが、あまり人に寄ってこないんです。でも、小笠原の場合は、イルカだけでなくクジラもいるので、それはそれで楽しめますね。
御蔵島の場合は、野生のミナミハンドウイルカが島の周りに100頭ぐらい生息しているので、九割以上の確率でイルカに会うことができるんですね。なので、イルカだけに会いたいなら、御蔵島の方が会える確率が高いですね。」
●御蔵島にいるミナミハンドウイルカとその他にいるミナミハンドウイルカって同じなんですか?
「基本的には同じですね。」
●でも、地域によって同じ種類のイルカの個性が違うっていうのは面白いですね。
「ハワイにハシナガイルカという種類がいて、小笠原にもハシナガイルカがいるんですが、ハワイだとハシナガイルカと遊べたりできるんですよね。小笠原のハシナガイルカは人と遊ばないので、地域によって違ったりしますね。」
●どうしてだと思いますか?
「イルカは学習能力が高いので、人と何度も会っていると、人に慣れてきて、人と遊ぶようになってくると思うんですね。御蔵島の場合は、島の周りにイルカがずっと生息しているので、人に慣れているんですよ。なので、遊びたいときに人がいたら『人だー!』と思って、寄っていくんですよね。」
●イルカも分かっているんですね!
「私も一年に十回以上も通っているので、いつも会うイルカがいるんですね。向こうも私のことが分かっているんじゃないかと思うイルカも何頭かいます。」
●それって、すごく楽しそうですね! 数ヶ月ぶりに行ったら「久しぶり!」っていう感じだっていうことですよね。
「『今年も会えたね!』って思いますね。」
●それはたまらないですね!
「また、去年までやんちゃな感じで遊んでいたイルカが、今年は落ち着きがでてきたりしますし、十歳ぐらいのメスのイルカが赤ちゃんを産んでいたりして、様々な成長が見られるので、面白いですね。」
●個体の識別はどういった感じでしているんですか?
「御蔵島では、観光協会などが主体となって調査をしているんですが、背ビレの欠けや体の傷、口がしゃくれているといった特徴で名前を付けています。例えば、背ビレの前側が欠けていたら“マエカケ”とか、後ろが欠けていたら“アトカケ”といったような、分かりやすい名前が付いています(笑)」
●そうなんですね(笑)。マエカケに再会したら、「マエカケ久しぶり!」みたいな感じでコミュニケーションを取ったりするんですか?
「そうですね。こっちから勝手に話しかけています(笑)」
●(笑)。それは鈴木さんにとっても楽しいでしょうし、イルカにとっても嬉しいことなのかもしれないですね。
「一時期、いつも遊びにくるイルカがいたんですよ。」
●そのイルカはなんという名前なんですか?
「個体識別調査では、ホッペに傷があるので“ホッペちゃん”という名前なんですが、本当にラブラブでベッタリとくっつきながら遊ぶので、“ラブちゃん”とずっと呼んでいました(笑)。もうマスクがぶつかるぐらい近くにいたので、他のイルカと遊んでいるときの距離とは全然違うんですね。」
●それは、鈴木さんのことが大好きだったんですね!
「本当に近くて、『すみません、前が見えないんですけど』っていうぐらい近かったですね(笑)」
●「ラブちゃん、どいて」みたいな感じですね(笑)。
「あと、他のイルカと遊んでいると、割り込んできたりするんですよ。」
●それって、まさにヤキモチですね!
「イルカにも、そういう感情があるみたいですね。他のイルカと泳いでいると、私とイルカの間に割り込んできて、そのイルカをかじってどけようとしたりしてましたね。」
●恋人関係のようですね(笑)。ラブちゃんは今も御蔵島にいるんですか?
「はい。今年のゴールデンウィークに、今年初めて御蔵島に行ったんですけど、そのときにもちゃんと会えました(笑)」
●きっと、ラブちゃんにとっても、楽しいゴールデンウィークになったでしょうね(笑)。
※鈴木さんは、御蔵島でイルカのこんなシーンを目撃したそうです。
「イルカが死産の赤ちゃんを運んでいるシーンを目撃したことがありました。先ほども言いましたが、御蔵島の周りにはイルカが100頭近くいるんですが、一頭の母イルカが死んでしまった赤ちゃんを運んでいて、その周りには島中のイルカが囲むように泳いでいたんですね。しかも、私が海に入ったときから、そういう異様な雰囲気だったんですよ。
周りを囲んでいたイルカが『カン、カン』と、顎を打ち鳴らす音をあちこちで出したり、ダブルリングという泡をボコボコと出していたりしていて、『一体何があったんだろう!?』と思っていたら、母イルカが赤ちゃんを運んできていたんですが、赤ちゃんはグッタリとしていて、既に死んでいる状態だったんですね。」
●なぜ、他のイルカは周りを囲むような行動を取ったんでしょうか? 弔っていたんでしょうか?
「弔っていたようにも見えましたし、囲っていたのはオスのイルカが多かったので、その理由を調査みると、赤ちゃんが死んでしまったから、そのメスとの交尾を狙っているオスが囲っているんじゃないかという説もあるんですね。明確な理由はハッキリとされていませんが、その光景は、島中のイルカが集まっているような感じでした。」
●不思議ですね。まだまだ私たちが知らない生き物の生態って、たくさんあるんですね。
「ちなみに、今年のゴールデンウィークに行ったときには、その母イルカが新しい赤ちゃんを産んでいて、その子は元気に育っていたので、『よかったね!』って思いましたね。」
●御蔵島にずっと通っているからこそ、見続けられることもあるんですね。
愛くるしいその姿で私たちを癒してくれるイルカ。そんなイルカは、私たち人間と同じように個性があって、私たちと同じように日々色々な事を感じて、考えて生きているのかもしれないですね。私もイルカは大好きなんですが、野生のイルカにはまだ会った事がなかったので、鈴木さんのお話をうかがって、ますます会ってみたくなりました。
水中モデル、写真家、そしてドルフィンスイマーとして活躍されている鈴木あやのさんの近況などは、オフィシャル・サイトに掲載されています。サイトのトップには鈴木さんがイルカと泳いでいる美しい写真が使われていますが、鈴木さんが小笠原などで撮った写真も載っています。海の中だけではなく、陸上で撮った野鳥や森の写真も掲載されていますので、是非ご覧ください。