今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、鈴木美也子さんです。
フォトグラファーの鈴木美也子さんは先日、「千葉の森カフェ」という素敵な本を出されました。今回はそんな鈴木さんに、県内にある森カフェのお話や旅好きが講じて訪れた東南アジアや南米の忘れられない旅のエピソードをうかがいます。
※なぜ、この本を作ろうと思ったのでしょうか?
「私は千葉在住なんですが、神奈川には湘南や鎌倉、横浜があったりするので、オシャレな本がたくさんあるのに、千葉のカフェ本でオシャレなものがないと思ったからなんです。千葉は海のイメージがすごく強かったので、最初の頃は九十九里や房総半島にあるような“海の近くにあるカフェ本”を作ろうと思ったんですが、『千葉には海以外で何かないかな?』と考えたとき、緑の風景が思い浮かんできたんですね。
この本の最初にも書いてあるんですが、フリーのフォトグラファーになって、千葉の紅葉や桜のストック写真を頼まれたことがあるんですけど、そのときに見た風景と、小学生の頃にセカンドスクールで行った鹿野山の景色を思い出して、千葉で海以外を探したときに、森が浮かんだことがキッカケです。」
●今回の本が“森カフェ”を題材にしていますが、何か定義なものってあるんですか?
「今回のカフェを取材するにあたり、私の中の視点なんですが、森を感じられて、可愛くて、美味しくて、居心地のいいカフェを三十件選びました。」
●森を感じられるカフェがあるんですね!
「でも実際、住宅街の中にあるカフェが多いんですが、木のぬくもりや店主の自然に対する想いなども含めて、“森カフェ”と呼んでいます。」
●必ずしも、森の中にあるから森カフェとは限らないんですね。特に印象に残っている場所にあるカフェってありますか?
「私が思う森カフェって、軽井沢にあるような、木漏れ日が差すカフェなんですが、実際は、この本の中でも一軒ぐらいしかないんですよね。カフェの前に田んぼがあったりと、どちらかといえば“千葉の森カフェ=里山”といった印象を受けましたね。なので、私が最初に思い描いていた森カフェとは、どんどん離れていってしまいましたね。」
●でも、里山の中にあるカフェも面白いですよね!
「逆に、それが千葉なんだということを実感しましたね。」
※鈴木さんは、世界を巡る旅もされていますが、これまでどういったところに行かれたのでしょうか?
「最初に行ったのはインドネシアのバリ島で、他には、エジプトの紅海でスキューバーダイビングをやってみたりしました。最近では、ブラジルやアルゼンチン南米に行くことが多いですね。」
●どういう基準で行くところを決めているんですか?
「“呼ばれている感”で行ってるかもしれないですね(笑)」
●“呼ばれている感”ですか! でも、旅をする方って「呼ばれてる気がして行きました」ってよく話されるんですが、鈴木さんもそういう感覚があるんですか?
「そうですね。特に最初に行ったバリ島では、そういう感覚がありましたね。 ●行ってみてどうしたか?
「バリ島のときは、地球上のどこにあるのか分からずに行ったんですが、そこまで無知だったせいか、バリ島に大恋愛してしまい、帰りの飛行機でブランケットに包まって、ずっと泣いていました(笑)」
●無理矢理引き離された恋人のような気分ですか?(笑)
「そうですね(笑)」
●どんなところに惹かれたんですか?
「ゆっくりと流れる、甘い愛おしい時間に惹かれましたね。」
●何も考えずにバリ島に行ったということですが、鈴木さんの旅って、あまり計画せず、思うままに行くスタイルですか?
「どこを回るかは、ある程度決めていきますが、細かくは決めていかないですね。」
●でも、宿泊先とかは事前に決めず、バックパッカーみたいなスタイルで旅をするんですね。今まで行った中で、一番印象に残っているところはどこですか?
「インドネシアにマルク諸島というところがあるんですが、写真家の三好和義さんに憧れて、どこまでも青い海を求めて旅をしていたら、マルク諸島にたどり着いたんですよ。そこの海はすごくキレイな青で、私のイメージする青にすごく近いんですが、その青がイメージに近づけば近づくほど、私が想像するリゾートにはどんどん離れていくんですね。」
●それはどういうことですか!?
「青い海や白い砂浜があるような南国を求めて旅をしていると、どんどん人工的じゃないところに近づいてしまうんですよね。リゾート地って、娯楽があったり、美味しいレストランがあったり、キレイなホテルがあったりして、快適な空間があるところだと思うんですが、私の理想を求めていくと、そういうところからどんどん離れていってしまうんですよね。」
●ということは、鈴木さんが求めていたのって、ありのままの自然だったんですね。
「一方で、心地よくなる空間って、ある程度人工的なところだったりすると思うので、自分でもまだ分からないんですよね。」
●でも、旅をしていくことで、自分が求めているものが明らかになっていくんですね。
「そうですね。バリ島がすごく好きなんですが、バリ島の海岸線沿いって、どうしてもリゾート空間が作られているので、そこから離れていくと、どんどんリゾート地から遠いところに行ってしまう感じですね。」
※鈴木さんの最近のお気に入りの旅先について話していただきました。
「最近は南米に行くことが多いんですが、中でも、アルゼンチンのパタゴニアにあるフィッツロイという山が思い出深いですね。私にとって本作りというのは、山登りと一緒で、すごく苦しいんですね。最初の作品でもある“ブラジル×ジャパン”を作ったときも、毎日編集作業をやっても全然前に進まなかったんですね。その苦しさは分かっているはずなのに、二作目の今回も作ることになって、それがトレッキングと重なりましたね。
南米を旅行していて、フィッツロイという山を登ったんですが、南米を旅している人は大抵、南下するために、上から降りてくるんですが、私は年越しを世界最南端の街で迎えたかったので、アルゼンチンのブエノスアイレスからウシュアイアという街まで飛行機で行って、そこから北上していったんですが、旅している人のほとんどは南下してくるので、その街で色々な情報が得られるんですよ。その中で『フィッツロイという山が一日で登れるよ』っていう情報を得て、初めてフィッツロイを登りました。
簡単に登れるとはいえ、片道六時間ぐらいかかるんですけど、途中で引き返したくなるぐらい苦しくて、頂上が見えてきても、なかなかたどり着かないんですね。そんな中で、やっとの思いでたどり着いた頂上から見える景色が、この世のものとは思えないぐらい美しかったですね。」
●フィッツロイは3,000メートル級の山なんですよね。
「でも、そのフィッツロイの最も頂上に登るのは、世界に通じる登山家しか登れないので、私たちはそこを眺めることしかできないんですが、見ていると、氷のようにピリッとしていて、パリンと山肌なんですよね。」
●すごく繊細な感じなんですね。
「そうですね。その下には湖があるんですけど、その湖がエメラルドグリーンで、見たことがない色だったんですよね。でも、標高が高いので、二十~三十分ぐらいいると寒くなってくるんですよね。あまりにもキレイなので、ずっと見ていたいんですが、体が冷えてくるので、いられないんですよ。」
●そのごくわずかな時間だけ見られる景色なんですね。
「いようと思えばいられるのかもしれないですけどね。それを見てから、それまで海派だった私が、山派に変わってきています。そういったところも、今回の本にも繋がっているかなと思いますが、苦しい先には、もっと美しい景色が待っているんだと思いましたね。」
鈴木さんの新刊「千葉の森カフェ」の最後に「あなたの笑顔に逢うために、私は風になり、旅をする」という鈴木さんらしい一文があるんですが、実は、今回のインタビュー中に“番組に出演出来たことによって、FMの電波という風にのせて、今回ご協力頂いたカフェの方々にメッセージを伝えられてうれしかった”とおっしゃっていました。
そんな鈴木さんの思いがいっぱい詰まった「千葉の森カフェ」。きっとみなさんも気になるカフェが見つかると思うので、ぜひチェックしてみて下さい!
書肆侃侃房/定価1,470円
フォトグラファー・鈴木美也子さんの新刊「千葉の森カフェ」には、千葉県内にある緑に囲まれたカフェが素敵な写真と文章で紹介されています。
30軒のカフェは「森のカフェ」・「田んぼのカフェ」・「里山のカフェ」・「森のギャラリー・カフェ」に分けられていて、それぞれにオーナーやお店にまつわる物語が盛りだくさんです。
巻末には、掲載されている30軒のカフェの地図が載っているので、この本を見ると今すぐ出かけたくなりますよ!
書肆侃侃房/定価1,680円
また、鈴木さんは、2009年にブラジル・リオのカーニバルと日本移民を軸に作ったガイドブック「ブラジル×ジャパン」という本も出してらっしゃいます。こちらもチェックしてみてください。