今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、タリア・タギロイ・ティロウさんです。
南太平洋の島国ツバルから日本に留学されているタリア・タギロイ・ティロウさんは四年前に来日し、日本語学校で一年間日本語を学んだ後、香蘭女学校高等科で三年間高校生活を送り、今年春から立教大学に通ってらっしゃいます。今回はそんなティロウさんにツバルでの暮らしのことや、地球温暖化による海面上昇の影響などうかがいます。
※ティロウさんの来日のキッカケは、平成18年に当時の環境大臣、小池百合子さんが日本の閣僚として初めてツバルを訪問した際に、ツバル政府から「高校生を受け入れてくれませんか?」という要請があり、平成20年に公益社団法人・日本環境教育フォーラム内に“ツバル青少年友の会”という事務局が設立され、その支援によって、来日が実現しました。そんなティロウさんにまず、日本に来る前、日本にどんなイメージを持っていたのか、お聞きしました。
「日本はハイテクで有名なので、すごそうな機械がいっぱいあると思っていました。あと、ツバルに来ている日本人はみんな優しいので、日本人は優しい人たちばかりなんじゃないかと思っていました。あと、食べ物ではお寿司が最初に思い浮かびますね!(笑)」
●(笑)。そんなイメージを持っていた日本ですが、実際に来てみてどうですか?
「イメージ通りでした。ここに来て、初めて電車に乗りました。電車は最初の頃、乗るのが怖かったですね。」
●そうだったんですね。ティロウさんが日本に来て思った“日本人のいいところ”ってどこですか?
「礼儀正しいところですね。電話しているときでも、謝罪するときにお辞儀をしているじゃないですか。」
●確かに! 見えてないのにしてますよね(笑)。
「あと、感受性が高いところですね。例えば、桜が咲いたら、私たちとは楽しみ方が違いますし、“花見”って、桜にしか使わない言葉じゃないですか。それと、夏になってセミの声を聞くと、私たちは『うるさい!』って思うんですが、日本人は『夏がきた』って思うじゃないですか。色々なことに対する捉え方が、私たちとは違いますよね。」
※そんなティロウさんの故郷・ツバルは南太平洋にある島国。地図上の位置でいうと、オーストラリアの右上で赤道のすぐ南にあるという感じでしょうか。ツバルは、サンゴ礁で出来た九つの島からなる国で、面積は全部で二十六平方キロ。品川区とほぼ同じだそうです。人口はおよそ一万人、公用語はツバル語と英語。そこでティロウさんはツバルの首都がある“フナフティ島”に暮らし、家族は十人。うち兄弟は八人で、ティロウさんは上から三番目だそうです。そこでティロウさんに、ツバルは常夏とはいえ、どんな気候なのか、お聞きしました。
「ツバルは熱帯気候なので、平均気温は三十五度ぐらいですね。でも、カラッとしているので、東京の方がジメジメしていて暑く感じます。」
●ということは、体感温度では、東京の方が暑いんですね。
「そうですね。同じ三十五度でも、東京の方が暑く感じますね。それに、ツバルは海風があるので、それほど暑く感じないですね。」
●風が吹いてくると、気持ちよかったりするんですね。
「そうですね。夜は結構涼しいです。」
●島の子供たちは普段どういった遊びをしているんですか?
「海でよく泳ぎますね。それと、“ロングボール”というソフトボールに近い遊びをしたりしてますね。あと、木の上を走ったりしてましたね(笑)」
●え!? それってターザンみたいですね!
「ターザンよりワイルドです(笑)」
●(笑)。地元の子供たちはそれで遊んでいるんですよね。それって、楽しそうですね。
「結構楽しいです。」
●ツバル語もすごく気になるんですが、ツバル語で「こんにちは」ってどう言うんですか?
「『こんにちは』は“タロファー”ですね。」
●「さようなら」は、どう言うんですか?
「『さようなら』は“トーファー”です。」
●「お元気ですか?」は、どう言うんですか?
「『お元気ですか?』は“エアコエ”ですね。『あなたはお元気ですか?』という場合は、“エアマエ・コエ”となります。『あなたたちはお元気ですか?』となると、さっきとは違ってきて、“エアマエ・ゴートーン”となりますね。」
●だんだん覚えられなくなってきていますけど(笑)、日本語とは全然違いますね。
「そうですね。でも、日本語に似ているものもあるんですよ。例えば、『海』は“タイ”なんです。魚の鯛っていますよね? あれと同じ発音なんです。あと、“イヌ”っていう言葉があるんですが、これは『飲む』なんです。」
●日本人だと「飲む」って、飲み物を飲むっていうイメージですけど、ツバルでは“イヌ”なんですね。よく地元の人たち同士で使う言葉ってありますか?
「“タロファー”ですかね。ツバルでは、知らない人でも道ですれ違ったら挨拶をします。なので、“タロファー”で挨拶をすれば大丈夫だと思います。」
●いい言葉を覚えたぞ!(笑)
※ツバルの伝統料理についてうがかいました。
「日本にはない食べ物なんですが、昔は“プラカ芋”が主食でした。」
●それをどういう風に食べていたんですか?
「切ってココナッツミルクで煮たり、焼いたりして食べます。」
●ティロウさんが子供のころも食べていたんですか?
「いや、お米を食べていました。首都付近に住んでる人はお米が主食なんです。首都は土地が狭いので、芋を作ることができないんですね。逆に、他の島に行けば土地がたくさんあって、植えられるので、食べることができます。」
●首都では、食材を自分たちで作るより、買ってくる方が多いんですか?
「多いですね。でも、魚を食べたかったら、すぐにでも海に行って釣ってきますね(笑)」
●(笑)。それだけではまかなえないけど、ある程度は自分たちで獲ってくることができるんですね。お水はどうしているんですか?
「雨水に頼ってますね。雨水を溜めて、沸騰させて、飲んだりしています。」
●ツバルはサンゴ礁でできている島なので、地下水が淡水じゃなく、海水なんですよね。だから、雨水を利用しているんですね。
「井戸もありますが、少ないんですよね。なので、井戸の水は洗濯に使ったりしています。」
●ツバルには、伝統行事やお祭みたいなものってあるんですか?
「ありますね。10月1日にツバルの独立記念日で、その日はみんなが集まって、食べたり“アノ”っていうゲームをしたりします。“アノ”は四角いボールを使って、バレーボールみたいに遊びます。それは何人でも参加してよくて、二班に分かれてスタートして、負けた人たちは顔に墨を塗られます。」
●それって、日本の羽子板みたいですね! 以前、番組に海南友子さんという映画監督の方に出ていただきまして、ツバルのドキュメンタリー映画の話をうかがったんですが、そのときに「ツバルの人たちは、神様を信じている」という話をされていたんですけど、神様を信仰するからこそ、ツバルの人たちは、お祭や教会に行くんでしょうか?
「はい。国民の九十八パーセントはキリスト教徒なので、イースターのときはみんな休みますし、初めてキリスト教が入ってきた日は、それを記念して祝っているんです。島によって、行事は異なります。」
※天国に一番近い島といわれるほど美しいツバルは、その一方で深刻な問題に直面しています。その問題とは、“地球温暖化による海面上昇”。そのため、ツバルは近い将来水没するといわれています。ちなみに、ツバルは最高地点でも海抜が5メートルも満たないそうです。そこでティロウさんに、どんな影響が出ているのか、ツバルの人たちは現状をどう捉えているのか、お聞きしました。
「確かに、海水が上昇してきていますね。満潮のときには、波が家の近くまで入ってきたりします。その満潮の時期は、1月~2月の間が一番多いんですね。」
●そうすると、生活に影響が出てきたりするんじゃないですか?
「そうですね。海水が上昇してきているので、植物が植えられなかったり、食べ物がなくなったりしますし、海岸の沿岸部が浸食されていくんですよね。」
●となると、小さいころ遊んでいた海岸がどんどんとなくなってきているんですね。ツバルの人たちはその現状をどう捉えているんですか?
「先ほども話しましたが、ツバルの人の九十八パーセントはキリスト教徒なので、聖書を信じているんですね。聖書には神様の約束事が書かれているんですが、その約束事の中に『すべて肉なるものは、もはや洪水によって滅ぼされることはなく、また地を滅ぼす洪水は再び起こらないであろう』と書かれていて、それをみんな信じているんですね。なので、みんなはツバルが二度と洪水が起こらず、沈まないと信じているんです。もし、沈んだとしても、ツバルと共に沈む覚悟です。」
●ということは、ツバルを離れて、別のところで生活をしようと考えている人は少ないんですか?
「中には、ニュージーランドやオーストラリアに移住する人もいますが、少ないですね。」
●ツバルでは今、星砂を飼育して、対策を練られているそうですが、具体的にはどのようにしているんですか?
「星砂は有孔虫の殻からできていて、サンゴ礁はその星砂でできているんですね。なので、その星砂を飼育して増やして、海岸の沿岸部に置くことで、侵食を防いでいるんです。」
●それをツバルの人たちは今行なっているんですね。それがうまくいくといいですね!
「ですが、それはまだ研究段階なんですね。私の兄は、その研究をしている人たちの一人なんです。」
●お兄さん的には、手ごたえがありそうな感じなのでしょうか?
「星砂の研究の発表のために日本に二回来ているんですが、ありそうなことを言ってましたね。あとは、海岸でヤシの木を植えたり、マングローブを植えたりして、侵食を防ぐための活動をしています。」
●ティロウさんはツバルから日本に来て、これからツバルと日本の架け橋となって、活躍されていくと思いますが、日本の人たちに今、どんなことを伝えたいですか?
「ツバルを知っている日本人って、少ないんですよね。なので、“地球温暖化の影響を受けている島がある”ということをもっと知ってほしいですね。」
●ツバルは今、地球温暖化による海面上昇によって、水没の危機にありますが、他に問題となっていることってありますか?
「“ゴミ問題”ですね。西洋文化によって、様々なものが輸入されてきて、使ったあとはゴミとなるんですが、捨てるところがないんですし、リサイクルするシステムがないんですよ。それなのに、政府はゴミ問題に対しての対策をしていないんですね。すると、そのゴミが海を汚染して、星砂を作るための有孔虫の減少に繋がってしまい、海岸が侵食されていくので、今は地球温暖化のことよりも、ゴミ問題の方が解決しないといけないことじゃないかと思います。あと、リラックスできる環境なので、遊びにきてほしいですね!」
ティロウさんにお話をうかがっていて、あまりに日本語が上手でビックリしました! 日本に来られて四年であれだけ喋れるようになるという事は、本当に努力家で勤勉なんでしょうね。そんなティロウさんには、ご本人もおっしゃっていたように、ツバルと日本の架け橋として、今後益々の活躍を期待しています! 番組としても、応援させていただければと思います。
ツバルからの留学生、タリア・タギロイ・ティロウさんの留学をサポートしている「公益社団法人・日本環境教育フォーラム」は、地球と自然を舞台に環境教育を展開するNGOです。活動内容など詳しく知りたい方は是非、日本環境教育フォーラムのオフィシャル・サイトをご覧ください。